5分で読める法律の豆知識

テレビや新聞などで政治から芸能スキャンダルまで幅広いニュースを見ます。しかし、法律のことについて詳しく書かれたものはあまりみません。なので自分で勉強してみました。個人的に面白いと思ったものだけ書くのであまり網羅性はありません。なので暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。

伝聞例外!刑訴法321条1項2号前段の供述不能と退去強制の問題

 

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 刑訴法の中でも伝聞証拠の問題は難しいですよね。今回は、伝聞例外の有名論点である刑訴法321条1項2号前段の供述不能の問題、特に、退去強制の問題について検討をしてみたいと思います。

 

 

1 伝聞例外とは

 まず、刑訴法320条に規定されている伝聞証拠に該当する場合、原則、証拠能力を有しないこととなります。

 

 伝聞証拠該当性の問題については別記事で扱いますが、反対尋問権の保障や直接主義の観点から、信用性テストを経ていないため、証拠能力が原則否定されます。

 

 もっとも、刑訴法321条以下に規定されている伝聞例外の要件を満たす場合には、例外的に証拠能力が認められることとなります。これが伝聞例外です。

 

 ここで、刑訴法321条1項2号前段では、伝聞例外として、供述不能の要件を規定しています。

 

 すなわち、同法条項号は、「検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき」と規定しています。

 

 そのため、同供述不能の要件を満たし、また、刑訴法321条1項2号ただし書の特信情況を満たす場合には、伝聞証拠であっても例外的に、証拠とすることができることとなります。

 

 では、検察官が、かかる要件を充足するように意図的に証人を退去強制させた場合等でも、同要件を満たすと言えるのかが問題となります。

 

 この問題について、一定の判断を示したのが、最高裁平成7年6月20日判決です。

 

 

2 判例の判断基準について

 まず、上記判例は、抽象的にではありますが、刑訴法320条の趣旨、同法321条1項2号前段の規定、憲法37条2項が証人審問権を保障した趣旨等考慮して、検察官面前調書が作成され証拠請求されるに至った事情や、供述者が国外へ退去供された事由等を考慮し、その結果、いついかる場合も、証拠能力が認められるとすることには疑義があると判示しました。

 

 もっとも、上記判例は、退去強制は、出入国の公正な管理という行政目的を達成するために、入国管理当局が出入国管理及び難民認定法に基づき一定の要件の下に外国人を強制的に国外に退去させる行政処分であることを考慮して、検察官面前調書を証拠請求することが手続的正義の観点から公正さを欠く場合に、証拠能力が否定される場合がある旨を判示しました。

 

 

3 具体的な検討

 そもそも、検察官は出入国管理を行っておらず、退去強制に関与することができる権限を持っていません。そのため、検察官が関与できない事項により、検察官面前調書の証拠能力が否定されることは原則否定されるべきであると考えられます。

 

そのため、判例が上記のとおり、手続的正義の観点から公正さを欠く場合というように例外的な事由がない限り、刑訴法321条1項2号前段の要件を満たす旨の判断をしたことは適切であると言えます。

 

 もっとも、判例は、手続的正義の観点から公正さを欠く例として、検察官が、供述者が退去強制等により国外に退去させられ公判期日等に供述できなくなることを認識しながら殊更にそのような事態を利用しようとした場合、また、証人尋問の決定をしているにもかかわらず強制送還が行われた場合等を挙げています。

 

 判例の例示は一見もっともだとも思いますが、結局のところ殊更に利用した場合とは、具体的にどのような場合か定かではありません。

 

 また、証人尋問の決定があるにもかかわらず、入国管理当局が、強制送還をする場合も基本的にはあまり想定できません。

 

 そのため、今後の個別具体的な事案についての裁判所の判断を待つしかありませんが、結果的に、退去強制がされた場合に、刑訴法321条1項2号前段の要件を満たさなくなる場合は、ほとんど起こり得ず、極めて例外的な場合であると考えられます。

 

 

 

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