5分で読める法律の豆知識

テレビや新聞などで政治から芸能スキャンダルまで幅広いニュースを見ます。しかし、法律のことについて詳しく書かれたものはあまりみません。なので自分で勉強してみました。個人的に面白いと思ったものだけ書くのであまり網羅性はありません。なので暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。

直ぐに理解できる!取締役会の承認決議を欠く代表取締役の取引行為の効力とは?

 まず、株式会社では、一般的に、代表取締役を選定することが多いです。

 そして、代表取締役を選定した場合には、会社法349条第4項の規定のとおり、「代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。」こととなります。

 

 したがって、代表取締役は、株式会社のために、取引先との契約を締結し、取引をしたり、訴訟を提起することができます。

 

 なお、代理行為と代表行為は似ていますが、若干異なるものです。代理行為の場合、代理人が本人のために、相手方と契約を締結し、その効果が本人に帰属することとなりますが、代表行為の場合は、代表者がなした行為は、本人の行為としてみなされます。したがって、代理行為と代表行為では、要件事実も異なります。

 

 少し脱線してしまいましたが、本題に戻ります。今回は、本来、取締役会の承認決議が必要であるにもかかわらず、代表取締役が、同決議を欠いて行った、取引行為の効力について少し検討してみたいと思います。

 

1 判例について

 まず、そもそも、法の一般原則に照らせば、法令違反のある行為の効力は、無効となります。しかし、取締役会の承認決議が必要な場合に、これを欠くのは、あくまでも内部的な問題に過ぎず、相手方が承認決議の有無を知ることが難しいとの実情もあわせ考えれば、対外的には有効にすべき場合もあると考えられます。

 

 この点について、一定の判断を示したのが、最高裁昭和40年9月22日判決です。

 

 判例は、「株式会社の一定の業務執行に関する内部的意思決定をする権限が取締役会に属する場合には、代表取締役は、取締役会の決議に従って、株式会社を代表して右業務執行行為に関する法律行為をすることを要する。しかし、代表取締役は、株式会社の業務に関し一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有する点にかんがみれば、代表取締役が、取締役会の決議を経てすることを要する対外的な個々的取引行為を、右決議を経ないでした場合でも、右取引行為は、内部的意思決定を欠くに止まるから、原則として有効であって、ただ、相手方が右決議を経ていないことを知りまたは知り得べかりしときに限って、無効である、と解するのが相当です。」と判示しました。

 

 すなわち、判例は、法の一般原則とは、異なり、取締役会の承認決議を経ていない場合であっても、代表取締役の取引行為は、原則有効であり、ただし、相手方が悪意または過失がある場合には、無効になるとの判断を示しました。

 

 同判例の判断枠組みは、現在も維持されています。

 

 判例の判断基準については、内部的な取締役会の承認決議を、相手方が判断をしずらいという事情を考慮すると、正当なものだと考えられます。

 

 しかし、相手方の過失評価については、個々の事案により慎重に判断をすべきと考えられます。

 

 例えば、会社法362条4項1号の「重要な財産の処分」については、法律上、取締役会の承認決議が必要であるとされています。周知のとおり、「重要な財産の処分」に該当するか否かは、個々の事案で具体的に判断する必要がありますが、金額及び会社の規模から、相手方が、重要な財産の処分に該当する可能性が高いと分かる場合もあると思います。

 

 このよう場合に、相手方が、代表取締役に対して、取締役会の承認決議を経ているか否か、確認すらしていないような事案では、過失を認めるべきだと考えられます。

 

 

 すなわち、原則、有効であるとしても、個別の事案では、効力が否定される可能性が高い事案もあります。

 

 

2 最後に

 以上のとおり、取締役の承認決議を欠く代表取締役の取引行為の効力を検討してきましたが、無効の主張をだれがすることができるのかという問題があります。

 

 この問題について、最高裁平21年4月17日判決は、無効の主張は原則として、株式会社しか行うことができない旨を判示しました。

 

そもそも、会社法362項第4項等が取締役会の承認決議を必要としているのは、代表取締役等に権力が集中し、不適切な業務執行が行われるのを未然に防ぐためであると考えられます。

 

 したがって、無効により利益を受ける会社のみに主張適格を与えるのは適切であると言えます。

 

 取締役会の承認決議を欠く代表取締役の取引行為の効力については、争う場面、取引の内容により、個別具体的な判断をせざるを得ない場合が多いです。特に、過失評価がその典型だと言えます。

 

 したがって、今後も、下級審判決も含む判例の蓄積により明確なルールが形成されていく可能性が高いです。