憲法13条後段の幸福追求権って自己決定権とかプライバシー権とか色々な権利がありますよね。
特に、プライバシー権ってどのような情報をどのような範囲で保護しているのか、考え出すときりがありません。
そこで、今回は、プライバシー権により保護される対象ついて、少し考えてみたいと思います。
1 プライバシー権って何?
プライバシー権ってよく耳にする言葉ですが、結局のところどのような権利であるかについては、講学上様々な見解の対立があります。
しかし、簡潔に述べるならば、プライバシー権とは、自らの私的事項をみだりに公開されないことを中核としつつ、同私的事項に関する情報の収集管理等を行うことを根拠付ける権利であると言えます。
もっとも、私的な事項に関する情報といっても、病歴やDNA情報などの自らの人格に直接かかわる秘匿性の高い情報から、氏名、住所、電話番号等の日常よく自らが開示している情報まで様々なものがあります。
そこで、このような氏名・住所・電話番号等の情報がプライバシー権により保護されるかが問題となります。この点につき判示したのが最判平成15年9月12日です。
2 最判平成15年9月12日判決
同判決は、氏名、住所、電話番号等の個人情報について「本人が、自己が欲しない他者にみだりにこれを開示されたくないと考えることが自然なことであり、そのことへの期待は保護されるべきものである」と判示し、同個人情報が法的保護の対象となること、及び慎重な取り扱いが要求され、みだりにこれを他者に開示することは許されない旨を判示しました。
3 対象情報の重要性
以上のとおり氏名、住所、電話番号等の情報は、プライバシー権により保護されます。
これって一般的な感覚だと当たり前の様な気がしますが、憲法の学習においては、重要な視点があります。
いわゆる三段階審査を採用した場合、保護範囲または保護領域を論ずることになりますが、そもそも、保護されるかという問題と、保護されるとしてどの程度保護されるのかという視点が重要となります(審査密度の権利の重要性とリンクしてくる話しでもあります。)
ここで、重要なのは、最判平成15年9月12日は、上記個人情報について「単純な情報であって、その限りにおいては、秘匿されるべき必要性が必ずしも高いものではない」と判示して、上記のとおり「期待は保護されるべき」と判示しています。
つまり、上記情報がプライバシー権により保護されるとしても、その保護の程度は、病歴やDNA等の情報と同程度保護されるわけではないと考えられます。
したがって、憲法の答案を書く際には、対象となる情報が何であるか、またその情報がどの程度保護されるのかを意識しながら論ずることが大切であると言えます。