5分で読める法律の豆知識

テレビや新聞などで政治から芸能スキャンダルまで幅広いニュースを見ます。しかし、法律のことについて詳しく書かれたものはあまりみません。なので自分で勉強してみました。個人的に面白いと思ったものだけ書くのであまり網羅性はありません。なので暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。

押さえておくべき!会社法上の取締役の監視義務違反の話

 会社の不祥事が起きた際に、代表取締役等の事業執行をした取締役が法的責任を追及されるのは納得がいきますが、不正行為に直接関与していない取締役も法的責任を追及されるのはどこか納得がいきませんよね。

 

これはなぜでしょうか?

 

今回は、取締役が負う監視義務の内容と監視具義務違反について、少し考えてみたいと思います。

 

1 取締役の監視義務違反とは?

 まず、会社法第362条第2項第2号では、取締役会が行う職務として、取締役の職務の執行の監督が規定されています。

 そのため、取締役会の構成員である取締役は、他の取締役を監視すべき義務を負うこととなります。

 

 かかる監視義務の内容について最高裁昭和48年5月22日判決は以下のとおり判示しています。

 「株式会社の取締役会は会社の業務執行につき監査する地位にあるから、取締役会を構成する取締役は、会社に対し、取締役会に上程された事柄についてだけ監視するにとどまらず、代表取締役の業務執行一般につき、これを監視し、必要があれば、取締役会を自ら招集し、あるいは招集することを求め、取締役会を通じて業務執行が適正に行われるように職務をするものと解するべきである。」

 以上のとおり判断を示しています。

 

 最高裁の判示した内容を前提とすると、取締役は、他の取締役の職務執行について、不正行為等の表徴がある場合には、その取締役の職務執行について調査をし、不正であることが判明すれば、これを是正すべき措置を講ずるべき義務を負います。これがいわゆる監視義務の内容です。

 

 そのため、取締役は、かかる表徴があるにもかかわらず、適切な調査を行わずに、何ら是正措置を講じなければ、監視義務違反として法的責任を負うこととなります。

 

2 監視義務違反の例外とは?

 もっとも、監視義務違反については、そもそも、同違反が認められるか否か、また認められるとしても、ただちに会社法第423条に基づく損害賠償責任が生じるのか否かについては、慎重に検討をしなければなりません。

 

 そもそも、大企業等では、いわゆる内部統制システムが構築運用されているため、各取締役は、自身の担当部門を持っています。すなわち、株式会社内部で、取締役はそれぞれの担当部門において、職務執行をしているため、他の部門を担当している取締役が不正行為を行っているのか否かを知るのはなかなか難しい場合が多いです。

 

 そこで、取締役は、他の取締役が、適法かつ適切に職務執行を行っていると信頼してよく、かかる信頼が破られるような、不正をしている表徴があるような場面において、監視義務が顕在化することとなります。

 

 したがって、監視義務違反の有無については、各取締役が部門ごとに職務を執行しているのか否か、また、信頼の原則を打ち破るような表徴があるのか否かがとても重要となります。

 

 さらに、監視義務違反があったとしても、株式会社が被った損害との間に因果関係があるのかが問題になることも多いです。

 

 例えば、ある取締役が不正な出資行為を行ったとします。

 そして、1億円が会社外へ流出してしまい出資先が倒産をしてしまったとします。

 

 この場合、他の取締役が不正な出資行為について、必要な調査等を行わなかったとして監視義務違反が問題になるとしても、監視義務違反が認められる時期には、不正な出資行為は終わっており、すでに1憶円が会社外へ流失してしまっていた場合には、監視義務違反と会社の被った損害との間に因果関係がないとして、会社法第423条責任が否定される可能性があります。

 

 もっとも、事案によって異なりますが、前記例のように社外に1億円流出してしまった場合、出資行為が違法であるならば、出資行為自体が無効となり、株式会社としては、不当利得に基づく返還請求として、出資先に1億円の返還を求めることも十分に可能です。

 

 かかる状況下にあるにもかかわらず、取締役が、調査及び是正措置を講じずに放置しているような場合には、回収可能性が下がったことを損害として捉えた上で、因果関係があると認定することもあり得るとは思います。

 

3 結局のところ

 以上のとおり、取締役の監視義務違反について検討をしてきましたが、実際のところ、同義務違反があるか否かを判断するのは難しいです。また、会社法第423条に基づき責任追及をする場面において、監視義務違反が認められるとしても、因果関係が肯定されるか否か慎重な判断をする必要があると言えます。