1 大切な物なのに
家を買ったり、車を買ったり、高額な買い物をすることって人生でありますよね。買う前から色々な物を見て、見積もりを取り、お値段と品質を踏まえつつ、いくつか検討をしながら選ぶ。そのような買う前のプロセスも意外に楽しいですよね。
しかし、いざ買ってみて何年か経った時に、買った時には気付かなかった不具合が見つかることもあります。
このような場合に、余計な修理代とかがかかったら非常に頭にきますよね。ところが、売主もそのような不具合があったことに気付かなかった!なんてこともあり得ます。
そこで、今回は、買った物に気付きにくい不具合があった場合に、売主に損害賠償請求をすることができるか。また、そのような損害賠償請求はどのくらいの期間まですることができるのか検討してみたいと思います。
2 瑕疵担保の話
まず、このような気付きにくい不具合のことを「隠れた瑕疵」と言います。この隠れた瑕疵については、民法上、以下の条文が規定されています。
民法第570条は「売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第五百六十六条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。」と規定しています。
そして、民法第566条1項は「売買の目的物が地上権・・・である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。」と規定しています。
また、民法第566条第3項では、「前二項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない。」と規定しています。
このように条文だけ並べてもよく分からないですよね。
隠れた瑕疵という以上、買主がその瑕疵を知らず、かつ、通常の注意義務を払っても気づかない不具合である必要があります。このような瑕疵があった場合には、色々な説明がありますが、簡単に言うと、契約した時に不具合はありませんという前提で売主が売っているのにそれに不具合があるってことは、売主は不具合があるものを売って不具合のない物だと仮定した場合の代金をもらっていることになります。
そうだとすると、売主には、その利得分だけ買主に返還させた方がよいのではないか。そのような発想があり、売主の過失の有無を問わず、買主が売主に対して損害賠償請求できることを認めました。これが瑕疵担保制度です。
また、瑕疵つまり不具合は軽微な程度から重度の程度のものまであります。つまり、瑕疵があったからといって直ちに買ったものが使えないことばかりではありません。そこで、解除については契約をした目的を達成できないときに限って、認められています。
3 消滅時効の話
では、瑕疵担保の制度が何となく分かった上で、大切なのは物を購入して自分の手許に来てから、5年後に瑕疵が判明した場合は、損害賠償請求できるのでしょうか。
先ほどの民法第566条第3項の規定で「買主が事実を知った時から1年以内にしなければならない。」と規定されているため、20年経って初めて知った場合でも、知ってから1年以内に限っては損害賠償請求することができるのでしょうか。
逆に、1年経過後に知った場合には、当然に損害賠償請求ができなくなるのでしょうか。よくわかりません。
この点について、最判平成13年11月27日民集55巻6号1311頁は瑕疵担保に基づく損害賠償請求権は「民法167条1項にいう『債権』に当たることは明らかである。」と判示し、「瑕疵担保による損害賠償請求権は消滅時効の適用があり、この消滅時効は、買主が売主に目的物の引渡しを受けた時から進行すると解するのが相当である。」と判示しました。
つまり、売主が買主に目的物を引渡してからは、10年間以内に瑕疵を知れば、損害賠償請求をすることが可能ということが明らかになりました。
4 諦めないことが大切
物を買って何年か経過してしまうと、不具合が見つかっても、「もうだいぶ時間が経過してしまったから泣き寝入りするしかないのかな」と思う方もいると思います。しかし、あきらめる必要はありません。たとえ4年後に気付いたとしても、損害賠償請求をすることが可能です。前向きな気持ちで対処することが得策です。