5分で読める法律の豆知識

テレビや新聞などで政治から芸能スキャンダルまで幅広いニュースを見ます。しかし、法律のことについて詳しく書かれたものはあまりみません。なので自分で勉強してみました。個人的に面白いと思ったものだけ書くのであまり網羅性はありません。なので暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。

太っていると交通事故で不利?素因減額の考察

 

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 先日、友人が交通事故にあいました。友人は少し肥満体質で、持病の心臓病があるので、心配していたのですが、事故直後は軽度の怪我で済みました。しかし、時間が経って後遺症などが出てきた場合にどうするべきか心配していました。この場合、太っていたり、心臓病を持っていることは交通事故の損害賠償上どのような影響があるのでしょうか。少し、検討してみたいと思います。

 

 交通事故の損害賠償責任

 交通事故が起きた際に、加害者に損害賠償責任が生じることは多くの人がご存知だと思います。 

   この損害賠償責任とは、民法709条及び民法710条が根拠条文となっています。

 

 まず条文を見てみると、709条は「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と規定しています。また、710条は「他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条(709条)の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない」と規定しています。

 

 この条文、難しい規定ですよね。実はこの規定は、かなり解釈の対立がある条文です(損害を事実ととらえるか、法的評価を含んだ概念か、有名な差額説は、法的評価を含むという説を前提とすることになりますが)。

 

 ここでは、簡単に説明します、民法709条というのは、不法行為に基づく損害賠償責任が成立する要件を規定しています。この要件というのは、故意又は過失行為、損害、及び因果関係です。

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   交通事故の場合には、例えばスピード違反や、前方不注視がある運転行為が過失となります。

   損害とは、少し難しいのですが本来あるべき全体財産から過失行為によって損なわれた現在の財産状態との差というように考えられています。

   例えば、交通事故によって車が壊れてしまった場合などは、本来交通事故がなければ1000万円の全体財産があったとします。

 

 車が壊れて修理等が必要となり、修理に100万円かかったとします。その場合、現在の財産状態とは、900万円ということになり、本来あるべき財産状態は1000万円なので差額は100万円ということになります。

 

 しかし、これはすごく、めんどくさい計算の仕方なので、100万円の修理代がかかりました。そのため、端的に100万円の修理代が損害と考えて良いです。(厳密には、経済的全損の場合は、車両時価額を基準に車両損害は算定されますが、ここでは触れません。)

 

 次に710条は「財産以外の損害」と規定していますが、一般的には、慰謝料の規定です。慰謝料とは、精神的な損害の金銭賠償を言います。

 また、因果関係とは、過失行為と損害のと間の因果関係という意味になります。

 

 以上をまとめると、例えば、スピード違反のまま運転して(過失行為)、これによって(因果関係)歩行者がひかれてしまい怪我をして治療費が発生した場合(損害)、運転していた人は損害を賠償しなくてはいけなくなります。

 

 

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 過失割合とは

 このように損害賠償責任が成立するとして、過失割合という言葉を聞いたことがある人は多いと思います。この過失割合とは何でしょうか。

 

 民法722条2項を見てみます。同条は「被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる」と規定しています。

 

 そもそも、不法行為に基づく損害賠償責任の趣旨は、生じた損害を公平に当事者に負担させる点にあります。なので、例えば、前方不注視のまま運転していて、被害者が飛び出してきたとします。

 

 被害者が飛び出したせいで交通事故が発生したともこのケースではいえますよね。この場合、加害者が被害者の生じた損害を全額賠償させるというのは不公平です。なので、運転手の過失が7割で、被害者の過失が3割という形で、調整するのが妥当ということになります。この過失割合の調整条文が722条2項です。

 

 

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 太っていた場合はどうか?

 太っている場合は、いわゆる素因というものが問題となります。素因とは、身体又は精神的な障害等をもっている場合に、損害賠償の額で考慮される要素です。

 

   例えば、本来ならば全治1か月の怪我であったのに特殊な身体的特徴がある場合などに全治3か月になってしまった場合、2か月治療期間が増えたことは被害者の要素が起因しているとして、1か月分の治療費のみを加害者が支払うべきという考え方です。

 

 しかし、結論から言うと、太っているだけでは、素因として損害賠償額が減ることはありません。というのも、判例は身体的な特徴が「疾患」という場合以外、素因として認定していません(最判平成4年6月25日民集46・4・400)。そのため、単に太っていて、治療期間が延びただけでは、損害賠償額が減額されることはありません。

 

持病がある場合はどうか?

 持病がある場合には、「疾患」と認定されてしまうケースが多くなります。例えば、心臓病やリュウマチをもっている場合です。

 しかし、ここで注意すべきなのでは、持病をもっていて交通事故にあえばすぐに減額されるということにはなりません。

 

 つまり、例えば、心臓病を持っていたとして、怪我をした部分が足や肩だったとします。足や肩の負傷が心臓病を持っていたことで通常よりも重症になることは基本的にはないです。そのため、この場合減額されることはありません。

 

 また、リュウマチなどの持病をもっていても、それが原因で重症になったと認定されなければ、足や肩を怪我していいても減額をされることはありません。

 

 

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 要するに

 要するに、太っているだけでは、損害賠償額は減額されません。また、持病があり、これが「疾患」に当たるとしても、その持病が原因で重症になったと認定されない限りは、減額されることはありません。なので、加害者の保険会社から例えば「あなたは太っているので、賠償額を減らします」と言われても、その主張は本来認められないものなので、争った方が良いです。

 

 また、「持病があるので減額します」と言われた場合であっても、その持病が交通事故により負傷した部位と異なる場合には、素因減額が認められない可能性が高いです。

 

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