財産犯の中でも、事後強盗罪は有名な犯罪ですよね。
しかし、窃盗犯が窃盗の機会に暴行又は脅迫を行ったかどうかって判断が難しいですよね。
そこで、今回は、有名な論点である事後強盗罪の窃盗の機会の論点について少し考えていきたいと思います。
1 大前提の話
まず、事後強盗罪は、刑法238条に規定されています。同条は「窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。」と規定しています。
ここで押さえるべき点が2つあります。
まず、1つ目は、いわゆる居直り強盗のとの違いです。
居直り強盗とは、例えば、空き巣等が、住居に侵入し、盗み出す財物を探している時に、家人とばったり出くわし、家人に暴行又は脅迫を行い、財物を奪取しようとする場合です。
このような居直り強盗は、あくまでも財物奪取をするために家人に対して暴行又は脅迫を行う場合です。
そのため、「財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために」暴行又は脅迫が行われておらず、事後強盗罪は成立しません。
この場合、単なる強盗罪が成立することとなります。
また、2つ目は、窃盗の機会に暴行を行ったと認定されない場合にいかなる犯罪が成立するかです。
事後強盗罪の暴行又は脅迫は、あくまでも窃盗の機会に行われる必要があるとされています(通説)。
そのため、窃盗の機会に暴行等がなされていない場合には、窃盗罪(又は窃盗未遂罪)及び暴行罪(又は傷害罪)が成立することとなります。
では、窃盗の機会とはどのように判断をするべきでしょうか?
2 窃盗の機会の判断
この点、最高裁平成14年2月14日決定では、「窃盗の犯行後も、犯行現場の直近の場所にとどまり、被害者等から容易に発見されて、財物を取り返され、あるいは逮捕され得る状況が係属していたのであるから、上記暴行は、窃盗の機会の継続中に行われたもの」と判示しています。
この点、窃盗の機会と場所的時間的接着性という基準がよく言われていますが、この接着性があるか否かをどのように判断すべきかが問題となります。
例えば、空き巣が侵入した住宅から出て、5分後に同所から500メートル離れたところで、人を殴った場合に、窃盗の機会に行ったと言えるでしょうか?
実は、この事実だけでは判断をすることができません。
というのも、例えば、空き巣が殴った人が、空き巣の存在に気が付き同人を捕まえるために追ってきた家人であるならば、窃盗の機会を肯定できる可能性が高いです。
他方、空き巣が、住宅を出て、道を歩いてたら、たまたま通行人と肩がぶつかりむしゃくしゃして殴ったとするならば、そもそも、窃盗の機会に行ったものとは言えないと思います(「逮捕を免れ」という目的を検討する以前の客観面としても否定されると思います。)
つまり、窃盗の機会に行ったか否か、時間的場所的接着性の有無については、あくまでも、財物を取り返されることを防ぐため、逮捕を免れるため、罪跡を隠滅するためという目的も考慮した上で、いかなる場面でだれに対して暴行又は脅迫を行ったのかをしっかりと検討する必要があると考えられます。
3 最後に
実際に個別具体的な事案では、窃盗の機会に該当するか否かを判断することが難しいです。そこで、「時間」「場所」以外の要素もしっかりと検討しながら結論を導き出すことが大切です。