5分で読める法律の豆知識

テレビや新聞などで政治から芸能スキャンダルまで幅広いニュースを見ます。しかし、法律のことについて詳しく書かれたものはあまりみません。なので自分で勉強してみました。個人的に面白いと思ったものだけ書くのであまり網羅性はありません。なので暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。

体罰絶対禁止!それ違うかも。学校教育法11条の本当の意味

 

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 昨今、学校教育における体罰の問題が注目を集めています。

 

 自分も昔、体育会系の部活に入っていました。数十年前なので、時代が時代と言ってしまえばそれまでですが、顧問が部員に手を挙げる姿を見たことがあります。

 

 しかし、顧問はその暴力行為に対して責任を追及されることはありませんでした。

 

 個人的に顧問が指導の一環として生徒に手を挙げることは、極力避けるべきだと思います。

 

 例えば、練習中にミスをした生徒への暴行は、はっきり言って無意味です。

 

その生徒のプレーをただただ萎縮させてしまいます。

 

 全く生産性のない単なる暴力です。

 

 ですが、悪い事をした生徒への指導の最中に手を挙げざるを得ない事態があることも綺麗事ではなく存在します。

 

 例えば、ある生徒が他の生徒をカツアゲなどをしているシーンを目撃し、注意をしたにもかかわらず、その生徒がカツアゲを継続したような場合です。この場合、被害者の生徒を守るために、やむを得ずに手を挙げることは、許されるのではないでしょうか。

 

 昨今、体罰は全ての暴行。言い換えると、教師の有形力の行使を全面的に禁止しているという風潮があります。

 

 そこで、今回は、体罰を禁止する学校教育法11条の意味について本当にそうなのか検討したいと思います。

 

 学校教育法11条

 まず、学校教育法11条は以下のように規定しています。

 

「校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない。」

 

 この条文を解釈すると、学校の校長と教員は、文部科学大臣が事前に定めている指導指針に則って、生徒に対して懲戒を加えることができます。すなわち、生徒が悪いことをしたら先生はその生徒に指導として罰を加えることができます。

 

 典型的な例は、廊下に立たせる場合や、部活に遅刻をした生徒を試合に出さない等の措置です。

 

 その上で、懲戒をする際には、体罰という方法を取ることができない。

 

 これが学校教育法11条の意味です。

 

 文部科学省のガイドライン

 では、学校教育法11条で禁止している「体罰」とは何でしょうか。

 この点について文部科学省のガイドラインでは、以下のように示しています。

 

懲戒と体罰の区別について>

「(1)教員等が児童生徒に対して行った懲戒行為が体罰に当たるかどうかは、当該児童生徒の年齢健康心身の発達状況当該行為が行われた場所的及び時間的環境懲戒の態様等の諸条件を総合的に考え個々の事案ごとに判断する必要がある

 

 この際、単に、懲戒行為をした教員などや、懲戒行為を受けた児童生徒・保護者の主観により判断するのではなく諸条件を客観的に考慮して判断すべきである。」

 

 と定めています。

 

 これがかなり重要です。

 

 つまり、教員が生徒を殴ったことをもって直ちに体罰に当たるとはしていません。

 

 あくまでも被害者加害者の主観にかかわりなく、当時の状況等を総合考慮して、教員の行った暴行が体罰に当たるかどうかを判断することになります。

 

 分析

 では、具体的に許容される懲戒と体罰の境目はどこにあるのでしょうか。この点について、文部科学省ガイドラインは以下の例を挙げています。

 

(1)体罰(通常、体罰と判断されると考えられる行為)

 身体に対する侵害を内容とするもの

 ・体育の授業中、危険な行為をした児童の背中を足で踏みつける。

 

 ・帰りの会で足をぶらぶらさせて座り、前の席の児童に足を当てた児童を、突き飛ばして転倒させる。

 

・授業態度について指導したが反抗的な言動をした複数の生徒の頬を平手打ちする。

 

 被罰者に肉体的苦痛を与えるようなもの

 ・放課後に児童を教室に残留させ、児童がトイレに行きたいと訴えたが、一切、室外に出ることを許さない。

 

 ・別室指導のため、給食の時間を含めて生徒を長く別室にとどめ置き、一切室外に出ることを許さない。」

 

 という例を挙げています。

 

 これは文部科学省のガイドラインにある総合考慮の結果、体罰に当たるとされる例として挙げたものです。

 

 このような例からわかることがあります。

 

 まず、身体に対する侵害を内容とするものについては、口頭等での注意により指導をすることができたという事案です。

 

つまり、指導の必要性が認められるものの、暴力等の有形力により指導すべきで必要性がないというケースだとわかります。

 

 他方、被罰者に肉体的苦痛を与えるようなケースの場合には、指導の必要性がないか、あるいは、殊更に嫌がらせをする悪意が感じられる事案だと言えます。

 

 結局どういうこと?

 多くの体罰で問題となるのは、暴力を振るった場合です。このケースでは、基本的に体罰であると認められることになります。

 

 ですが!

 

 体罰該当性はあくまでも総合考慮により判断されます。そのため、暴力を振るっても指導をすべき必要性がある場合には、暴力を振るっても体罰に当たらないと言えます

 

 例えば、卒業式の式典中に複数の生徒が大声で奇声を発し、式典の進行が著しく困難になったとします。この際に、先生が駆け付けていきなり、生徒の顔面を殴ったら、当然体罰に当たります。

 

 しかし、先生が再三にわたり、口頭で奇声を止めるように指導したにも関わらず、生徒が大声で奇声を継続したとします。

 

 この時に、先生が生徒を退場させることは必要な指導として、体罰に当たりません。また、その際に生徒の身体を拘束し、強制的に会場から連れ出す行為も体罰には当たらないでしょう。

 

 さらに、身体拘束をしようとした生徒が暴れだし、いすなどを蹴って応戦してきた場合には、先生が生徒の顔面を殴ったとしても体罰には当たらないと思います。

 

 他にも、文部科学省のガイドラインで、先生自身あるいは他の生徒に危害が及ぶようなケースでは、先生が暴れている生徒を殴ったとしても体罰にならないことがあることを明示しています。

 

 以上から、体罰が許される状況とは、先生が暴行等を行って指導をすることがやむえない状況であることが必要だと言えます。

 

 私は、暴力を振るった教員を擁護するつもりはありません。ですが、暴力を振るわざるを得ないという場合も教育現場には当然あると思います。

 

 昨今のニュースでは、暴力を振るった一事をもって、体罰であると即断をする傾向があります。「体罰は学校教育法11条で禁止されていますからね」と教員が生徒を殴ったワンシーンを見て、声高々に主張するコメンテーターもいます。

 

 しかし、本当に前後の様子も見ないで体罰に当たると断言できるのでしょうか。

 

 そのような短絡的な一辺倒の報道を行うこと自体が、モンスタースチューデントとモンスターペアレントを増殖させるのではないでしょうか?

 

 

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