5分で読める法律の豆知識

テレビや新聞などで政治から芸能スキャンダルまで幅広いニュースを見ます。しかし、法律のことについて詳しく書かれたものはあまりみません。なので自分で勉強してみました。個人的に面白いと思ったものだけ書くのであまり網羅性はありません。なので暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。

共謀共同正犯についての概観

 

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 刑法総論の中でも共犯は非常に難しいですよね。特に共謀共同正犯は概念として理解できても、その内容をしっかり理解するのはとても難しいと思います。そこで、今回は、共犯の中でも特に難しい共謀共同正犯についてざっくり全体を見ていきたいと思います。

 

1 共謀共同正犯とは何か?

 共謀共同正犯については、各基本書で色々な説明がなされていると思います。基本的な発想としては、実行行為者の背後にいる者を正犯として処罰するための法理というものがあります。この考え方がとても重要です。

 

 刑法第60条では「二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて共犯とする。」と規定されています。実行共同正犯の場合には、意思の連絡とそれに基づく実行行為が必要であるとされていますが、実行共同正犯の場合、二人以上の者が、意思の連絡に基づきそれぞれ実行行為を行っているため、正犯性(正犯意思)の問題は顕在化しません。他方、共謀共同正犯の場合は、共謀および共謀に基づく実行行為が必要であるとされていますが、この共謀は、通常、意思の連絡と正犯性(正犯意思)を包含した概念であり、この共謀に基づく実行が必要とされています。というのも、共謀共同正犯の場合、二人以上の者が犯罪に関与しているものの、一人の者は、実行行為を行っていないため、実行行為を行っていない者が、正犯と言えるのか、正犯性(正犯意思)の問題が顕在化することとなります。

 

 そのため、共謀共同正犯の成否の検討については、共謀(意思の連絡+正犯性(正犯意思))及び同共謀に基づく実行行為が必要ということになります。

 

2 練馬事件について

 共謀共同正犯が共同正犯の類型として認められるかにつき、初めて判示したのがいわゆる練馬事件です(最大判昭和33年5月28日(刑集12巻8号1718頁)。

 

 同判決では、共謀共同正犯が成立する要件として「2人以上の者が、特定の犯罪を行うため、共同意思の下に一体となって互いに他人の行為を利用し、各自の意思を実行に移すことを内容とする謀議をなし、よって犯罪を実行した事実が認められなければならない。したがって、右のような関係において共謀に参加した事実が認められる以上、直接実行行為に関与しない者でも他人の行為をいわば自己の手段として犯罪を行ったという意味において、その刑責の成立に差異を生ずると解すべき理由はない。」と判示しています。

 

 ここで重要なのは、「直接実行行為に関与しない者でも他人の行為をいわば自己の手段として犯罪を行ったという意味において、その刑責の成立に差異を生ずると解すべき理由はない。」と判示している部分です。

 

 つまり、あくまでも正犯として処罰するために、自己の手段として犯罪を行ったという点を重視し、教唆犯ではなく共謀共同正犯という共同正犯の類型を認めることとなります。その結果、共謀共同正犯の成立要件としての共謀とは、意思の連絡だけでなく、正犯性(正犯意思)も必要ということとなります。

 

 

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3 共謀共同正犯の検討における注意点

 各種資格試験等で、共謀共同正犯の検討をする際に、答案上、意思の連絡およびそれに基づく実行と書く人もいるかと思いますが、それですと、正犯性(正犯意思)の検討が抜け落ちる解答になっています。他方、共謀及び同共謀に基づく実行と書いている人でも、実質的に意思の連絡とそれに基づく実行行為のみを検討し、正犯性(正犯意思)を検討しない人もいます。また、共謀、正犯性、それに基づく実行という書き方をする人もいますが、この場合、共謀が何を指すのか判然としないという解答になります。

 

 そこで、答案を書く際には共謀がいかなる概念であるのか示した上で、意思の連絡と正犯性(正犯意思)を峻別しながら解答をすることが大切です。

 

 

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