5分で読める法律の豆知識

テレビや新聞などで政治から芸能スキャンダルまで幅広いニュースを見ます。しかし、法律のことについて詳しく書かれたものはあまりみません。なので自分で勉強してみました。個人的に面白いと思ったものだけ書くのであまり網羅性はありません。なので暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。

エックス線検査。刑事訴訟法の強制処分の考え方

 

 刑事訴訟法を勉強していると、一番最初に出てくる論点が、強制処分該当性と任意捜査の限界ですよね。

 特に、最決平成21年9月28日のエックス線検査の判例等については少し理解が難しいと思います。

 

 そこで、今回は、上記判例を含めて、強制処分と任意往査限界について少し検討してみようと思います。

 

 

1 そもそも、強制処分と任意捜査の限界とは?

 まず、刑事訴訟第197条1項には、以下のとおり規定されています。

 「捜査については、その目的を達するため必要な取調べをすることができる。但し、強制の処分は、この法律に特別の定めがある場合でなければ、これをすることができない。」

 

 

 同法1項但し書きは、いわゆる強制処分法定主義を規定していると言われてます。

 ここで、間違えやすいので、令状主義との関係について簡単に説明します。

 

 そもそも、捜査機関は、原則、捜査の必要性がある限り、捜査を行うことができます。もっとも、人権侵害の程度が強い捜査手法については、予め国民の意思を反映し、法律上に規定しているものに限って、捜査を行うことができます。

 つまり、そもそも、人権侵害の程度が強い捜査については、法律上に規定がなければ行うことができません。

 これが、強制処分法定主義です。

 

 他方、令状主義というには、法律上の規定がある強制処分を行うためには、適切な裁判所のチェックを受けた上で、令状を発付(許可)してもらわなければならないという概念です。

 

 したがって、強制処分法定主義は立法上の問題で、令状主義は司法上の問題であると言えます。

 

 では、強制処分に当たるか否かは、どのように判断されるのでしょうか。

 

 これについて判示した有名判例が、最決51年3月16日判決です。

 同判決では、強制処分とは「個人の意思を制圧し、身体、住居、財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など、特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない手段を意味するもの」と判示しています。

 

 同判例の「身体」、「住居」、「財産」というのは、刑事訴訟法に規定されている逮捕、捜索、差押えの被対象者の法益を想定しているといわれていますが、ここでは説明を割愛します。

 

 以上の前提に、強制処分該当性を審査した上で、任意捜査の限界を判断していく流れになりますが、令状主義と強制処分法定主義の関係を考慮すると、以下の思考図で検討していくのが良いと考えられます。

 

2 思考図式について

 強制処分該当性

     強制処分に該当する

     ①明文上の定めがない・・・・・・強制処分法定主義に違反する

     ②明文上の定めはある(例)捜索))・・・強制処分法定主義に違反せず

      しかし、令状がない・・・・・・令状主義違反

 ↓

任意捜査の限界

    必要性・緊急性VS権利侵害内容程度=全体として相当か?

 

3 最決平成21年9月28日について

 以上を踏まえて、エックス線検査についてはどのように考えるべきでしょうか?

 この点について、最決平成21年9月28日は、「その射影によって荷物の内容物の形状や材質をうかがい知ることができる上、内容物によってはその品物等を相当程度具体的に特定することも可能であって、荷送人や荷受人の内容物に対するプライバシー等を大きく侵害するものであるから、検証としての性質を有する強制処分に当たるものと解される。」と判示しました。

 

 そして、同判例では、検査許可状がなかったことから違法と判断しています。

 すなわち、検証である以上、強制処分法定主義には違反しませんでしたが、令状がないので令状主義に違反となると判断したと言えます。

 

4 注意点

 以上の判例では、エックス線検査の精度が高いことが判断要素として重視されています。

 そのため、エックス線検査であっても、精度の低い機器で行っていた場合には、強制処分に該当しない可能性があります(なお、任意処分の限界については論じる必要がありますが。)