5分で読める法律の豆知識

テレビや新聞などで政治から芸能スキャンダルまで幅広いニュースを見ます。しかし、法律のことについて詳しく書かれたものはあまりみません。なので自分で勉強してみました。個人的に面白いと思ったものだけ書くのであまり網羅性はありません。なので暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。

知っておきたい!現住建造物放火罪の「焼損」の学説対立

 放火罪って、刑法の勉強の中でメイン論点ではないもののマイナー論点でもないちょっとあいまいな分野ですよね。

 実社会においては、放火罪の件数はあまり多くありません。いわゆる放火魔というような犯罪者がいて、他人の家を放火しまくるなんていうことはほとんど起きていないです。

 

 しかし、放火罪自体は、絶対に抑えなくはいけない分野であることには変わりはありません。

 そこで、今回は、放火罪の中では重要な論点である「焼損」について検討してみたいとお思います。

 

 

1 現住建造物放火罪の概要

 まずは条文から確認します。現住建造物放火罪は、刑法第108条に規定されています。同条は、「放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。」と規定しています。

 

 客体による差異はあるものの、人が存在している可能性がある上記場所について、放火をし、焼損に至らしめた場合には、現住建造物等放火罪として、殺人罪と同じ刑が科されることとなります。

 

 そのため、同罪は刑法典の中でも極めて重い犯罪であると言えます。

 

2 「焼損」の学説状況

 この点、「焼損」は、現住建造物等放火罪の既遂時を確定させる構成要件であると言えます。それゆえ、「焼損」の意義により犯罪の完成時期が変わることとなります。

 

 この点、判例は、独立燃焼説の立場に立っていますが、講学上、効用喪失説、毀棄説、燃え上がり説等も主張されています。個別にみていきます。

 

 まず、判例が採用している独立燃焼説は、火が媒体物を離れて独立に燃焼を継続することができる状態に至った場合に、「焼損」に該当するという説です。他方、同説には、「焼損」すなわち、「燃えて損なわれる」とういう文言から離れているという批判や既遂時期が早すぎるという批判があります。

 

 そこで、講学上は、客体の重要な部分が焼失しその効用を失ったことを「焼損」とする効用焼失説、客体の重要な部分が燃え上がったことを「焼損」とする燃え上がり説、火力により目的物が毀棄罪の損壊の程度に至ったことを「焼損」とする毀棄説等が主張されています。

 

3 意識すること

 以上の判例及び学説の対立は、その内容自体だけを暗記してもあまり実益がありません。

 

 根本的な視点は、死刑を含む重刑を行為者に科すに当たり、保護法益の内容も考慮した上で、どの時点を犯罪の完成とすべきかという価値判断にあります。

 

 個人的には、犯罪の完成時期すなわち、「焼損」については、独立燃焼説の立場に立ち、事案ごとの個別的な要素(例えば、建物内の人の数、実際の死傷者の数、建物の損壊の程度等)を量刑事情として考慮し、具体的な刑の内容を決めれば足りると考えます。

 

 司法試験等の各種試験対策の観点からは、「焼損」の考え方によって、既遂時期が変わることをしっかり押さえておくことが大切です。