5分で読める法律の豆知識

テレビや新聞などで政治から芸能スキャンダルまで幅広いニュースを見ます。しかし、法律のことについて詳しく書かれたものはあまりみません。なので自分で勉強してみました。個人的に面白いと思ったものだけ書くのであまり網羅性はありません。なので暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。

不動産の二重譲渡。所有権の移転と民法上の規制

 

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 最近、不動産が高騰しているらしいです。オリンピックの影響でしょうか。自分の持っている土地の値段が跳ねたら嬉しいですよね。「しもしもで、アッシー呼んで。座銀でシースーの後はマハラジャでオールナイト」みたいな感じですかね。

 まぁ色々無理がありますが。

 

 さて本題に入ります。今回は土地の高騰を予測して、土地を買おうと思っている方もいらっしゃると思います。そこで、なぜ不動産を買ったらすぐに登記をしなくてはいけないのか。不動産の二重譲渡の観点から今一度検討してみたいと思います。

 

 契約とは何?

 まず、二重譲渡の前に、そもそも、大前提の契約とはなんでしょうか。そこから検討しましょう。

 

 契約とは、意思の合致を言います。そして、意思の合致とは、申込みと承諾が一致したことをいうのですが、正直あまりピンときませんよね。

 

 具体的に検討します。まず、不動産屋に行きます。何かおすすめの物件はありますかと尋ねます。すると、不動産屋さんが、「最近だと、豊洲あたりがいいですね。将来的に地価も高騰しますし、後は、浦安から八丁堀あたりまでの沿線は、将来開拓が見込めますので、おすすめのエリアです」的な説明があるかもしれませんが、その中で「この浦安の○○の土地を5000万円で売ってくれ」と言います。これが申込みです。そして、不動産屋さんが「いいですよ。」と言います。これが承諾です。

 

 つまり、不動産屋さんが「いいですよ」と言った時点で、申込みと承諾が一致したことになり、意思の合致が認められ、契約が成立することになります。

 

 所有権はいつ移転するの?

 では、このように契約が成立したとして、所有権はいつ移転するのでしょうか。土地の測量に行った時でしょうか?それとも登記をしたときでしょうか?それとも気が変わってマイホームを建ててマイハニーと一緒に新婚生活を始めたときでしょか?

実はどれも違います(通説を前提)。

 

 民法176条を見てみましょう。同条は「物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる」と規定しています。

 

 今問題となっているのは、土地の所有権の移転時期ですよね。つまり、「物権の・・移転」が問題になっています。そして、物件の移転は、「当事者の意思表示のみによって、その効力を生じる」と書いてあることから、意思の合致があった時点で、所有権移転の効力が生じることになります。

 つまり、契約が成立した時点で、「浦安の○○の土地」は不動屋さんからあなたに所有権が移転することになります。

 これを専門用語で意思主義といいます。少し余談ですが、他の国では登記等の外部的行為が行われるまで、所有権は移転しないと考えられているところもあります(形式主義)。ですが、日本では意思主義を採用しているため、契約の成立と同時に所有権は買主に移転します。

 

 

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 不動産の二重譲渡とは?

 では、契約と同時に所有権は移転します。ですが、世の中では、不動産を買ったらとりあえず、「司法書士に依頼して登記を直ぐにしようぜ!」的な空気がありますよね。なぜですか。理由はいくつかありますが、法律的に言えば、一番は確定的に所有権を取得したいからです。

 

 具体的に検討してみましょう。先ほどの例で、不動産屋さんとあなたの間で、「浦安の○○の土地」の売買契約は成立します。そして、後日不動産屋さんに5000万円支払って、代わりにその土地の引き渡しを受けました。しかし、登記料が高いため、後日気が向いたら登記をしようと思い放置しました。

他方、あなたに「浦安の○○の土地」を引き渡した後、別のAさんという客が不動産屋さんに来たとします。Aさんはあなたが買ってすでに引き渡しを受けている「浦安の○○の土地を1億円で売ってくれ」と不動産屋さんに言いました。不動産屋さんからすれば、2倍も違う額の申込みを受けたら、「もちろん。いいですよ」とか言っちゃいますよね。

「何が『もちろん。いいですよ!』だよ」と、あなたからしたら非常にイラッと来ると思います。

 

 私だったら怒ります。彼女に浮気されたレベルでむかつきます。二人にいい顔するのはよくないですよね。本命を決めたら一人に絞るべきだと思います。二人にいい顔をするのは二人とも傷つけることになるので絶対によくないことです。

 

と!「何の話をしているんだ?」と突っ込まれるかもしれませんね。ごめんなさい。

 

 ですが、1億円提示のAさんに不動産屋さんが「もちろん。いいですよ」と言った場合に、契約は成立するのでしょうか。というのも、すでにあなたに「浦安の○○の土地」は売っているので、そもそも、売れないのではないでしょうか。

 

 実は、これ売れるんですね。色々な説明の方法はありますが、先ほど私は契約の成立により所有権は移転すると言いましたが、これは確定的に移転しているわけではありません。その反面として、未確定ながらも売主の不動産屋さんに所有権が残存していることになり、残存した所有権があることを前提に、不動産屋さんがAさん「浦安の○○の土地」を売却し、所有権の移転を行うことは可能ということになります。

 

 その結果、あなたとAさんは、「浦安の○○の土地」を未確定ながらもお互い所有していることになります。では、最終的にどちらが所有権を確定的に取得できるのでしょうか。

 

 これを規定しているのが、民法177条です。民法177条は、「不動産に関する物権の得喪及び変更は・・・・・登記をしなければ、第三者に対抗することはできない」と規定しています。

 

 具体的に検討します。まず、現在問題となっているのは、あなたとAさんどちらが所有権を確定的に取得できるかですよね。これは土地という「不動産」の所有権という「物権」の獲得あるいは移転に関する事項です。そのため、「不動産に関する物権の得喪及び変更」の問題と言えます。

 

 そして、同条に規定されている「第三者」とは、専門用語でいうと、当事者又は包括承継人以外の者であって、登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者を言います。なんだか呪文のような言葉ですね。具体的にいうと、不動産の所有権を誰が最終的に所得するかは、民法177条によれば「登記」ですよね。つまり、「登記をしなければ、第三者に対抗することはできない」とは、登記をしないと第三者に自分が所有権を持っていると主張できないことを意味します。これを言い換えると、登記を備えれば第三者に対して自分が所有権を有していることを主張できる。すなわち、確定的に所有権を取得するということになります。

 

 そうだとすると、今回の問題で「第三者」とは、あなたもAさんも未確定ながらも所有権を有していますよね。そのため、どちらも確定的に所有権を取得する可能性があります。反対の視点でみると、あなたとAさんどちらかが登記を備えてしまうと、一方は確定的に所有権を喪失してしまうことになります。

 

 したがって、相手が登記を備えていない間は、共に所有権を主張でき、かつ、相手が登記を備える前であれば、相手が土地の所有権は「私が持っている」と主張しても、これをあなたは拒むことができます。

 そのため、あなたもAさんも、相手の登記の欠缺(ないこと)を主張する正当な利益を有する者ということになります。

 

 以上から、登記を相手が備えるまでは、相手の所有権に基づく請求を拒むことができますが、登記を相手が備えた場合には、請求を拒むことはできなくなります。

 

 総括

 登記を備えていないとどのような問題が起こるかというと、不動産屋さんから土地の引き渡しを受けました。そして、登記をしないまま数年が経ち、「浦安の○○の土地」は買ったとき5000万円の価値しか有していませんでしたが、数年経過して10倍の5億円になったとします。まさにバブルですね。しかし、その土地はAさんが買って直ぐに登記をしていたとします。先に買ったのはあなたです。しかし、Aさんの方が先に登記をしていた場合、Aさんがあなたに土地を引き渡すように請求してきた場合、これを拒むことはできません。ゆえに、5億円の土地は結果的にあなたのものにはならなくなってしまいます。

 非常に残念です。このような悲しい思いを避けるためにも、土地を買ったらすぐに登記をすることが大切です。

 

 この場合、売主にどのような請求ができるかは、また後日書こうと思います。

 

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