5分で読める法律の豆知識

テレビや新聞などで政治から芸能スキャンダルまで幅広いニュースを見ます。しかし、法律のことについて詳しく書かれたものはあまりみません。なので自分で勉強してみました。個人的に面白いと思ったものだけ書くのであまり網羅性はありません。なので暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。

娘の顔にあざ。母親の固有の慰謝料請求権

 

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 暑い日が続きますね。毎日毎日汗がだらだらですよね。いや参った!

体重計に「痩せてるかな(ウキウキ)」的なノリで毎日乗ってるのですが、一向に痩せませね。だって、「ビールが美味しんだもん!やめられないな」(いわゆる自業自得というやつですね)。ちなみに、夏よりも冬の方が、基礎代謝が良くなるので、痩せやすいそうです。

 はい!どうでもいい情報ですね。ごめんなさい。

 

 本題に入ります。数日前から学生さんは夏休みに入ったそうです。夏休み友達とお出掛けしたりすることが増えますが、娘さんが事故に遭い顔にあざが残ってしまったら皆さんなら、どう思いますか(いきなりヘビーな話でごめんなさい)。

 今回は、母親自身が被った精神的損害について加害者に対して慰謝料請求をすることができるか、その際にどのようなことが考慮されているのか検討してみたいと思います。

(なお、当然娘さん自身が被っている精神的損害については慰謝料請求をすることが可能です)

 

 母親の固有の慰謝料請求権

 前回、夫が他界した時に胎児がいかなる権利を有するかについて検討しました。今回も、問題となる条文は、民法711条です。

 

 まず、条文確認からします。

 民法711条は「他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、

その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない」と規定しています。

 

 これは、前回でも検討した通り、人が死亡した場合に、一定の近親者は心に傷を負うことが多いので、その近親者の精神的損害があることを推定するための規定です。

 と!すると、文言通りに解すると、これは被害者が「死亡した場合」についてのみ適用する条文ということになります。そのため、娘が顔に傷を負った場合については、適用できないように思いますよね。

 

 実はそうなんです!最高裁は、民法711条をこの場合適用していないんです。

 

 じゃあ、娘が顔に傷を負った場合に、母親の心の傷は未来永劫癒されないのか?

まぁお金を払って貰っても、そら納得をすることはできないですが、少なくともお金という形で償ってほしいですよね。

 

 最高裁も悪人ではありません。最高裁は、民法711条は適用しませんが一定の場合に限って、母親の慰謝料請求権を認めています。最判昭和33年8月5日民集12・12・1901です。

 

 同判決では、戦争で夫を亡くした母親が娘を女手一つで育てていました。そのような中で、娘が事故に遭い顔にあざが残ってしまい、当時の医学では当該あざを消すことができなかったとい事実関係が前提になります。

 

 そのような状況の中で、まず判例は、「民法711条が生命を害された者の近親者の慰謝料請求につき明文をもって規定しているとの一事をもって、直ちに生命侵害以外の場合はいかなる事情があってもその近親者の慰謝料請求権がすべて否定されていると解しなければならないものではない」と小難しく論じています。

 

 要するに、被害者が死亡した場合にだけしか、近親者の固有の慰謝料請求が認められ、それ以外の場合に、慰謝料請求ができないってことにはならないぜ。言い換えると、被害者が死亡していなくても親は慰謝料請求できる時があるぜ。という意味になります。

 

 じゃあ、どのような場合でしょうか。

判例は「子の死亡したときにも比肩しうるべき精神上の苦痛を受けた」場合だとしています。

 つまり、判例は「子の死亡したとき」と同じレベルで母親が精神的苦痛を受けた場合には、慰謝料請求権を認めています。

 

 

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 考慮される事

 判例では、「子の死亡したときにも比肩しる」という基準が一つの物差しとなっています。

その考慮材料には色々なものがあります。代表的なものとして三つ挙げます。

 

一つ目は、生活状況です。つまり、離婚して自分が子供を養育していない場合等には、母の慰謝料請求権が認められない可能性があります。

 

二つ目は、傷の程度です。すなわち、顔に傷を負ったとしても、それが完治可能なものである場合や、相当程度傷が癒える場合には、慰謝料請求権が否定される方向に流れます。

 

 そして、三つ目は、性別です。男女平等の精神が浸透し、かつ最近では、美肌男子なども登場し顔へのこだわりは男女で変わらなくなってきています。

しかし、実際に裁判になると、男性よりも女性の方が顔に傷を負った場合重大だと考えられています。そのため、娘でなく息子が顔に怪我を負った場合には、母の慰謝料請求権は否定される方法になります。

 

 これらの要素は総合的に判断されるので、例えば、自分が養育していなかったとしても、定期的に会っていて、娘の傷の程度が重大なものであれば、母親の慰謝料請求権は認められる可能性が高いです。

 逆に、養育していても子供を普段から親が虐待していたような例外的なケースであれば、母の慰謝料請求権は認められない可能性が高いと思います。

 

 個人的な考え

 個人的には、ここまで書いてきてちょっとあれですが、最高裁の結論には反対です。最高裁は、母親の固有の慰謝料請求権については限定的な範囲でしか認めていません。基準がかなり厳格です。ですが、請求権があることと金額がいくらであるかは別の話だと思います。つまり、請求権があるかどうかという話と金額はいくらかという話は別であり、これをしっかりと分けて考えることが大切だと思います。

 

 つまり、親が子供を育てて子供が顔に傷を負えば心が痛みますよね。この心の痛みは「子供が死亡したときにも比肩」する程度ではなくても、心が痛いことに変わりがないと思います。便宜上小さな痛みと言いますが、この小さな痛みであっても、精神的損害が発生していることに変わりはないのではないでしょうか。

 

 そうだとすると、例えば、「子供が死亡したときにも比肩」する程度の場合には、母親の慰謝料が1000万円だとしても、それよりも低い程度の場合には、800万円、500万円、300万円、100万円、50万円、30万円、10万円という形で、賠償額で調整すべきではないでしょうか。

 

 つまり、子供が顔に傷を負った場合には、母親の慰謝料請求権を原則認めて、その上で、程度に応じて、損害賠償額を決めるという運用の方が妥当な解決を導けると思います。 

 

 まとめ

 以上のように母親の固有の慰謝料請求権は認められることがあります。個人的には門戸をもっと広げるべきだと思いますが、現状は難しい部分もあるかも知れません。

子供の顔に傷ができた時、一番悲しいのはその子供です。薄くはなっても一生残るものであればなおさらです。

そして、そのようの子供の姿を一番間近で見ているのは親です。親も辛いです。顔の傷は消えません。心の傷も消えません。ですが、せめてお金だけはきっちと貰いましょう。

 そのお金で、楽しい将来に向けた第1歩を踏み出せれば幸いです。

 

 

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夫が交通事故に!胎児の相続権とは?

 

 

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 今回は、交通事故が増えそうな季節なので、夫が交通事故に遭って他界した場合、お腹の赤ちゃんはどのような権利を有することになるか。また、示談交渉をする時にどのようなことに注意すべきかを検討してみたいと思います。

 

 交通事故が起きた場合の権利関係

 まず、交通事故が発生した場合には、被害者は加害者に対して不法行為に基づく損害賠償請求をすることができます(民法709条・710条参照)。

 つまり、交通事故で夫が亡くなった場合には、夫は損害賠償請求権を有することになります。

 

 そして、夫が有している損害賠償請求権を妻と子が相続することになります。(ここで相続する権利の中には、夫の慰謝料請求権も含まれます)。

 また、このような夫の権利を相続するだけでなく、配偶者と子供は、固有の慰謝料請求権を有することになります。民法711条です。

 

 民法711条を見てみましょう

 民法711条は「他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、

その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない」と規定しています。

 

 こりゃまた難しい条文ですね!

 

 この条文は、ある人が死亡した場合にその近親者が精神的損害を被ることが多いことを前提にしています。しかし、被害者本人ではない近親者が精神的損害を被ったことを立証するのは困難なため、一定の近親者、父母、配偶者、子の精神的損害を推定し、慰謝料請求権を認める規定です。

 

 簡単に言うと、夫が死亡すると妻は悲しいですよね。例外もあるかもしれませんが、通常は悲しむと思います。このような通常、妻に心の傷が生じるため、妻の心の傷があることを推定する規定が民法711条です。その結果、妻は加害者に対して慰謝料請求できることになります。

 

 以上から夫が交通事故で死亡した場合には、妻と子は二つの権利を有することになります。

 一つ目、相続する夫の損害賠償請求権です

   

 二つ目は、固有の慰謝料請求権です。

 

 胎児の権利

 では、胎児の場合は、どうでしょうか。

民法3条1項を見てみましょう「私権の享有は、出生に始まる」と規定しています。

簡単に言うと、人は生まれてから初めて権利義務の主体になるという原則です。そのため、生まれていなければ、権利を承継したり、権利を保有したりできないのが原則です。そうだとすると、胎児は夫の死亡時点で生まれていないので、損害賠償請求権等を相続できないように思えますよね。

 

 しかし、例外があります。

 

 まず、相続については、民法886条1項があります。同条では、「胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす」と規定しています。そのため、夫が死亡した時点で、胎児はすでに生まれた扱いになるので、相続権を有することになります。

  よって、夫の有する損害賠償請求権を胎児は相続することができます。

 

 また、固有の慰謝料請求権については、民法721条で「胎児は、損害賠償請求権については、既に生まれたものとみなす」と規定されおり、固有の慰謝料請求権を胎児は有すると考えられています。

 その結果、胎児は被害者の出生している子供と同様の権利を有することになります。

 

 示談をする時のポイント

 では、示談をする時にはどのような点に気を付ければよいでしょうか。胎児の出生前に、妻が胎児の分も含めて示談をすることがよくありますが、このような場合にはどのような点に気を付ければよいでしょうか。

 

 まず、胎児が出生をする前であっても、妻は、胎児を代理して示談を行うことができると考えられています。そのため、法律上有効に、加害者と妻で胎児の出生前に示談をすること自体はできます。

 

 しかし、ここでは主に二つのことに注意が必要です。

 

 胎児が出生しない場合

 一点目は、胎児が出生してない場合です。夫が交通事故で他界した場合に、妻が精神的なショックで、流産してしまうことがあります。示談は、法律上和解契約に当たります。そして、胎児が出生しなかった場合には、妻の和解契約に関する代理権はなかったことになり、和解契約も効果が生じません。

 

この点については、胎児の部分のみ和解契約として効果が生じないのかすなわち、一部分に関してのみ効果が生じないのか、それとも、妻の部分も含んだ全部について効果が生じないのかは、議論の余地がありますが、いずれにしても、示談をやり直さなくてならなくなります。

 

 胎児が後遺症を負って出生した場合

 二つ目は、少し複雑な問題ですが、妻が精神的ショックを受け、胎児が後遺症を負って出生してしまった場合です。

 この場合、加害者が交通事故を起こしこれにより夫が死亡したことで、妻が精神的なショックを受けて、これによって、胎児が後遺症を負っているため、加害者の過失行為と、胎児の後遺症損害には因果関係があり、加害者に胎児の後遺症についての損害賠償責任が認められます。

 

 そのため、元気に出生した場合とは異なり、加重した賠償責任が加害者には成立することになります。

 

 しかし、一度和解が成立すると、その前提となっている事柄以外については再度争うことができません。つまり、この胎児の後遺症がないことが、和解の前提になっていたというケースでなければ、後に胎児の後遺症の部分について請求することができなくなります。

 

 また、仮に、胎児の後遺症がないことが前提となっていた場合には、後遺症の部分については損害賠償請求することが可能です。しかし、通常再度示談交渉をする流れになります。

 

 まとめ

 以上のように妻と胎児は夫の損害賠償請求権を相続し、かつ、固有の慰謝料請求権を有します。しかし、胎児が生まれる前に、示談をすると後々トラブルが発生するかもしれません。 

そのため、示談をする時は、胎児が出生をしてから行う方が妥当だと言えます。

 

 

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詐欺師に騙された。詐欺師からお金を取り戻す方法は?

 

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 「オレオレ母さん。俺だよ!」という振り込め詐欺が今や定着してしまいましたが、最近は還付金詐欺やワンクリック詐欺などの様々なバリエーション豊富な詐欺が発生しています。怖いですね。

騙されないように注意することが一番大事!「そりゃそうだ!」と皆さん思いますよね。ですが、騙されてしまったらどうすればよいのでしょうか?詐欺師に騙されてしまった場合、どのようにして詐欺師からお金を取り戻すことができるのでしょうか。今回は、詐欺師からお金を取り戻す方法について検討してみたいと思います。

 

 そもそも、詐欺とは?

 まず、詐欺とは、詐欺行為によって相手方を錯誤に陥れて、当該錯誤に基づいて財物を交付させる行為です。

 

と!

 

 なんだか難しいですよね。具体的に検討します。例えばオレオレ詐欺の場合を考えてみましょう。

詐欺師>「オレオレ。俺だよ!母さん。」

母>「たかし?元気にやってる?」

詐欺師>「そうだよ。たかしだよ!実は大変なんだ会社のお金を使い込んでしまって明日までに500万円必要なんだ。お願い母さん!助けて」(詐欺行為)

母>「たかし何しているのよ!わかった。すぐに母さんお金を振り込むね!」(錯誤)

 母はその後、銀行でお金を振り込み、詐欺師の口座へお金が移転(交付行為)

 

 B級映画のワンシーンみたいになってしまいましたが、要するに、ここでの詐欺行為は、「たかし」であること、「たかしが会社のお金を使い込み補てんのために明日までに500万円必要」だという嘘をついていることです。そして、母は、その嘘を信じたため、これが錯誤になり、その後、銀行に振り込んだ時点で交付行為及び財物移転が完了するので、詐欺が完成します。

 

補足)このような詐欺は、刑法246条の詐欺罪に当たり、「十年以下の懲役に処する」とされています。絶対にやらないようにしましょう。フリではありません。

 

 詐欺師自身に請求する方法

 では、このような詐欺に騙されてしまい実際にお金を振り込んでしまった場合には、詐欺師にどのようにして返還を求めるべきでしょうか。

 これを規定しているのが、民法703条及び704条です(民法709条で請求もできますが、これは不法行為に基づく損害賠償請求のため、方法としては迂遠だと思います。)

 

 民法703条・民法704条は、不当利得という制度を規定しています。不当利得制度とは、法律上の原因がないにもかかわらず、財物等を交付した場合にその返還を請求することができる制度です。

 簡単にいうと、詐欺は民法96条に当たります。詐欺によって財物を交付したり契約をしたりした場合でも、それを取消すことを民法は認めています。

 そして、取消の場合、当該交付や契約がさかのぼって無かったことになります。その結果、詐欺に騙さてお金を振り込んだとしても、詐欺師は、法律の原因がない、つまり不法にお金を保有しいてることになりますので、不当利得に当たり、被害者は返還を請求することができます。

 

 このような詐欺師に対する返還請求は非常に簡明です。

 

 

 

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 詐欺師が逃亡した場合にはどうするの?

 では、詐欺師が逃げてしまった場合には、どうすればよいのでしょうか?具体的にいうと、詐欺師が逃亡し、どこにいるかわからない場合裁判を起こすことはできないのでしょうか?

 

この点について、「詐欺師がどこにいるかわからない以上、泣き寝入りをするしかない」と思っている方も多いですが、実はこの場合、裁判を起こすことは可能です。いわゆる公示送達(民法110条1号)という方法を使います。

 

そもそも、裁判を起こすときには、訴状を裁判所に提出し、裁判所が訴状を被告に送達することで初めて有効な裁判が開始できます。ここでの送達は、手渡しで行うのが原則ですが、被告がどこにいるかわからない場合には、裁判所の掲示板に掲載することで、送達が完了します。これが公示送達です。そのため、被告である詐欺師がどこにいるかわからなくても、公示送達の方法で有効に裁判をすることができます。

 

 実際の勝訴の見込み

 実際に、オレオレ詐欺等で裁判を起こした場合には、勝訴できる可能性が高いです。というのもオレオレ詐欺の場合等は、組織的な犯罪が行われていることが多く、多数の被害届が出ており、これも詐欺の証拠として利用できます(当然、自分でも被害届を出しましょう)。また、振込み履歴や電話履歴も残っていることが多いので、裁判を有利に運べます。

 そのため、詐欺の被害にあった場合には、決して泣き寝入りをせずに、戦うことが大切です。

*他にも振り込め詐欺救済法などによる回収方法もあります。

 

お金が返ってくる可能性は?

 実際に、裁判で勝訴するのはさほど難しいことではありません。具体的なお金の回収方法としては、振り込んだ口座の詐欺師の銀行に対する預金債権を仮差押さえ、あるいは勝訴判決が出ていれば、差押さえをすることになります。そのため、詐欺師の口座にお金があれば、当然回収をすることは可能です。

 ですが、詐欺師の多くは、振り込み先の口座から一度引き出し、別の口座にお金を入れるか、自分で持っていることが多いです。そのため、回収するのは難しいです。ゆえに、回収できないから諦めた方が良いという人も多いです。

 

 しかし、本当にそうでしょうか?

 裁判は起こすべきです。というのも、今検討しているのは、詐欺師が逃亡をしている場合ですよね。大規模になればなるほど警察も力を入れるので検挙する率はかなり高いです。これを前提にして下さい。その上で、裁判を起こすメリットはいくつかあります。

 まず、裁判を起こすと、判決が確定されてから債権の時効が10年となります(民法174条の2)。その結果、判決時から10年間は詐欺師に対して支払請求をすることができます。

 また、振り込め詐欺救済法は、基本的には詐欺師の口座を凍結して詐欺の被害者に分配することをメインにしている法律にすぎません。しかし、裁判で勝訴判決を得ると、詐欺師の預金債権だけでなく、詐欺師の保有資産すべてに対して執行をかけることができます。

 つまり、詐欺師が別の口座に移して保有しているお金及び引き出して保有しているお金すべての資産に対して執行をかけることができます

 しかも、その執行は判決時から10年間はできます

 そうだとすると、逃亡していた詐欺師が発見されて検挙された際に、他の裁判をして勝訴判決を得ていない被害者は、詐欺師が任意でお金を返すことは基本的にありえないので、裁判を起こして勝訴判決を得て執行をかけるか、仮差押えの申し立てをするしかありません。

 これは時間がかかります。

 しかし、裁判で勝訴判決を得ている状態であれば、すぐに詐欺師の財産を差し押さえ執行をかけることができます。

 つまり、他の被害者に先んじて債権回収を行うことが可能になり、債権回収の可能性が上がります。

 そのため、将来のことを見越して裁判をして勝訴判決を得ておくのは非常に重要なことだと思います。 

 

ちょっと補足

 勝訴した場合には、詐欺師が有している銀行預金債権などを差し押さえることになりますが、下級審判決などでは、債権者代位(民法423条)で直接詐欺師の預金債権を取に行く方法も認めています。勉強をされている方は、債権保全の必要性を満たさないのではないか疑問に思われるかもしれません。しかし、下級審判決では債権保全の必要性を無資力要件ではなく、居所不明であることをもって認めるものがあります。そのため、無資力ではないことから直ちに債権者代位ができないことにはなりません。

 

 司法試験とか公務員試験の発展問題で出るかもしてないから気を付け下さい。

 

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夫が不倫!夫と不倫相手に損害賠償請求します

 

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 最近芸能人や政治家などの有名人の不倫問題が多いですよね。ですが、有名人だけでなく一般の方で不倫をする人も多いです。

 

昔ある小説家は「結婚は打算。不倫は純愛」と言っていました。また。ある芸能人は「不倫は文化」と言っていました。

そうだとすると、日本人は純愛を好み、最近は純愛が増えてきているのかもしれません。

 

 

本題に入ります。皆さん「不倫は許せますか?」

私は許せないです!松居さんのように最高裁まで戦うかどうかはさておき、パートナーに不倫をされたら、激オコ(すごく怒りが込み上げてくるという意味です)ですよね。

 

   なので!

 

お金を払ってもらいます。そこで、今回は、夫と不倫相手に損害賠償をする方法について検討してみたいと思います。知っている人も多いかと思いますが、宜しくお願いします。

 

 請求根拠

 そもそも、夫が不倫をした場合に、夫と不倫相手に対して、慰謝料請求をすることができます。これ自体はみなさんご存知かと思いますが、これがどうしてできるのか。

まずは、請求根拠を確認します。

 

 そもそも、請求の根拠は、民法709条及び710条にあります。この条文は、不法行為に基づく損害賠償請求を規定した条文です。簡単に説明すると、私たちは権利あるいは法律上保護された利益を有しています。

 

例えば、他人が家に勝手に入ってこない状況で生活することができる「生活の平穏」という利益や人に殴られない「身体の安全」というような利益を持っています。

 

 そのため、他人の故意又は過失行為によってこれらの権利利益が侵害され、損害が発生したならば、この損害を加害者が支払うように請求することができます。

 このことを規定したのが民法709条です。

 

そして、怪我をした場合の治療費や物が壊れた場合の修繕費は当然損害と認定できますが、これ以外にも「心が傷つく場合」もありますよね。この心が傷ついた場合の損害を精神的損害といい、この心の傷を癒してもらうために支払って貰うお金がいわゆる慰謝料です。

 これを規定しているのが、民法710条です。

 

 

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 不倫の場合は?

 では、不倫の場合について検討してみましょう。そもそも、内縁であろうが法律婚であろうが、夫婦関係が形成されれば、社会生活上の健全な夫婦関係を営む権利を有することになります。そのため、内縁であろうが法律婚であろうが、他方のパートナーが不倫をすれば、社会生活上の健全な夫婦関係を営む権利が害されることになります。

 そのため、夫が不倫をすれば、妻の社会生活上の健全な夫婦関係を営む権利利益が害されることになるため、権利侵害が認められます。その結果、心が傷つきますよね。この精神的損害を賠償してもらうために慰謝料請求をすることができます。

 

 夫への請求について

 そもそも、夫に対して慰謝料を払えと損害賠償請求する時ってどういう段階でしょうか。「バッグ1個で許してあげる」、「いやいやバッグ1個じゃ足らないから、旅行もつけてね」という段階でしょうか。

違います。離婚する段階です。

 

 通常、「この先も夫婦生活を続けていこうと思います」と言いながら、裁判所に訴えを起こす方はなかなかいないと思います。離婚をするときには、財産分与を行うのが通常です。

 

 つまり、夫婦関係が形成されていると、家計が同一で互いに協力して資産を増やしていきます。これは専業主婦の場合でも同様です。この形成された資産を離婚するときに二人で分けましょうというのが財産分与です。

 

 不倫の慰謝料は、便宜上、財産分与と一緒に行うことになります。そのため、夫に対する損害賠償請求を別に行うことは通常はないです。

 

 しかし、稀に財産分与の時に資産を分割して、慰謝料については考慮しないまま離婚してしまったというケースもあります。この場合、「財産分与が終わっちゃったから、もう泣き寝入りするしかないよね」という人もいますが、これは間違えです。というのも本来財産分与と慰謝料請求は別物なのですが、便宜上一括して行っているにすぎません。

 

そのため、財産分与で慰謝料の部分を考慮していないのであれば、別途請求をすることが可能です。

 ただし、民法724条で時効期間が3年と定められているため、早めに請求をすることが大切です。

 ちなみに、条文は「行使」と規定していますが、基本的に行使とは「請求」という意味で考えてよいです。そして、「請求」は、裁判上の請求を意味します。これを前提とすると、「弁護士に頼んで内容証明郵便を送ったから大丈夫」というのは、間違えです。

 

内容証明郵便は、民法153条の「催告」に当たります。催告だと6か月以内に裁判上の請求等をしないと、時効中断の効果が認められないため、時効が完成してしまいます。ゆえに、内容証明郵便を出してほったらかしにすると3年の時効期間が経過してしまうことがあるので、絶対にやめましょう。

 

 不倫相手に対して

 「不倫をした。でも私は夫を愛してる」その気持ちわかります。一番憎いのは不倫相手ですよね。私だったらそう思います!

 

 

 普通に夫も憎いし、不倫相手も憎いものですよね。

ここが一番重要です。不倫相手からも絶対にお金を取りましょう。不倫は良くないことです。不倫相手にはその責任をとらせる必要があります。

 

 では、実際に不倫相手に対して損害賠償請求をした場合に、勝訴する見込みはあるのでしょうか。

 

 これはケースにもよりますが、ほとんどの場合には勝訴することができます。

 裁判上最も多い不倫相手の反論(抗弁)は、不倫を開始した時点ですでに夫婦関係は破綻しており、自分が不倫したことによって夫婦関係が、壊れたわけではないというものです。

 

 非常に頭にくる反論ですよね

 

ですが、この不倫相手の反論が裁判所に認められるかどうかが、勝訴できるかどうかの分かれ目になります。

 もっとも、この反論は夫婦関係が明らかに破綻していたと認定できなければ、認められることはありません。例えば、別居して数年経って夫が不倫をしたケースや家庭内で一切の会話が数年間ない中で、夫が不倫をした等の状況です。

 そのため、例えば、単身赴任をしている場合であったり、多少夫婦間で会話がなかったり、一緒に出掛けることがなかったという程度では、不倫相手の反論は認められません。

 そのため、裁判をすれば勝てる可能性が極めて高いです。

 

ちなみに、不倫相手の反論として他にも、夫の積極性、不倫の回数期間などもポイントになりますので、離婚をご検討されている方は、これらの点についても、情報を集められるなら集めておいた方が良いです。

 また、法律サイトなどで、夫と不倫相手は不倫をした場合、共同不法行為(民法719条)になり、損害賠償を夫と不倫相手で折半する的なことを書いてある場合もありますが、 これは少し舌足らずな気がします。そもそも、共同不法行為の場合、不真正連帯債務を夫と不倫相手は負います。その結果、夫と不倫相手は全額の賠償義務を個別に被害者である妻に負います。

 具体的にいうと、例えば慰謝料が全額で300万円だとすると、夫と不倫相手は300万円を全額、被害者である妻に支払う義務を負うので、夫には150万円、不倫相手には150万円だけしか請求できないのではなく、夫が300万円支払えば不倫相手の支払義務が消滅し、逆に、不倫相手が300万円支払えば夫の支払義務が消えるだけで、夫と不倫相手が折半して150万円ずつ支払義務を負うわけではありません。それぞれ対して300万円を請求できます。

 

 そうだとすると、不倫相手に対してのみ訴えを起こした場合も慰謝料が300万円と認定されるべきですが、裁判所では実務上、300万円ではなく、共同不法行為者の一人にしか訴えを起こしていない以上、200万円あるいは150万円を認定するという運用されることもあります。

 そのため、「慰謝料が減のか!しかたがない!」と全額賠償をしてもらうのをあきらめるの早いです。

 少し必殺技的な感じですが、この場合は皆さんは不倫相手からのみ全額を取れば位目的を達成できますよね。つまり、この場合、夫と不倫相手を被告として裁判をしましょう。その結果、300万円の勝訴判決が出たとします。そうすると、不倫相手と夫にそれぞれ全額の賠償を請求できる権利を有することになります。その上で、不倫相手にのみ全額請求して、夫には請求しなければ済む話です。不倫相手にのみ請求したい人は、この方法を取るのが妥当だと思います。

 

 大切なことは?

 不倫をされると、色々なことが頭の中に浮かんできます。夫のことは好きだけど許せない。不倫相手にすべてを台無しにされた。でも、私にも悪いところがあったのか等々、色々なことが色々な角度からやってきて頭の中を駆け巡ります。ですが、「自分は悪くない」それが唯一無二の答えです。「楽しい第二の人生を歩みましょう!」

そのためには、泣き寝入りをせずにしっかりと、ケジメをつけることが大切です。

 

 

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相続のお話!~知らない親戚のオジサンの遺産は舞込むか?~

 

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 サマージャンボやロト6を見ると買いたくなる時がありますよね。私の場合人生で宝くじを買っても今までの最高額は1000円でした。でも、買ってから発表まで、「3億円当たったら何しようかな!海外旅行に行きたい!マンション欲しい!」と考えるのは、すごく楽しいです。ある意味プライスレスの楽しみですね。まぁ想像だけじゃお金にはならないですけどね。ある意味プライスレスです(笑).

 

 ごめんなさい本題に入ります。今回は、このような宝くじのように昔から伝承されている話である「知らない親戚のオジサンの遺産が舞い込んだ」というものが実際にあり得るのかどうか、相続の観点から法律的に検討してみたいと思います。

 

 そもそも相続って何?

 相続とは、自然人(法人ではない人=人間)が持っている権利義務を包括的に承継することを言います。つまり、人間が死んだときに、死亡時点で有していた財産を親族等が貰い受けることです。

ここでの財産は、預金や不動産等のプラスの財産のみならず、借金などのマイナスのものも含まれます。そのため、借金の方が多い場合には、相続放棄をすることになると思います。

 

 ここでの注意点は二つあります。相続放棄は、「相続が開始」つまり、被相続人(遺産を持って他界した人)が死亡してから3か月以内に家庭裁判所に申し立てなければなりません。

 そのため、親が事業等に失敗して借金が多く残っている場合で、親が他界したときは、3か月以内に財産関係を整理して、家庭裁判所で申述をしなくてはいけません。なので、このケースでは直ぐに行動をしましょう!(詳しくは民法915条以下を参照して下さい)

 

 もう一点さらに重要です!そもそも、親の財産状況って詳しく知っていますか?私は知らないです。実は親の財産が不動産や預金・有価証券あるいは借金等どのような種類でどの程度あるのか把握していない方は非常に多いです(「仲間を増やそう作戦!」)

 

 この場合、遺産の中で預金とかプラス資産が多い場合は、欲しいですよね。私は、欲しいです!逆に、借金が多い場合は、背負いたくないですよね。私は、背負いたくないです!(なんだか自己主張が強い人になってしまいごめんさない)。

 

 実は、これは法律で認められています。つまり全体財産がプラスの場合だけ相続することが可能です。これを限定承認と言います(民法922条)。正確には、借金がある場合には、遺産の限度で支払うことを承認することですが、逆に言うと、借金を支払ってプラスなら、貰いますよという意味になります。

 この場合も、相続放棄と同様に3ヶ月以内に家庭裁判所で申述をすることが必要になります。なので、親の遺産の内容が不明なときは、限定承認をするのが妥当です。

 

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相続人と相続分は?

 では、このような遺産を貰える相続人は誰なのでしょうか。

 まず、結婚をされている場合には、配偶者は除外事由がない限り、絶対的に相続人となります。また、子供も同様に除外事由がない限り絶対的に相続人となります。

 他方、子供がいない場合には、親・兄弟が相続人になります。

 

 具体的な相続分については、相続人が誰かで大きく異なります。

そこで、Aさんが1000万円の遺産を残して死亡した場合という例を使って具体的に検討してみたいと思います。

 

  •  子供のみのケース

 

 まず、配偶者がおらず、子供のみが相続人となる場合です。この場合、子供が全ての財産を相続します。

 そのため、1000万円の遺産は全て子供が相続します。

 

  •  配偶者と子供のケース

 

 次に、配偶者と子供が相続人となる場合です、この場合、配偶者と子供で2分の1ずつ相続します。

 そのため、配偶者が500万円を相続し、子供が500万円を相続することになります。

 

  •  配偶者と親のケース

 

さらに、配偶者と親が相続人となる場合です。この場合、配偶者が3分の2、親が3分の1を相続をします。 

そのため、配偶者が約666万円、親が約333万円を相続することになります。

 

  •  配偶者と兄弟姉妹のケース

 

配偶者と兄弟姉妹が相続人となる場合です。この場合は、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1を相続します。

 そのため、配偶者が750万円、兄弟姉妹が250万円を相続します。

 

  • 今回は、寄与分などは全く考慮しないことを前提に書いています。

 

 代襲相続って何?

 上記に書いたことが原則です。そうだとすると、自分はオジサンから見て甥や姪に当たりますよね。なので、先の相続人ではなく、オジサンの遺産は自分に舞込むことがないように思いますよね。「なんだ都市伝説だったのか!世の中そう上手くはいかないよな」と落胆すると思います。

 

ところがどっこい!(死語)実は遺産が入ってくる場合があります。これが代襲相続と言われているものです。

 代襲相続とは、簡単に言うと本来の相続人がいない場合に、一定の者を相続人として扱う制度です。「ん?何のことだ?」と思いますよね。

 民法887条2項本文を見てみましょう。

「被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八九一条の規定(欠格事由)に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる」と規定しています。

 さらに、同法889条2項は、兄弟姉妹が相続人になるケースでは、「第八八七条二項(代襲相続)の規定は、・・・準用する」と書かれています。

 

 なるほど!・・・・・・・・・・よくわからない!

 なので、具体的に検討します。

 まず、民法887条1項では、相続人が死亡又は、欠格事由、廃除があった場合に、相続人の子供が代襲相続できると規定しています。

欠格事由とは、相続人を殺した等です。廃除とは、被相続人を虐待等しており、被相続人が相続人の相続権を生前にはく奪しておく行為です(家庭裁判所に行けば手続きできます!)

 要するに、おじいちゃんが死亡した時に、すでにお父さんが死亡していた等の場合には、子供がお父さんに代わっておじいちゃんの遺産を相続しますよと民法887条1項は書いています。(もっと、解りやすく書いてよ!)

 そして、889条2項は、兄弟姉妹が亡くなっていた場合には、その兄弟姉妹の子供が兄弟姉妹に代わって相続をするということを規定しています。

 これが「知らないオジサンの遺産が舞い込んだ!」という場合です。

 どういうことかというと、自分のお父さんが亡くなっていたとします。葬儀を終えて悲しみが癒えた3年後、突然○○市役所から1本の電話が来ました。その電話で、市役所の職員が××さんという方がなくなりました。××さんには配偶者も子供もいません。また、××さんのご両親(自分から見て祖父母)も他界されています。そして、二人兄弟の兄であるあなたのお父さんも三年前に亡くなっていますね!そのため、あなたが××さんの遺産10億円を相続する権利を有していますという風になるわけです。

 図にすると、こな感じです。

 祖父(死亡)ーー―祖母(死亡)

       ↓      ↓

      父(死亡)叔父(死亡)

      ↓

      

 

 総括

 ということで、知らないオジサンの遺産は舞込むことがあるんです!

 兄弟仲が悪かったりすると、自分の父親に兄弟がいることを知らずに過ごしていることってたまにありますよね。なので、もしかしたら皆さんにも資産家のオジサンが実はいるかもしれません。そのため、ある日「10億円の資産が舞い込んだ!」なんてことが起こるかもしれません。

 素晴らしいですね!今日は「もし10億円手に入ったら何に使おうかな♪」というプライスレスな想像をしながら寝たいと思います。

 

 ちょっとプラス

 代襲相続は、相続人が相続放棄をした場合を含みません。これは相続放棄が、当該系別が相続をしない旨の意思表示を含んでいると考えられているからです。そのため、父親が相続放棄をした場合にその息子が代襲相続をすることはありません。具体的に言うと、長男に全財産を承継させるために、他の兄弟が相続放棄をするという方法がとられています。相続放棄によって代襲相続が生じるなら、兄弟の子供が権利主張できることになります。しかし、それは認められておらず、兄弟の子供が相続権を主張して遺産を頂戴ということはできません。

また、これは各種資格試験の短答式問題で頻出なので試験勉強をされている方はしっかりとおさえておくのが得策です。

 

 

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子供が飛び出して交通事故発生!親の責任は?

 

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 前回、子供がいじめを行った場合に、親は被害者に対して損害賠償責任を負うかを検討しました。今回は、親が目を離した隙に子供が交通事故に遭ってしまった場合、親はどのような責任を負うのか検討してみたいと思います。

 

 加害者の損害賠償責任の根拠とは

 まず、前提として加害者の損害賠償責任の根拠とは、何でしょうか。交通事故において加害者の責任を規定しているのが、民法709条・710条です。この条文は、不法行為に基づく損害賠償責任を規定している条文です。交通事故の場合、運転手に前方不注視やスピード違反あるいは徐行義務違反が認められることが多いです。このような違反行為は、いわゆる過失行為と言われます。この過失行為によって交通事故を生じさせて、第三者に損害を加えた場合は、損害を賠償すべき責任が発生することになります。

 

 でも、飛び出しとかあるよね

 このように、交通事故を起こした加害者については、損害賠償責任が生じます。しかし、子供が道路に急に飛び出してきた場合はどうでしょうか。確かに、子供を轢いてしまった運転手が加害者であることに変わりはありません。しかし、子供が飛び出したことも事故が生じた原因の一つであることに変わりはありません。では、このような子供が飛び出してきた場合に、運転手が全面的な賠償をしなくてはいけないのでしょうか

 

 基本的な考え方

 この点については、過失割合という言葉を聞いたことがある人は多いと思います。また、自動車の教習所に通っていた人なら、例えば、青信号で走行中に飛び出してきた人を轢いたときの割合と、見通しの悪い交差点で飛び出してきた人を轢いたときの過失割合が大きく違うことをご存じだと思います。この根拠となるのが、民法722条2項に定める被害者の過失というものです。しかし、この条文は少し注意が必要です。

 

 

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 民法722条2項とは

 そもそも、不法行為に基づく損害賠償責任の根本的な考え方は、生じた損害を被害者と加害者で平等に負担しましょうという点にあります。そのため、加害者だけでなく、被害者にも落ち度がある場合には、被害者にもその責任をとらせて、加害者の支払わなくてはいけない損害額を決めるという制度設計がされています。これを明確にしているのが民法722条2項です。

 

 そのため、子供が飛び出した場合には、子供にも落ち度があるため、民法722条2項の被害者の過失として、加害者の損害。・賠償額が軽減されそうですよね。しかし、物事はそんなに単純には進みません。

 

 なぜ?

 というのも、民法722条2項の被害者の過失が認められるためには、被害者に事理弁識能力があることが必要とされています。事理弁識能力とは簡単にいうと、物事を理解することができる能力です。この事理弁識能力は、大体6歳程度で認められます。そのため、3歳ぐらいの子供が飛び出し等をした場合には、事理弁識能力がないとして、被害者の過失を考慮して加害者の損害賠償責任を軽減することはできないのが原則です。

 

 おかしくないか?

 このような結論を聞くと、「3歳の子供なら仕方ないよね」という意見もあるかもしれません。しかし、「親は何をしてたんだ?」と言いたくなりますよね。例えば、母親が公園でママ友と話に夢中で、その間に子供が公園から飛び出して轢かれた場合に、加害者に全面的な賠償を求めるのは酷なように思えます。そのため、判例で修正がなされています。すなわち、最判昭和42年6月27日民集21・6・1507では、父母のように被害者と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者の過失も、いわゆる被害者側の過失として、損害賠償額で考慮されることになります。

 

 よって、先の公園での飛び出しの例では、母親は、この一体をなすとみられるような関係にある者に当たるため、ママ友と話に夢中になり、子供の監護を怠った場合には落ち度があるため、これが民法722条2項の過失として考慮されることになります。その結果、加害者の損害賠償額が軽減されることになります。

 

 まとめ

 このように3歳程度の幼児が交通事故に遭った場合には、ケースによって、親の監督不十分が損害賠償で考慮されてしまいます。つまり、自分のせいでわが子に支払われるお金が少なくなってしまう可能性があります。

(淡々とお金の話をすると、すごく血も涙もないやつに見えますね(笑)。スミマセン)

 

このようなお金の話以前に、交通事故は子供のその後の人生を大きく左右してしまいます。そのため、運転手だけでなく親もしっかりと注意をすることが大切です。

 

 ちょっと進んで

 ここからはかなりマニアックな話なので、興味のない方は読み飛ばして頂けると幸いです。

 

 法律を勉強されている方なら、民法722条2項の被害者側の過失という論点はご存知だと思います。ですが、この被害者側の過失には二つの使い方があることは、あまり知られていません。

 

 一つ目は、先で検討した幼児型の事例です。この事例では、幼児が事理弁識能力を有しないため、民法722条2項の過失認定が本来できません。そこで、当事者間の実質的な平等を実現するために、親の過失をとらえて、民法722条2項を用いています。つまり、事理弁識能力補充型の類型と言えます。

 

 二つ目は、夫婦同乗型の事例です。この夫婦同乗型の事例では、妻に生じた損害を賠償する上で、運転していた夫の過失が被害者側の過失として考慮されます。これは、夫婦の場合家計が同一であるため、加害者が妻に損害を賠償した後に、加害者は共同不法行為者である夫に求償する構図になり、お金が一度家計に入った後に、そこからまた出ていくことなります。これは迂遠です。そこで、簡易決済をするために夫の過失が考慮されるということになります。強いて言うなら簡易決済類型です。

ただ、この夫婦同乗型の場合には、同一家計であることが前提にあります現在夫婦関係が多様化しています。共働きで、同一家計といえないほど独立しているケースも多いです。そのため、この簡易決済類型に当たるとして処理できる場合も昔よりは減っていると思います。ゆえに、夫婦同乗で事故が生じた場合に、民法722条2項が適用されると即断するは危険な気がします。

 

 

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子供が同級生をいじめた。損害賠償請求・親の民事責任は?

 

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 少し前ですが、韓国でユンソナさんの息子さんが同級生をいじめていた報道がされましたが、日本でもいじめ問題は深刻ですよね。最近の事件では教育員会や学校側の対応に非難がなされていますが、いじめをした子供の親の責任はどのようになっているのでしょうか。今回は、子供がいじめをしてしまった場合に親が民事上どのような責任を負うのか検討してみたいと思います。

 

 そもそも、いじめをした子供自身の責任は?

 そもそも、いじめは、肉体的あるいは精神的に他者を傷つける行為です。典型的なものはネット上の書き込みや無視、暴言、暴行というものがあります。14歳未満は刑事上、刑罰が科されることはありませんが(刑法41条参照)、安心するのは早いです。

民法上は不法行為(民法709条・710条)が成立する可能性が高いです。

 

  というのも民法上の不法行為が成立するためには、責任能力(民法712条)が必要だとされていますが、責任能力は、判例上だいたい12歳前後で認定されています。そのため、中学生であれば責任能力が認定されます。したがって、中学生以上でいじめを行った場合には、不法行為に基づく損害賠償責任を負います。ちなみに、相手が自殺してしまった場合には、ケースにもよりますが1億円以上の損害賠償責任が生じる場合もあります。

 

 そのため、倫理的な話では当然だとして、法律的に考えてもいじめをするメリットはありません。というか相手が死ぬ可能性がある以上、「1億円を支払う覚悟をもっていじめる」って、もはや「親の仇!」レベルの怨念すら感じますよね。そのぐらいの恨みを持つって、ある意味すごいことです。むしろそのぐらいのエネルギーがあるなら、自分が楽しいと思うことにエネルギーを注いだ方が絶対に成功すると思います。

 

 いじめた子供の親の責任

 本題に戻ります。では、中学生以上でいじめをした場合、子供が損害賠償義務を負うとして、親には責任がないのでしょうか。

 

 まず、条文を見てみましょう。民法714条です。

 民法714条は「前二条の規定(民法712条の責任能力のない未成年者の場合等)により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない」と規定しています。

 

 要するに、12歳未満等の責任能力がない未成年者がいじめを行った場合には、監督義務者である親が監督を怠らなかった等と言えなければ、親も損害賠償責任を負います。

 

 では、責任能力がある中学生がいじめを行った場合に、親の責任はどうなるのでしょうか。この点について、条文には書かれていません。条文の反対解釈をすると、子供に責任能力があるのだから、子供が責任をとるべきであり、親には損害賠償責任を負わないとも考えられます。しかし、判例は一定の範囲で親の損害賠償責任を認めています。最判昭和49年3月22日民集28・2・347です。この判例では、一般的な基準として、監督義務者の監督義務違反と未成年者の不法行為の間に相当因果関係があるときは、民法709条に基づいて監督義務者は損害賠償責任を負うとしています。

  つまり、いじめをした子供の親も損害賠償責任を負うことがあります。

 

 ですが、親の監督義務違反は常に認められるということではありません。最判平成18年2月24日家月58・8・88では、少年院への入所歴のある子供が出所後、特段の非行の事実が認められない中で、子供が犯罪を行った場合でも、親が犯罪を予測することができなかったときには、監督義務違反はなく、親は損害賠償責任を負わないとされています。もっとも、この事件の子供は19歳でほぼ成人と同じ責任能力を有していた事案なので、いじめをした子供の親の監督義務違反の有無を直ちに左右するものではありませんが。

 

 

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 結局どういうこと?

 では、結局のところどのようになっているのでしょうか。実は、現在一般的な基準はありません。そのため、ケースバイケースで親の監督義務違反が認められたり認められなかったりする状況です。

 

 この問題はかなり難しい問題だと思います。例えば、いじめの問題は進学校などでも起きますが、親は教育をして偏差値の高い高校に子供を入れて、将来エリートになってほしいと願っているかもしれません。そして、親の目線でも子供が素直でやさしいように映る場合も多いです。現に最近の学校の先生でもいじめの主犯が誰なのかわからないということも多いです。

 

  そのため、親にとってわが子がとても「良い子」で、いじめをすることは全く予測することができないというような場合もあると思います。ですが、いじめを受けて自殺した子供の親がこの加害者側の言い分を全面的に納得することはできないと思います。どうしても「もっとあなたが子供をしっかりとしつけていれば、うちの子供が自殺することはなかった」と叫ぶと思います。

 

 そこで、一定の妥当な基準が必要なのではないでしょうか。

個人的には、責任能力という観点からこの問題を考察するのが良いと思います。先ほどから繰り返し述べている「責任能力」とは、そもそも、「自己の行為の責任を弁識する能力」を言います。つまり、自分の行為が法律上どのような責任を生じさせるのか理解している能力です。ですが、この責任能力にはレベルがあります。具体的にいうと、店で万引きをしたとしましょう。この万引きが如何なる責任を生じさせるのか理解していることが責任能力を認める基準になりますが、「お店で物を盗んだらおまわりさんが来て僕を警察署に連れてっちゃう」と子供が理解していれば、子供は万引きの責任の意味が解っているので、責任能力があることになります。他方、「お店で物を盗む行為は、窃盗罪となり、これが発覚すれば警察に連行されて取調べがされ、有罪となれば刑務所に入ることになる」と理解している子供にも当然責任能力があります。

 

  つまり、「責任能力がある子供」といっても、その中身の程度については大きな差があります。そうだとすると、「お巡りさんに連れてかれちゃう」という理解レベルの子供と「警察に連行され、刑務所に入ることもある」という理解レベルの子供では、行動及びその責任の意味認識の程度に大きな差があり、理解レベルが低い子供の方が、安易に人を傷つける行動に出る可能性は当然高いです。そのため、子供の理解レベル、言い換えると、年齢に応じて、親の監督すべき義務の内容も変わるのではないのでしょうか。

 

 そうだとすると、少なくとも子供が中学生の場合には、親の監督義務は重大なものであり、安易に子供の日ごろの家庭内での言動を見て、我が子がいじめをしていないと予測しただけで、監督義務違反を否定するべきではないと思います。

 

  これは一つの意見に過ぎません。なので、この意見が正しいという事では決してありません。一番重要なことは、いじめの被害者の方が納得できる加害者側の責任の取り方が実現されることです。

 

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