会社の方の勉強って大変ですよね。
条文を読んでも、基本書やテキストを読んでいても、なかなか頭に入ってこないです。
組織再編の章はもちろんのこと、株式の章も機関の章も難しいです。
今回は、会社法上の有名論点である株主総会決議取消しの訴えにおいて、他の株主への招集通知漏れがあった場合にこれを取消し事由として主張することができるか?
という問題について少し検討してみたいと思います。
1 株主総会決議取消しの訴えとは?
まず、会社法831条1項では、各号に取消事由を規定しています。
①株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき
②株主総会の決議の内容が定款に違反するとき。
③株主総会の決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって著しく不当な決議がされたとき
また、株主総会を開催する場合には、取締役は、株主に対して、原則、2週間前までに招集通知を送らなければならないとされています(会社法299条)。
では、株主総会が終わった後に決議取消しの訴えを提起する際に、自分とは直接関係がない他の株主に対して、上記招集通知を送っていなかったことを取消事由として主張することができるのでしょうか?
2 判例及び考え方
この点について、最判昭和42年9月28日は「株主は自己に対する株主総会招集手続きに瑕疵がなくとも、他の株主に対する招集手続に瑕疵のある場合には、決議取消の訴を提起し得る」と判示しました。
この判例の判示については、しっくりこない人もいるか思います。
ざっくり説明します。
この点、決議取消しの訴えって、他の法律と比較してかなり特殊ではあります。
ご存じのとおり行政訴訟の場合、手続き違反は原則、取消事由にならないですよね。その理由は、取消しても手続充足すれば行政処分ができるので、意味ないからです。
ただ、会社法では、上記のとおり、①及び③のとおり、手続の違反を取消事由として規定しています。
その趣旨は、株主総会は株式会社の最高の意思決定機関であり、同機関における意思決定プロセスを担保する点にあります。
簡単にいうと、手続違反が取消事由にならなかった場合、取締役は手続き守らなくても、総会決議取消されないので、法令自体守らなくなり、引いては、会社の最高意思決定機関の決定プロセスが阻害され、その結果、株主が害されてしまうので、これを防止しようということです。
そのような理由から、会社法では手続違反についても取消事由として規定しました。
この点、他の株主への招集通知漏れについては、提訴する株主からすると一見自身と関係がないように見えますが、株主総会全体で見たときに、公正な決議が妨げられたという意味では、提訴する株主も関係があります。
また、そもそも、上記訴訟自体が株主の共同意思の実現のためにやるという性質もあることに鑑みると、取消事由として主張できるというのは妥当な結論だと言えます。
3 最後に
以上のように検討してきましたが、自分自身と直接関係がない手続違反について、いかなる事由であっても当然主張することができるかというと何とも言えません。
また、手続違反については、取消事由とはなるとはなりますが、裁量棄却される(会社法831条2項)可能性が高いです。
したがって、現実問題として、取消事由を理由に決議取消し訴訟をやる実益がある場合は限られますので、提訴する前にしっかり考えることが大切です。
裁量棄却については、また別の機会に検討してみたいと思います。