5分で読める法律の豆知識

テレビや新聞などで政治から芸能スキャンダルまで幅広いニュースを見ます。しかし、法律のことについて詳しく書かれたものはあまりみません。なので自分で勉強してみました。個人的に面白いと思ったものだけ書くのであまり網羅性はありません。なので暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。

株式概論。会社法上の株式とは

 

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    法律的にみると株式とはなんでしょうか。そこで、今回は株式がどのようなものであるかざっくり検討してみたいと思います。

 

1  株式とは?

 まず、株式とは、細分化された割合的単位の形をとる株式会社の社員たる地位を言います。

 ここで重要なことは、社員たる地位という部分です。「社員」というと従業員という意味で一般的に用いられますが、会社法上の社員とは、出資者や所有者というようなニアンスで用いられています。そして、株式会社の出資者・所有者は株主です。つまり、株式会社の社員たる地位である株式を保有していることは、株主であることを基礎づける前提となります。

 

 具体的に言うと、会社を設立するときに、お金を出資して株式を取得すれば(厳密には引受けと言いますが)、株式会社の社員すなわち株主になります。また、証券会社を通じて、株式を買った場合も同様に、株主になります。

 この株主になることは、株式を取得したからですよね。という意味で株式は、株主であることを基礎づける前提ということになります。

 

 また、細分化された割合的単位という言葉を使っていますが、ざっくりいうと「誰であっても少額から出資をできる」という意味になります。

 そもそも、会社を設立運営するときに、自分のお金だけでまかなうことって難しいですよね。そこで、銀行から借り入れるか株式を発行してお金を集めようと考えることが多いです。

 

 この場合、1口1000万円で10口合計1億円集めるよりも、1口10万円で1000口合計1億集める方が資金を集めやすいことが多いです。

 

 その際に、特定の人のみしか発行株式を買えませんよというようにすべきではなく、だれでも買えるようにした方が、資金を集めやすいのでよいというのが根本的な発想です。また、この際に同じ株式を100株買った人同士で、同じ株式にもかかわらず、ある人は1株配当1円で、他方の人は、1株配当500円にするのは、平等に反しますよね。そこで、同じ株式を所有している株主を同じように扱わなくてはいけません。これを株主平等の原則(会社法109条)です。

 

 このようにだれでも株式を取得できるようするにすること、及び、株主平等の原則があることから、株式は、細分化された割合的単位である必要があるとされました。

 

 

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2  共益権と自益権

 では、具体的に株式にはどのような権利があるのでしょうか。株式には、大きく分けて二つの権利があります。共益権と自益権です。

 

 共益権とは、会社の経営に参加し、会社の監督是正をすることができる権利です。自益権は、会社からの利益を個人として受け取る権利です。

 

 かなり分かりずらいですよね。ここでは、株主と会社との関係を理解することが大切です。

 所有と経営の分離という概念があります。色々な説明が可能だと思います。

 

 先ほど、だれでも株主になれて少額の出資からでも可能とするために、株式という方法が用いられていると言いましたが、そうだとすると、株主は潜在的に多数になることが予定されていて、この全員を経営執行者例えば、取締役や代表取締役にするのはできるでしょうか。はっきり言って無理です。というのも例えば、株主が100人いてこれを全員経営執行者にしてしまうと、皆違うことを考えていて、直ぐに内部分裂を起こしてしまいます。そのため、株主全員を経営執行者にすることは、かえって株主の利益を害することになります。

 そこで、株主で話合って経営執行者を決めて、会社運営をみんなで決めた人に任せようということになりました。これが所有と経営の分離です。

 

 以上を前提に検討します。

 まず、共益権とは、会社の経営に参加し、監督是正する権利だと言いました。この共益権としては、株主総会における議決権や、株主総会決議の取消しの訴え(会社法831条)を提訴する権利等があります。

 つまり、議決権は、経営執行者である取締役を選任する決議をする時に、投票をする権利です。これは選任という方法によって、会社の経営に参加していることになります。

 また、取り消しの訴えについては、不正な決議を排除することで、監督是正を行うことになります。

 

 

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 他方、自益権とは、会社から利益を受け取ることができる権利です。自益権には代表的なものとして、剰余金配当請求権と残余財産分配請求権というものがあります。名前は難しいのですが、中身は非常に簡単です。

 剰余金配当請求権は、配当を受ける権利です。例えば、株式を買っていると、1年に一回配当を受けることがありますよね。例えば、1株1円で1000株を買っていたら、配当として1000円受け取っていますよね。これを基礎づけるのが剰余金配当請求権です。

 

 他方、残余財産分配請求権は、会社が清算をするときに余った財産を株主全員で分けることを基礎づける権利です。

 

 もっとも、ここでの残余財産の分配は、債権者等への支払いを負えて余った財産を分けるという意味のため、倒産をした場合には、分配されるべき財産がないこととなります。

 

3  株主優待制度

 以上のように株式が有する共益権と自益権との内容について検討してきました。では、株主優待制度とはどのようなものでしょうか。

 

 株主優待制度は、会社が株主に対して商品や金券等を提供するサービスです。しかし、この株主優待制度自体は、法律上明示的な規定があるわけではありません。そのため、自益権や共益権に基づいて自己への提供を会社に求めることはできません。

 

 具体的に言うと、自分が保有している株式で、例えば、「5000円分相当ギフトを9月にプレゼント」や「1000円分お食事券プレゼント」的なやつありますよね。他方、他の保有している株式銘柄については、「株主優待はありません」というものもありますよね。

 株式を売買している人なら良くご存じだと思いますが、この場合、「株主優待はありません」とする会社に対して、自益権に基づく要求をすることはできません。

 

 この場合、株主総会で「優待制度導入の議案」を提出し可決された場合には、会社はその議案に則り、株主優待制度を実行しなくてはいけなくなりますので、どうしても株主優待生制度を導入してほしい場合には、株主総会で頑張ることが大切です。

 

 では、株主優待制度を導入している会社の株式を保有しているときに、不満を感じたことはありませんか。

 多くの株式会社では、持ち株数に応じて優待の内容を変えています。例えば、100株保有の株主には「お食事券1000円分を1枚プレゼント」、300株の株主には「お食事券1000円分を3枚プレゼント」等です。

 このような優待は同じ株主なのに異なるプレゼントを受け取ることになるので、不平等感があるかもしれません。

 

 実はこれ、場合によっては違法になることがあります。

 

 そもそも、会社法109条1項で株主平等の原則を規定しています。同原則では、会社は、株主をその有する株式の内容及び数に応じて平等に扱わなくてはいけないことを規定しています。株主平等の原則は、株式の内容及び数に応じて判断されるものです。

 

 株主優待制度自体は、株式に当然含まれる法的制度ではないので、株主平等の原則が直ちに妥当するわけではありませんが、株主を基準に交付されるため、同原則が適用されるべきと言えます。そのため、株主優待制度の内容に合理性がない場合には、株主平等の原則に反し違法になります。

   

   小難しい感じに言っていますが、そもそも、株主優待制度は、株を買う時に考慮される事情ですよね。これを言い換えると、出資を促進するということになります。そのため、株主優待制度を用いることは会社にとって必要性があると言えます。また、100株よりも1000株出資してもらった方が会社にとっては資金集めになり、かつ、安定した株主の獲得につながるので、株式数に応じた別異取扱いをすべき必要性もあると言えます。

 

 ですが、例えば、100株から1000株までの株主については「お食事券100円分を1枚プレゼント」としておいて、1000株以上の株主については、「お食事券1万円分を10枚プレゼント」というような制度を作ってしまうと、相当な限度を超えて、不合理だと言えます。

 このようなケースでは、株主平等の原則に反する可能性が高いです。

 

4   総括

 以上のようにうんぬんかんぬん書いてきましたが、実質的にみれば個人投資家の人の多くは、売買差益と配当にしか興味がないと思います。私もぶっちゃけ言うと、保有している株式で、株主優待制度が導入されるよりも、10円株価が上がってくれた方が全然嬉しいです。なので、自益権とか共益権についてはあまり興味がないかもしれません。ですが、買っている株式会社で不当な財産の流出をしている場合や本来もらえるものが貰えなかったりするかもしれません。

 

 

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