5分で読める法律の豆知識

テレビや新聞などで政治から芸能スキャンダルまで幅広いニュースを見ます。しかし、法律のことについて詳しく書かれたものはあまりみません。なので自分で勉強してみました。個人的に面白いと思ったものだけ書くのであまり網羅性はありません。なので暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。

不当利得。騙取金判例の意味

 

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 不当利得制度って分かりやすいですよね。

 

 はい。そんなわけありません。

 

 不当利得ほど分らない規定って民法上ないと思います。

 共同抵当とか法定代位、あるいは法定地上権などはとっつきにくいですが、しっかり読み込むとさほど難しくありません。

 

 ところが、不当利得に関しては読み込んでもいまいちわからないことが多いです。

 そこで、今回は、不当利得の中でも騙取金判例(最判昭和49年9月26日民集28・6・1243)について検討してみたいと思います。

 

 判例が示す基準

 まず、最判昭和49年9月26日民集28・6・1243が判旨したことについてかいつまんで確認します。

 

  • 不当利得の趣旨

 

 「およそ不当利得の制度は、ある人の財産的利得が法律上の原因ないし正当な理由を欠く場合に、法律が、公平の観念に基づいて、利得者にその利得の返還義務を負担させるものであるが、いま甲が、乙から金銭を騙取又は横領して、その金銭で自己の債権者丙に対する債務を弁済した場合に、乙の丙に対する不当利得返還請求が認められるかどうかについて考える」

 

  • 因果関係

 

「社会通念上乙の金銭で丙の利益をはかったと認められるだけの連結がある場合には、なお不当利得の成立に必要な因果関係があるものと解すべき」

 

(3)法律上の原因

「丙が甲から右の金銭を受領するにつき悪意又は重大な過失がある場合には、丙の右金銭の取得は、被騙取者又は被横領者たる乙に対する関係においては、法律上の原因がなく、不当利得となるものと解するのが相当である」

 

 不当利得の要件

 この判例はかなり有名なのでご存知だと思います。不当利得の要件は、受益、損失、因果関係、そして、法律上の原因がないことの4つです。

 

 基本的に受益と損失は、形式的に見て決めます。

 つまり、Aが400万円を失って、Bが400万円を得ていた場合には、基本的には、Bに400万円の受益、Aに400万円の損失があることが認められます。

 

 その上で、因果関係、法律上の原因の有無を検討するのですが、この騙取金判例は、勝負ポイントを法律上の原因に絞ることを鮮明にしていると言えます。

 

 つまり、因果関係については、社会通念上の連結関係があれば、認められることとなります。

 

 具体的に言うと、乙→甲→丙という形で、400万円が移動していれば、このお金が本当に甲のものであるのかを問うことなく、お金の移動事実があることで、社会通念上の連結関係があり、因果関係が認められるとしています。

 

 法律上の原因

では、勝負ポイントである法律上の原因については、どのように判断するのでしょうか。

 

この点判例は、受益者に悪意又は重大な過失があるか否かが基準であると判示しています。

 

 ここでの悪意又は重大な過失とは、弁済されたお金が乙の金銭であり、かつ、それが騙取されたものであることを受益者丙が認識しているか、知らないことに重大な過失がある場合を言います。

 

 ではでは、この基準はどこから来たのでしょうか。

判例も採用している公平説がありますが、ここから直ちに導かれるのでしょうか。

 

 当然導くことはできません。

 

 この判例がなぜ、この基準を採用したのかについては、歴史の変遷と他の構成を理解することがとても有益です。

 

 歴史の話

 お金ってそもそも何ですか。

 

 これが一番重要な事ですが、戦前お金は価値であるか動産であるかについて真剣に話合われていました。

 

 その結果、戦前の判例では、お金を動産として扱うような態度を示していました。

 

 この時点でなるほどと思った人はかなり民法を勉強されていると思いますが、戦前の判例では、この騙取金の事案を即時取得(民法192条)で解決していました。

 

 つまり、騙取金の事案では、損失者に動産であるお金の所有権は存続しており、受益者が善意無過失の場合に限り、受益者は即時取得としてお金を所有することができると考えられていました。

 

 ところが、その後金銭の所有と占有の一致原則というものが学説上主張され、現在では、判例通説となっています。

 

 つまり、お金は事実上占有の移転に伴い所有権も移転することになります。その結果、損失者が占有を失った時点で、所有権も当然に失われることとなりました。

 

 その結果、現在では即時取得という方法を採用することができなくなりました。

 

 他の構成

 このような金銭の所有と占有の一致原則が確立された場合に、騙取金事案をどのように処理するかについて、様々な見解が主張されました。

 

 代表的な一つ目の説は、所有権には物に対する支配と価値に対する支配があり、物所有権と価値所有権の二つがあるとの見解です。

 

 同見解からは、価値所有権に基づく物権的価値返還請求ができ400万円の損失者は、受益者に対して、シリアルナンバーが同じお金でなくても良いが、400万円を返還するように請求することができると主張されています。

 

 ですが、価値所有権というものが現状認められていない以上、この考え方を採用することは困難です。

 

 他方、詐害行為取消権(民法424条)で解決すべきとの考え方もあります。

 この説自体は、主張内容は適切だと思います。

 

 しかし、騙取金の事案は騙取者が受益者である債権者に弁済する事案です。

 この点判例は弁済についての詐害性については、他の債権者を害することを通謀したような場合でなければ、認められないとしています。

 

 要するに、騙取者と債権者との間で通謀した場合でなければ、損失者である被騙取者は救済することができないということになってしまいます。

 

 これはあまりにも範囲が狭すぎることになってしまいます。

 

 

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 判例の立場

 以上の構成をみると、判例としては、詐害行為取消権を根拠として、騙取金の事案の詐害性を新たに類型として設けて解決する方法と、不当利得を根拠して解決する方法の二つの方法がありえたと言えます。

 

 その上で、判例は戦前の即時取得の方法を不当利得に入れ込んで解決する方法を選択したと言えます。

 

 なので、受益者の悪意又は重大な過失という主観面を基準としています。

 

 総括

 ざっくりとした説明になってしまいましたが、これが、昭和49年判決の大まかな内容です。これを知っていたかどうかでテストで差が大きく開くことは正直ありません。しかし、なぜそのような基準を示したのかを考えることは、法律解釈の能力を伸ばす上で非常に重要だと言えます。

 

 

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請負契約。瑕疵修補に代わる損害賠償請求

 

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 請負契約って分かりにくい契約ですよね。

 要件事実も分かりにくいですが、それ以前に論理的にいまいちよく分らないというようなことも多いです。

                       

 そこで、今回は請負契約について、特に瑕疵修補に代わる損害賠償請求について検討してみたいと思います。

 

 請負契約

 まず、請負契約とは、請負人が仕事の完成をすることを約し、その代わりに注文者が報酬支払を約することによって成立する契約です(民法632条)。

 諾成契約のため、当事者の口頭での約束のみで成立します。

 

 請負契約自体で重要なのは報酬の支払い時期の問題です。

 

 売買契約の場合、代金の支払いと目的物の引き渡しは同時履行関係にあります。ですが、請負契約の場合は、仕事の完成と報酬の支払いは同時履行関係にありません。請負契約では、仕事の完成が先履行関係にあります。

 

 そのため、仕事の完成債務が履行されない以前で、請負人が報酬の支払請求をすることはできないのが原則です。

 

 ゆえに、以下のようになります。

仕事の完成債務  先履行

引渡しと報酬支払 同時履行

 

 仕事の完成と瑕疵

 まず問題となるのが、仕事が未完成であることと瑕疵があることとの違いです。

 この点については、明確な判断基準はありません。ですが先ほどの理解がかなり重要になります。

 

 つまり、仕事の完成は先履行です。そのため、仕事が完成しない限り、請負人は報酬を注文者に請求することができません。

 そうだとすると、仕事の完成を厳格に解すると、請負人はいつまでも報酬の請求をすることができないままになってしまいます。

 

 そのため、欠陥が軽微な場合には、仕事の完成を認め、瑕疵修補請求権あるいはそれに代わる損害賠償請求権を注文者に認めた方が良いということになります。

 

 その結果、思考順路としては

第1段階>

 仕事の完成の有無

  ない場合→債務不履行

  ある場合

   ↓

第2段階>

  瑕疵の有無

  ある場合→修補OR損賠

  ない場合

   ↓

報酬支払請求となります。

 

 瑕疵修補に代わる損害賠償請求の検討

 では、仕事の完成が認められ瑕疵がある場合はどのように検討すればよいのでしょうか。

 まず、瑕疵の認定が重要になります。

 

  瑕疵の認定

 

 まず、民法634条1項は「仕事の目的物に瑕疵があるとき」と瑕疵修補・瑕疵修補に代わる損害賠償請求の要件を定めています。この「瑕疵」とは、取引通念上予定される性状を欠く場合、あるいは、当事者が予定した性状を欠く場合を言います。

 

 特に、当事者が予定した性状を欠く場合の点については、盲点になりやすいので必ず押さえておくことが大切です。

 

  考察

 

 瑕疵修補に代わる損害賠償請求をする場合でも、同時履行の抗弁が準用されています(民法634条2項後段参照)。

 その結果、報酬支払債務と瑕疵修補に代わる損害賠償債務は同時履行関係にあります。

 

 と!

 

 有名な論点である報酬支払債務と損害賠償債務の同時履行関係の範囲の問題が頭に思い浮かぶと思いますが、先取りでざっくり説明します。

 

 そもそも、本来金銭債務を同時履行関係にする意味ってありますか?

 本来、その必要って全くありません。

 

  例えば、消費貸借契約の例を考えてみましょう。

  Aが500万円をBから借りる消費貸借契約を締結したとします。その後、Aが500万円のCのBに対する金銭債権を譲渡され入手したとします。

 

  この場合、Aはどうしますか?

 

  普通Aさんは、相殺しますよね。

 

 では、なぜ民法634条2項後段で同時履行関係なんて認める必要があるのでしょうか。

 

 先ほど、報酬支払請求権は、引渡しと同時履行関係にあると言いました。そうだとすると、引渡した後には、請負人は注文者に対して報酬の支払請求をすることが可能です。

 

 ところが、注文者が瑕疵を発見することができるのは、引渡しを受けた後です。

 つまり、瑕疵が発見された時点で、請負人は報酬支払請求をすることができ、注文者は損害賠償請求をすることができます。あくまでも理論上は

 

 しかし、特に建造物の場合、瑕疵がどのような内容で、その修補にいくらかかるか直ぐに算定することが困難な場合が多いです。つまり、瑕疵の内容特定、損害額の算定は時間がかかります。

 

 そうだとすると、直ぐに金銭債権どうしなので相殺します!ということにはなりません。

 

つまり、注文者は直ぐには瑕疵修補に代わる損害賠償請求をすることはできないにもかかわらず、報酬支払請求を請負人が直ちにできますというようなことになってしまいます。

 

 これは注文者にとってあまりにも不利な状況です。注文者は報酬を支払わなければ、報酬支払債務を履行遅滞することになり、遅延損害金等を請負人に支払わなくてはいけないという状況になってしまいます。

 

 これを回避するために、報酬支払債務と瑕疵修補に代わる損害賠償債務を同時履行関係にしました。

 

 また、違う側面から見ると、そもそも、請負契約を締結して引渡された物に瑕疵があった場合、程度にもよりますが、請負人を注文者が信用できない状況にあります。つまり、注文者としては、他の業者に修補してもらって、その費用を請負人が負担すべきと考えることが多いです。

 

 そのため、瑕疵の内容を特定し損害賠償額を算定した上で、その後の相殺を誘導するために同時履行関係を認めたとも言えます。

 

 これが民法634条2項後段です。

 

  判例と解決

 

これを踏まえて考えると、報酬支払債務と瑕疵修補に代わる損害賠償債務は、報酬全額について同時履行関係に原則なるのは、素直に考えてそうです(最判平成9年2月14日民集51・2・1227)。

 

 また、同時履行の抗弁権が付着しているので、相殺できるかという論点については、そもそも、同時履行関係を認めているのが、相殺前に履行遅滞に陥るのを回避するためで、かつその後の相殺を誘導するものなので、当然できます。

 

 加えて、相殺した場合に履行遅滞に陥るのは、例外を除いて遡及せず、相殺権行使時となるのも、当然の帰結と言えます(最判平成9年7月15日民集51・6・2581)。

 

 

 総括

 以上のように考えることは、あくまでも一つの解釈です。ですが、どのように解釈することも自由ですが、ただただ暗記をするのは辛いです。なので、理解で済ますことができる論点は、暗記するよりも自分自身で理解しちゃった方が楽です。

 

 

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許せない欠陥住宅。民法上請求できることは?

 

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 夢のマイホーム!

 

 あまり現実味がないように感じる方も多いかもしれませんが、最近では、千葉県、埼玉県、神奈川県の住宅開発が進んでいます。

 

東京駅まで電車で1時間以内に行け、土地と建物合わせて5000万円程で購入できる不動産が増えてきています。

 

 銀行等の金融機関も新規に住宅ローンを組みやすくするために、住宅ローンのバリエーションを増やしています。

 

 そのため、夢のマイホームは「夢ではなくなってきています!

 

 ですが、このようなマイホームを購入した後、数か月して、床にビー玉を落としたコロコロコロコロ転がって行ってしまいました。止まらない止まらない。コロコロコロコロ止まらない。

 

 また、ある日には、子供が「お父さん!わー!」と言って走ってきました。すると子供が「床がきしきしで面白かったから、跳ねてたの。そしたら、バンって床が抜けちゃった」と泣いて話してくれました。

 

「ん?なんか変だな。なんか変だな。嫌な事続くね」って感じですね。

 

 いやいや。稲川淳二のモノマネしている場合じゃありません。

 

 そのお家。はっきり言ってやばいです 。

 

 そこで、今回はマイホームを建てたところ、それが欠陥住宅だった場合に、民法上どのような請求をすることができるか検討してみたいと思います。

 

 民法上の請求

 今回は建売を購入した事例ではなく、土地を購入して建設会社と請負契約を締結したことを前提に検討します。

 

 まず、マイホームを建てる時に建設会社と請負契約(民法632条)を締結します。

 請負契約とは、請負人が仕事の完成をし、それに対して注文者が報酬を支払うことを約束して成立する契約です。

 

 マイホームの場合は、土地上に家を建てることを請負人である建設会社が約束して、注文者である私たちが、その対価として料金を支払うことを約束します。

 多くの場合は、一坪当たり○○万円というような形で算定されます。

 

 ではその上で、冒頭の床の傾き・陥没が生じた場合に、建設会社に対していかなる請求をすることができるのでしょうか。

この点、欠陥点がいかなるものであるかによって、異なる請求をすることができます。

 

 

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 欠陥がひどい場合

 そもそも、建設会社は、請負人として契約内容に沿った家を建設する債務を負っています。この債務を、仕事を完成させる債務と言います。

 そして、仕事の完成を請負人がしない場合には、請負人は債務不履行となり、請負人に帰責事由があれば、損害賠償請求をすることが可能です。

 

 ここで問題となるのが仕事の完成です。ケースバイケースですが、住居建設の場合には、住居として一般的に備えている重要な機能を完備した場合に、仕事の完成が認められることとなります。

 

 例えば、建設会社からマイホームの引き渡しを受けて、3ヶ月で床が陥没するケースや床が著しく傾いているようなケースでは、住居として一般的に備えている重要な機能を完備しているとは言えないです。

 

 そのため、このようなケースでは、請負人である建設会社は債務不履行責任を負い、同会社に対して損害賠償請求をすることができます。

 

 ちなみに、建設途中に建設会社が勝手にやめてしまった場合には、やむを得ず他の業者に依頼して完成させたときは、他の業者に支払った費用、及び工期が延びたことによって被った損害について建設会社に賠償請求をすることができます。

 

 欠陥がひどいとまでは言えない場合

 他方、例えば、床のフローリングにワックスが適当に塗られていたため、直ぐに傷がつき、フローリングの交換を余儀なくされた場合はどうでしょうか。

 

 このようなケースでは、最低限度住居として一般的に備わっている重要な機能については完備しているため、仕事は完成しており、請負人は債務不履行責任を負いません。

 

 しかし、損害賠償請求をすることができないかというとそうではありません。

 この場合、請負人である建設会社に対して、補修するか、又は補修に必要な費用について賠償するように請求をすることができます(民法634条参照)。

 

 具体的にいうと、例えば、フローリングの傷が激しく張り替えが必要になった場合には、私たちは、建設会社に対して、張り替えをするように請求することができます。また、建設会社が信用できないと思えば、他の業者に張り替えてもらい、それに要した費用を賠償するように請求することが可能です。

 

 他方、例えば、玄関のドアをこだわっていて特殊なステンレス製の物ではなくてはいけないと言っていたとします。ところが、建設会社が間違って、通常のステンレス製のドアを取り付けてしまった場合はどうでしょうか。

 

 かなり頭にくると思います。

 

 ですが、この場合ドアの取り替え自体を請求したり、ドアの取り替えにかかった費用を全額請求することができるのでしょうか。

 

 まず、前提としてこのようなケースで欠陥があると言えるか問題となります。

欠陥があるかどうかは、民法634条の「瑕疵」に当たるかが重要です。

 

 民法634条の「瑕疵」とは、取引上通常備えているべき性質を欠くこと、あるいは、当事者が予定した性質を欠くことを言います。

 

 特殊なステンレス製のドアを私たちは契約内容として予定していたのに、これが取り付けられていないため、「瑕疵」があります。そのため、欠陥があると言えます。

 

 そのため、先ほどに挙げたフローリングの例と同様に、取り替え、あるいはその費用を請求できるように思いますよね。

 

 ところが、このケースでは、634条1項ただし書きが障害となります。同規定は「瑕疵が重要でない場合において、その修補に過分の費用を要するときは、この限りでない」と規定しています。

 

 つまり、特殊ステンレス製というのは、一般人から見たら必要不可欠とまではいえません。そのため、「瑕疵が重要でない場合」に当たります。また、ドアの取り替えには物凄く費用が掛かるため、「その修補に過分の費用を要するとき」に当たります。

 

その結果、取り替え及びその費用を請求することはできません。

 

 ちなみに、このケースでは通常のステンレス製のドアが取り付けられていて、特殊ステンレス製のドア名目的料金が請求されていることがあります。この場合建設会社に言って差額を返してもらうことになります。

 

 しかし、建設会社が返金をしない場合もあります。この場合、民事上の返還義務があることは当たり前ですが、詐欺罪(刑法246条)に当たる可能性が高いです。そのため、警察に相談して被害届を出すのが良いです。

 

 総括

 以上のように欠陥の程度で色々と請求できる要件や内容が変わってくることが分かりました。

 欠陥住宅の問題に巻き込まれる可能性は、すべての人にあります。このような問題に巻き込まれないのが一番なのですが、もし巻き込まれた場合には、徹底的に戦うことが大切です。

 

 そのためにも、建設途中の写真をしっかり撮影しておくことと、建設会社からもらった書類は全て保管しておくことが大切です。

 

 

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不倫相手が家に来た!住居侵入罪では?

 

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 最近不倫がブームになっている現代日本ですが、不倫相手がお家に来たらどう思いますか?

 例えば、私が結婚をしていたとします。私が会社に行っている時に妻の不倫相手が我が家で逢引していました。妻の昼顔はあまり見たくありませんし、すごくむかつきますよね。

 特に人が一生懸命働いている時に、自分がいつも座るリビングのソファーや寝室のベッドで妻と不倫相手がいちゃいちゃしていることを考えると。。。。。。。

 

 突然ですが、この場合住居侵入罪は成立するでしょうか?

 

 たぶん賛否両論あると思います。「いやいやアウト。アウト。完全に犯罪だろ」と当事者だったら言うと思います。

 

 ですが犯罪とまで言えるのでしょうか。そこで、今回は住居侵入罪について検討したいと思います。

 

 住居侵入罪

 そもそも、住居侵入罪は、刑法130条前段に規定されています。条文を見ますと、「正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入」することを住居侵入罪等として規定しています。

 

 少し難しいですが、入った場所によって罪名が異なります。例えば、住居に侵入すれば、住居侵入罪、建造物に侵入すれば、建造物侵入罪という感じになります。

 

 正当な理由

 では、具体的に見ていきましょう。

まず、「正当な理由がないのに」と規定されていますが、この部分は通常問題が起きません。つまり、ここでの正当な理由とは、法的に家屋に強制的に入ることができる権限を有している場合等を言います。

 

 例えば、ドラマとかで強面で筋肉ムキムキの刑事が「がさいれじゃ」と叫んで、複数人で乗り込んでいくシーンありますよね。このような場合、捜索差押許可状という令状が出ています。そのため、住んでいる人が「ダメよダメダメ」と言っても、刑事が「やかましいわ」と言って入って行っても良いことになります。

 

 逆にいうとこのような場合以外には、「正当な理由」というのは基本問題となりません。

 

 

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 客体

 次に、客体についてですが、条文上「住居」「人の看守する邸宅」「建造物」「艦船」を規定います。難しい定義とか言いません。

「住居」=自宅とか

「人の看守する邸宅」=マンションの共用部分とか別荘とか

「建造物」=「住居」

「人の看守する邸宅」以外の建物で、会社とかデパートとか

「艦船」=軍艦とか船舶とか

 

です。

 ここでよく間違えるのですが、「住居」と条文上書いてある以上、人の家の庭に勝手に入るのはセーフだと思いませんか。

 

 当然アウトです。

 

 このでの「住居」とは、いわゆる囲繞地も含みます。囲繞地って、民法だと袋地を意味しますが、刑法だと、建物の周りを囲んでいる土地を指します。

 

 そのため、庭は住居を囲っている土地に含まれるので、囲繞地に当たり、「住居」となります。ゆえに、人の家の庭に勝手に入れば、住居侵入罪ということになります。

 

 侵入

 では、最後に「侵入」について検討しましょう。

この「侵入」の意義については、争いがあります。住居権説、平穏説という争いです。

 

 住居権説は、住居侵入罪は、住居権を保護法益とする犯罪だと考えます。そのため、「侵入」とは、住居権者の意思に反する立入ということになります。

 

 そして、住居権説の中にも新旧があります。旧住居権説は、家父長制を前提としており、家父長のみに住居権があると考えています。そのため、旧住居権説からすると、「侵入」とは、家父長の意思に反する立入ということになります。

 

 一方、新住居権説では、家族全員に管理県があるということになります。そのため、「侵入」とは、家族の意思に反する立入ということになります。

 

 他方、平穏説は、住居侵入罪は、生活の平穏を保護法益とする犯罪だと考えています。そのため、「侵入」とは、生活の平穏を害するような立入ということになります。

 

 と言ってもかなり分かりにくいので、冒頭の不倫事例に沿って検討します。

 

 例えば、私が結婚をしていて、会社に出勤している時に、妻が男性を連れ込んで、家で楽しく過ごしていたとします。この場合、男性は、住居侵入罪、つまり、私の家に「侵入」したことになるのでしょうか。

 

 旧住居権説の場合、家父長は私であり、私の断りなしに男性が家に入ることはできません。そのため、この立場からは、男性は家父長である私の意思に反して家の立ち入っているため、「侵入」に当たる可能性が高いです。

 

 ですが、家父長制は戦前のものであり、現代では廃止されています。そのため、このような立場をとる人はほとんどいません。

 

 他方、新住居権説というものがあります。この説では、住居の場合家族の構成員がそれぞれ管理権を有しているため、誰かが立入りを同意していれば、家に入ることは適法な行為となります。

 

 つまり、家族である妻が男性の立入を許している以上、住居権者の意思に反した立入ではなく、「侵入」には当たらないということになります。

 

 他方、平穏説から行くと、かなり微妙だと思います。平穏説は、住居侵入罪は生活の平穏を害するような立入をすることが、「侵入」だとしています。

そうだとすると、妻の不倫相手が家に入ることは私の立場からすると、生活の平穏を害されていると言えるようにも思えます。

 

 しかし、ここでの生活の平穏とは妻を始めとする家族全体で醸成されるものであり、いかに私が不愉快な気持ちになったとしても、それは私個人の感情が害されているだけで、生活の平穏が害されたとまでは言えないと思います。

 

 その結果、不倫相手の立入は、生活の平穏を害する立入とまでは言えず、「侵入」に当たらず、住居侵入罪は成立しないことになります。

(もっとも、民事的にみれば妻の不倫相手に対して損害賠償請求をすることは当然可能です。)

 

 総括

 以上検討した結果、現行法では不倫相手が家に入ってきた場合でも、住居侵入罪として処罰することはできないと言わざるをえません。ですが、当然、民事上の損害賠償請求を不倫

相手に行うことはできます。

 

 また、妻と不倫相手が不仲な時に、妻が「いやだ」と言っているにもかかわらず、不倫相手が立ち入りことは、妻の意思に反する立入になるため、「侵入」にあたります。そのため、この場合には、住居侵入罪が成立します。

 

 ゆえに、ケースバイケースということになります。

 

 人生いろいろありますが、そもそも自分も配偶者も不倫をしないような家族生活を構築できるように頑張りましょう。

 

 

 

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これでいいのでは?判例の類型化・刑法の因果関係

 

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 法律を勉強していると、何となく分かるけど、でも分からない部分は多いです。知っているつもり。それが一番厄介。いざ答案なんてものを書こうとすると上手くいくつもりが全く上手くいかない。なんて言うこともしばしばあります。

 

 刑法の因果関係の話もそうです。相当因果関係折衷説をまずは暗記。ですが、友達がしたり顔で「危険の現実化が最近は主流だから」といい、他の友達は「判例の類型化が最も重要」とか言ってきます。

 

 そもそも、危険の現実化とか判例の類型化とか、意味あるのですかね?

 

「答案書くときに必要だから類型化しなくてはいけいない」とか言いますが、そもそも、漫然と類型化させることに何の意味があるのでしょうか?

 

 正直答えはありません。ですが、個人的に思う最も良い方法を今回、提示してみたいと思います。小難しいことは一切抜きで、ざっくり大枠だけ提示します。

 

危険の現実化

 そもそも、相当因果関係折衷説というのは、ご存知の通りです。行為時点において一般人を基準に一般人が認識する事ができた事情と行為者が認識していた事情を基礎事情として、社会通念上当該結果の発生が相当か否かを基準に判断するものです。

 

 他方、危険の現実化というのは、まず行為の危険性を確定した上で、当該危険が現実化したか否かで審査するものです。

 

 そのままですね。注意点としては、行為の危険性というのは、行為に包含されているものをいいます。そのため、行為の危険性審査の段階では、行為後の事情は考慮されません。

 

 つまり、人の腹部をナイフで刺した場合に、刺突行為は類型的に人を出血多量などで死亡させる危険性を有した行為だと言えます。そのため、出血多量による死亡の危険が行為の危険性として存在します。

 

 その後、被害者が病院で暴れて傷口が開いたという事情は、行為の危険性審査ではなく、現実化したかどうかの審査で行う事となります。

 

 ここまで、したり顔で言っているのですが、はっきり言ってこんな事を言っていても全く実益がありません。

 というのも、これは「行為の危険性」と「現実化」という問いに対して問いのまま答えるのと同じ事がからです。

 

 

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判例

 そのため、まずは代表的な判例をもう一度見返してみましょう。

・被害者の脳梅毒型(最判昭和25年3月31日刑集4・3・469)

 この判例では、被害者に脳梅毒という特殊事情があり、加害者の暴行と当該特殊事情とが相まって、結果を生じさせたとして、加害者の暴行と被害者の死亡結果との間に因果関係が認められるとされました。

 

・スキューバーダイビング(最判平成4年12月17日刑集46・9・683)

 スキューバーダイビングの指導者が受講生を見失った後、受講生が不適切な行動をとり、死亡したという事案について、指導者が受講生を見失った行為に誘発されて、受講生が不適切な行動をとったとして、因果関係を肯定しています。

 

・米兵ひき逃げ事件(最判昭和42年10月24日刑集21・8・1116)

 米兵が車を運転中に被害者を跳ねあげ、被害者が屋の上に横たわり、横たわった被害者を助手席の人が引きずり降ろして、被害者が死亡した事案です。この事案では、車で衝突した行為と引きずり降ろしてアスファルトに衝突させた行為といずれの行為から死亡結果が生じたか明らかではないため、車で衝突した行為と死亡結果との間の因果関係を否定しています。

 

・大阪南港事件(最判平成2年11月20日刑集44・8・837)

 この事件はかなり有名ですよね。加害者が殴打行為をして港に放置した後、何者かが(一応)再度被害者を殴打したというケースです。このケースでは、加害者の殴打行為によりすでに死亡の危険を発生しており、その後の第三者の行為は、死期を早めただけだとされ、加害者の殴打行為と死亡結果との間の因果関係が肯定されています。

 

実際の分析方法

 以上の判例を踏まえどのように実践に生かすのが良いのでしょうか。と言うより今挙げた判例だけでも類型化は当然できますよね。例えば、最初の判例を危険内在型、二番目を誘発型、三番目を異常事情介在型の寄与度不明、四番目を異常事情介在型寄与度判明型的な言いましでも整理は整理になっていると思います。

 

 ですが、この整理だけしていて本当に思考経済的に宜しいかたというと、あまり宜しくありません。というのも初見で問題文を見たときにわけわからないひねりとかある時に、いちいち漫然とやっても時間がかかるし、ミスを犯しやすいです。

 そのため、思考順路に沿って検討することがとても有益です。

第1段階:危険の確定

 まず第1段階は、危険の確定をします。この段階では、生じた危険性の内容は、客観的に判断されます。そのため、被害者が重篤な疾患を患っていても危険性の内容を判断する上で、当然に考慮されます。

参照判例>

・被害者の脳梅毒型(最判昭和25年3月31日刑集4・3・469)

 

第2段階:異常性審査

 危険の確定ができたら第2段階へ行きます。この段階では、生じた事情の異常性を審査します。言い換えると、加害者の行為から誘発されて生じたものかどうか、あるいは通常生じえる事情かどうかが審査の対象となります。誘発して起きた場合には、介在事情の寄与度がどんなに高い場合でも、因果関係は否定されません。

参照判例>

・スキューバーダイビング(最判平成4年12月17日刑集46・9・683)

 

第3段階:寄与度審査

 第2段階で、誘発あるいは通常生じるものだと認定できる場合には、第2段階で因果関係が肯定できます。ですが、異常な介在事情だとされた場合には、第3段階の寄与度審査へ行きます。この段階では、加害者の行為と介在事情を比べて、寄与度の大きさを審査することになります。

参照判例>

 ・米兵ひき逃げ事件(最判昭和42年10月24日刑集21・8・1116)

・大阪南港事件(最判平成2年11月20日刑集44・8・837)

 

思考図>

第1段階危険の確定

 ↓

第2段階異常性審査

 ↓  ↓

異常  通常

 ↓  ↓

 ↓  因果関係ある

 ↓

第3段階寄与度審査

加害者の行為 寄与小

  因果関係なし

 加害者の行為 寄与大

  因果関係ある

 

 

 

 

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今より先へ。強制処分と任意捜査の限界

 

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 法律を勉強していると理解しているようで理解してない部分ってありますよね。強制処分と任意捜査の限界もその一つです。

 

 そこで、今回は強制処分と任意捜査の限界について、しっかり理解をすることを目的に検討してみたいと思います。わかりやすく書くために多少語弊があるかもしれませんが、ご容赦頂ければ幸いです。

 

 捜査とは

 そもそも、捜査とは何でしょうか。ここが出発点であり、最重要なポイントです。捜査とは、捜査機関が主体となって行う活動のうち、公訴提起あるいは公訴維持のために、証拠を取得収集し、被疑者を身体拘束する活動です。

 

 ここで、重要なのは、「公訴提起あるいは公訴維持」を目的とする点です。ご存知の職務質問及び所持品検査は、行政警察活動であり、捜査ではありません。

 

 これは多くの人が理解をしていますが、米子銀行強盗事件(最判昭和53年6月20日刑集32・4・670)がなぜ職務質問及び所持品検査であるのか即答できない人は多いです。

 

 あくまでも一つの説明ですが、そもそも、捜査が「公訴提起あるいは公訴維持」を目的とすると、捜査活動とは、特定の犯罪が発生していること(あるいは将来発生すること)が必要です。例えば、変死体が発見されてその遺留品を保存する行為などは、公訴提起のための証拠収集活動になるため、被疑者が不明な場合も、捜査と言えます。

 

 一方、米子銀行強盗事件も、銀行強盗という特定の犯罪が発生したことは明らかです。ですが、米子銀行強盗事件では、被疑者不明で、容姿が似ている人物が犯人であるかどうか、言い換えると、事件と関係があるかどうかを判断するために、質問及び持ち物の検査をしているという事案です。

 

 そのため、ここでの質問は、公訴提起あるいは公訴維持を目的とするものではなくあくまでも既に発生している事件の被疑者どうかを判断している段階にすぎません。

 

 したがって、捜査ではなく、行政警察活動としての職務質問になります。

 

 

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 強制処分法定主義と令状主義

 強制処分法定主義と令状主義については、当然聞いたことがあると思います。ですが、これらを峻別せずに同列に話している人がいます。個人的には、この二つの概念は分けた方が良いと思います。

 

 まず、刑訴法197条1項を見てみます。「捜査については、その目的を達すため必要な取調べをすることができる。但し、強制の処分は、この法律に特別の定めのある場合でなければ、これをすることはできない」と規定しています。

 

 刑訴法で、最もよく読まれる条文ですよね。釈迦に説法になりますが、本文は任意捜査の原則、ただし書きは、強制処分法定主義を規定しています。

 令状主義は、憲法35条を参照して下さい。

 

 この任意捜査の原則、強制処分法定主義、令状主義の関係性を考えることが非常に大切です。

 

 そもそも、警察及び検察官は、犯罪が発生した場合に、証拠収集をしなくてはいけません。この活動の種類態様には、色々な活動が想定されます。個人の権利利益を侵害する活動もあればそうでない活動も当然あります。

 

 このような前提がある場合に、立法論として、警察及び検察ができる捜査手法を限定列挙するのは無理です。そこで、原則、個人の権利利益を侵害しない。あるいはその程度が低い活動については、捜査活動を現場で行っている警察及び検察が自らの判断でやっても良いことにする。これが任意捜査の原則です。

 

 もっとも、「類型的に」個人の重要な権利を強度に侵害するものが存在します。ここでは、あくまでも「類型的に」です。現場で被処分者が同意したかどうかを問わず、類型的に重要な権利を強度に侵害する活動があります。

 

 このような活動を警察及び検察が自由に判断してやってしまうのは好ましくありません。そこで、前提として、警察及び検察が自由に判断を阻止するために、あらかじめ国会が定める法律がなければ、その活動自体をすることができないとしました。

 これが強制処分法定主義です。

 具体的にいうと、検証、捜索・差押え等です。

 

 その上で、令状主義とは、強制処分法定主義から法定された強制の処分があることを前提として、裁判所が当該処分を行える状況かどうかを判断することを定めた概念です。

 つまり、本来捜査できるかどうかの判断主体は、現場の警察あるいは検察ですが、令状主義は、その判断主体を裁判所に転換させる概念です。

 

 以上をまとめると、強制処分法定主義とは、そもそも当該捜査手法をとることが可能か否かという概念で、令状主義は、捜査の可否を判断する主体を裁判所へ転換させるものということになります。

 

 この理解は、司法試験各種資格試験の論述に響いてきます。

 

 強制処分該当性と任意捜査の限界

 強制処分該当性の基準

 強制の処分とは、「個人の意思を制圧し、身体、住居、財産等に制約を加え強制的に捜査目的を実現する行為など、特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない手段を意味する」

 

 という基準については、知っていると思います。この基準がどのようなことを意味しているのかについては、色々な見解があります。

 ですが、ここで有益なのは、なぜこの基準ができたのかということです。この基準を判示した最判昭和51年3月16日刑集30・2・187当時、強制処分の定義については、学説が群雄割拠している状態でした。

 

 このような学説で一つ目の争点は、有形力の行使を伴う場合をすべて強制処分として扱っても良いのかという点です。有形力の行使といっても幅広いものがあります。例えば、被処分者の顔面を殴打するものから、逃げようとする被処分者の腕をつかんで制止するものまであります。

 

 説得あるいは制止させるために、腕を掴む行為を直ちに強制の処分として、法律の規定がないあるいは、令状がないと言うような形で、違法とするのは、一般的な感覚にそぐわないと言えます。

 

 そのため、被処分者の意思に反するではなく、制圧されたような状況下であることが、強制の処分として必要であると判例は示したと考えられます(もっとも、これは一つの説明の仕方にすぎません。そもそも「個人の意思の制圧」は意味のない要件との見解もあります)。

 

 また、「身体、住居、財産等」という形で列挙していますが、これはどのような意味でしょうか。この点については、重要な権利という形で、置き換える人もいますが、それはどうして置き換えてよいのでしょうか。

 

 この点については、そもそも、判例が出された当時、強制の処分について定説というものは存在しませんでした。そのような状況の中で、刑訴法上強制の処分として規定されているものがあります。それは、逮捕、捜索、差押さえ等です。

 

 逮捕の侵害利益は、身体の自由です。捜索は、住居の平穏です。差押えは財産権です。

 つまり、現行法上強制の処分として規定される権利利益と同程度の権利利益を侵害するものが強制の処分の内在的要素として必要だと判例は考えたと言えます。

 

 その結果、「身体、住居、財産」という表現を使い、重要な権利と置き換えて良いということが言われています。

 

 任意捜査の限界

 では、強制の処分に該当しない場合に、任意捜査の限界について検討することになりますが、これはどのように検討するのでしょうか。

 「必要性、緊急性、相当性についてそれぞれ適当に当てはめておけば点がくる」とか言う人がいますが、それは間違えだと思います。

 

 そもそも、必要性、緊急性、相当性、は並列的なものではありません。「天秤でしょ。天秤!」という人もいますが、その場合、何を乗せますか。

 

 そもそも、緊急性という要件を持ち出していますが、緊急性は必要性を補完する要素に過ぎず、常になくてはならないものではありません。現に最判平成20年4月15日刑集62・5・1398では緊急性が検討されていませんよね。是非確認して下さい。

 

 つまり、緊急性というのは必要性を補完し高める要素にすぎません。そのため、天秤の考え方でいうならば、必要性(+緊急性)VS権利侵害の内容程度=全体的に相当な限度かどうかということになります。

 

 事例にもよりますが、最判平成20年4月15日のようなケースで緊急性を無理やり出してきて、必要性と緊急性と同じレベルで検討しているのは方向性としてよろしくありません。

 

 思考判断枠

 以上うだうだお話してきましたが、まとめます。学部やローススクールで、二段階で検討をするべきとの話は聞いたことがあると思います。つまり、強制の処分該当性、任意捜査の限界という流れです。ですが、正確にはここは三段階で審査します。さらに、ここでの三段階は、二つのパターンに分けることができます。

 

一つ目は、強制処分に該当性しないパターンです。

第1段階>

 捜査該当性

 ↓→捜査に当たらない場合は、職務質問・所持品検査へ

第2段階>

 強制の処分該当性

 ↓否定

第3段階>

 任意捜査の限界

 

 二つ目は、強制の処分に該当するケースです

第1段階>

 捜査該当性

 ↓ 当たる

第2段階>

 強制の処分該当性

 ↓肯定

第3段階その1>

 法定の処分ではない場合

 →強制処分法定主義違反

第3段階その2>

 法定の処分である

 →検証等と認定できる場合には、令状主義違反

 

 となります。

 特に、強制の処分に該当する場合、なぜ違法なのか、強制処分法定主義違反か令状主義違反かは忘れる人が多いので、絶対に忘れない方が得策です。

 

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公序良俗違反?不倫相手に相続させる遺言の有効性?

 

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 最近、不倫の問題が世間で話題にのぼることが多くなってきました。議員から芸能人まで不倫!不倫!不倫!

 

 協会で神父さんの前で、永遠の愛を誓ったのに数年経てばどこかに行ってしまいます。

 

ですが、不倫にも内容があります。夫婦関係が破綻している時に、理想的な女性と出会い何十年もその後の人生を一緒に過ごすケースから、ちょっとした遊び心で愛人として付き合うケースなど色々あります。

 

 どちらも、婚姻関係が形式上存続している以上、個人的には好ましい事ではないと思います。ですが、内縁の妻には相続権がなく、不倫相手に遺産を相続させるために、遺言をすることが多いです。

 

 この場合、遺言は常に有効と言えるのでしょうか。例えば、愛人に全部の遺産を相続させるような遺言が有効だとすると、法律上の配偶者や子供は納得できるでしょうか。

 

 今回は、このような不倫相手への遺言が公序良俗に違反し、無効となるか検討したと思います。

 

 そもそも公序良俗違反とは?

 まず、民法90条を見てみましょう。民法90条は「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする」と規定しています。

 

 簡単にいうと、社会的に悪い行為があります。例えば、賭け麻雀や愛人契約、暴利行為は、反社会性が強い行為です。このような行為を内容目的とする法律行為を有効としてしまいますと、みんな法律を守ろうとしなくなり、ある種のカオス状態になってしまいます。

 

 そのため、賭け麻雀のためにお金を貸す契約、愛人となることを目的とする金銭の贈与、10日で1割の利息を付ける利息契約・消費貸借契約を無効として、みんなが法律を守り良い社会をつくるために、設けられたのが民法90条の公序良俗違反です。

 

 不倫相手への遺言

 では、不倫相手に遺産を相続させる遺言をすると公序良俗に違反することになるのでしょうか。

 

 実は、ただちに違反することにはなりません。

 

 というのも、冒頭で申し上げた通り、不倫にも色々なものがあります。例えば、若い時に結婚して数年で別居し、30代前半で新しいパートナーを見つけて、この前還暦を迎えましたというケースから、金持ちが愛人を作ってやりたい放題やっていたというケースもあります。

 

「不倫」と一言でいってもその内容は様々なものがあり、みんなが見たときに、「仕方ないよね」と言えるものから、「最低だな」と言えるものまで様々です。

 

そのため、不倫相手に遺産を残すために遺言をしても、これが公序良俗に違反するかはケースバイケースです。

 

 ですが、一つの指針となるのが、最判昭和61年11月20日民集40巻7号1167頁です。

 

 この判例では、結論からいうと、不倫相手に遺産を相続させる遺言は、公序良俗に違反せず、有効としています。

 

 この判例の評価には色々ありますが、有効と結論付けるに至った理由はいくつかあります。

 

 まず、別居期間です。この判例では、別居してから死亡するまでに10年程度ありました。別居期間が長いことは、夫婦関係が実質的に破綻していることを基礎づけるため、長期間になればなるほど、不倫相手への遺言が有効になる方向へ傾きます。

 

 さらに、不倫相手との付き合いは、死亡するまでに概ね継続しており、死亡の前後で関係性が変化していないことが考慮されました。

 これは、不倫相手との関係が愛人のような金銭目的の関係ではなく、恋愛関係であることを推認させます。当然、恋愛関係の方が、公序良俗に反しない方向に働きます。

 

 さらに、当時配偶者の相続分は、3分の1でした。この判例では、遺言の内容は、法律上の妻3分の1、不倫相手3分の1、子供3分の1ずつ相続させるものであったため、法律上の妻を殊更に害するものではないとされました。

 

 これらの要素を考慮して、遺言は、公序良俗に違反せず、有効とされました。

(現在では、子供と一緒に相続する場合は2分の1です。)

 

 

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 総括

 以上に挙げた要素は、別居期間、不倫相手との関係、相続分の三つです。ですが、この三つが全ていい感じにそろっていないと、公序良俗に反すると言うようなことは決してないと思います。

 

 そもそも、この問題は実質的に考えれば、法律上の妻が夫の死後生活保護を害される危険があるかどうか、不倫という反社会的行為を助成するような行為を有効にしてよいかという点にあります。

 

 そうだとすると、別居して30年経過していて、金銭的な援助を法律上の妻に生前しておらず、法律上の妻が独立して生計を維持している場合であれば、相続人である妻の生活保護を考慮すべき必要性はないと思います。

 また、別居してから30年経過している場合には、不倫が反社会的行為といえるかも微妙ですよね。

 

 そのため、このようなケースでは、遺産を不倫相手である内縁の妻にすべて残すというような遺言をしても、公序良俗に反さず、有効になると考えても良いのではないでしょうか。

 

 現在、遺言の内容をどのようにすべきか考えている人は、別居期間、不倫相手(内縁の妻)との関係、相続分(相続人の生活保護の程度)を具体的に検討してみることが大切です。

 

 

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