5分で読める法律の豆知識

テレビや新聞などで政治から芸能スキャンダルまで幅広いニュースを見ます。しかし、法律のことについて詳しく書かれたものはあまりみません。なので自分で勉強してみました。個人的に面白いと思ったものだけ書くのであまり網羅性はありません。なので暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。

不法行為の損害と生存の可能性

1 晴天の霹靂

 例えば、家族や大切な人が余命宣告をされたら、どのように思うでしょうか。正直想像もできないくらい悲しいですよね。それ自体を受け入るのに時間がかかりますが、それでも今生きているその人との時間を大切にしたい。非常に複雑な気持ちになりますよね。

 

 そのような中で、毎日お見舞いに行って、大切な人を勇気付けたり、それでも治療で苦しむその人の姿を見ていると辛くて、いたたまれない気持ちになるかもしれません。

 しかし、そのような入院中に医師の過失で、大切な人が死亡してしまったらどう思うでしょうか?

 

 余命が宣告され、近い将来に確実に亡くなることが予想されている場合でも、それでも納得できないですよね。

 そこで、今回は、余命宣告や不治の病で将来亡くなることが予想される状況下で、医師の過失により無くなってしまった場合に、不法行為が成立するか検討してみたいと思います。

 

 2 最判平成12年9月22日民集54巻7号2574頁

 この点について、最判平成12年9月22日民臭54巻7号2574頁は以下のように判示しました。

 

 まず、病気で亡くなった患者の治療をした医師の医療行為が、過失で、当時の医療水準にあったものではなかった場合に「右医療行為と患者の死亡との間の因果関係の存在は証明されないけれども、医療水準にかなった医療が行われていたならば患者がその死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性の存在が証明されているときは、医師は、患者に対し、不法行為による損害を賠償する責任を負うものと解するのが相当である。けだし、生命を維持することは人にとって最も基本的な利益であって、右の可能性は法によって保護されるべき利益であり、医師が過失により医療水準にかなった医療を行わないことによって患者の法益が侵害されたものということができるからである。」と判示しています。

 

 当該最判は、適切な医療行為を行ったならば、死亡した時点で患者が生きている相当程度の可能性があれば良いとしているので、当該立証ができたならば、不法行為が成立することになります。

 

 そのため、患者の遺族は、患者が取得した不法行為に基づく損害賠償請求権を相続により承継し、医師あるいは病院に対して、損害賠償請求をすることができます。

* 補足

 なお、通常、病院との間で診療契約を結ぶことも多いので、不法行為ではなく債務不履行に基づいて損害賠償請求をする構成もあり得ます。

 

 3 でもこれって当たり前では?

 同判決は、新しい因果関係の認定ないしは立証方法を示した画期的な判決であるとも思えます。しかし、そもそも、人はいつか必ず死にます。この命題は現状絶対的なものです。

 

 人の死がある程度予見できたとしても、そのことについて格別な差異はありません。

子供が不運にも突発的な交通事故で亡くなってしまった場合でも、非常に当たり前ですが、交通事故がなければ、死亡の時点でその子が生きていた可能性が高いです。

 

 他方、90歳の末期がんの人で余命半年の宣告を受けた場合に、その人が医師の過失で1週間後に亡くなったとしても、当然医師の過失行為がなければ、1週間後の時点で生きていた可能性は高いです。

 

 人は死ぬという絶対的な命題の下、人が生命を維持する法益を持っていることは変わりません。そうだとするよ、交通事故の子供と末期がんの90歳の人で、違いがあるとすることは違和感があります。そうだとすると、最判は、ある意味、当然のことを判示したとも読めると思います。