5分で読める法律の豆知識

テレビや新聞などで政治から芸能スキャンダルまで幅広いニュースを見ます。しかし、法律のことについて詳しく書かれたものはあまりみません。なので自分で勉強してみました。個人的に面白いと思ったものだけ書くのであまり網羅性はありません。なので暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。

所有権概論 物権的妨害排除請求権。物権的返還請求権など

 

 

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 日常生活していると、「それ私の物なのに勝手に使われている!」というようなことってありますよね。例えば、友人が家に遊びに来てゲームや雑誌を貸して欲しいと言ったので、貸したところ、そのままになってしまったという経験を持っている方は多いと思います。その友人に貸した物は自分の所有物です。それなのに借りパクされてそのままになってしまうと、とてもイライラしますよね。そこで、今回は、そもそも、所有権とはどのような権利か、また、どのような法的根拠に基づいて友人に貸した物を返せと要求できるのか検討してみたいと思います。

 

 そもそも所有権とは

 そもそも、所有権とは、何でしょうか。まずは、条文を見てみましょう。民法206条第1項は、「所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する」と規定しています。

 この条文も分かるようで分からない条文ですよね。でずが、具体的にイメージすると分りやすいです。

 

 例えば、近所の家電製品を売っているお店に行きます。最近、私はメタボが気になるので、ウォーキングマシーンを10万円で購入しました。ところが、3日経過して効果が表れないので、とりあえず、放置をしていました。その1か月後、友人がこのウォーキングマシーンを貸して欲しいと言ったので、月3000円の賃料を払うとの約束で、友人に貸しました。 

 

 すると、友人は、1か月で10キロ体重が落ち大変気に入ったので、売って欲しいと言いました。自分はメタボなままなのに友人だけ痩せて、私は少しイラッとしましたが、友人が7万円でというので、気分が良くなり、7万円で友人に売りました。

 

 これが所有権です!

 

 「どこがだよ!」と突っ込まれると思うので、順を追って分析してみましょう。

まず、ウォーキングマシーンを買った時点で、このマシーンの所有権を私は取得します。つまり、私が、ウォーキングマシーンの所有者です。そして、これを三日間使いましたが、このウォーキングマシーンを使う権利は所有者である私がもっています。これが、民法206条第1項の「使用」をする権利です。

 

 そして、その後、私は、友人に月3000円で、このウォーキングマシーンを貸しています。つまり、所有物を貸すことで利益を受けていることになります。この利益を受ける権利は、民法206条第1項の「収益」をする権利に当たりました。

 

 また、「処分」という単語を見ると、一般的に考えると、破棄することや壊すことをイメージすると思いますが、実は法律的な意味としては、このような破棄以外にも、譲渡することや抵当権等の権利設定をすることも含んでいます。

 

 そのため、私は、友人に7万円でウォーキングマシーンを譲渡(売却)していますが、これは、「処分」に当たり、民法206条第1項の「処分」する権利に基づくものです。

 

 さらに、このような使用収益処分は、所有者である私にしか原則できない行為です。そのため、所有権とは、直接物を支配し、排他的に使用収益処分する権利ということになります。

 

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 第三者が使っている場合等はどうするの?

 では、所有権の内容が、物を直接支配して、排他的に使用、収益処分することができるものだと分かった上で、第三者が使用等をしている場合には、どうすれば良いでしょうか。この問題は、三つに分けて考察するのが有益です。

 

 物権的妨害予防請求権

 まず、自分が土地を所有し、その上に家を建てて住んでいたとします。マイホームを建てて数年したところ、自分の家と隣の家を区切る壁が崩れそうになっていたとします。そして、その壁は隣の家の人の物ですが、自分の家の方に崩れそうなのに隣の家の人は放置をしていたとします。

この場合、困りますよね。特に小さい子供等がいると危なくて外で遊ばせることもためらってしまいます。

 このようなケースを分析すると、自分の所有している土地・家が危険にさらされていますよね。言い換えると、壁が崩れた場合、土地又は家が侵害される危険性が生じています。

 

 このような場合に、隣の家の人に壁を補修する等の危険を除去する措置を要求することができます。この要求の根拠を所有権に基づく物権的妨害予防請求権と言います。

 

 物権的妨害排除請求権

 では、上記の例をベースにして、今度は壁が崩れて自分の土地になだれ込んでしまった場合には、どうするべきでしょうか。この場合、崩れた壁を撤去するように隣人に要求することができます。この要求の根拠を所有権に基づく物権的妨害排除請求権と言います。

 

 物権的返還請求権

 では、最後に、第三者が物を使用している場合には、どうすればよいでしょうか。

この場合、自分が所有している物を使用することができなくなってしまいます。そして、自分の手元から離れて第三者の下にあるので、使用をする前提として、それを自分の下に戻す、つまり、占有状態を回復する必要があります。

 

 と!難しく言っているのですが、要するに、「返して!」と要求することができるかどうかの問題になります。この場合は、二つに分ける必要があります。

 

 一つ目は、自分が第三者に貸している場合です。この場合は、貸しているため、賃貸借契約や使用貸借契約を結んでいることになります。要するに第三者は、自分が所有しているものを占有使用する権利を有していることとなります。そのため、返せという請求はできないこととなります。

 

 逆に、二つ目は、勝手に第三者が使用している場合です。この場合不法占有・不法使用となるため、「返せ」と要求することは可能です。この要求の根拠を所有権に基づく物権的返還請求権と言います。

 

 以上のように所有権には、3パターンに分けて第三者に対して要求することができる性質があります。

 

 借りパクしている人には?

 ここまで読んで頂くと、借りパクしている人であっても、貸している以上、「返せ」と要求できないように思いますよね。

 実は、そうではないんです。余裕で返せと請求できます。

 

 先ほど、私は、賃貸借契約や使用貸借契約を結んでいる場合、人に返せと要求できないと言いました。しかし、これが終了している、あるいは契約に基づいて返す義務がある場合には、当然返還請求をすることは可能です。

 まず、賃貸借契約と使用貸借契約では、全く内容が異なります。

 

 つまり、賃貸借契約は、物を貸した時にその対価としてお金等を支払って貰っている場合の契約ですが、通常友人にゲームや雑誌を貸す時にお金を払って貰うということはあまりないと思います。

 

 そのため、この借りパクの多くのケースは、使用貸借契約を前提に貸していることになります。そして、借りパクの多くの場合では、使用貸借契約に基づき返還しなければならない時期を過ぎています。条文をみてみましょう。

 

 民法575条第1項では、「借主は、契約に定めた時期に、借用物を返還しなければならない。」と規定しています。つまり、ゲームを貸した時に、「1週間したら返す」的な約束をお互いでしている時は、1週間経過した時点で借りた人は、返さなくてはいけない義務があります。

 

 そして、約束をしていない場合には、民法575条第2項で「借主は、契約に定められた目的に従い使用及び収益を終わった時に、返還しなければならない。ただし、その使用及び収益を終わる前であっても、使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、貸主は、直ちに返還を請求することができる」と規定されています。

 

 つまり、期間を定めていない場合でも、ゲームを貸した場合には、クリアした時点で、あるいは、クリアしなくても通常クリアに必要な期間を経過した時点でゲームを返す義務が生じることになります。

 

 すなわち、返す日を決めていた場合、あるいは、必要な期間を経過した時点で、借りた人は返す義務を負うことになります。

 

 この場合、「返して」と要求すること可能です。そして、厳密には二つの要求方法があります。一つは、先ほどの所有権に基づく物権的返還請求としての「返して」要求です。そして、二つ目は、使用貸借契約に基づく返還請求としての「返して」要求です。

 

 どちらもせよ、「返して」と言えることに変わりはありません。

(なお、当然要件事実は変わります。)

 

 総括

 このように借りパクされている場合には、多くのケースで返す約束の日を過ぎているか、または、通常返さなくていけない期間を経過しているので、もし自分が借りパクされている場合には、元気な声で「返して」と要求するのが得策です。

 

 

プラスアルファー

 ここからは特につまらないので、読み飛ばして頂けるとありがたいです。

 法律を勉強する上で、物権的返還請求権と物権的妨害排除請求権の違いはかなり重要ですが、今一わからないとういう時がありますよね。結構単純で、占有自体が全面的に侵奪されている場合には、返還請求権です。それ以外の侵害現在化の場面は、妨害排除請求権です(登記の抹消などや、一部占有侵奪の場合には、妨害排除請求となります。)

 

 また、ここは凄く間違えやすいのですが、抵当物件に第三者が不法占拠している場合に、抵当権者が自己への明け渡しを請求するときに、抵当権に基づく物権的返還請求権とするのは間違えです。というのも抵当権は、非占有担保物権なので、占有権限を有しない担保物権です。それなのに、占有権があることを前提にする返還請求をすることができるとするのは矛盾していることになります。

 この場合は、抵当権に基づく物権的妨害排除請求権になります。今一度判例をご確認して頂ければ幸いです。

 要するに、根拠となる権利の性質と侵害状態の分析で、物権的請求権を決めるというイメージが良いと思います。

 

 

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