5分で読める法律の豆知識

テレビや新聞などで政治から芸能スキャンダルまで幅広いニュースを見ます。しかし、法律のことについて詳しく書かれたものはあまりみません。なので自分で勉強してみました。個人的に面白いと思ったものだけ書くのであまり網羅性はありません。なので暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。

会社法361条の取締役報酬における退職慰労金について

 

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   株式会社と取締役の関係は、委任関係であるとされています(会社法330条)。民法上の委任契約については原則無報酬とされていますが、会社法では報酬を予定した規定として会社法第361条第1項があります。同条項は、いわゆるお手盛り防止の趣旨として規定されたものであるとされています。すなわち、取締役が自分自身の報酬を自分で決定することで、過大な報酬を定め、不当に会社財産を流出させ、株主及び会社債権者を害する事態が想定され、係る事態を防止するために定められた規定であるとされています。

 

 これらは主に報酬を想定して規定されたものですが、退職慰労金についてはどのように考えるべきでしょうか。

 

1  退職慰労金について

 そもそも、退職慰労金については、取締役が退任するにあたっての今までの感謝というようなニアンスが含まれていると思います。そうだとすると、一見、報酬などとは一線を画する金銭の支払とも思えます。しかし、一般的には、取締役の在任期間中の職務に対する後払い的なものと考えられており、最判昭和39年12月11日(民集18巻10号2143頁)では、退職慰労金についても、在職期間中における職務執行の対価として支給されるものである限り、報酬に含まれるとされています。その結果、退職慰労金についても、定款に定めがない限り「株主総会の決議をもってこれを定めるべきものであり、無条件に取締役会の決定に一任することは許されない」と同判決は判示しています。その上で、同判決では、株主総会で一定の枠が決定されており、その枠の中で、取締役会が具体的な退職慰労金の額を決定することは許される旨を判示しています。

 

 

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2  注意が必要なこと

 会社法第361条第1項では、取締役の報酬について、定款又は株主総会の決議でこれを決定する旨が定められています。そして、額が決まっていない場合には、その算定方法を定款又は株主総会の決議で決定することとなります。そのため、これらの決定により算定方法を設けた上で、取締役会が具体的な額を決定することは、同条項に違反せず、適法であるということになります。

 

 もっとも、注意が必要なのは、先に挙げたとおり会社法第361条第1項の趣旨が、お手盛り防止の趣旨にある以上、算定方法が多様な要素を盛り込みすぎ、実質的に基準として機能をしていないような場合には、取締役会が自由に報酬を決定することができてしまうため、同条項の趣旨に反し、報酬の決定が無効となる可能性があります。

 そのため、退職慰労金の算定方法を定める場合にも、基準としての明確性等が求められるます。

 

 しかし、一般の会社では、報酬基準についての見直しを定期的に行っていても、退職慰労金についての見直しがなされていない場合も多くあります。そのため、基準としての明確性を欠く場合や数十年前に規定した退職慰労金の算定方法が残ってしまっており、実際に退職慰労金を決定する場合に困るという事態も起きる可能性があります。

 そのため、報酬基準のみならず退職慰労金の基準についても定期的な見直しをすることが大切です。

 

 

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