5分で読める法律の豆知識

テレビや新聞などで政治から芸能スキャンダルまで幅広いニュースを見ます。しかし、法律のことについて詳しく書かれたものはあまりみません。なので自分で勉強してみました。個人的に面白いと思ったものだけ書くのであまり網羅性はありません。なので暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。

夫が不倫!夫と不倫相手に損害賠償請求します

 

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 最近芸能人や政治家などの有名人の不倫問題が多いですよね。ですが、有名人だけでなく一般の方で不倫をする人も多いです。

 

昔ある小説家は「結婚は打算。不倫は純愛」と言っていました。また。ある芸能人は「不倫は文化」と言っていました。

そうだとすると、日本人は純愛を好み、最近は純愛が増えてきているのかもしれません。

 

 

本題に入ります。皆さん「不倫は許せますか?」

私は許せないです!松居さんのように最高裁まで戦うかどうかはさておき、パートナーに不倫をされたら、激オコ(すごく怒りが込み上げてくるという意味です)ですよね。

 

   なので!

 

お金を払ってもらいます。そこで、今回は、夫と不倫相手に損害賠償をする方法について検討してみたいと思います。知っている人も多いかと思いますが、宜しくお願いします。

 

 請求根拠

 そもそも、夫が不倫をした場合に、夫と不倫相手に対して、慰謝料請求をすることができます。これ自体はみなさんご存知かと思いますが、これがどうしてできるのか。

まずは、請求根拠を確認します。

 

 そもそも、請求の根拠は、民法709条及び710条にあります。この条文は、不法行為に基づく損害賠償請求を規定した条文です。簡単に説明すると、私たちは権利あるいは法律上保護された利益を有しています。

 

例えば、他人が家に勝手に入ってこない状況で生活することができる「生活の平穏」という利益や人に殴られない「身体の安全」というような利益を持っています。

 

 そのため、他人の故意又は過失行為によってこれらの権利利益が侵害され、損害が発生したならば、この損害を加害者が支払うように請求することができます。

 このことを規定したのが民法709条です。

 

そして、怪我をした場合の治療費や物が壊れた場合の修繕費は当然損害と認定できますが、これ以外にも「心が傷つく場合」もありますよね。この心が傷ついた場合の損害を精神的損害といい、この心の傷を癒してもらうために支払って貰うお金がいわゆる慰謝料です。

 これを規定しているのが、民法710条です。

 

 

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 不倫の場合は?

 では、不倫の場合について検討してみましょう。そもそも、内縁であろうが法律婚であろうが、夫婦関係が形成されれば、社会生活上の健全な夫婦関係を営む権利を有することになります。そのため、内縁であろうが法律婚であろうが、他方のパートナーが不倫をすれば、社会生活上の健全な夫婦関係を営む権利が害されることになります。

 そのため、夫が不倫をすれば、妻の社会生活上の健全な夫婦関係を営む権利利益が害されることになるため、権利侵害が認められます。その結果、心が傷つきますよね。この精神的損害を賠償してもらうために慰謝料請求をすることができます。

 

 夫への請求について

 そもそも、夫に対して慰謝料を払えと損害賠償請求する時ってどういう段階でしょうか。「バッグ1個で許してあげる」、「いやいやバッグ1個じゃ足らないから、旅行もつけてね」という段階でしょうか。

違います。離婚する段階です。

 

 通常、「この先も夫婦生活を続けていこうと思います」と言いながら、裁判所に訴えを起こす方はなかなかいないと思います。離婚をするときには、財産分与を行うのが通常です。

 

 つまり、夫婦関係が形成されていると、家計が同一で互いに協力して資産を増やしていきます。これは専業主婦の場合でも同様です。この形成された資産を離婚するときに二人で分けましょうというのが財産分与です。

 

 不倫の慰謝料は、便宜上、財産分与と一緒に行うことになります。そのため、夫に対する損害賠償請求を別に行うことは通常はないです。

 

 しかし、稀に財産分与の時に資産を分割して、慰謝料については考慮しないまま離婚してしまったというケースもあります。この場合、「財産分与が終わっちゃったから、もう泣き寝入りするしかないよね」という人もいますが、これは間違えです。というのも本来財産分与と慰謝料請求は別物なのですが、便宜上一括して行っているにすぎません。

 

そのため、財産分与で慰謝料の部分を考慮していないのであれば、別途請求をすることが可能です。

 ただし、民法724条で時効期間が3年と定められているため、早めに請求をすることが大切です。

 ちなみに、条文は「行使」と規定していますが、基本的に行使とは「請求」という意味で考えてよいです。そして、「請求」は、裁判上の請求を意味します。これを前提とすると、「弁護士に頼んで内容証明郵便を送ったから大丈夫」というのは、間違えです。

 

内容証明郵便は、民法153条の「催告」に当たります。催告だと6か月以内に裁判上の請求等をしないと、時効中断の効果が認められないため、時効が完成してしまいます。ゆえに、内容証明郵便を出してほったらかしにすると3年の時効期間が経過してしまうことがあるので、絶対にやめましょう。

 

 不倫相手に対して

 「不倫をした。でも私は夫を愛してる」その気持ちわかります。一番憎いのは不倫相手ですよね。私だったらそう思います!

 

 

 普通に夫も憎いし、不倫相手も憎いものですよね。

ここが一番重要です。不倫相手からも絶対にお金を取りましょう。不倫は良くないことです。不倫相手にはその責任をとらせる必要があります。

 

 では、実際に不倫相手に対して損害賠償請求をした場合に、勝訴する見込みはあるのでしょうか。

 

 これはケースにもよりますが、ほとんどの場合には勝訴することができます。

 裁判上最も多い不倫相手の反論(抗弁)は、不倫を開始した時点ですでに夫婦関係は破綻しており、自分が不倫したことによって夫婦関係が、壊れたわけではないというものです。

 

 非常に頭にくる反論ですよね

 

ですが、この不倫相手の反論が裁判所に認められるかどうかが、勝訴できるかどうかの分かれ目になります。

 もっとも、この反論は夫婦関係が明らかに破綻していたと認定できなければ、認められることはありません。例えば、別居して数年経って夫が不倫をしたケースや家庭内で一切の会話が数年間ない中で、夫が不倫をした等の状況です。

 そのため、例えば、単身赴任をしている場合であったり、多少夫婦間で会話がなかったり、一緒に出掛けることがなかったという程度では、不倫相手の反論は認められません。

 そのため、裁判をすれば勝てる可能性が極めて高いです。

 

ちなみに、不倫相手の反論として他にも、夫の積極性、不倫の回数期間などもポイントになりますので、離婚をご検討されている方は、これらの点についても、情報を集められるなら集めておいた方が良いです。

 また、法律サイトなどで、夫と不倫相手は不倫をした場合、共同不法行為(民法719条)になり、損害賠償を夫と不倫相手で折半する的なことを書いてある場合もありますが、 これは少し舌足らずな気がします。そもそも、共同不法行為の場合、不真正連帯債務を夫と不倫相手は負います。その結果、夫と不倫相手は全額の賠償義務を個別に被害者である妻に負います。

 具体的にいうと、例えば慰謝料が全額で300万円だとすると、夫と不倫相手は300万円を全額、被害者である妻に支払う義務を負うので、夫には150万円、不倫相手には150万円だけしか請求できないのではなく、夫が300万円支払えば不倫相手の支払義務が消滅し、逆に、不倫相手が300万円支払えば夫の支払義務が消えるだけで、夫と不倫相手が折半して150万円ずつ支払義務を負うわけではありません。それぞれ対して300万円を請求できます。

 

 そうだとすると、不倫相手に対してのみ訴えを起こした場合も慰謝料が300万円と認定されるべきですが、裁判所では実務上、300万円ではなく、共同不法行為者の一人にしか訴えを起こしていない以上、200万円あるいは150万円を認定するという運用されることもあります。

 そのため、「慰謝料が減のか!しかたがない!」と全額賠償をしてもらうのをあきらめるの早いです。

 少し必殺技的な感じですが、この場合は皆さんは不倫相手からのみ全額を取れば位目的を達成できますよね。つまり、この場合、夫と不倫相手を被告として裁判をしましょう。その結果、300万円の勝訴判決が出たとします。そうすると、不倫相手と夫にそれぞれ全額の賠償を請求できる権利を有することになります。その上で、不倫相手にのみ全額請求して、夫には請求しなければ済む話です。不倫相手にのみ請求したい人は、この方法を取るのが妥当だと思います。

 

 大切なことは?

 不倫をされると、色々なことが頭の中に浮かんできます。夫のことは好きだけど許せない。不倫相手にすべてを台無しにされた。でも、私にも悪いところがあったのか等々、色々なことが色々な角度からやってきて頭の中を駆け巡ります。ですが、「自分は悪くない」それが唯一無二の答えです。「楽しい第二の人生を歩みましょう!」

そのためには、泣き寝入りをせずにしっかりと、ケジメをつけることが大切です。

 

 

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相続のお話!~知らない親戚のオジサンの遺産は舞込むか?~

 

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 サマージャンボやロト6を見ると買いたくなる時がありますよね。私の場合人生で宝くじを買っても今までの最高額は1000円でした。でも、買ってから発表まで、「3億円当たったら何しようかな!海外旅行に行きたい!マンション欲しい!」と考えるのは、すごく楽しいです。ある意味プライスレスの楽しみですね。まぁ想像だけじゃお金にはならないですけどね。ある意味プライスレスです(笑).

 

 ごめんなさい本題に入ります。今回は、このような宝くじのように昔から伝承されている話である「知らない親戚のオジサンの遺産が舞い込んだ」というものが実際にあり得るのかどうか、相続の観点から法律的に検討してみたいと思います。

 

 そもそも相続って何?

 相続とは、自然人(法人ではない人=人間)が持っている権利義務を包括的に承継することを言います。つまり、人間が死んだときに、死亡時点で有していた財産を親族等が貰い受けることです。

ここでの財産は、預金や不動産等のプラスの財産のみならず、借金などのマイナスのものも含まれます。そのため、借金の方が多い場合には、相続放棄をすることになると思います。

 

 ここでの注意点は二つあります。相続放棄は、「相続が開始」つまり、被相続人(遺産を持って他界した人)が死亡してから3か月以内に家庭裁判所に申し立てなければなりません。

 そのため、親が事業等に失敗して借金が多く残っている場合で、親が他界したときは、3か月以内に財産関係を整理して、家庭裁判所で申述をしなくてはいけません。なので、このケースでは直ぐに行動をしましょう!(詳しくは民法915条以下を参照して下さい)

 

 もう一点さらに重要です!そもそも、親の財産状況って詳しく知っていますか?私は知らないです。実は親の財産が不動産や預金・有価証券あるいは借金等どのような種類でどの程度あるのか把握していない方は非常に多いです(「仲間を増やそう作戦!」)

 

 この場合、遺産の中で預金とかプラス資産が多い場合は、欲しいですよね。私は、欲しいです!逆に、借金が多い場合は、背負いたくないですよね。私は、背負いたくないです!(なんだか自己主張が強い人になってしまいごめんさない)。

 

 実は、これは法律で認められています。つまり全体財産がプラスの場合だけ相続することが可能です。これを限定承認と言います(民法922条)。正確には、借金がある場合には、遺産の限度で支払うことを承認することですが、逆に言うと、借金を支払ってプラスなら、貰いますよという意味になります。

 この場合も、相続放棄と同様に3ヶ月以内に家庭裁判所で申述をすることが必要になります。なので、親の遺産の内容が不明なときは、限定承認をするのが妥当です。

 

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相続人と相続分は?

 では、このような遺産を貰える相続人は誰なのでしょうか。

 まず、結婚をされている場合には、配偶者は除外事由がない限り、絶対的に相続人となります。また、子供も同様に除外事由がない限り絶対的に相続人となります。

 他方、子供がいない場合には、親・兄弟が相続人になります。

 

 具体的な相続分については、相続人が誰かで大きく異なります。

そこで、Aさんが1000万円の遺産を残して死亡した場合という例を使って具体的に検討してみたいと思います。

 

  •  子供のみのケース

 

 まず、配偶者がおらず、子供のみが相続人となる場合です。この場合、子供が全ての財産を相続します。

 そのため、1000万円の遺産は全て子供が相続します。

 

  •  配偶者と子供のケース

 

 次に、配偶者と子供が相続人となる場合です、この場合、配偶者と子供で2分の1ずつ相続します。

 そのため、配偶者が500万円を相続し、子供が500万円を相続することになります。

 

  •  配偶者と親のケース

 

さらに、配偶者と親が相続人となる場合です。この場合、配偶者が3分の2、親が3分の1を相続をします。 

そのため、配偶者が約666万円、親が約333万円を相続することになります。

 

  •  配偶者と兄弟姉妹のケース

 

配偶者と兄弟姉妹が相続人となる場合です。この場合は、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1を相続します。

 そのため、配偶者が750万円、兄弟姉妹が250万円を相続します。

 

  • 今回は、寄与分などは全く考慮しないことを前提に書いています。

 

 代襲相続って何?

 上記に書いたことが原則です。そうだとすると、自分はオジサンから見て甥や姪に当たりますよね。なので、先の相続人ではなく、オジサンの遺産は自分に舞込むことがないように思いますよね。「なんだ都市伝説だったのか!世の中そう上手くはいかないよな」と落胆すると思います。

 

ところがどっこい!(死語)実は遺産が入ってくる場合があります。これが代襲相続と言われているものです。

 代襲相続とは、簡単に言うと本来の相続人がいない場合に、一定の者を相続人として扱う制度です。「ん?何のことだ?」と思いますよね。

 民法887条2項本文を見てみましょう。

「被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八九一条の規定(欠格事由)に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる」と規定しています。

 さらに、同法889条2項は、兄弟姉妹が相続人になるケースでは、「第八八七条二項(代襲相続)の規定は、・・・準用する」と書かれています。

 

 なるほど!・・・・・・・・・・よくわからない!

 なので、具体的に検討します。

 まず、民法887条1項では、相続人が死亡又は、欠格事由、廃除があった場合に、相続人の子供が代襲相続できると規定しています。

欠格事由とは、相続人を殺した等です。廃除とは、被相続人を虐待等しており、被相続人が相続人の相続権を生前にはく奪しておく行為です(家庭裁判所に行けば手続きできます!)

 要するに、おじいちゃんが死亡した時に、すでにお父さんが死亡していた等の場合には、子供がお父さんに代わっておじいちゃんの遺産を相続しますよと民法887条1項は書いています。(もっと、解りやすく書いてよ!)

 そして、889条2項は、兄弟姉妹が亡くなっていた場合には、その兄弟姉妹の子供が兄弟姉妹に代わって相続をするということを規定しています。

 これが「知らないオジサンの遺産が舞い込んだ!」という場合です。

 どういうことかというと、自分のお父さんが亡くなっていたとします。葬儀を終えて悲しみが癒えた3年後、突然○○市役所から1本の電話が来ました。その電話で、市役所の職員が××さんという方がなくなりました。××さんには配偶者も子供もいません。また、××さんのご両親(自分から見て祖父母)も他界されています。そして、二人兄弟の兄であるあなたのお父さんも三年前に亡くなっていますね!そのため、あなたが××さんの遺産10億円を相続する権利を有していますという風になるわけです。

 図にすると、こな感じです。

 祖父(死亡)ーー―祖母(死亡)

       ↓      ↓

      父(死亡)叔父(死亡)

      ↓

      

 

 総括

 ということで、知らないオジサンの遺産は舞込むことがあるんです!

 兄弟仲が悪かったりすると、自分の父親に兄弟がいることを知らずに過ごしていることってたまにありますよね。なので、もしかしたら皆さんにも資産家のオジサンが実はいるかもしれません。そのため、ある日「10億円の資産が舞い込んだ!」なんてことが起こるかもしれません。

 素晴らしいですね!今日は「もし10億円手に入ったら何に使おうかな♪」というプライスレスな想像をしながら寝たいと思います。

 

 ちょっとプラス

 代襲相続は、相続人が相続放棄をした場合を含みません。これは相続放棄が、当該系別が相続をしない旨の意思表示を含んでいると考えられているからです。そのため、父親が相続放棄をした場合にその息子が代襲相続をすることはありません。具体的に言うと、長男に全財産を承継させるために、他の兄弟が相続放棄をするという方法がとられています。相続放棄によって代襲相続が生じるなら、兄弟の子供が権利主張できることになります。しかし、それは認められておらず、兄弟の子供が相続権を主張して遺産を頂戴ということはできません。

また、これは各種資格試験の短答式問題で頻出なので試験勉強をされている方はしっかりとおさえておくのが得策です。

 

 

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子供が飛び出して交通事故発生!親の責任は?

 

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 前回、子供がいじめを行った場合に、親は被害者に対して損害賠償責任を負うかを検討しました。今回は、親が目を離した隙に子供が交通事故に遭ってしまった場合、親はどのような責任を負うのか検討してみたいと思います。

 

 加害者の損害賠償責任の根拠とは

 まず、前提として加害者の損害賠償責任の根拠とは、何でしょうか。交通事故において加害者の責任を規定しているのが、民法709条・710条です。この条文は、不法行為に基づく損害賠償責任を規定している条文です。交通事故の場合、運転手に前方不注視やスピード違反あるいは徐行義務違反が認められることが多いです。このような違反行為は、いわゆる過失行為と言われます。この過失行為によって交通事故を生じさせて、第三者に損害を加えた場合は、損害を賠償すべき責任が発生することになります。

 

 でも、飛び出しとかあるよね

 このように、交通事故を起こした加害者については、損害賠償責任が生じます。しかし、子供が道路に急に飛び出してきた場合はどうでしょうか。確かに、子供を轢いてしまった運転手が加害者であることに変わりはありません。しかし、子供が飛び出したことも事故が生じた原因の一つであることに変わりはありません。では、このような子供が飛び出してきた場合に、運転手が全面的な賠償をしなくてはいけないのでしょうか

 

 基本的な考え方

 この点については、過失割合という言葉を聞いたことがある人は多いと思います。また、自動車の教習所に通っていた人なら、例えば、青信号で走行中に飛び出してきた人を轢いたときの割合と、見通しの悪い交差点で飛び出してきた人を轢いたときの過失割合が大きく違うことをご存じだと思います。この根拠となるのが、民法722条2項に定める被害者の過失というものです。しかし、この条文は少し注意が必要です。

 

 

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 民法722条2項とは

 そもそも、不法行為に基づく損害賠償責任の根本的な考え方は、生じた損害を被害者と加害者で平等に負担しましょうという点にあります。そのため、加害者だけでなく、被害者にも落ち度がある場合には、被害者にもその責任をとらせて、加害者の支払わなくてはいけない損害額を決めるという制度設計がされています。これを明確にしているのが民法722条2項です。

 

 そのため、子供が飛び出した場合には、子供にも落ち度があるため、民法722条2項の被害者の過失として、加害者の損害。・賠償額が軽減されそうですよね。しかし、物事はそんなに単純には進みません。

 

 なぜ?

 というのも、民法722条2項の被害者の過失が認められるためには、被害者に事理弁識能力があることが必要とされています。事理弁識能力とは簡単にいうと、物事を理解することができる能力です。この事理弁識能力は、大体6歳程度で認められます。そのため、3歳ぐらいの子供が飛び出し等をした場合には、事理弁識能力がないとして、被害者の過失を考慮して加害者の損害賠償責任を軽減することはできないのが原則です。

 

 おかしくないか?

 このような結論を聞くと、「3歳の子供なら仕方ないよね」という意見もあるかもしれません。しかし、「親は何をしてたんだ?」と言いたくなりますよね。例えば、母親が公園でママ友と話に夢中で、その間に子供が公園から飛び出して轢かれた場合に、加害者に全面的な賠償を求めるのは酷なように思えます。そのため、判例で修正がなされています。すなわち、最判昭和42年6月27日民集21・6・1507では、父母のように被害者と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者の過失も、いわゆる被害者側の過失として、損害賠償額で考慮されることになります。

 

 よって、先の公園での飛び出しの例では、母親は、この一体をなすとみられるような関係にある者に当たるため、ママ友と話に夢中になり、子供の監護を怠った場合には落ち度があるため、これが民法722条2項の過失として考慮されることになります。その結果、加害者の損害賠償額が軽減されることになります。

 

 まとめ

 このように3歳程度の幼児が交通事故に遭った場合には、ケースによって、親の監督不十分が損害賠償で考慮されてしまいます。つまり、自分のせいでわが子に支払われるお金が少なくなってしまう可能性があります。

(淡々とお金の話をすると、すごく血も涙もないやつに見えますね(笑)。スミマセン)

 

このようなお金の話以前に、交通事故は子供のその後の人生を大きく左右してしまいます。そのため、運転手だけでなく親もしっかりと注意をすることが大切です。

 

 ちょっと進んで

 ここからはかなりマニアックな話なので、興味のない方は読み飛ばして頂けると幸いです。

 

 法律を勉強されている方なら、民法722条2項の被害者側の過失という論点はご存知だと思います。ですが、この被害者側の過失には二つの使い方があることは、あまり知られていません。

 

 一つ目は、先で検討した幼児型の事例です。この事例では、幼児が事理弁識能力を有しないため、民法722条2項の過失認定が本来できません。そこで、当事者間の実質的な平等を実現するために、親の過失をとらえて、民法722条2項を用いています。つまり、事理弁識能力補充型の類型と言えます。

 

 二つ目は、夫婦同乗型の事例です。この夫婦同乗型の事例では、妻に生じた損害を賠償する上で、運転していた夫の過失が被害者側の過失として考慮されます。これは、夫婦の場合家計が同一であるため、加害者が妻に損害を賠償した後に、加害者は共同不法行為者である夫に求償する構図になり、お金が一度家計に入った後に、そこからまた出ていくことなります。これは迂遠です。そこで、簡易決済をするために夫の過失が考慮されるということになります。強いて言うなら簡易決済類型です。

ただ、この夫婦同乗型の場合には、同一家計であることが前提にあります現在夫婦関係が多様化しています。共働きで、同一家計といえないほど独立しているケースも多いです。そのため、この簡易決済類型に当たるとして処理できる場合も昔よりは減っていると思います。ゆえに、夫婦同乗で事故が生じた場合に、民法722条2項が適用されると即断するは危険な気がします。

 

 

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子供が同級生をいじめた。損害賠償請求・親の民事責任は?

 

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 少し前ですが、韓国でユンソナさんの息子さんが同級生をいじめていた報道がされましたが、日本でもいじめ問題は深刻ですよね。最近の事件では教育員会や学校側の対応に非難がなされていますが、いじめをした子供の親の責任はどのようになっているのでしょうか。今回は、子供がいじめをしてしまった場合に親が民事上どのような責任を負うのか検討してみたいと思います。

 

 そもそも、いじめをした子供自身の責任は?

 そもそも、いじめは、肉体的あるいは精神的に他者を傷つける行為です。典型的なものはネット上の書き込みや無視、暴言、暴行というものがあります。14歳未満は刑事上、刑罰が科されることはありませんが(刑法41条参照)、安心するのは早いです。

民法上は不法行為(民法709条・710条)が成立する可能性が高いです。

 

  というのも民法上の不法行為が成立するためには、責任能力(民法712条)が必要だとされていますが、責任能力は、判例上だいたい12歳前後で認定されています。そのため、中学生であれば責任能力が認定されます。したがって、中学生以上でいじめを行った場合には、不法行為に基づく損害賠償責任を負います。ちなみに、相手が自殺してしまった場合には、ケースにもよりますが1億円以上の損害賠償責任が生じる場合もあります。

 

 そのため、倫理的な話では当然だとして、法律的に考えてもいじめをするメリットはありません。というか相手が死ぬ可能性がある以上、「1億円を支払う覚悟をもっていじめる」って、もはや「親の仇!」レベルの怨念すら感じますよね。そのぐらいの恨みを持つって、ある意味すごいことです。むしろそのぐらいのエネルギーがあるなら、自分が楽しいと思うことにエネルギーを注いだ方が絶対に成功すると思います。

 

 いじめた子供の親の責任

 本題に戻ります。では、中学生以上でいじめをした場合、子供が損害賠償義務を負うとして、親には責任がないのでしょうか。

 

 まず、条文を見てみましょう。民法714条です。

 民法714条は「前二条の規定(民法712条の責任能力のない未成年者の場合等)により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない」と規定しています。

 

 要するに、12歳未満等の責任能力がない未成年者がいじめを行った場合には、監督義務者である親が監督を怠らなかった等と言えなければ、親も損害賠償責任を負います。

 

 では、責任能力がある中学生がいじめを行った場合に、親の責任はどうなるのでしょうか。この点について、条文には書かれていません。条文の反対解釈をすると、子供に責任能力があるのだから、子供が責任をとるべきであり、親には損害賠償責任を負わないとも考えられます。しかし、判例は一定の範囲で親の損害賠償責任を認めています。最判昭和49年3月22日民集28・2・347です。この判例では、一般的な基準として、監督義務者の監督義務違反と未成年者の不法行為の間に相当因果関係があるときは、民法709条に基づいて監督義務者は損害賠償責任を負うとしています。

  つまり、いじめをした子供の親も損害賠償責任を負うことがあります。

 

 ですが、親の監督義務違反は常に認められるということではありません。最判平成18年2月24日家月58・8・88では、少年院への入所歴のある子供が出所後、特段の非行の事実が認められない中で、子供が犯罪を行った場合でも、親が犯罪を予測することができなかったときには、監督義務違反はなく、親は損害賠償責任を負わないとされています。もっとも、この事件の子供は19歳でほぼ成人と同じ責任能力を有していた事案なので、いじめをした子供の親の監督義務違反の有無を直ちに左右するものではありませんが。

 

 

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 結局どういうこと?

 では、結局のところどのようになっているのでしょうか。実は、現在一般的な基準はありません。そのため、ケースバイケースで親の監督義務違反が認められたり認められなかったりする状況です。

 

 この問題はかなり難しい問題だと思います。例えば、いじめの問題は進学校などでも起きますが、親は教育をして偏差値の高い高校に子供を入れて、将来エリートになってほしいと願っているかもしれません。そして、親の目線でも子供が素直でやさしいように映る場合も多いです。現に最近の学校の先生でもいじめの主犯が誰なのかわからないということも多いです。

 

  そのため、親にとってわが子がとても「良い子」で、いじめをすることは全く予測することができないというような場合もあると思います。ですが、いじめを受けて自殺した子供の親がこの加害者側の言い分を全面的に納得することはできないと思います。どうしても「もっとあなたが子供をしっかりとしつけていれば、うちの子供が自殺することはなかった」と叫ぶと思います。

 

 そこで、一定の妥当な基準が必要なのではないでしょうか。

個人的には、責任能力という観点からこの問題を考察するのが良いと思います。先ほどから繰り返し述べている「責任能力」とは、そもそも、「自己の行為の責任を弁識する能力」を言います。つまり、自分の行為が法律上どのような責任を生じさせるのか理解している能力です。ですが、この責任能力にはレベルがあります。具体的にいうと、店で万引きをしたとしましょう。この万引きが如何なる責任を生じさせるのか理解していることが責任能力を認める基準になりますが、「お店で物を盗んだらおまわりさんが来て僕を警察署に連れてっちゃう」と子供が理解していれば、子供は万引きの責任の意味が解っているので、責任能力があることになります。他方、「お店で物を盗む行為は、窃盗罪となり、これが発覚すれば警察に連行されて取調べがされ、有罪となれば刑務所に入ることになる」と理解している子供にも当然責任能力があります。

 

  つまり、「責任能力がある子供」といっても、その中身の程度については大きな差があります。そうだとすると、「お巡りさんに連れてかれちゃう」という理解レベルの子供と「警察に連行され、刑務所に入ることもある」という理解レベルの子供では、行動及びその責任の意味認識の程度に大きな差があり、理解レベルが低い子供の方が、安易に人を傷つける行動に出る可能性は当然高いです。そのため、子供の理解レベル、言い換えると、年齢に応じて、親の監督すべき義務の内容も変わるのではないのでしょうか。

 

 そうだとすると、少なくとも子供が中学生の場合には、親の監督義務は重大なものであり、安易に子供の日ごろの家庭内での言動を見て、我が子がいじめをしていないと予測しただけで、監督義務違反を否定するべきではないと思います。

 

  これは一つの意見に過ぎません。なので、この意見が正しいという事では決してありません。一番重要なことは、いじめの被害者の方が納得できる加害者側の責任の取り方が実現されることです。

 

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知っておきたい2つの養子制度!~普通養子と特別養子~

 

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 近年児童虐待の問題が注目されています。児童虐待は社会的害悪性が強く、子供にとってトラウマとなる親の行為です。またそれだけではなく、ある統計によれば、虐待を幼少期に受けた子供が成人して子供を持った際に、虐待をする率があがるとされています。

 

 すなわち、児童虐待は世代を超えて受け継がれ、不の連鎖を生じさせる危険があります。今回は、虐待を受けていた子供の里親となる場合に、どのような養子制度があるのか検討していきたいと思います。

 

 そもそも養子縁組とは

 養子縁組とは、血縁関係にない者の間で法律的に親子関係を形成させる行為です。養子縁組の効果として、養子は養親の嫡出子たる身分を取得します。

 

 また、抑えておきたいポイントとして、年長者を養子にすることはできません。そのため、20歳の人が50歳の人を養子にすることはできません。この場合は、20歳の人が養子になり50歳の人が養親になります。

 

 そして、もう一点、養子縁組をした日に養子に子供がいた場合、養親と養子の子供は、親族関係が生じません。具体的にいうと、先に20歳の人に2歳の子供がいたとします。その後、20歳の人が50歳の人と養子縁組をしても、この2歳の子供と50歳の人との間には親族関係は発生しません。

 

  他方、養子縁組をした後に養子に子供が生まれた場合は、養親と養子の子供の間には親族関係が生じます。具体的にいうと、最初に20歳の人と50歳の人が養子縁組をしたとします。

 

 その後数年して、20歳の人に子供が生まれた場合、50歳の人とその子供の間には親族関係が生じます。この違いは、20歳の人が先に死亡して、50歳の人がその後死亡した場合に、養子の子供に相続権があるか否か(これを代襲相続と言います)で大きな違いを生むので、注意が必要です。

 要するに、

 先>養子の子供出生――後>養子縁組=養子の子供に相続権なし

    

 先>養子縁組――後>養子の子供出生=養子の子供に相続権あり

 

 

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 養子縁組の制度

 民法には、養子縁組の制度として、普通養子と特別養子という二つの制度を設けています。

 そこで、順番に検討したいと思います。

 

 普通養子制度について

 普通養子制度は、一般的な養子縁組の方法です。テレビや映画で出てくるやつです。この普通養子制度は、色々な目的で使用されています。例えば、終活の一環で不倫相手を相続人にするために養子縁組をする場合や知人の生活保護のために養子縁組をする場合です。

 

 また、今回のテーマである虐待を受けている児童を保護するために養子縁組をする場合もあります。

 

 では、虐待を受けている児童と養子縁組をする場合には、どのような方法を用いるのでしょうか。

 未成年者を養子にする場合には、原則、家庭裁判所の許可が必要です。また、結婚をしている場合には、配偶者と共に養子縁組をしなくてはいけないのが原則です。

 

 この要件自体はさほど厳しいものではありません。要するに、虐待を受けている子供がいてこれを保護する場合に養子縁組をするときは、通常家庭裁判所の許可が認められます。

 

 また、配偶者が同意していれば共に養親になることに障害はありません。加えて、民法797条では、15歳未満の未成年者を養子にする場合には、法定代理人の承諾が必要とされていますが、これは養子縁組をする上で障害にはあまりなりません。

 

 つまり、法定代理人は、通常の場合、親ですが、親が子供を虐待していた場合、民法834条で親権喪失の審判がなされて、新たに未成年後見人が選定されているので、未成年後見人の同意があればよいことになります(親権の停止の場合は除かれますが、民法797条2項)。

 

 要するに、虐待を受けていた子供を保護するために養子縁組をするには、養育環境が整っていればさほど難しいことではありません。

 

 しかし、この普通養子には重大な問題点がありました。まず、一つ目は、養子縁組をしても、従前の親子関係は終了しません。そのため、虐待をしていた親の扶養義務等は理論上残ることになってしまいます。また、戸籍簿にも従前の親子関係や養子縁組の事実が記載されてしまいます。そのため、虐待を受けた子供が将来戸籍をとる度に自分が虐待を受けていたことや養子であることを知り精神的なダメージを負ってしまうことになります。

 

 

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 特別養子制度について

 このような普通養子の問題点を克服すためたに、特別養子制度が設けられるようになりました。特別養子制度とは、虐待等の父母が監護することができない一定の事由がある場合に、従前の親子関係(「実方」と言います)を終了さて、養子縁組を行う制度です(民法817条の2以下参照)。

 

 この特別養子縁組がなされた場合、従前の親子関係は終了し、かつ、戸籍簿上も一見しては自身が養子であることがわからないように記載されます。

 

 問題は解決したのか?

 このように特別養子縁組制度を用いた場合、児童虐待という辛い過去を捨てて新たな人生を子供が歩むことができます。そのため、問題は解決したかに見えますが、個人的にはまだまだ不十分な気がします。

 

 というのも、特別養子縁組は例外を除いて、子供が6歳未満でなければ行うことができません。そのため、イメージとしては小学校への修学が開始した場合、特別養子制度を用いることはできません。したがって、この場合、普通養子制度を利用することになります。

 一つの意見としては、子供が小学校への修学を開始すれば子供は物事をある程度理解しているので、過去を完全に消し去ることはできない。そのため、特別養子制度を用いる必要がないというものがあると思います。

 

 ですが、それは法が判断することではなく、子供及び養親が判断するべき事柄だと思います。そのため、特別養子縁組の年齢については、6歳未満ではなく可能な限り引き上げて、例えば、虐待を受けた11歳の子供が養子縁組をする際に、普通養子縁組をするのか、または特別養子縁組をするのか、選択の自由を法が保障することが大切だと思います。

 

 

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内縁の妻!結婚していない場合。内縁の妻の権利とは?

 

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 近年、籍を入れずに夫婦となっている人が増えています。また、最近では同棲のパートナーを持つ人もオープンになってきています。ですが、法律上夫婦として認められるためには、婚姻届を出さなくてはいけません。個人的には、法律上の夫婦か否かという二択ではなく、パートナーシップ制度のような、現在の内縁関係の法的保護を強化した形の制度をつくるべき時代が来ているように思います。ですが、現行法上このような制度はありません。そこで、今回は現在の内縁関係がどのような法的関係にあるのか検討してみたいと思います。

 

 夫婦としての関係

 そもそも、内縁関係とは、実社会生活において夫婦として認められる関係であるものの、婚姻届を出していない場合を言います。では、法律上の夫婦とはどのような違いがあるのでしょうか。

 前提として法律上の夫婦の場合には、夫婦同居義務、相互扶助義務、財産分与、成年擬制、姻族関係等の法的効果が生じます。

 

 夫婦同居義務とは、夫婦が同じ場所に住まなくてはいけない義務を言います(しかし、転勤の場合や別居の場合も違法ではないので、この義務自体は強い義務ではありません)。

 相互扶助義務とは、夫婦は実社会生活を送るうえで必要なお金を分担しなくてはいけないという義務です。つまり、夫がお金を使い込んでパチンコや競馬ばかりしてはいけないというような義務です。

 

 財産分与とは、離婚の際に財産を夫婦間で清算しなくてはいけないという制度です。成年擬制は、未成年の人が結婚した場合に成年になったものと扱うという制度です。例えば、未成年者が契約をする時に親の同意が必要だとされる場面が多いですが、この親の同意が不要になります。

 

 姻族関係については、婚姻をすることによって他方の配偶者の親や兄弟等の第三親等までの人が自分の親族になります。

 

 このような効果が婚姻によって生じるのですが、では内縁の場合はどのように考えるべきでしょうか。

 

 基本的な考え方としては、公的関係や第三者の身分関係が変更されるような事柄については、内縁の場合には効果が生じません。

 

 具体的に言うと、夫婦同居義務、相互扶助義務、財産分与は、公的関係やあるいは第三者の身分関係が変更されるわけではないので、内縁の場合にも効果が生じます。

 

 他方、成年擬制は、公的に成年に達したと扱う制度であるため、内縁の場合には効果が生じません。また、姻族関係も他方配偶者の親族の身分関係を変更させるものであるため、内縁の場合には効果が生じません。

 

 

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 相続の問題

 では、相続の場合はどのように扱われるのでしょうか。民法887条及び民法889条は相続人になる者を規定していますが、ここに内縁の妻は規定されていません。また、準用も認められていません。その結果、内縁の妻には相続権は認められていません。その背景には、法律婚の尊重と本人の死亡後の一定の親族の生活保護を図るということがあります。

 

 法律婚の尊重は一定程度説得力があります。つまり、結婚後不倫をしてその後不倫相手と一緒に何十年も住み続けて死亡したという事案もありますが、この場合、実質的な重婚状態にあるので、どちらの配偶者に遺産を相続させるかということを決めなくてはいけなくなります。

 

 この場合、法律婚という形式を満たした方を優先させることはやむを得ないとも思えます。というのも現在ではこのケースでは有責配偶者からの離婚請求であっても、離婚をすることができ、実質的な重婚状態を解消できます(詳しくは、私の記事の「内縁の妻と生活して20年経ちました。法律の妻と離婚できますか?(有責配偶者から離婚請求)」を参照して頂ければ幸いです。)

 

 そのため、死亡する前に離婚をして、内縁の妻と結婚をすることもできます。確かに、何十年も経って従来の婚姻関係を解消するのは、骨が折れます。気力的にも体力的にも相当な負担がかかります。しかし、後のトラブルを避けるためには、是非行った方が良いと思います。

 

 もう少し詳しく

 では、もう少し詳しく相続の問題を検討します。相続の問題を考えるときには、二つに分けて考えることが大切です。すなわち、相続人がいない場合といる場合です。

 

 まず、相続人がいない場合について検討します。内縁の妻は、相続人ではありません。しかし、日本の民法上の遺産の帰属は三段階に分かれています。

 

第1段階として、相続人がいる場合は、相続人に遺産は帰属します。

第2段階として、相続人がいない場合は、特別縁故者(民法958条)に遺産は帰属します。

第3段階として、相続人も特別縁故者もいない場合に、国に遺産は帰属します。

 

 つまり、相続人→特別縁故者→国という順番です。

 

 そして、内縁の妻は、特別縁故者に当たります。そのため、相続人がいない場合には、遺産が帰属します。

 

 他方、相続人がいる場合には、遺産は相続人に帰属します。そのため、内縁の妻に遺産が帰属することはありません。

 

 ですが、例えば、内縁の夫婦で住んでいたマンションの明け渡しを相続人から請求された場合には、権利濫用として請求が棄却されるケースもあります。しかし、権利濫用として認められるケースはあまり多くありません。そのため、例えば、マンションを借りるとき、あるいは、購入するときは、内縁の妻の名義で行った方が良いです。

 

 不法行為

 では、不法行為の場合はどうでしょうか。まず、交通事故などで夫が死亡したケースでは、相続人がいる場合、夫の有している損害異賠償請求権は内縁の妻は相続できません。もっとも、固有の慰謝料請求権を有することになります(民法709条・711条)そのため、加害者に対して損害賠償請求をすることができます。

 

 また、内縁の夫が不倫をした場合にはどうでしょうか。この点について、内縁関係は「法律上保護される利益」(民法709条・710条)であるため、内縁の夫及び不倫相手に対して慰謝料請求をすることができます

 

 総括

 このように内縁関係については法的保護がされる場面も多いです。ですが、その保護の内容及び範囲が不明確だと言えます。そのため、法律による制度構築をすべきだと思います。

 

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内縁の妻と生活して20年経ちました。正妻と離婚できますか?(有責配偶者からの離婚請求)

 

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 たまに聞くケースですが、20代の時に不倫をして妻と別居し、不倫相手と生活を始めて20年近く経ってしまったというケースです。この場合、かつて不倫相手であった相手は内縁の妻ではあるが、周囲からは正妻だと思われているというケースもありますよね。ところが、内縁の妻には相続権がありません。また、法律上の妻と離婚しない限り、重婚になってしまうため、内縁の妻とも結婚することができません。そこで、今回は、自分がかつて不倫をしてしまったものの20年近く経った場合に、離婚をする方法を検討してみたいと思います。

 

ちなみに、内縁の妻の権利は以下の記事を参照してください。

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 離婚の方法

 離婚をする方法には、三つの方法があります。それは、協議離婚(離婚届を提出する方法

)、調停・審判離婚(裁判所の非公開の部屋で行う方法)、裁判離婚(公開の法廷で行う方法)です。協議離婚及び調停は当事者間の合意が必要です。審判離婚には合意は必要ではありませんが、一方の当事者に不服がある場合には異議申し立てにより裁判離婚へと移行します。

 

(詳しくは、「離婚したい!でも夫が応じてくれない。離婚するための法律上の制度」を参照して頂ければ幸いです。)

 

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 そのため、問題となるケースは裁判離婚です。今回は不倫をした当事者(有責配偶者)から、離婚を申し立てた場合に認容されるかについて検討していきたいと思います。

 

 裁判離婚の認容要件

 裁判離婚で離婚が認められるための要件(離婚事由)は、民法770条1項に掲載されています。

民法770条は1号「配偶者に不貞な行為があったとき」

       2号「配偶者から悪意で遺棄されたとき」

       3号「配偶者の三年以上明らかでないとき」

       4号「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」

       5号「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」

と定められていますが、多くの場合は、1号又は5号に当たります。

 

 有責配偶者の離婚請求

 不倫をした有責配偶者が裁判離婚を請求した場合には、どのようになるのでしょうか。形式的には、不倫をしている以上、1号の「配偶者に不貞な行為があったとき」にあたりそうですよね。または、婚姻関係を継続できないとして、5号の「その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき」に当たりそうです。

 

 しかし、ここでは、不倫をした配偶者は離婚がしたくて、不倫をされた配偶者は離婚をしたくないということが前提にあります。それにもかかわらず、不倫をした配偶者が「私!不倫しました。なので、770条1号あるは5号の事由に該当し離婚できますよね。だから、早く離婚させて下さい!」と主張して、裁判所が「はい!そうですね!」と言って、すぐにその主張を認めてしまうと、裁判所に対する国民の信頼は地に落ちます。

 

 そこで、裁判所は一昔前、一切離婚を認めていませんでした。有名な判決として踏んだり蹴ったり判決(最判昭和27年2月19日民集6・2・110)というのもがあります。

 

 簡単に説明すると、この昭和27年の時代のころは、妻が家で専業主婦をしていることが多かったです。そのため、経済的収入は夫に依存している状況でした。そのような中で、夫が不倫をして裁判離婚を認めてしまうと、妻は不倫された挙句、家まで追い出され正に踏んだり蹴ったりであり、そのような不正義を認めることはできないとして、有責配偶者からの離婚請求を棄却していました。

 

 

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 現在は?

 このように昔の判例は価値観的には今でも共感できるのですが、時代の変化と共に判例の内容も徐々に変化してきました。その背景には二つの事柄があります。一つ目は、女性の社会進出です。近年特にそうですが、女性が社会の中で結婚後も働くケースが増えました。また、専業主婦であっても就労しようと思えば就労できる環境が社会の中で整いつつあります。そのため、夫に経済的収入を現在依存している、あるいは将来にわたって依存しなくてはいけないケースが減っています。

 

 二つ目は、破綻主義が強くなったことです。離婚を認めるか否かという判断をする上で、婚姻関係が破綻していることを重んじる考え方があります。これがいわゆる破綻主義です。

 

 一昔前ならば、結婚した以上最後まで添い遂げるべきという価値判断が強かったのですが、最近は婚姻関係が破綻しているのに夫婦であることを強要するのは本人の権利を害し、あまり意味のないことなので、離婚を認めるべきではないかという意見が強いです。そのため、婚姻関係が破綻していれば、離婚を認めるべき方向性で判断されます。

 

 では、具体的にはどのように判断されるのでしょうか。原則は、今でも離婚は認められていません。ある種の不倫をした配偶者への制裁的な要素もありますが、裁判所が不正義に加担したくないというのが本音かもしれません。しかし、当然例外もあります。その要件として、裁判例が蓄積されていますが、主な要素は三つあります。

 

 一つ目は、別居して期間が長いことです。大体の裁判例では10年程度が目安になります。二つ目は、養育を必要とする未成年の子供がいないことです。この要件は、不倫をした配偶者が夫であれば父親としての役目を極力果たさせようとするためのものです。三つ目は、離婚によって他方の配偶者が苛酷な状況に置かれないことです。この要件は、離婚した場合の妻の経済的状況への配慮をするものです。

 以上の要件を満たした場合には他に特段の事情がなければ、離婚をすることができます。

 

 冒頭に戻りますが、不倫した後別居して20年経った場合には、別居期間の要件を満たします。また、20年経っていれば通常養育を必要とする子供はいないと思います。また、20年経っていれば、法律上の妻も独立して家計を維持していること多いです。

 よって、20年経っていれば高い可能性で、裁判離婚をすることができます。

 

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