5分で読める法律の豆知識

テレビや新聞などで政治から芸能スキャンダルまで幅広いニュースを見ます。しかし、法律のことについて詳しく書かれたものはあまりみません。なので自分で勉強してみました。個人的に面白いと思ったものだけ書くのであまり網羅性はありません。なので暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。

株主総会における役員選任決議の取消の訴え。訴えの利益

 訴訟には、給付訴訟、確認訴訟、形成訴訟の3つの類型があります。給付訴訟は、一般的に広く知られた金銭を求める請求や物の返還を求める請求の訴訟です。

 

 他方、確認訴訟は、無効確認の訴えや不存在確認の訴えのように、ある一定の法律関係や権利義務を確認する訴訟類型です。

 

 また、形成訴訟とは、判決によりある一定の法律関係の変更を求める訴えです。典型的なのが、離婚訴訟や、今回検討をする株主総会決議取消の訴えです。

 

 以上の3つの訴訟の内、給付訴訟及び形成訴訟の場合には、基本的には訴えの利益が認められますが、確認訴訟については、確認の利益が争われることが多いです。

 

 この点、形成訴訟の場合、法律で当該訴訟類型を定めている以上、同訴訟をもって法律紛争を終結させるようことが制度として認められているため、訴えの利益が認められることが多いです。

 

 この点、株主総会決議における役員選任決議の訴えについて訴えの利益が認めるか争われた事案があります。今回は、当該訴訟の訴えの利益について判例を分析しつつ、認められる場合の基準について少し考えたいと思います。

 

1 役員の選任と株主総会決議取消しの訴えについて

 まず、株主会社には、役員という人たちがいます。これを会社法上の概念で「機関」と言いますが、一般的には、取締役、監査役が典型的なものです。

 

 取締役は、周知のとおり、株式会社の事業執行を行う機関であり、監査役は、取締役の業務執行が、法令や定款に違反しないかを監視する機関です。

 

 そして、取締役と監査役は、株主総会の決議により選任されます。選任後、選任された者が、取締役になる意思表示をした場合、取締役に就任することとなります。そして、取締役と株式会社の関係、監査役と株式会社との関係は、それぞれ委任契約関係になるとされています。

 なお、取締役の選任決議は、普通決議ですが、監査役の選任決議は特別決議となります。

 

 ここで、間違いやすいのですが、代表取締役は、株主総会決議で選任するものではなく、取締役会で選定をします。

 つまり、取締役同士で協議をし、誰を代表取締役にするのかを決めることとなります。もっとも、通常、株主総会開催時に、議案の中で、誰を代表取締役にするかを決めて、決議をするため、実質的には株主が決定していると言えます。

 

 この点、株主総会では、株式会社が提案する取締役候補者と株主が提案する取締役候補者が異なり、委任状勧誘をしながら、紛争が激化することがあります。その結果、例えば、株主総会決議で株式会社が提案する取締役候補者を選任する決議がなされた後、同決議を取り消す訴えを株主が提起することがしばしば起こります、また、逆に、株主が提案する取締役を選任する決議がなされ、現職の取締役が退任させられた場合に、同取締役が決議取消の訴えを提起することもあります。

 

 では、選任決議の取消の訴えが提起された後、訴訟が長引き終わらず、裁判の係属中に、同選任決議で選任された取締役が全員退任してしまった場合には、取消の訴えについての訴えの利益は認められるかが問題となります。

 

2 判例

 この点について、判断を示したのが、最高裁45年4月2日判決です。

 判例は、まず、一般論として、「形成の訴は、法律の規定する要件を充たすかぎり、訴えの利益の存ずるのが通常であるけれども、その後の事情の変化により、その利益を欠くに至る場合がある」と判示しました。そして、「株主総会決議取消の訴は形成の訴えであるが、役員選任の株主総会決議取消の訴が係属中、その決議に基づいて選任された取締役ら役員がすべて任期満了により退任し、その後の株主総会の決議によって取締役ら役員が新たに選任され、その結果、取消を求める選任決議に基づく取締役ら役員がもはや現存しなくなったときは、右の場合に該当するものとして、特別の事情がないかぎり、決議取消の訴は実益なきに帰し、訴の利益を欠くに至るものと解するを相当とする。」と判示しました。

 

 以上とおり、原則として、訴えの利益がなくなると判示しました。

 

 

3 注意すべき点

 もっとも、判例は、「特別の事情」がある場合には、なおも訴えの利益が失われない可能性があることを示唆しています。

 

 この点、特別の事情については、後任者を決める決議についても、争いがある場合がこれに該当すると考えられます。

 

 簡潔に言うと、もともと、Aが取締役に選任されましたが、その後、Bが選任されたと時に、Bの選任決議について取消しの訴えが提起されたとします。その後、Bは任期満了により退任し、Cが取締役に就任したものの、Cの選任決議についても、取消しの訴えが提起されたとします。

 

 この場合、仮にCの選任決議が取消され、Cが取締役でなくなる可能性があります。その結果、株式会社は、後任の取締役が決まるまで、従前の取締役が、一定の制限はありますが、取締役の権限と同様の権限をもって業務執行をすることになります。仮に、Bの選任決議の訴えの利益がなく、却下判決をしてしまうと、この時、ABいずれが後任者が決まるまでの業務を執行すべきなのか判然としません。

 

 したがって、Bの選任決議の効力を確定させるため、なおも訴えの利益は失われない特別の事情があるということになります。