5分で読める法律の豆知識

テレビや新聞などで政治から芸能スキャンダルまで幅広いニュースを見ます。しかし、法律のことについて詳しく書かれたものはあまりみません。なので自分で勉強してみました。個人的に面白いと思ったものだけ書くのであまり網羅性はありません。なので暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。

「契約書」「見ません」「読みません」本当に大丈夫ですか?

 

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「肩ヒジ張らずに楽に」と言われても契約書にサインをする時緊張しますよね。もっとも、「そもそも内容を読みません」という人もいるかもしれません。

 

確かに、契約書は分厚くて小難しい言葉が羅列してあるので、読んでも読まなくても変わらない。そのため、読むだけ時間の無駄という意見は最もだと思います。

 

ですが、そもそも「契約」とはなんでしょうか?以外に知らないことがあるかもしれません。契約書を読まずに、サインをするとなぜ怖いのか?

そこで、今回はそもそも契約とは何か?契約書をなぜ読まなくてはいけないのか?検討してみたいと思います。

 

契約とその他の法律行為

 そもそも、契約とは二者当事者が相互に意思表示をして合意をする法律行為です。難しいですね。違った視点で見てみましょう。

 

「法律行為」という言葉を使いましたが、これは法律効果や法的関係性を生じせれる行為です。このような法的効果を生じさせる方法には色々なものがあります。

 

例えば、遺言を考え見ます。遺言は特定の人に死後の遺産を承継させる意思表示です。

 

内縁の妻は相続権がないので、遺産を残してあげようと思い遺言書くことが多いです。ですが、この遺言は内縁の妻が「了解です!」と言わないと、成立しないのでしょうか。

 

 当然違います。

 

遺言をする人は遺言の対象者の意思に関わらず遺言をすることが当然できます。このように一方的な意思表示により法律効果を生じさせるものを、単独行為といいます。

 

また、このような単独行為以外にも合同行為と言うものもあります。

例えば、会社を設立する時に色々な人が設立に向け行為します。このようなある特定の目的のために複数の人がする法律行為を合同行為と言います。

 

 

では、契約に戻りますが、契約は二人で行います。その点が、単独行為と大きく異なります。また、互いに向かって意思表示をする点で、合同行為とは異なります。

 

その結果、契約とは、二者当事者が相互に意思表示をして合意をする法律行為となります。

 

 

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具体的な内容

 では、契約について具体的に見ていきます。そもそも、契約には契約自由の原則という大原則があります。

 

 内容は非常に簡単です。その名の通り、私たちは、強制されずに自由に契約を締結することができるということです。具体的に言うと、私たちは契約をするかしないか、また、誰と契約をするか、その内容をどのようなものにするか自由に決定することができるということです。

 

 すごく当たり前ですよね。ですが、この契約自由の原則が契約を考える上ですごく重要になります。この点について詳しく見ていきましょう。

 

 そもそも、民法は、13個の契約について規定しています。例えば、売買契約、請負契約、賃貸借契約等です。これらは、日常よく使う契約です。契約自由の原則がある以上、どのような内容を定めても良いはずですが、我々が、詳細に契約内容を決めることは非常に煩わしいです。また、そもそも、契約時に話合っていない場合や決めていないということが起こりえます。

 

 例えば、売買契約を締結した時に、代金の支払い時と物の引き渡し時を決めていなかったとします。この場合、民法の規定によれば、売買契約と同時に支払請求及び引き渡し請求をすることができます(同時履行関係にはなりますが)。

 

 しかし、民法の規定がなかった場合には、契約締結をしてから1週間後なのか、はたまた1か月後なのか、支払請求及び引き渡し請求をいつできるのかわかりません。そのため、買主と売主の間で後々法的紛争に発展してしまう可能性もあります。

 

 このような状況を回避するために、民法は良く使う典型的な契約について規定を置いています。

 

 この発想が非常に重要です。というのも、言い換えると民法の規定は、当事者で定めなかった場合や当事者が話合っていない場合に、適用されるものであり、話し合ってお互いで決めていた場合には、それに従うことになります。

 

 すなわち、民法の規定よりも契約自由の原則が優位に立っているといっても良いです。

(当然、公序良俗違反や、強行法規に違反する内容は定められませんが)

 

 実際どうゆうこと?

 以上のように、契約自由の原則が民法の規定に優位すると言っても「だからなんだ!」という感じですよね。

 

 ですが、この理解が非常に大切です。具体的に言うと、例えば、民法の規定に瑕疵担保責任というものがあります(民法570条・民法566条)。この瑕疵担保責任というのは、売買契約をする時に目的物に瑕疵がある場合に、売主が瑕疵を知っていたか否か、過失があるか否かに関係なく、買主は売主に対して損害賠償請求や解除をすることができる規定です。

 

 ですが、この瑕疵担保責任の規定は当事者の合意によって契約内容から外すことができます。その結果、売主は目的物に瑕疵があっても責任を負わないということが可能になります。

 

 具体的に見ますと、中古ディーラーから車を買ったとします。ところが、その車はエンジンが壊れていて100キロしか走行ができない車だったとします。この場合、売主のディーラーもそのエンジンが壊れていることを知らず、過失もなかったとします。この場合、民法の規定によれば、買った私たちは、売主であるディーラーに損害賠償請求をしたり、契約を解除することができるはずですよね。

 

 ところが、契約書を読み返してみると、「売買の目的物につき瑕疵があった場合、それがいかなる瑕疵であっても、売主は過失がない限り責任を負わない」という条項が入っていたとします。

 

 そうすると、瑕疵担保の規定が適用できないため、私たちは、ディーラーに対して損害賠償請求も契約の解除もできず、走行できない車をそのまま所有しなくてはいけないことになってしまい。

 

 総括

 このような状況は、非常にむかつきますよね。そもそも、「走らない車なんていらないよ」って話ですよね。

 

 このような状況にならないためにも、契約書を読むことが重要です。また、契約書に過度に売主の免責条項が入っている場合には、契約をしないという選択も検討をした方が良いです。

 

 

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賃貸借契約の内容、権利義務。大家さんとの関係など

 

 

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 高校を卒業して上京する時などに、マンションを借りることが多いです。不動産屋を何軒か回って自分の好きな物件を探す。新しい生活に心が踊ります。いくつか好きな物件をピックアップして、「これだ!」と思うマンションを選ぶ。非常に楽しいですね。

 

 いざ契約となると、小難しい「賃貸借契約書」にサインをして判子を押します。

 しかし、この「契約書」にはどのようなことが書いてあるのでしょうか。知らないと後々損をしてしまうこともあるかもしれません。

 そこで、今回は賃貸借契約の内容をざっくり検討していきたいと思います。

 

賃貸借契約の概要

 そもそも、賃貸借契約は民法601条に規定されています。簡単に言うと、まず貸す人を賃貸人といい、借りる人を賃借人といいます。対象となる物を賃借物といいます。

マンションの例で言えば、不動産屋や大家さんが賃貸人で、私たちが賃借人です。また、賃借物はマンションとなります。

 

 つまり、大家さんは私たちに対して、マンションを住める状態にして引き渡す義務を負い、その代わりに私たちは賃料を支払う義務を負う。

このことをお互いで約束するということが賃貸借契約の根本的な内容です。

 

賃貸人と賃借人の権利義務

 以上の内容から、大家さんは私たちに対して、マンションを引き渡して居住できる状態にすべき義務を負い、私たちは大家さんに賃料を支払う義務を負うことになります。

 

 そのため、大家さんがマンションを引き渡さない場合には私たちは引き渡しを請求できる権利を有します。また、逆に私たちが賃料を支払わなければ、大家さんは私たちに賃料を支払うように請求できる権利を有します。

 

 要するに、権利と義務は表裏一体の関係にあります。

 

では、このような根本的な権利義務の他にどのような権利義務があるのでしょうか。

 

大家さんの義務

 大家さんは修繕義務、必要費と有益費の支払い義務を負います。

 そもそも、大家さんは、マンションを居住できる状態にする義務を負います。そのため、賃貸期間中に、換気扇や水道のパッキンが故障した場合、生活に欠くことができない部位が壊れているので、通常の居住が難しくなります。そのため、大家さんは、このような故障を修繕すべき義務を負います(民法606条)。

 

 さらに、大家さんが修繕をする前に、私たちが修理業者に依頼して直してもらった場合には、修繕にかかった費用分のお金を支払って下さいと大家さんに請求をできます。これを必要費の支払い義務と言います(民法608条)。

 

 では、壁紙がはがれてしまし、自分で高級な壁紙にし直した場合にも費用は、全部大家さんに請求できるのでしょうか。

 

 この場合、通常の壁紙の費用分は、必要費として大家さんに支払義務があります。ですが、「高級な」費用分は、有益費に当たります。有益費とは、賃借物の価値を客観的に増加させる費用を言います。この壁紙で言えば、高級な壁紙を使用したことでマンションの価値が高くなったと言えます。

 

 ゆえに、その上がった価値が賃貸借終了時点でも残存していれば、大家さんはその増加分を私たちに支払わなくてはいけません。これを有益費の支払義務と言います(民法608条・民法608条2項・民法196条2項)。

 

 

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私たちの義務

 他方、私たちの義務としては、用法遵守義務(民法614条・民法594条1項)、転貸借禁止義務(民法612条1項)などがあります。

   用法遵守義務

 まず用法遵守義務については、簡単です。その名前の通り、決められた使い方をしなくてはいけないという義務です。

 

 例えば、マンションを借りるときに、必ず使用目的を聞かれます。例えば、居住のためとか、事務所として使用するとかそのようなことを聞かれます。

その上、居住のためと目的を決めた場合には、通常の居住として適した利用をしなくてはいけません。これが用法遵守義務です。

 

 この場合、大学在学中に起業して、事務所として利用をした場合、当初決めた使用目的と異なる利用になるため、用法遵守義務に違反します。

 

 また、「通常」と言う言葉を使いましたが、通常住むときに落書きを壁にしてはいけないのは当たり前ですよね。例えば、大学在学中に「自分はアーティストに将来なろう!」と決意したとします。

 

 これ自体は素晴らしいことです。どんどんやって下さい!ですが、その熱意が暴走して、自分の部屋に「美しいアートな絵を描きまくった」とします。

 

 非常に美しい絵ですね。ですが、絵が上手いかどうかに関わりなく、そもそも、「通常」住む上で、壁に絵を描いてはいけません。落書きとはいいませんが、壁に絵を描く行為自体通常の居住態様の範囲内に含まれていません。

 

そのため、壁に過剰に絵を描きまくると用法遵守義務違反になります。

 

  転貸借禁止義務

 次に、私たちは、転貸借禁止義務を負います。簡単にいうと、大家さん等に無断で、借りているマンションを他の人に貸してはいけない義務を負います(民法612条参照)。

 

 例えば、大学在学中に半年間海外留学をする場合や海外出張で3ヶ月マンションを空けることがあります。

 

 この場合、自分が住んでいないのに賃料を支払うのはばかばかしい」と思う人がいます。この考え方自体は、共感できる部分もありますが、「そうだ!友達に貸して賃料を取ろう!そうすれば、家賃の半分ぐらいは回収できるかも。あわよくばプラスになったりして」と名案を思い付き、友達に貸す人もいます。

 

ダメです。これは転貸借禁止義務に違反します。

 

ケースにもよりますが、債務不履行により大家さんから明け渡し請求をさせる可能性もあります。そのため、海外から帰ってきた時に、「住む家がない!」というような状態になってしまうかもしれません。

 

 

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気を付けること

 以上が、大家さんと私たちが持っている基本的な権利義務です。ですが、ここで大事なことを言い忘れていました。ごめんなさい。

 

 実は、これらの権利義務については、大家さんと私たちの裁量で、外したりすることができます。

 

 難しい言葉になってしまいますが、これを契約内容自由の原則と言います。この原則があることで、法律が絶対的に禁止している事柄(強行法規と言います)以外については、私たちは、自由に契約の内容を決めて良いことになっています。

 

 そのため、例えば、壁に美しい絵を書くことは、本来用法遵守義務に違反しますが、契約をする時に、大家さんに「めっちゃいい絵を描いたげる。もし将来価値がでても大家さんのもんやから、大家さん許してな」といい、大家さんが「ほんまか。なら描いてええよ」と言えば、壁に絵を描いてはいけないという用法遵守義務はないこととなります。

 

 そのため、絵を描いても何ら問題はありません。

 このように交渉次第では、色々な契約内容を作ることができます。

 

 ですが、多くの場合、ひな形がありそれにサインすればOKというような形になっています。この場合、「通常損耗を含む一切の必要費を賃借人の負担とする」というような条項を入れている不動産屋さんもいるかもしれません。

 

 このような契約内容を作ることも適法です。しかし、このような条項は、本来の賃料よりも安くする代わりに、必要費を賃借人に負担させる例外的手法です。そのため、賃料等が安くなるメリットもないのに「通常損耗を含む一切の必要費を賃借人の負担とする」という条項を入れてひな形を作っている不動産屋は、高い可能性で問題がある不動産屋です。絶対に契約をしない方が良いです。

 

 以上のように賃貸借契約には、色々な権利義務があり、契約内容を自分たちで決めることができることが分かりました。良い物件を見つけたらさらに自分が納得する契約内容を交渉してみるともっと幸せになれるかもしれません。

 

 ちなみに敷金についてはこちらをお願いします。

 

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護憲?改憲?憲法改正を問う前に憲法改正の限界とは?

 

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 最近、憲法改正に当たって「護憲派ですか?」「改憲派ですか?」みたいな議論が巷でもあるみたいですが、そもそも、視点がズレテいるような気がしてなりません。というのも、「護憲派」=今の憲法から1ミリたりとも変えない派閥、「改憲派」=今の憲法から1ミリ以上変える派閥的な議論の組み方をしているような気がします。

 

 今比喩で、1ミリと言ったのですが、例えば、私達みんな考え方は違うわけですよね。例えば、「平和主義をなくして、常に臨戦態勢でいるべき」という考え方の人もいれば、そうではなく、「平和主義を維持しつつ敵国から攻撃された場合には、交戦自体はできるように軍隊を持つことを憲法で明記しよう」という考え方の人もいると思います。

 はたまた、現在の憲法から一切変えるべきでないとう考え方も当然あります。

 

 

 ですが、そもそも、憲法ってどこまで変えることができるのですか。

 

中学高校の時に、憲法の基本的な三大原理として、国民主権、平和主義、基本的人権の尊重という言葉をお題目のようにぶつぶつぶつぶつ暗記しましたが、これらの原理を放棄するような改正までできるのでしょうか。

 

今回は、護憲改憲の前提として、憲法改正の限界についての前提を調べてみました。

 

 

 二つの相反する考え方

 そもそも、憲法改正については限界ある説とない説があります。

 

 限界ある説

 まず、限界がある説の中には、色々なものがあります。一つの例として、憲法を制定した時点で、その基本原理が存在し、改憲は、当該基本原理の範囲内においてのみ変更を加えることができるにすぎないというものがあります。

 

 かなり難しいですが、憲法をつくるときに、ある思想を持って作るわけですよね。例えば、時代劇をみていると、お奉行様がでてきます。このお奉行様は、普段は、行政官として、書類整理や町民の陳情を聞いて、部下に「ああしろ。こうしろ」と指示しています。しかし、いざ町民が人を殺したりすると「お裁き」という形で、裁判までやっちゃいます。

 

 

 これ普通に気にせず見ていますが、現代いうと、「市長が裁判官までやってるぜ」的な感じですよね。普通に考えたらありえないです。

 

 と!「普通に考えたらありえない」と思うのが憲法の基本原理があるからです。

 

 つまり、日本国憲法でいうと、行政は内閣、司法は裁判官、立法は国会がやるべきだと規定していますが、ここでは、三権分立という基本原理があるからです。つまり、日本国憲法をつくる時に、三権分立という基本原理が存在しており、この基本原理を変更するような改憲はできない。

 とする考え方が、憲法改正の限界ある説の考え方です。

 

 改正の限界ない説

 他方、改正の限界はないとする説もあります。この説は、そもそも、思想や根本的な考え方は、変化するため、過去の一時点で決めたことを基準にそこから改正のできる範囲に縛りを加えてしまうと、時代錯誤の憲法になってしまうということが理由です。

 

 私個人は、今の憲法思想について特段文句がないのですが、例えば、国会議員が汚職ばかりしまくって、無駄な国会答弁ばかりして時間と税金を浪費していたと仮定します。あくまでも仮定です!仮定!

 

そのような状況では、「そもそも、皆で話合う意味ある?一人の優秀な人が決めた方が良くないか?国会を廃止しよう。内閣もいらない。」と言うような思想が定着すると思います。

 

 この場合、立法と行政を統合するので、三権分立に反する構造になりますよね。

こちらの思想が一般的であるにもかかわらず、憲法改正の限界ある説では、このような思想に合わせた改正ができません。

 

 つまり、時代錯誤の憲法を維持しなくてはいけなくなってしまいます。これがおかしいと思って唱えられているのが、憲法改正の限界ない説です

 

 どちらが正しいか?

 「どちらが正しいか?」というと、答えはありません。ですが、個人的には、「改憲」という言葉は、現在ある憲法に変更を加えるとういう意味でとらえるべきだと思います。そもそも、現在ある憲法と全く異なる憲法をつるくことは、「改憲」ではなく、「新憲法の樹立」になります。そのため、憲法改正限界ある説が妥当だと思います。

 

 何を考えるべきか?

 では、憲法改正の限界があるとして、何を考えなくてはいけないのでしょうか。

例えば、憲法9条を改正して軍隊を保持することに対して、「平和主義を放棄した」というようなことを言う人がいますが、アメリカもイギリスもフランスもみんな軍隊を持っていますが、平和主義を採用していないかというとそんなことは決してありません。

 

 当然これらの国も平和主義を採用しています。

 

 私は、「憲法9条を改正して軍隊を保持することを平和主義の放棄だ」と考えること自体を絶対に否定しません。それは、その人が、日本国憲法における平和主義は、憲法9条に明記する通りの武力保持を禁止していることが基本原理であるのか否か、そして、基本原理であるから変更をすべきでないのか、それとも基本原理ではなくても、変更をすべきではないとしっかりと検討した上で、その立場にあるとしているなら全く問題がないからです。

 

 ただ、安易に反対・賛成というのは全く意味がないように思います。

 

 そのため、まずは、憲法における基本原理とは何か、その上で、何を変更すべきであり、何を変更しなくてはいけないのか、を個別によく検討することが大切と思います。

 

 もっというならば、私は、今後憲法改正を政府から提案された場合、例えば、「憲法9条2項について○○という条項にする」というような改正案がたった一つだけ出されたときは、そもそも、民意をないがしろにしていると思います。

 

 私たちは、みんな何を憲法の基本原理と考え、どこを限界とし、何を変更すべきか、変更すべきではないか、違った意見を持つと思います。その上で、改正憲法が1つしかないと言うのは、かなり違和感があります。

 

一つの条項の改正につき複数の候補を出して、投票をさせる方式の方が、国民投票の実施方法に困難があることを差し引いても、全員が納得する答えを導き出せるような気がします。

 

 

 

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交通事故で従業員がすべて責任を負うのですか?使用者責任と求償

 

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 最近ネットショッピングが定着しています。ワンクリックで次の日には、買った商品が自宅に届く非常に便利です。ですがその分、運送業者の方の負担が大きくなってきているようです。ヤマト運輸などの大手各社が料金の値上げをしたり時間帯の変更をしたりしています。個人的にはやむを得ないような気もします。

 

 ところで、運送業者の人が勤務時間中に事故を起こした場合、あるいは、セールスマンが交通事故を起こした場合に、運送業者の人は、過失があれば不法行為に基づく損害賠償責任(民法709条・710条)を負うことになります。

 

 ですが、使用者である会社も損害賠償責任(民法715条)を負うことがあります。つまり、被害者は従業員と会社のどちらに対しても損害賠償請求をすることが可能性です。

 では、従業員と会社いずれが最終的責任を負うのでしょうか。今回は、使用者責任(民法715条)における求償の問題について検討したいと思います。

 

 使用者責任

 使用者責任は、民法715条1項に規定されています。

 

 同条項は、「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害を生ずべきであったときは、その限りでない。」と規定しています。

 

 まず、要件について検討します。「ある事業のために他人を使用する者」とは、使用関係における使用者という意味です。具体的には、一般的な仕事をする上で、雇用契約等の指揮監督関係を結び、他人を使っている者を言います。

 

 次に、「事業の執行について」とは、判例通説によると、被用者である従業員の職務行為のみならず、外形的に見て職務範囲に含まれているものを言います(ただし、取引行為的不法行為に限ると言う説もあります。)

 

 ここで争いがあるのは、例えば、会社の車を本来禁止されているのに私的な用事などに使って交通事故を起こした場合です。このケースでは、「事業の執行について」に該当するか微妙です。ですが、通常の営業時間内に移動のために車を運転しているときは、「事業の執行について」の要件を満たすことがほとんどです。

 

 そして、「第三者に加えた損害」とは、従業員の職務執行中の行為によって生じさせた第三者の損害を指します。

 

 最後に「使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害を生ずべきであったときは、その限りでない。」と使用者の免責規定を置いていますが、これはほとんど認められません。

 

 以上のように各要件を検討しましたが、基本的に職務執行中に、従業員が交通事故を起こせば、使用者である会社は損害賠償責任を負うことになります(民法715条1項)。

 

 

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 求償

 では、使用者責任が認められるとして、会社は被害者に対して損害賠償をした場合に、従業員に被害者に支払った分だけのお金を請求できるのでしょうか。これがいわゆる求償の問題です。

 

 そもそも、使用者責任の根本的な考え方は、代位責任だと解されています(多数説前提)詳説すると、使用者は被用者を使って利益を受けています。そのため、被用者が職務執行中に生じさせた責任については、被用者に代位して責任を負うべきだとされています。

 

 事実上の必要性から考えても、従業員等の被用者よりも会社等の使用者の方がお金を持っています。つまり、損害賠償請求した場合に、被用者だけにしか請求できないとすると、とりっぱぐれる可能性がります。使用者は被用者を使って利益を得ているので、使用者にも賠償責任を負わせて、被害者がとりっぱぐれるのを防げることになります。

 

 そのため、被害者賠償の視点からみれば、民法715条はとても有益です。

 

 ですが、使用者はあくまでの被用者の代わりに被害者賠償をするにすぎないため、使用者が賠償をした後は、被用者に対して求償を請求できるのが原則です。

 民法715条3項は「使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない」と規定しており、明示的に使用者が被用者に求償請求できることを規定しています。

 

 ところが、世の中に本当に真っ白なホワイトな会社はあるのでしょうか。週休2日で、有給は全て消化できます。また、残業手当は全て役職に関係なく滞りなく支払います。月の残業範囲も法的基準内を完璧に守っており、極力残業はさせません。常に、ベストな状態で従業員が働ける環境を整えています。という会社はほとんどありません。全ての条件を完璧に見たし、かつ法の規制よりも厳格で良好な内部基準を設定し、素晴らしい環境を整備している会社はほとんどありえないと思います。

 

 ブラックという意味ではなく、完全な従業員ファーストの会社はあまりありませんよね。

 

 つまり、場合によっては従業員が交通事故を起こしても仕方がないような環境だった可能性もあります。そのため、使用者が被用者に対して、全額求償を求めるのが相当ではない場合もあります。

 

 そこで、判例では、「使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し右損害の賠償又は求償をすることができる」とされています(最判昭和51年7月8日民集30・7・689)。

 

 したがって、使用者が被用者に全額求償をすることができない場合もあります。

 

 逆求償

 また、民法上被用者が使用者に求償できる明示的な規定はありません。ですが、講学上、被用者から使用者に対して求償をすることができるとする説も多いです。これを逆求償といいます。

 個人的には先ほどの判例の基準で、使用者の求償が制限される場合があれば、逆求償も認められる可能性があると思います。

 

 総括

 以上のように使用者責任と求償の問題について検討してきました。従業員の人で交通事故を起こした場合に、会社から全面的な求償を請求されている場合、ケースによっては、全額会社に支払う必要がないこともあるので、弁護士に相談をすることが大切です。

 

 

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株式概論。会社法上の株式とは

 

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    法律的にみると株式とはなんでしょうか。そこで、今回は株式がどのようなものであるかざっくり検討してみたいと思います。

 

1  株式とは?

 まず、株式とは、細分化された割合的単位の形をとる株式会社の社員たる地位を言います。

 ここで重要なことは、社員たる地位という部分です。「社員」というと従業員という意味で一般的に用いられますが、会社法上の社員とは、出資者や所有者というようなニアンスで用いられています。そして、株式会社の出資者・所有者は株主です。つまり、株式会社の社員たる地位である株式を保有していることは、株主であることを基礎づける前提となります。

 

 具体的に言うと、会社を設立するときに、お金を出資して株式を取得すれば(厳密には引受けと言いますが)、株式会社の社員すなわち株主になります。また、証券会社を通じて、株式を買った場合も同様に、株主になります。

 この株主になることは、株式を取得したからですよね。という意味で株式は、株主であることを基礎づける前提ということになります。

 

 また、細分化された割合的単位という言葉を使っていますが、ざっくりいうと「誰であっても少額から出資をできる」という意味になります。

 そもそも、会社を設立運営するときに、自分のお金だけでまかなうことって難しいですよね。そこで、銀行から借り入れるか株式を発行してお金を集めようと考えることが多いです。

 

 この場合、1口1000万円で10口合計1億円集めるよりも、1口10万円で1000口合計1億集める方が資金を集めやすいことが多いです。

 

 その際に、特定の人のみしか発行株式を買えませんよというようにすべきではなく、だれでも買えるようにした方が、資金を集めやすいのでよいというのが根本的な発想です。また、この際に同じ株式を100株買った人同士で、同じ株式にもかかわらず、ある人は1株配当1円で、他方の人は、1株配当500円にするのは、平等に反しますよね。そこで、同じ株式を所有している株主を同じように扱わなくてはいけません。これを株主平等の原則(会社法109条)です。

 

 このようにだれでも株式を取得できるようするにすること、及び、株主平等の原則があることから、株式は、細分化された割合的単位である必要があるとされました。

 

 

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2  共益権と自益権

 では、具体的に株式にはどのような権利があるのでしょうか。株式には、大きく分けて二つの権利があります。共益権と自益権です。

 

 共益権とは、会社の経営に参加し、会社の監督是正をすることができる権利です。自益権は、会社からの利益を個人として受け取る権利です。

 

 かなり分かりずらいですよね。ここでは、株主と会社との関係を理解することが大切です。

 所有と経営の分離という概念があります。色々な説明が可能だと思います。

 

 先ほど、だれでも株主になれて少額の出資からでも可能とするために、株式という方法が用いられていると言いましたが、そうだとすると、株主は潜在的に多数になることが予定されていて、この全員を経営執行者例えば、取締役や代表取締役にするのはできるでしょうか。はっきり言って無理です。というのも例えば、株主が100人いてこれを全員経営執行者にしてしまうと、皆違うことを考えていて、直ぐに内部分裂を起こしてしまいます。そのため、株主全員を経営執行者にすることは、かえって株主の利益を害することになります。

 そこで、株主で話合って経営執行者を決めて、会社運営をみんなで決めた人に任せようということになりました。これが所有と経営の分離です。

 

 以上を前提に検討します。

 まず、共益権とは、会社の経営に参加し、監督是正する権利だと言いました。この共益権としては、株主総会における議決権や、株主総会決議の取消しの訴え(会社法831条)を提訴する権利等があります。

 つまり、議決権は、経営執行者である取締役を選任する決議をする時に、投票をする権利です。これは選任という方法によって、会社の経営に参加していることになります。

 また、取り消しの訴えについては、不正な決議を排除することで、監督是正を行うことになります。

 

 

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 他方、自益権とは、会社から利益を受け取ることができる権利です。自益権には代表的なものとして、剰余金配当請求権と残余財産分配請求権というものがあります。名前は難しいのですが、中身は非常に簡単です。

 剰余金配当請求権は、配当を受ける権利です。例えば、株式を買っていると、1年に一回配当を受けることがありますよね。例えば、1株1円で1000株を買っていたら、配当として1000円受け取っていますよね。これを基礎づけるのが剰余金配当請求権です。

 

 他方、残余財産分配請求権は、会社が清算をするときに余った財産を株主全員で分けることを基礎づける権利です。

 

 もっとも、ここでの残余財産の分配は、債権者等への支払いを負えて余った財産を分けるという意味のため、倒産をした場合には、分配されるべき財産がないこととなります。

 

3  株主優待制度

 以上のように株式が有する共益権と自益権との内容について検討してきました。では、株主優待制度とはどのようなものでしょうか。

 

 株主優待制度は、会社が株主に対して商品や金券等を提供するサービスです。しかし、この株主優待制度自体は、法律上明示的な規定があるわけではありません。そのため、自益権や共益権に基づいて自己への提供を会社に求めることはできません。

 

 具体的に言うと、自分が保有している株式で、例えば、「5000円分相当ギフトを9月にプレゼント」や「1000円分お食事券プレゼント」的なやつありますよね。他方、他の保有している株式銘柄については、「株主優待はありません」というものもありますよね。

 株式を売買している人なら良くご存じだと思いますが、この場合、「株主優待はありません」とする会社に対して、自益権に基づく要求をすることはできません。

 

 この場合、株主総会で「優待制度導入の議案」を提出し可決された場合には、会社はその議案に則り、株主優待制度を実行しなくてはいけなくなりますので、どうしても株主優待生制度を導入してほしい場合には、株主総会で頑張ることが大切です。

 

 では、株主優待制度を導入している会社の株式を保有しているときに、不満を感じたことはありませんか。

 多くの株式会社では、持ち株数に応じて優待の内容を変えています。例えば、100株保有の株主には「お食事券1000円分を1枚プレゼント」、300株の株主には「お食事券1000円分を3枚プレゼント」等です。

 このような優待は同じ株主なのに異なるプレゼントを受け取ることになるので、不平等感があるかもしれません。

 

 実はこれ、場合によっては違法になることがあります。

 

 そもそも、会社法109条1項で株主平等の原則を規定しています。同原則では、会社は、株主をその有する株式の内容及び数に応じて平等に扱わなくてはいけないことを規定しています。株主平等の原則は、株式の内容及び数に応じて判断されるものです。

 

 株主優待制度自体は、株式に当然含まれる法的制度ではないので、株主平等の原則が直ちに妥当するわけではありませんが、株主を基準に交付されるため、同原則が適用されるべきと言えます。そのため、株主優待制度の内容に合理性がない場合には、株主平等の原則に反し違法になります。

   

   小難しい感じに言っていますが、そもそも、株主優待制度は、株を買う時に考慮される事情ですよね。これを言い換えると、出資を促進するということになります。そのため、株主優待制度を用いることは会社にとって必要性があると言えます。また、100株よりも1000株出資してもらった方が会社にとっては資金集めになり、かつ、安定した株主の獲得につながるので、株式数に応じた別異取扱いをすべき必要性もあると言えます。

 

 ですが、例えば、100株から1000株までの株主については「お食事券100円分を1枚プレゼント」としておいて、1000株以上の株主については、「お食事券1万円分を10枚プレゼント」というような制度を作ってしまうと、相当な限度を超えて、不合理だと言えます。

 このようなケースでは、株主平等の原則に反する可能性が高いです。

 

4   総括

 以上のようにうんぬんかんぬん書いてきましたが、実質的にみれば個人投資家の人の多くは、売買差益と配当にしか興味がないと思います。私もぶっちゃけ言うと、保有している株式で、株主優待制度が導入されるよりも、10円株価が上がってくれた方が全然嬉しいです。なので、自益権とか共益権についてはあまり興味がないかもしれません。ですが、買っている株式会社で不当な財産の流出をしている場合や本来もらえるものが貰えなかったりするかもしれません。

 

 

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敷金の性質、賃貸借契約の終了時の敷金の検討

 

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 大学へ進学するときや転勤するときに、新規にマンションを借りるといることがありますよね。どこに住むか、「風呂とトイレは別がいい」、「オートロックじゃなくちゃやだ」等々人それぞれこだわりの条件というものがあると思います。

 

 いくつか物件を見ていざ契約となったときに、「敷金1か月分」等の項目がありますよね。「賃料のほかに何でお金を払わなくちゃいけないんだ!」と少し腑に落ちない気持ちになりますが、そもそも、敷金とは何でしょうか。今回は、賃貸借契約をする時に交付する敷金の意味について検討してみたいと思います。

 

 賃貸借契約と敷金の関係

 そもそも、賃貸借契約は、民法601条に規定されています。早速条文を見てみましょう。民法601条は、「賃貸借契約は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる」と規定しています。

 

 難しいですね。しかし、内容はさほど難しくありません。要するに、貸す人を賃貸人といい、借りる人を賃借人と言います。その上で、賃貸人は、賃借人に対して貸す物である賃借物の使用及び収益をさせることを約束して、その代わりに賃借人は賃貸人に賃料を支払うことを約束することで賃貸借契約が成立することになります。

 

 例えば、マンションを月に10万円の内容で借りたとします。賃貸人は、賃借人に対してマンションを引き渡して使用ができる状態にする必要があります。他方、賃借人は、賃貸人に対して、使わせてもらう代わりに、10万円を月々支払うということです。

 極論、マンションを借りていれば、普段やっていることです。

 

 少し余談ですが、マンションの換気扇が壊れたり水道にトラブルがあった場合には、意図的に壊したものでなければ、賃貸人が、その修繕をすべき義務を負っています。そのため、壊れたらまずは大家さんなどの賃貸人に直して下さいと請求することが大切です(民法606条)。

 また、自分で直した場合にも、掛かった費用分だけ、賃貸人に請求することができます(民法608条1項)。

 

 さて、本題に戻りますが、敷金契約は民法上どこに規定されているのでしょか。というと規定されていません。

 民法には、13個の契約が明示的に規定されており、この明示されている契約を典型契約と呼びます。他方、このような規定がない契約であっても、当事者間で合意すれば、法律が禁止していない範囲(強行法規)で、契約内容を決めて締結することができます。

 このような契約を非典型契約といい、敷金契約もこれに当たります。

 

 したがって、マンションを借りるときに賃貸借契約と敷金契約の二つの契約を理論上していることになります。

 

 

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 敷金の性質

 では、敷金契約とは、実際なぜ行うのでしょうか。そもそも、敷金とは、賃貸借契約を締結してから、終了し明け渡すまでの間に生じる賃借人の債務及びその履行を担保するためのものです。 

 

 例えば、賃料の滞納が起きた場合で、賃借人が賃料を払わないまま夜逃げしてしまったとします。この場合、賃貸人は敷金から滞納された賃料を補うことができます。このようなケースを想定して交付が要求されているのが敷金です。

(ちなみに、賃料を滞納した時に、敷金で補てんするかどうかは、賃貸人の自由なので、賃借人の側から賃貸人に対して補てん請求をすることはできません)

 また、実質的な機能としては、敷金として数か月分の賃料額を交付させることで、賃借人になる人が、お金があるかどうか判断するためという点もあげられます。

 

 つまり、月額10万円の賃料でマンションを契約するときに、10万円の敷金を合わせて交付するように要求した場合、借りるときに20万円賃借人は賃貸人に交付しなくてはいけません。これができない場合、賃貸借契約を締結しても途中で滞納が起きたりするので、大家からすると非常にめんどくさい状況になる可能性が高いです。

 

 そのため、借りる人が将来的に賃料を滞納しないということを判断するために、敷金の交付を要求していると言えます。逆にいうと、半年や一年などの比較的短い期間借りる場合には、わざわざ敷金という担保を取る必要性が必ずしも高くないので、不要としているところもあります。

 

 これが敷金のざっくりした意味になります。

 

 退去する場合

 では、退去する場合に、敷金はどうなるのでしょうか。敷金は、そもそも、契約が成立し終了後の明け渡しまでに、生じる賃借人の債務の履行を担保するものです。そのため、賃借人が滞りなく債務を履行をしている場合には、敷金をそのまま賃借人に返還されることになります。言い換えると、賃借人は、賃貸人に対して敷金返還請求権を有することになります。そのため、賃借人は、賃貸人に対して、「敷金10万円を返して下さい」と賃貸人に要求できます。ここは退去するときに絶対に忘れないで下さい。

 

 もっとも、この敷金返還請求権は、マンションの明け渡しによって初めて生じるため、退去前に「敷金を返して」とは請求できません。そのため、大家さんにカギを返してから請求するのが良いです(詳しくは、最判昭和49年9月2日民集28・6・1152を参照して下さい)。

 

 

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 総括

 以上のように敷金は、担保的な機能を有することになり大家や不動産管理会社にとっては、とても重要なものです。ですが、賃借人にとっては最初にお金を用意しなくてはいけないので、負担が大きいです。

 個人的には、自分自身の年収が高い場合や保証人を付けられ保証人の年収が高い場合には、大家さんと交渉して敷金をなくしてもらうか、または、3か月分を1か月分に減らしてもらう交渉をすることもありだと思います。

 

 ちょっと発展

 ここからは、興味のない方は読み飛ばし頂けると幸いです。

法律を勉強していると、敷金の処理って結構めんどくさいですよね。なので、ざっくり整理します。

 

  ①明渡義務と敷金返還義務の同時履行関係

 先ほどの判例の通り、明渡義務と敷金返還義務の同時履行関係は認められていません。明渡義務は、先履行となっています。ですが、個人的には、ケースにもよりますが当事者間の公平を考慮して、同時履行を認めた方が良いケースもあると思います。例えば、1年分の敷金を交付している場合で、かつ、賃借人が借りている物件を現在使用する必要性が顕著な場合で、契約終了原因が、賃料不払いで、その賃料不払い額が、敷金で担保できる範囲内の場合には、例外的に当事者間の公平を図り、同時履行関係を認めた方が妥当な解決を導ける気がします。

 

 ②賃貸人の変更の場合

 対抗力を賃借人が有する場合には、賃借物の譲渡により賃貸人が変更されますがこの場合、敷金は一度清算され残額がある場合には、譲受人である新賃貸人に承継されます。

 

 ③賃借人の変更の場合

 この場合、賃借人の変更によって、敷金は清算されて残額がある場合は、旧賃借人に返還されます。イメージとしては、旧賃借人を物上保証人と同じような地位に立たせることを回避するためです。 

 

 

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 誤想防衛。勘違いは許されない?刑法36条の話

 

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 勘違いはだれにでもあることです。「俺は、できるビジネスマンだ。まぁ周りも俺のことをイケてるということは知っていると思うけど、あえて謙虚に振る舞う俺は、すごく最高」とか思っている人が、実は、上司や同僚からは「仕事もしないのに鏡ばかり見て、本当に邪魔だな。声は大きいけど何を言っているのかわからない残念なやつ」と陰口を言われているかもしれません。

 

 また、気になる職場の女の子に「今度、是非ご飯行きましょう」と言われて、「おっ!俺に気があるな!モテルって本当につらい」とか思っていたら、女の子には婚約者がいて、ただの社交辞令だったとか。

 

 ある意味本当につらいです。

 

 ですが、道を歩いていて、チンピラに絡まれていると思ったら、実は単にアンケートの協力依頼だったにもかかわらず、相手を殴ってしまった場合はどうでしょうか。相手が怪我をすれば、客観的に見れば傷害罪(刑法204条)に当たります。

 

 ですが、そのアンケートを依頼してきた人がすごく体格が大きく、筋肉モリモリでドスの聞いた声で、「あんちゃん。早くやれや。はやく」的な感じで言ってきたらどう思いますか。 

 

 怖いですよね。「早くやらない」と、「はい。少ししか入っていませんが」と私だったらお財布を渡してしまいます。

 しかし、勇敢な人は殴り返すかもしれませんね。

 

 このようなアンケートの依頼といっても、様々な状況があります。

脅されていると勘違いして、防衛行為として殴った場合には、犯罪の成立が否定されることはないのでしょうか。そこで、今回は、誤想防衛という勘違い事例について検討したいと思います。

 

 故意のお話

 刑法上規定されている犯罪には、故意犯と過失犯というものがあります。

では、故意とは、何でしょうか。

 故意とは、自分のやっていることが犯罪だと認識していることです。これを細分化すると、生の事実の認識、構成要件該当性の認識ということになります。この二つが故意の内容であることについては、争いがありません。

 具体的にいうと、「人を殴ること」を認識している。これが生の事実の認識です。そして、「人を殴ることが暴行罪あるいは怪我をすれば傷害罪に該当すること」を認識していることが、構成要件該当性の認識です。

 

 と!難しく言っているのですが、簡単にいうと、自分が今何をしていて、それが犯罪だと知っていれば、故意が原則認められることになります。

 なので、人を殴っているのに今自分が何をしているのかわからないということはほとんどないです。また、それが「暴行あるいは傷害になるな」と思わない人はなかなかいないですよね。

 そのため、原則、人を殴れば故意があることになります。

 

 

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 違法性の意識可能性

 ですが、生きていれば殴ることについて悪いと思わないケースもあります。例えば、相手が殴りかかってきたり、ナイフで脅してきた場合です。このような侵害行為がある場合には、殴り返したとしても正当防衛(刑法36条1項)となり、犯罪が成立しないことになります。

 

 では、このような侵害行為がなかったのに、「殴られている」あるいは「脅されている」と勘違いして、殴り返した場合は、どうでしょうか。頭なの中の状態は、正当防衛の時と同様ですよね。

 

 このような場合に、殴ることが悪い事だとは思わない。すなわち、違法性の意識が欠如している場合もあります。このような違法性の意識が欠如している場合に犯罪は成立するのでしょうか。

 

 学説や判例の考え方

 多く学説や判例では、違法性の意識がない場合でも、犯罪は成立するとしています。この結論は、個人的には正しいと思います。

というのも、「ねぇねぇ」と話かけた時に、相手がおっちょこちょいでいきなり殴り掛かってきたらたまったものではありません。そのため、勘違いした人を直ちに、無罪放免とするのは一般感覚からも大きくずれます。

 なので、違法性の意識がない場合について、即座に無罪放免とするべきではありません。

 

 しかし、場合によっては犯罪を成立させることに躊躇する場面もあります。例えば、冒頭の例で、チンピラ風の強面の人が、ドスの聞いた声で、「あんちゃん。早くやれや。はやく」と言ってきた場合にはどうでしょうか。強面の人は、強要しているつもりも脅迫しているつもりも全くなくても、勘違いしちゃいますよね。このようなケースでは、殴ることが正当防衛であると思ってもやむを得ないような気がします(認定者によって個人差もありますが)。

 

 このようなやむを得ない状況、言い換えると、違法性の意識の可能性がない場合にも犯罪は成立するのでしょうか。ここでは、学説が非常に強く対立しています。

 

 一つの学説では、違法性の意識可能性は、故意の内容として必要なものであり、違法性の意識の可能性がない場合には、故意が認められず、単なる暴行であれば、犯罪は成立しないことになります。もっとも、相手が怪我をすれば、過失傷害罪(刑法209条:30万円以下の罰金又は科料になります)が成立する可能性はあります。

 

 他方、学説の中では、違法性の意識可能性は、故意の内容ではなく、責任阻却事由とする見解があります。

 責任阻却事由と難しい言葉を使っているのですが、要は、違法性の意識可能性がない場合には、そもそも、犯罪者としての責任を負う立場にないので、犯罪自体が成立しません。つまり、過失傷害罪も成立しません。

 

 以上が学説の代表的な対立ですが、判例はというとよく分らないというのが本当のところです。判例は、一貫して違法性の意識及びその可能性がないことを理由に故意は否定されないとしいていますが、正当な理由があれば、故意は認められないこともあるというようなざっくりした基準をとっています。

 そのため、ケースバイケースで故意が認定されたり、否定されたりするので、極論裁判をやってみないとわからないというのが現状です。

 

 

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 総括

 以上のように小難しい話をしてきたのですが、結局のところ勘違いして殴り返した多くのケースでは、そもそも、勘違いした人に落ち度がある場合が多いです。そのため、暴行罪や傷害罪が基本的には成立します。

 

 もっとも、勘違いして人を殴ることと、相手をいためつけてやろうと思い殴る場合では、同列に扱うべきではないと思います。そのため、量刑判断の中で勘違いしたということは、刑を軽くする方向性に働く材料となります。

 

 

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