好きな人からプロポーズされると本当に嬉しいでよね。
しかし、いざっ結婚となった瞬間に、相手が婚約破棄をしてきた。
悲しい思いや、悔しい思い、様々な感情が駆け巡り、どうしても許せないと思う事もありますよね。
そこで、今回は、婚約破棄をされた時に損害賠償請求をすることができるのか?検討をしてみたいと思います。
1 婚約の成立
まず、そもそも、相手に対して損害賠償請求をする前提として、当事者間に婚約が成立していたことが必要となります。
では、婚約とは具体的にどのようなことをいうのでしょうか。
婚約とは、将来婚姻をしようとする当事者間の予約の合意であると言われており、当事者間の合意のみで成立はします。
しかし、そのような婚約の合意は、将来確実に夫婦になろうという内容である必要があるため、一般的には、婚約指輪の授受、結婚式へ向けた準備、両家の顔合わせ、結納等の客観的な事情が全くなければ、認められません。
というのも、このような外形的な事情が全く存在しないような場合に、婚約の成立を認めてしまうならば、学生同士で、安易な気持ちで、「結婚しよう」等といっていて、その後、別れてしまった場合、全て婚約破棄ということになってしまい、日本全国で婚約破棄が横行してしまうことになります。
婚姻は、身分関係を形成させる法律行為であり、当事者に権利義務を生じさせるものです。それゆえ、婚姻の予約である婚約についても、ある程度法律的に保護すべき次元のものである必要があるため、安易な気持ちで当事者が口約束をしていっただけでは、法律上の保護対象とすべきではなく、裁判上、認められないことが多いです。
2 婚約と似ている内縁関係
また、婚約と似たような概念で、内縁関係というものがあります。
内縁関係とは、婚姻意思があり社会的に見ても夫婦としての生活実態がある関係をいいます。
内縁関係と婚約関係は、併存する場合がありますが、婚約の場合は、あくまでも将来婚姻をしようとする当事者間の予約であるため、現時点で、同居等をしておらず、社会的に見ても夫婦としての生活実態がない場合でも成立します。
なお、内縁関係が不当に解消された場合にも、民法709条の不法行為または民法415条の債務不履行に基づき損害賠償請求をすることができます。
3 婚約破棄を理由とする損害賠償請求
以上のとおり、婚約が成立するとして、これを破棄された場合に、相手方に損害賠償請求をすることができるのでしょうか。
原則、民法第709条の不法行為に基づき損害賠償請求をすることができる可能性があります。
典型的な損害としては、慰謝料です。また、式場のキャンセル料や結婚に向けて家具等を購入していた場合には、その費用も経済的な損害として認められる可能性があります。
もっとも、慰謝料は認められる可能性が高いですが、家具等については、結婚をしなくても使用可能なものも多いため、裁判上、購入費用の全額を損害として認定することは稀です。
以上のとおり、婚約破棄をされた場合に損害賠償請求をすることができる可能性がありますが、婚約の破棄に正当な理由がある場合には、相手方の婚約破棄は不法行為とはならず、賠償義務が否定されることがあります。
この点、正当な理由については、民法770条の離婚事由が参考になりますが、個人的には、もっと、認められる範囲が限定されていると思います。典型例としては、自分自身が家出等をして所在不明になった場合や、相手方に対して、虐待、暴行、侮辱等のハラスメント行為を常習的に行っていた場合であるとか、明らかに自分に落ち度があるようなケースでなければ、相手方が婚約破棄をしたときに、正当理由が認められることはないと考えられます。
4 終わりに
相手方が一方的に婚約破棄をしてきた場合には、民法709条の不法行為等に基づき損害賠償請求をすることができます。
また、ケースバイケースですが、慰謝料の金額も数百万円程度になることも珍しくありません。
もし、婚約破棄をされた場合には、泣き寝入りをせずに、しっかりと責任追及をすることが大切です。