5分で読める法律の豆知識

テレビや新聞などで政治から芸能スキャンダルまで幅広いニュースを見ます。しかし、法律のことについて詳しく書かれたものはあまりみません。なので自分で勉強してみました。個人的に面白いと思ったものだけ書くのであまり網羅性はありません。なので暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。

敷金の性質、賃貸借契約の終了時の敷金の検討

 

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 大学へ進学するときや転勤するときに、新規にマンションを借りるといることがありますよね。どこに住むか、「風呂とトイレは別がいい」、「オートロックじゃなくちゃやだ」等々人それぞれこだわりの条件というものがあると思います。

 

 いくつか物件を見ていざ契約となったときに、「敷金1か月分」等の項目がありますよね。「賃料のほかに何でお金を払わなくちゃいけないんだ!」と少し腑に落ちない気持ちになりますが、そもそも、敷金とは何でしょうか。今回は、賃貸借契約をする時に交付する敷金の意味について検討してみたいと思います。

 

 賃貸借契約と敷金の関係

 そもそも、賃貸借契約は、民法601条に規定されています。早速条文を見てみましょう。民法601条は、「賃貸借契約は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる」と規定しています。

 

 難しいですね。しかし、内容はさほど難しくありません。要するに、貸す人を賃貸人といい、借りる人を賃借人と言います。その上で、賃貸人は、賃借人に対して貸す物である賃借物の使用及び収益をさせることを約束して、その代わりに賃借人は賃貸人に賃料を支払うことを約束することで賃貸借契約が成立することになります。

 

 例えば、マンションを月に10万円の内容で借りたとします。賃貸人は、賃借人に対してマンションを引き渡して使用ができる状態にする必要があります。他方、賃借人は、賃貸人に対して、使わせてもらう代わりに、10万円を月々支払うということです。

 極論、マンションを借りていれば、普段やっていることです。

 

 少し余談ですが、マンションの換気扇が壊れたり水道にトラブルがあった場合には、意図的に壊したものでなければ、賃貸人が、その修繕をすべき義務を負っています。そのため、壊れたらまずは大家さんなどの賃貸人に直して下さいと請求することが大切です(民法606条)。

 また、自分で直した場合にも、掛かった費用分だけ、賃貸人に請求することができます(民法608条1項)。

 

 さて、本題に戻りますが、敷金契約は民法上どこに規定されているのでしょか。というと規定されていません。

 民法には、13個の契約が明示的に規定されており、この明示されている契約を典型契約と呼びます。他方、このような規定がない契約であっても、当事者間で合意すれば、法律が禁止していない範囲(強行法規)で、契約内容を決めて締結することができます。

 このような契約を非典型契約といい、敷金契約もこれに当たります。

 

 したがって、マンションを借りるときに賃貸借契約と敷金契約の二つの契約を理論上していることになります。

 

 

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 敷金の性質

 では、敷金契約とは、実際なぜ行うのでしょうか。そもそも、敷金とは、賃貸借契約を締結してから、終了し明け渡すまでの間に生じる賃借人の債務及びその履行を担保するためのものです。 

 

 例えば、賃料の滞納が起きた場合で、賃借人が賃料を払わないまま夜逃げしてしまったとします。この場合、賃貸人は敷金から滞納された賃料を補うことができます。このようなケースを想定して交付が要求されているのが敷金です。

(ちなみに、賃料を滞納した時に、敷金で補てんするかどうかは、賃貸人の自由なので、賃借人の側から賃貸人に対して補てん請求をすることはできません)

 また、実質的な機能としては、敷金として数か月分の賃料額を交付させることで、賃借人になる人が、お金があるかどうか判断するためという点もあげられます。

 

 つまり、月額10万円の賃料でマンションを契約するときに、10万円の敷金を合わせて交付するように要求した場合、借りるときに20万円賃借人は賃貸人に交付しなくてはいけません。これができない場合、賃貸借契約を締結しても途中で滞納が起きたりするので、大家からすると非常にめんどくさい状況になる可能性が高いです。

 

 そのため、借りる人が将来的に賃料を滞納しないということを判断するために、敷金の交付を要求していると言えます。逆にいうと、半年や一年などの比較的短い期間借りる場合には、わざわざ敷金という担保を取る必要性が必ずしも高くないので、不要としているところもあります。

 

 これが敷金のざっくりした意味になります。

 

 退去する場合

 では、退去する場合に、敷金はどうなるのでしょうか。敷金は、そもそも、契約が成立し終了後の明け渡しまでに、生じる賃借人の債務の履行を担保するものです。そのため、賃借人が滞りなく債務を履行をしている場合には、敷金をそのまま賃借人に返還されることになります。言い換えると、賃借人は、賃貸人に対して敷金返還請求権を有することになります。そのため、賃借人は、賃貸人に対して、「敷金10万円を返して下さい」と賃貸人に要求できます。ここは退去するときに絶対に忘れないで下さい。

 

 もっとも、この敷金返還請求権は、マンションの明け渡しによって初めて生じるため、退去前に「敷金を返して」とは請求できません。そのため、大家さんにカギを返してから請求するのが良いです(詳しくは、最判昭和49年9月2日民集28・6・1152を参照して下さい)。

 

 

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 総括

 以上のように敷金は、担保的な機能を有することになり大家や不動産管理会社にとっては、とても重要なものです。ですが、賃借人にとっては最初にお金を用意しなくてはいけないので、負担が大きいです。

 個人的には、自分自身の年収が高い場合や保証人を付けられ保証人の年収が高い場合には、大家さんと交渉して敷金をなくしてもらうか、または、3か月分を1か月分に減らしてもらう交渉をすることもありだと思います。

 

 ちょっと発展

 ここからは、興味のない方は読み飛ばし頂けると幸いです。

法律を勉強していると、敷金の処理って結構めんどくさいですよね。なので、ざっくり整理します。

 

  ①明渡義務と敷金返還義務の同時履行関係

 先ほどの判例の通り、明渡義務と敷金返還義務の同時履行関係は認められていません。明渡義務は、先履行となっています。ですが、個人的には、ケースにもよりますが当事者間の公平を考慮して、同時履行を認めた方が良いケースもあると思います。例えば、1年分の敷金を交付している場合で、かつ、賃借人が借りている物件を現在使用する必要性が顕著な場合で、契約終了原因が、賃料不払いで、その賃料不払い額が、敷金で担保できる範囲内の場合には、例外的に当事者間の公平を図り、同時履行関係を認めた方が妥当な解決を導ける気がします。

 

 ②賃貸人の変更の場合

 対抗力を賃借人が有する場合には、賃借物の譲渡により賃貸人が変更されますがこの場合、敷金は一度清算され残額がある場合には、譲受人である新賃貸人に承継されます。

 

 ③賃借人の変更の場合

 この場合、賃借人の変更によって、敷金は清算されて残額がある場合は、旧賃借人に返還されます。イメージとしては、旧賃借人を物上保証人と同じような地位に立たせることを回避するためです。 

 

 

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