最近、離婚される方が増えていますよね。芸能人でもかつてはオシドリ夫婦と言われていたカップルの離婚も、ちらほら目につくようになりました。このような芸能人ではなくても、離婚される方は多いです。しかし、離婚をしたくても夫が離婚を承諾しないケースも多いです。そこで、今回は離婚するために、法律上どのような制度があるのか検討してみたいと思います。
離婚の歴史
かつてヨーロッパなどでは、神の前で誓いを立てた以上、離婚をすることは認められていませんでした。今でもカトリックの人は離婚をしてはいけないという戒律があります。有名な例でいえば、イギリスの国王がカトリックだと離婚できないので、プロテスタントに改宗したという説もあります。
日本では、「三行半」という言葉を聞いたことがある人も多いと思いますが、この三行半は慣習上の制度に過ぎず、公式には離婚は認められていませんでした。しかし、三行半は日本の江戸時代における離婚の方法としてよく使用されていました。つまり、夫から妻に三行半を突きつければ自動的に離婚したと扱われます。他方、妻が離婚したい場合は、縁切り寺という寺院に逃げ込めば離婚をすることができるという慣習がありました。
つまり、江戸時代では、一方的な意思表示で離婚ができたわけですね。ある意味今よりもお手頃な離婚方法ですよね。
現在の離婚制度
現在の制度では、江戸時代のように勝手に一方的な意思表示を突きつけて離婚することができるというものはありません。現在の離婚制度には、主に協議離婚、調停・審判離婚、裁判離婚の三つの制度が設けられています。
協議離婚
協議離婚は一番お馴染みの方法です。すなわち、離婚届に当事者が署名押印をして、市役所等に届け出る方法です。この方法は一番簡単です。しかし、この方法は、当事者が離婚に同意しており、また、両者の間で財産分与慰謝料などに争いがない場合に用いられる方法です。そのため、当事者の一方が離婚に同意していない場合には、使用できない方法です。
たまに夫が離婚に反対している場合に、勝手に夫の名前を離婚届に書いて市役所に出しにいけば良いと言う人がいますが、これは有印私文書偽造罪(刑法159条1項)という犯罪になる可能性があるので、絶対にやめましょう。
また、離婚届にしぶしぶサインしてしまった場合でも、離婚したくないときは、管轄している市役所にその気持ちを相談してみて下さい。場合にもよりますが、管轄している市役所で離婚届を一定期間受理しないという扱いにしてもらえるときもあるので、ダメ元で聞いてみて下さい。
調停・審判離婚
このように当事者の一方が離婚に同意してくれない時は、裁判所に訴えを起こすことができます。しかし、直ぐに法廷で判決を求めるということはできません。
というのも、法廷で判決を求める裁判手続きをしてしまうと公開の法廷で審理されることになります。つまり、だれでも傍聴できる状況下で、夫婦の生活状況を話すことになります。また、離婚というものは感情によって左右されます。
つまり、この人と今後生活したいかしたくないかという気持ちの問題が一番だと言えます。そこで、いきなり公開の法廷での裁判手続きをするわけではなく、まずは裁判所の中にある非公開の部屋で話合いが行われることになります。
その話合いで、当事者間で納得して合意をすれば、調停という処分がされて、離婚が成立することになります。他方、当事者間で合意がなされない場合には、裁判所が当事者の話を聞いて離婚を認める審判をして離婚をすることができます。しかし、この審判は当事者の合意があるわけではないので、納得のいかない当事者が異議申し立てをすると、公開の法廷で審理すべく、裁判手続きに移行することになります。
裁判離婚
では、数々の難関をクリアして見事裁判手続きまできたとします。実際に裁判手続きで離婚する件数は年間数百件程度と言われているので、かなりのレアケースと言えます。どのような場合に、裁判で離婚することができるのでしょうか。この離婚事由が書いてあるのが民法770条1項です。
民法770条は1号「配偶者に不貞な行為があったとき」
2号「配偶者から悪意で遺棄されたとき」
3号「配偶者の三年以上明らかでないとき」
4号「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」
5号「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」
と定められていますが、多くの場合は、1号又は5号に当たります。
詳説すると、1号の「配偶者に不貞な行為があったとき」とは、配偶者が不倫をしていた場合です。よく見るケースですよね。5号は1号から4号までに当てはまらない事由について包括的に規定している条文です。ここで重要なのは、「婚姻を継続しがたい重大な事由」という意味です。実はこの「事由」は時代の変化とともに大きく変わってきたと言えます。
一昔前だと離婚をすべきではないという考えが支配的でした、最近では離婚をすることは当事者の自由だという考えが定着してきました。離婚を認めるかどうかの根本的な考え方に、破綻主義というものがあります。
つまり、夫婦生活が破綻している場合には、夫婦としての関係を維持する必要がない、あるいはできないので離婚を認めるべきだという考え方です。最近では、この考え方が強いので、「婚姻を継続し難い重大な事由」とは緩やかに解釈されています。例えば、DVは当然、性格の不一致もこの「婚姻を継続し難い重大な事由」に当てはまることになります。
どうすればよいか?
このように検討してきた結果、離婚をする方法には三種類あることがわかりました。現行法上最後の砦の裁判離婚もかなり緩やかに離婚を認めていますね。そのため、夫が離婚に同意してくれない場合でも、離婚をあきらめる必要は全くありません。むしろ離婚したいと思えば極めて高い確率で離婚をすることができます。他方、夫としては奥さんに離婚されないように日々配慮をすることが大切かもしれません。