5分で読める法律の豆知識

テレビや新聞などで政治から芸能スキャンダルまで幅広いニュースを見ます。しかし、法律のことについて詳しく書かれたものはあまりみません。なので自分で勉強してみました。個人的に面白いと思ったものだけ書くのであまり網羅性はありません。なので暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。

夫が交通事故に!胎児の権利とは?

 「夏だ!サマーだ!家の中だ!」と夏に入ったのに、家の中に籠っている者です。

 

そんな私とは違って夏に入ってレジャーに出掛ける人が増えています。免許取り立てのイケてる大学生が男女で海にお出掛けなんっていうケースもあるかと思います(若いっていいですね。)。また、家族で出掛けるケースも多いと思います(お幸せに!)。

ですが、皆さん交通事故には気を付けて下さいね。

今回は、交通事故が増えそうな季節なので、夫が交通事故に遭って他界した場合、お腹の赤ちゃんはどのような権利を有することになるか。また、示談交渉をする時にどのようなことに注意すべきかを検討してみたいと思います。

 

 交通事故が起きた場合の権利関係

 まず、交通事故が発生した場合には、被害者は加害者に対して不法行為に基づく損害賠償請求をすることができます(民法709条・710条参照)。

 つまり、交通事故で夫が亡くなった場合には、夫は損害賠償請求権を有することになります。

 

 そして、夫が有している損害賠償請求権を妻と子が相続することになります。(ここで相続する権利の中には、夫の慰謝料請求権も含まれます)。

 また、このような夫の権利を相続するだけでなく、配偶者と子供は、固有の慰謝料請求権を有することになります。民法711条です。

 

 民法711条を見てみましょう

 民法711条は「他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、

その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない」と規定しています。

 

 こりゃまた難しい条文ですね!

 

 この条文は、ある人が死亡した場合にその近親者が精神的損害を被ることが多いことを前提にしています。しかし、被害者本人ではない近親者が精神的損害を被ったことを立証するのは困難なため、一定の近親者、父母、配偶者、子の精神的損害を推定し、慰謝料請求権を認める規定です。

 

 簡単に言うと、夫が死亡すると妻は悲しいですよね。例外もあるかもしれませんが、通常は悲しむと思います。このような通常、妻に心の傷が生じるため、妻の心の傷があることを推定する規定が民法711条です。その結果、妻は加害者に対して慰謝料請求できることになります。

 

 以上から夫が交通事故で死亡した場合には、妻と子は二つの権利を有することになります。

 一つ目、相続する夫の損害賠償請求権です

   

 二つ目は、固有の慰謝料請求権です。

 

 胎児の権利

 では、胎児の場合は、どうでしょうか。

民法3条1項を見てみましょう「私権の享有は、出生に始まる」と規定しています。

簡単に言うと、人は生まれてから初めて権利義務の主体になるという原則です。そのため、生まれていなければ、権利を承継したり、権利を保有したりできないのが原則です。そうだとすると、胎児は夫の死亡時点で生まれていないので、損害賠償請求権等を相続できないように思えますよね。

 

 しかし、例外があります。

 

 まず、相続については民法886条1項があります。同条では、「胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす」と規定しています。そのため、夫が死亡した時点で、胎児はすでに生まれた扱いになるので、相続権を有することになります。

  よって、夫の有する損害賠償請求権を胎児は相続することができます。

 

 また、固有の慰謝料請求権については民法721条で「胎児は、損害賠償請求権については、既に生まれたものとみなす」と規定されおり、固有の慰謝料請求権を胎児は有すると考えられています。

 その結果、胎児は被害者の出生している子供と同様の権利を有することになります。

 

 示談をする時のポイント

 では、示談をする時にはどのような点に気を付ければよいでしょうか。胎児の出生前に、妻が胎児の分も含めて示談をすることがよくありますが、このような場合にはどのような点に気を付ければよいでしょうか。

 

 まず、胎児が出生をする前であっても、妻は、胎児を代理して示談を行うことができると考えられています。そのため、法律上有効に、加害者と妻で胎児の出生前に示談をすること自体はできます。

 

 しかし、ここでは主に二つのことに注意が必要です。

 

 胎児が出生しない場合

 一点目は、胎児が出生してない場合です。夫が交通事故で他界した場合に、妻が精神的なショックで、流産してしまうことがあります。示談は、法律上和解契約に当たります。そして、胎児が出生しなかった場合には、妻の和解契約に関する代理権はなかったことになり、和解契約も効果が生じません。

 

この点については、胎児の部分のみ和解契約として効果が生じないのかすなわち、一部分に関してのみ効果が生じないのか、それとも、妻の部分も含んだ全部について効果が生じないのかは、議論の余地がありますが、いずれにしても、示談をやり直さなくてならなくなります。

 

 胎児が後遺症を負って出生した場合

 二つ目は、少し複雑な問題ですが、妻が精神的ショックを受け、胎児が後遺症を負って出生してしまった場合です。

 この場合、加害者が交通事故を起こしこれにより夫が死亡したことで、妻が精神的なショックを受けて、これによって、胎児が後遺症を負っているため、加害者の過失行為と、胎児の後遺症損害には因果関係があり、加害者に胎児の後遺症についての損害賠償責任が認められます。

 

 そのため、元気に出生した場合とは異なり、加重した賠償責任が加害者には成立することになります。

 

 しかし、一度和解が成立すると、その前提となっている事柄以外については再度争うことができません。つまり、この胎児の後遺症がないことが、和解の前提になっていたというケースでなければ、後に胎児の後遺症の部分について請求することができなくなります。

 

 また、仮に、胎児の後遺症がないことが前提となっていた場合には、後遺症の部分については損害賠償請求することが可能です。しかし、通常再度示談交渉をする流れになります。

 

 まとめ

 以上のように妻と胎児は夫の損害賠償請求権を相続し、かつ、固有の慰謝料請求権を有します。しかし、胎児が生まれる前に、示談をすると後々トラブルが発生するかもしれません。 

そのため、示談をする時は、胎児が出生をしてから行う方が妥当だと言えます。