5分で読める法律の豆知識

テレビや新聞などで政治から芸能スキャンダルまで幅広いニュースを見ます。しかし、法律のことについて詳しく書かれたものはあまりみません。なので自分で勉強してみました。個人的に面白いと思ったものだけ書くのであまり網羅性はありません。なので暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。

知っておくおくべき!登記簿上の取締役の損害賠償責任の有無とは?

 取締役に就任すると、登記簿に記載されます。逆もまたしかりで、取締役は辞任すると、抹消登記がされることとなります。

 

 ところで、取締役は、株式会社の業務執行機関として、事業を遂行することとなりますが、その過程で、取締役は、株式会社に損害を負わせれば、会社法423条に基づく損害賠償責任を負うことがあり、第三者に損害を負わせれば、会社法429条に基づく損害賠償責任を負うことがあります。

 

 では、取締役が退任後に登記を抹消していなかった場合に、取締役は、これらの損害賠償責任を負うことはあるのでしょうか?

 

 今回は、登記簿上の取締役の損害賠償責任につい検討をしようと思います。

 

1 基本的な視点

 そもそも、取締役は、株主総会の決議により選任され、就任することとなります。そして、任期満了や解任決議により取締役を辞任することとなります。

 

 すなわち、登記簿への記載されていることは、取締役の要件ではありません。

 

 したがって、取締役を退任した者が、仮に、登記簿上、取締役として記載されていても、退任後、他の取締役が株式会社の事業執行を行い、株式会社または第三者に損害が生じさせたとしても、取締役ではない以上、賠償責任を負わないのが原則です。

 

 この点、少し注意が必要なのは、会社法第908条第2項です。同条項は「故意又は過失によって不実の事項を登記した者は、その事項が不実であることをもって善意の第三者に対抗することができない。」と規定しています。

 

 同条項は、「不実の事項を登記した者」と規定していますが、取締役の退任登記をする申請権限を持っているのは、株式会社です。

 

 すなわち、取締役は、登記をする権限を有していないため、同条項を根拠に取締役を退任した者が、同退任を対抗できないという論理は認められません。

 

 では、どのように考えるべきでしょうか?

この点について、最判昭和62年4月16日は、以下のとおり判示しています。

 

2 最判昭和62年4月16日

 まず、判例は、株式会社の取締役を辞任した者は、辞任したにもかかわらず、なお積極的に取締役として対外的又は内部的な行為をあえてしてした場合を除いては、辞任登記が未了であることによりその者が取締役であると信じて当該株式会社と取引した第三者に対して、原則、損害賠償責任を負わない旨を判示しました。

 

 もっとも、判例は「取締役を辞任した者が、登記申請者である当該株式会社の代表者に対し、辞任登記を申請しないで不実の登記を残存させることにつき明示的に承諾を与えていた等の特段の事情が存在する場合には、右の取締役を辞任した者は、同法14条の類推適用により、善意の第三者に対して当該株式会社の取締役でないことをもって対抗することができない結果、取締役として所定の責任を免れることはできないものと解するのが相当である。」と判示しました。

*なお、「同法14条」は現行の会社法第908条2項に対応する条項です。

 

3 最後に 

 前述のとおり、取締役の選任及び退任についての登記申請権限は、株式会社が有しているため、取締役自身が関与できる事項ではありません。

 もっとも、「辞任登記を申請しないで不実の登記を残存させることにつき明示的に承諾を与えていた等の特段の事情が存在する場合」には、取締役に対して、ある種の自己責任を問うことができると考えられます。

 

 したがって、判例の判示する内容は、概ね妥当であると言えます。

 

 今後の、判例の判示する「特段の事情」について、如何なる事情があれば認められるのかについて、ますます判例が蓄積していくと考えられます。