5分で読める法律の豆知識

テレビや新聞などで政治から芸能スキャンダルまで幅広いニュースを見ます。しかし、法律のことについて詳しく書かれたものはあまりみません。なので自分で勉強してみました。個人的に面白いと思ったものだけ書くのであまり網羅性はありません。なので暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。

承継的共同正犯についての基本的な考え方

 

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 共同正犯って難しいですよね。様々な判例や論点があり、一つ一つを丸暗記するは無理です。今回は、共同正犯の中でも有名な承継的共同正犯について、少し検討してみたいと思います。

 

1 共同正犯について

 共同正犯については、刑法第60条に規定があります。同条は「二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。」と規定しています。講学上共同正犯については、意思の連絡とそれに基づく実行が要件になるとされています。

 

2 承継的共同正犯とは

 承継的共同正犯とは、ざっくり言うと、先行行為者が実行行為に着手した後犯罪完成までの間に、後行行為者が先行行為者と意思の連絡をし、従前の犯罪行為(作出された犯罪状況等)を積極的に利用しながら実行行為を行った場合等に成立する共同正犯類型です(正確な定義は基本書等を参照した方が良いです)。

 

 途中から犯罪に加わることに、承継的共同正犯の特徴があります。つまり、通常の共同正犯の場合には、二人以上の者が、意思の連絡をし、同意思の連絡に基づき実行を行うこととなりますが、承継的共同正犯の場合には、先行行為者が実行に着手する時点では、意思の連絡がなく、途中から意思の連絡を生ずることとなります。そのため、意思の連絡が生ずる以前の先行行為者の実行行為あるいは作出された結果についても責任を負うためには、先行行為者の従前の犯罪行為(作出された犯罪状況)を積極的に利用する必要があるとされています。

 

 ここで重要なのは、あくまで途中で犯罪に加わったということです。つまり、犯罪が完成した後に、犯罪に加わったとしても承継的共同正犯は成立しないこととなります。例えば、殺人罪を例に考えてみると、AVの心臓をナイフで刺し、Vが死亡した後に、Aが更にVの死体に対して、死体だと認識した上で、ナイフで刺す行為を継続している途中で、BAと意思の連絡をし、その意思の連絡に基づきVの死体をナイフで刺す行為をしたとしても、既に殺人罪は成立した後に犯罪に加わっており、意思の連絡がそもそもない。あるいは、積極的な利用がない等の理由で、殺人罪の承継的共同正犯は成立しないこととなります。

 

 これは殺人罪の例なので比較的わかりやすいですが、強盗致傷罪(刑法240条前段)等の場合はどうでしょうか。これについて判示した下級審判決として、東京地方裁判所平成7年10月9日判決があります。

 

 

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3 東京地方裁判所平成7年10月9日判決

 同判決では、事案を簡潔にすると、先行行為者が、被害者に対して暴行をして怪我をさせ反抗を抑圧した状態にした後に、後行行為者が先行行為者と金品奪取についての意思の連絡を遂げ、反抗抑圧状態を利用して、金品を奪取した場合に、後行行為者は、何罪になるのかが問題となった事案です。

 

 同判決は、この事案において、後行行為者については「強盗罪の共同正犯としての責任を負うものの、強盗致傷罪の共同正犯としての責任までは負わないものと解するのが相当である。」と判示しました。その理由として「後行行為者は、財物奪取行為に関与した時点で、先行行為者によるそれまでの行為とその意図を認識しているのみでなく、その結果である反抗抑圧状態を自己の犯罪遂行の手段として積極的に利用して財物奪取行為に加担しているのであるから、個人責任の原則を考慮にいれても、先行行為者の行為も含めた強盗罪の共同正犯としての責任を負わせるべきものと考えられるが、反抗抑圧状態の利用を超えて、被害者の傷害の結果についてまで積極的に利用したとはいえない」にも関わらず、責任を負わせるのは個人責任の原則に反すると判示しました。

 

 

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4 注意点

 上記の下級審判決からすれば、致傷結果については、後行行為者が加わる前に既に発生しており、致傷の点については完結しており、反抗抑圧状態の積極的な利用はあっても致傷の積極的な利用はないと言えます。

 結合犯事案等の場合で承継的共同正犯を検討する際には、完結した部分とそうでない部分の峻別、言い換えると積極的利用が想定できない部分と想定できる部分を峻別することが非常に大切です。

 

 

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共謀共同正犯についての概観

 

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 刑法総論の中でも共犯は非常に難しいですよね。特に共謀共同正犯は概念として理解できても、その内容をしっかり理解するのはとても難しいと思います。そこで、今回は、共犯の中でも特に難しい共謀共同正犯についてざっくり全体を見ていきたいと思います。

 

1 共謀共同正犯とは何か?

 共謀共同正犯については、各基本書で色々な説明がなされていると思います。基本的な発想としては、実行行為者の背後にいる者を正犯として処罰するための法理というものがあります。この考え方がとても重要です。

 

 刑法第60条では「二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて共犯とする。」と規定されています。実行共同正犯の場合には、意思の連絡とそれに基づく実行行為が必要であるとされていますが、実行共同正犯の場合、二人以上の者が、意思の連絡に基づきそれぞれ実行行為を行っているため、正犯性(正犯意思)の問題は顕在化しません。他方、共謀共同正犯の場合は、共謀および共謀に基づく実行行為が必要であるとされていますが、この共謀は、通常、意思の連絡と正犯性(正犯意思)を包含した概念であり、この共謀に基づく実行が必要とされています。というのも、共謀共同正犯の場合、二人以上の者が犯罪に関与しているものの、一人の者は、実行行為を行っていないため、実行行為を行っていない者が、正犯と言えるのか、正犯性(正犯意思)の問題が顕在化することとなります。

 

 そのため、共謀共同正犯の成否の検討については、共謀(意思の連絡+正犯性(正犯意思))及び同共謀に基づく実行行為が必要ということになります。

 

2 練馬事件について

 共謀共同正犯が共同正犯の類型として認められるかにつき、初めて判示したのがいわゆる練馬事件です(最大判昭和33年5月28日(刑集12巻8号1718頁)。

 

 同判決では、共謀共同正犯が成立する要件として「2人以上の者が、特定の犯罪を行うため、共同意思の下に一体となって互いに他人の行為を利用し、各自の意思を実行に移すことを内容とする謀議をなし、よって犯罪を実行した事実が認められなければならない。したがって、右のような関係において共謀に参加した事実が認められる以上、直接実行行為に関与しない者でも他人の行為をいわば自己の手段として犯罪を行ったという意味において、その刑責の成立に差異を生ずると解すべき理由はない。」と判示しています。

 

 ここで重要なのは、「直接実行行為に関与しない者でも他人の行為をいわば自己の手段として犯罪を行ったという意味において、その刑責の成立に差異を生ずると解すべき理由はない。」と判示している部分です。

 

 つまり、あくまでも正犯として処罰するために、自己の手段として犯罪を行ったという点を重視し、教唆犯ではなく共謀共同正犯という共同正犯の類型を認めることとなります。その結果、共謀共同正犯の成立要件としての共謀とは、意思の連絡だけでなく、正犯性(正犯意思)も必要ということとなります。

 

 

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3 共謀共同正犯の検討における注意点

 各種資格試験等で、共謀共同正犯の検討をする際に、答案上、意思の連絡およびそれに基づく実行と書く人もいるかと思いますが、それですと、正犯性(正犯意思)の検討が抜け落ちる解答になっています。他方、共謀及び同共謀に基づく実行と書いている人でも、実質的に意思の連絡とそれに基づく実行行為のみを検討し、正犯性(正犯意思)を検討しない人もいます。また、共謀、正犯性、それに基づく実行という書き方をする人もいますが、この場合、共謀が何を指すのか判然としないという解答になります。

 

 そこで、答案を書く際には共謀がいかなる概念であるのか示した上で、意思の連絡と正犯性(正犯意思)を峻別しながら解答をすることが大切です。

 

 

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会社法361条の取締役報酬における退職慰労金について

 

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   株式会社と取締役の関係は、委任関係であるとされています(会社法330条)。民法上の委任契約については原則無報酬とされていますが、会社法では報酬を予定した規定として会社法第361条第1項があります。同条項は、いわゆるお手盛り防止の趣旨として規定されたものであるとされています。すなわち、取締役が自分自身の報酬を自分で決定することで、過大な報酬を定め、不当に会社財産を流出させ、株主及び会社債権者を害する事態が想定され、係る事態を防止するために定められた規定であるとされています。

 

 これらは主に報酬を想定して規定されたものですが、退職慰労金についてはどのように考えるべきでしょうか。

 

1  退職慰労金について

 そもそも、退職慰労金については、取締役が退任するにあたっての今までの感謝というようなニアンスが含まれていると思います。そうだとすると、一見、報酬などとは一線を画する金銭の支払とも思えます。しかし、一般的には、取締役の在任期間中の職務に対する後払い的なものと考えられており、最判昭和39年12月11日(民集18巻10号2143頁)では、退職慰労金についても、在職期間中における職務執行の対価として支給されるものである限り、報酬に含まれるとされています。その結果、退職慰労金についても、定款に定めがない限り「株主総会の決議をもってこれを定めるべきものであり、無条件に取締役会の決定に一任することは許されない」と同判決は判示しています。その上で、同判決では、株主総会で一定の枠が決定されており、その枠の中で、取締役会が具体的な退職慰労金の額を決定することは許される旨を判示しています。

 

 

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2  注意が必要なこと

 会社法第361条第1項では、取締役の報酬について、定款又は株主総会の決議でこれを決定する旨が定められています。そして、額が決まっていない場合には、その算定方法を定款又は株主総会の決議で決定することとなります。そのため、これらの決定により算定方法を設けた上で、取締役会が具体的な額を決定することは、同条項に違反せず、適法であるということになります。

 

 もっとも、注意が必要なのは、先に挙げたとおり会社法第361条第1項の趣旨が、お手盛り防止の趣旨にある以上、算定方法が多様な要素を盛り込みすぎ、実質的に基準として機能をしていないような場合には、取締役会が自由に報酬を決定することができてしまうため、同条項の趣旨に反し、報酬の決定が無効となる可能性があります。

 そのため、退職慰労金の算定方法を定める場合にも、基準としての明確性等が求められるます。

 

 しかし、一般の会社では、報酬基準についての見直しを定期的に行っていても、退職慰労金についての見直しがなされていない場合も多くあります。そのため、基準としての明確性を欠く場合や数十年前に規定した退職慰労金の算定方法が残ってしまっており、実際に退職慰労金を決定する場合に困るという事態も起きる可能性があります。

 そのため、報酬基準のみならず退職慰労金の基準についても定期的な見直しをすることが大切です。

 

 

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会社法第361条の取締役報酬の変更について

 

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 会社法代361条は、会社法上有名な条文です。しかし、内容を理解するのは少々難しいですよね。今回は、取締役の報酬について一度決定した後に、それを変更することが可能であるのかについて少し検討してみたいと思います。

 

 

 

1 会社第361条第1項について

  会社法第361条第1項は、以下のように定めています。

  まず、同条項の柱書では、「取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益(以下この章において「報酬等」という。)についての次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。」と定めています。そして、各号で以下のように定めています。

第1号「報酬等のうち額が確定しているものについては、その額」

第2号「報酬等のうち額が確定していないものについては、その具体的な算定方法」

第3号「報酬等のうち金銭でないものについては、その具体的な内容」

 

  これはいわゆるお手盛り防止の趣旨で定められた条項であるとされています。すなわち、取締役あるいは取締役会で、自らの報酬を自由に決定することができるとすると、取締役が自身の報酬額を過大に設定し、会社財産を不当に流出させ、株主及び会社債権者を害するおそれがあるため、かかる事態を防止するために、会社法第361条第1項は規定されたものと考えられています。

 

2 報酬額を変更する場合について

  では、一度定められた報酬額を後に変更することができるのでしょうか。

  この点、最判平成4年12月18日(民集46巻9号3006頁)では、定款又は株主総会の決議により取締役の報酬額が具体的に定められた場合において、「その報酬額は、会社と取締役間の契約内容となり、契約当事者である会社と取締役の双方を拘束するから、その後株主総会が当該取締役の報酬につきこれを無報酬とする旨の決議をしたとしても、当該取締役は、これに同意しない限り、右報酬の請求権を失うものではないと解するのが相当である。この理は、取締役の職務内容に著しい変更があり、それを前提に右株主総会決議がされた場合であっても異ならない。」と判示しています。

 

  そもそも、株式会社と取締役の関係は、委任関係であるとされています(会社法330条)。民法上の委任契約を想定して考えても、一度報酬内容の合意がなされて委任契約が成立した場合に、委任者の一方的な意思表示によって、報酬につき無報酬としたり、減額するとの内容に当然に変更されることはないと思います。あくまでもこの場合、委任者と受任者との間で再度報酬についての合意をする必要があると考えられます。ゆえに、上記最高裁判決は、契約の本質から考えれば、自然な帰結をしているものと思われます。

 

  もっとも、その後の下級審判決(東京地裁平成2年4月20日判決等)では、取締役の就任後の報酬が定められていて、その役職が任期中に変更したときには、変更後の役職について定められた報酬に当然になるとの報酬の定めや慣行がある場合に、これを知った上で取締役になった者は、意思表示をしていなくても、そのような役職の変更に伴う報酬の変動を承諾した上で、取締役に就任している以上、株式会社は一方的な意思表示によって、役職変更に伴う報酬減額をすることができる旨判示したものもあります。

 

  これについても、あくまでも取締役が、役職変更に伴う報酬減額について、会社と合意していたと考えられるケースであると思われます。つまり、あくまでも契約合意があったケースであり、上記の最高裁判決の枠を超えるものではないと思います。

 

 

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3 どうするべきか

  取締役を選任し報酬を結締した後にその報酬額を変更したいと考える場合は多くあると思います。上記の判例等は、一度定めされた報酬を変更する場合という事案で問題となっているので、逆に言えば、報酬についての契約内容を単年度ごとに見直す等の条項を定款又は株主総会の決議で定めておけば、来年度の報酬については変更することは問題がないと考えられます。そのため、取締役に報酬を定める際には、その報酬額、算定方法のみならず、期間も一緒に検討をするのが良いと思います。

 

 

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会社法第361条の取締役報酬の基本的な考え方

 

 

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 会社法を勉強していると、取締役の報酬は重要な問題であると思います。各種試験対策のみならず、実際の会社運営においても、取締役の報酬内容をどのように決定するかについては、各会社において、定款で定めをおいたり慣行等に従い、毎年の定時株主総会等で決定することが多いように思います。

今回は、取締役の報酬と退職慰労金について基本的な事柄を確認したいと思います。

 

1 取締役の報酬について

  会社法第361条第1項の柱書では、「取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益(以下この章において「報酬等」という。)についての次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。」と規定しています。そして、各号で以下のように定めています。

第1号「報酬等のうち額が確定しているものについては、その額」

第2号「報酬等のうち額が確定していないものについては、その具体的な算定方法」

第3号「報酬等のうち金銭でないものについては、その具体的な内容」

以上のように定めています。

 

  そもそも、取締役と株式会社の関係は、委任関係(会社法330条)とされています。委任契約は、民法に定めがあるとおり(民法643条以下)、原則は、無報酬となっております。そのため、会社法第361条第1項は、そのような無報酬の原則からすれば例外的な位置づけとして、取締役に報酬を支払うための条件を規定しています。ここで重要なのは、民法上の委任契約の無報酬の原則は、あくまでも、任意規定です。そのため、私的自治により委任契約であっても当事者間の合意で、報酬の支払いを決定することは当然できます。契約自由の原則により、この場合、当事者間の合意でどのような報酬内容であっても、強行法規に違反しない限り自由に決定することができるのが通常です。ところが、会社法第361条第1項は、取締役と会社との自由な合意によって報酬を決定することができるのを防止し、定款又は株主総会の決議で各号に定められた事項を決定しなければならないと定めています。

 

 それはなぜかというと、いわゆるお手盛り防止という趣旨があるからです。

 

 つまり、通常の委任契約の場合、委任者と受任者が独立しており、両者が互いに意見をぶつけ合いながら報酬についての合意に至ると思います。しかし、株式会社と取締役の関係をみると、株式会社という法人を委任者とする概念は当然にあるとしても、その法人の機関として実際に事業執行をしたり、取り決めを行うのは取締役であることが多いです(株主総会はあるものの)。そうだとすると、株式会社という委任者と取締役という受任者を概念的には整理することができたとしても、民法上の委任契約とは異なり、両者の独立性は実際のところ明確にあるとは言えません。その結果、報酬について、取締役が自分で報酬を結締する構造となり、不当に過大な報酬を決定することで、会社の財産を流出させる危険性があるということになります。その結果、会社の所有者である株主や債権者を害する結果になることが想定されます。このような事態を防止するために、会社法第361条第1項において、取締役の報酬について、定款又は株主総会の決議で、各号に定めた事項を規定することが必要とされました。

 

 

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 2 定款又は株主総会の決議で定める場合の注意点

  以上のとおり、取締役の報酬については、定款又は株主総会の決議で定めることが必要であるとされていますが、ここで注意が必要なのはただ定めれば良いというものではないということです。

 

  基本的には、第1号のとおり、額が定められている場合には、基準として明確であるため、あまり問題となることは少ないです。しかし、第2号の定めのとおり額について定めがない場合で、その算定方法を決める場合には、注意が必要です。

  各会社で、その算定方法については、独自の基準を設けていることと思いますが、その算定方法が複雑すぎたり、多様な要素を盛り込みすぎて、実質的に取締役会に一任しているのと変わらないような場合には、会社法第361条第1項に違反する可能性があります。

 

  したがって、算定方法を定める場合や既に存在する場合でも、適切な基準となっているか客観的に検討することが大切です。

 

 

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知っておきたい正当防衛が成立する場合

 

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1 はじめに

 日常生活をしていても、正当防衛という言葉を使うことはありますよね。例えば、友人からふざけて殴られたので、殴り返したり、暴言を言われたから暴言を言い返したり、そのような時に正当防衛であると言います。

 

 この正当防衛という言葉、自分の行ったことが正当であるというようなニアンスで普段使っていると思います。しかし、法律上「正当防衛」とはどのような制度なのでしょうか。

 そこで、今回は、犯罪の成否との関係で正当防衛とはどのような制度であるのか少し考えてみたいと思います。

 

2 正当防衛とは?

 まずは、条文から確認しましょう。正当防衛は、刑法第36条第1項に規定されています。

 同条項は「急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するために、やむを得ずにした行為は、罰しない。」と規定しています。

 

 なんだか分かるようで分かりにくい条文ですね。具体的に考えてみましょう。

 まず、「急迫不正の侵害」とは、違法な侵害が現に存在するか、又は間近に迫っている場合を言います。違法とは、刑事的な違法ではなくてとも、民事的な違法も含めて意味します。

 

 しかし、基本的には、殴られたり、襲われたり、そのような身体生命に対する侵害行為がなされようとしているケースが多いです。

 

 また、「急迫」と規定している以上、緊急性が必要になります。そのため、昨日殴られた奴に町でばったり出くわして、恨みを晴らそうと殴ったとしても、侵害が現に存在しているわけでも、間近に迫っているわけでもないため、「急迫」性の要件を欠き、正当防衛は成立しません。

 

 次に、「自己又は他人の権利を防衛するために」とは、どのような意味でしょうか。

 これは、簡単にいうと、防衛行為としてなされる必要があるという意味です。判例は、防衛の意思が必要としており、客観的に侵害排除に向けられた行為であるとともに、防衛の意思が必要となります。

 

 防衛の意思とは、様々な定義がありますが、急迫不正の侵害を認識し、これを避けようとする単純な心理状態であれば良いと考えられます。

 

 そもそも、殴られたら怒りますよね。怒って相手を痛めつけてやろうと思うのは、むしろ自然です。防衛の意思を言葉の通り考えると、自分又は他人を守ろうとする意思しかないといけないことになってしまい、相手を痛めつけてやろうと思ったら、全ての事案で防衛の意思を否定してしまうことになり、正当防衛は成立しません。

 

 そのため、「避けようとする単純な心理状態」があれば良いと考えられます。

 

 しかし、殴ってきた相手をただただ痛めつけてやろうと思った場合には、もはや防衛の意思ではなく、攻撃意思になっているため、正当防衛は成立しません。

 

 ちなみに、積極的加害意思と攻撃意思の違いなのですが、積極的加害意思の場合は、そもそも、急迫不正の侵害を事前に予期していることが前提となります。他方、攻撃意思の場合には、急迫不正の侵害を事前に予期していないことが前提となります。

 

 最後に、「やむを得ずにした行為」の意味が問題になります。

 この「やむを得ずにした行為」とは、相当性を意味するといいますが、相当性とは何でしょうか。簡単にいうと、防衛行為をする場合には、侵害を排除するために必要最小限度である必要がということです。

 

 そもそも、人を殴ることは犯罪です。そのため、相手が殴りかかってきて、殴り返したとしても、原則的に考えれば、その殴り返す行為は犯罪になります。これを例外的に犯罪ではなくするのが正当防衛です(難しい言葉でいうと違法性阻却事由といいます)。

 

 つまり、必要最低限度ではない防衛行為は原則通り犯罪になるということです。

 例えば、素手で殴ってきた相手に対して、日本刀で切り付けて対応する場合(質的過剰)、素手で一回殴ってきた相手に対して、100回殴り返す場合(量的過剰)には、正当防衛は成立しません。

 

 

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3 正当防衛が成立しない場合は?

 正当防衛が成立しない場合には、当然犯罪が成立します。

 しかし、先程の質的過剰、量的過剰の場合には、過剰防衛(刑法第36条第2項)に当たり、たとえ犯罪が成立するとしても、場合によっては刑が減軽されたり、免除されたりすることがあります(任意的減軽)。

 

 

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詐害事業譲渡!会社法第23条の2の債務履行請求

 

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1 最近改正されましたね

  会社法の改正は頻繁に行われていますが、最近改正された条項の中でも会社法23条の2の債務履行請求は非常に重要ですよね。判例法理として詐害行為取消しで解決していた問題を立法によって明文化することになったのですが、実際に使い方を考えてみるといまいちよく分からない条文でもあります。そこで、今回は、会社法23条の2の債務履行請求について少し考えてみたいと思います。

 

2 その内容は?

  まず、条文から見てみると、会社法第23条の2は以下のように規定しています。

 

 第1項「譲渡会社が譲受会社に承継されない債務の債権者(以下この条において「残存債権者」という。)を害することを知って事業を譲渡した場合には、残存債権者は、その譲受会社に対して、承継した財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができる。ただし、その譲受会社が事業の譲渡の効力が生じた時において残存債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。」

 

 第2項「譲受会社が前項の規定により同項の債務を履行する責任を負う場合には、当該責任は、譲渡会社が残存債権者を害することを知って事業を譲渡したことを知った時から二年以内に請求又は請求の予告をしない残存債権者に対しては、その期間を経過した時に消滅する。事業の譲渡の効力が生じた日から二十年を経過したときも、同様とする。

 

 第3項「譲受会社について破産手続開始の決定、再生手続開始の決定又は更生手続開始の決定があったときは、残存債権者は、譲受会社に対して第一項の規定による請求をする権利を行使することができない。」

 

 長い条文ですね。簡単にいう、詐害的な事業譲渡がなされた場合には、従来の判例では、詐害行為取消権の行使を認めてきました。

 

 主に問題となっていた事案としては、詐害的な会社分割と事業譲渡があります。類型として、債務を免れるために、会社を設立して、新設分割の手法により資産を承継させるものや、既にある会社に対して、事業譲渡の方法により事業を承継させるものなどがあります。

 

 形式的に考えると、債務者である譲渡会社が債務を負い続ける以上不都合がないようにも思いますが、実質的に考えれば、目ぼしい資産が譲渡会社になく、債権回収が著しく困難になってしまいます。このような構図は詐害行為の場合と同様であり、改正により譲受会社に対しても、債務の履行請求が可能になりました。

 

 

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3 少し注意したいこと

 この会社法第23条の2の請求についていくつか注意が必要なことがあります。

(1)転得者が対象になっていなこと

 詐害行為取消権の場合、転得者に対しても価額賠償請求をすることができます。しかし、会社法第23条の2の場合、対象が譲受会社に限定されています。そのため、事業が譲受会社から第三者に移転した場合に、転得者に対しては、詐害行為取消権に基づき価額賠償請求をすることになります。 

 

 余談ですが、この場合、転得者に対する価額賠償の額の算定が難しい場合もあると思います。例えば、譲渡会社から譲受会社に事業譲渡されて、譲受会社が事業を成長させて事業価値を上げた場合に、価額をいくらとすべきか、また立証も難しいのではないかと思います。

 

(2)詐害性について

 詐害性については、いわゆる無資力が重要な要素となります。ここで、事業譲渡された時の対価として、譲受会社の子会社の株式等が対価として交付され、その評価額を考慮すると無資力といえないような事態も生じます。しかし、子会社の株式が譲渡制限されて、市場に出回ることがないような株式の場合には、売却することが難しく、事業からそのような株式に資産交換する場合であっても、詐害性が認定されることもあります。

 そのため、詐害性については慎重な検討をする必要があります。

 

(3)競合した場合

 会社債権者が一人ということはまずありえません。そのため、残存債権者が複数いることも多いです。この場合、Aという残存債権者が、会社法第23条の2に基づく債務履行請求を譲受会社して、譲受会社が支払いをした後、Bという残存債権者が、会社法第23条の2に基づく債務履行請求を譲受会社にした場合に、譲受会社に支払い義務が生じるか問題となります。

 

 この点については、条文上明示されていませんが、会社法第23条の2第1項で「承継した財産の価額を限度として」と規定されているので、Aに対する支払いによって、「承継した財産の価額」を満額支払ったならば、譲受会社の責任はなくなると考えるのが素直な気がします。

 

4 難しいですね

 以上、会社法第23条の2について少し考えてきましたが、難しい条文ですね。そのため、同条の適用については、個別具体的な事案で慎重に検討することが大切だと思います。

 

 

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