5分で読める法律の豆知識

テレビや新聞などで政治から芸能スキャンダルまで幅広いニュースを見ます。しかし、法律のことについて詳しく書かれたものはあまりみません。なので自分で勉強してみました。個人的に面白いと思ったものだけ書くのであまり網羅性はありません。なので暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。

会社法第361条の取締役報酬の基本的な考え方

 

 

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 会社法を勉強していると、取締役の報酬は重要な問題であると思います。各種試験対策のみならず、実際の会社運営においても、取締役の報酬内容をどのように決定するかについては、各会社において、定款で定めをおいたり慣行等に従い、毎年の定時株主総会等で決定することが多いように思います。

今回は、取締役の報酬と退職慰労金について基本的な事柄を確認したいと思います。

 

1 取締役の報酬について

  会社法第361条第1項の柱書では、「取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益(以下この章において「報酬等」という。)についての次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。」と規定しています。そして、各号で以下のように定めています。

第1号「報酬等のうち額が確定しているものについては、その額」

第2号「報酬等のうち額が確定していないものについては、その具体的な算定方法」

第3号「報酬等のうち金銭でないものについては、その具体的な内容」

以上のように定めています。

 

  そもそも、取締役と株式会社の関係は、委任関係(会社法330条)とされています。委任契約は、民法に定めがあるとおり(民法643条以下)、原則は、無報酬となっております。そのため、会社法第361条第1項は、そのような無報酬の原則からすれば例外的な位置づけとして、取締役に報酬を支払うための条件を規定しています。ここで重要なのは、民法上の委任契約の無報酬の原則は、あくまでも、任意規定です。そのため、私的自治により委任契約であっても当事者間の合意で、報酬の支払いを決定することは当然できます。契約自由の原則により、この場合、当事者間の合意でどのような報酬内容であっても、強行法規に違反しない限り自由に決定することができるのが通常です。ところが、会社法第361条第1項は、取締役と会社との自由な合意によって報酬を決定することができるのを防止し、定款又は株主総会の決議で各号に定められた事項を決定しなければならないと定めています。

 

 それはなぜかというと、いわゆるお手盛り防止という趣旨があるからです。

 

 つまり、通常の委任契約の場合、委任者と受任者が独立しており、両者が互いに意見をぶつけ合いながら報酬についての合意に至ると思います。しかし、株式会社と取締役の関係をみると、株式会社という法人を委任者とする概念は当然にあるとしても、その法人の機関として実際に事業執行をしたり、取り決めを行うのは取締役であることが多いです(株主総会はあるものの)。そうだとすると、株式会社という委任者と取締役という受任者を概念的には整理することができたとしても、民法上の委任契約とは異なり、両者の独立性は実際のところ明確にあるとは言えません。その結果、報酬について、取締役が自分で報酬を結締する構造となり、不当に過大な報酬を決定することで、会社の財産を流出させる危険性があるということになります。その結果、会社の所有者である株主や債権者を害する結果になることが想定されます。このような事態を防止するために、会社法第361条第1項において、取締役の報酬について、定款又は株主総会の決議で、各号に定めた事項を規定することが必要とされました。

 

 

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 2 定款又は株主総会の決議で定める場合の注意点

  以上のとおり、取締役の報酬については、定款又は株主総会の決議で定めることが必要であるとされていますが、ここで注意が必要なのはただ定めれば良いというものではないということです。

 

  基本的には、第1号のとおり、額が定められている場合には、基準として明確であるため、あまり問題となることは少ないです。しかし、第2号の定めのとおり額について定めがない場合で、その算定方法を決める場合には、注意が必要です。

  各会社で、その算定方法については、独自の基準を設けていることと思いますが、その算定方法が複雑すぎたり、多様な要素を盛り込みすぎて、実質的に取締役会に一任しているのと変わらないような場合には、会社法第361条第1項に違反する可能性があります。

 

  したがって、算定方法を定める場合や既に存在する場合でも、適切な基準となっているか客観的に検討することが大切です。

 

 

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