5分で読める法律の豆知識

テレビや新聞などで政治から芸能スキャンダルまで幅広いニュースを見ます。しかし、法律のことについて詳しく書かれたものはあまりみません。なので自分で勉強してみました。個人的に面白いと思ったものだけ書くのであまり網羅性はありません。なので暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。

民法第715条第3項。知っておきたい求償権の話

  民法第715条は不法行為分野の中でとても有名な条文ですよね。色々な論点があって比較的勉強がしやすい分野だと思います。今回は、民法第715条第3項の使用者の被用者に対する求償権について少し検討してみたいと思います。

 

1 民法第715条について

 民法第715条は、使用者責任を規定した条文ですよね。その趣旨は、いわゆる報償責任にあるとされています。すなわち、他者を使用することで利益を受けている者は、被用者が生じさせた損害についても賠償の責任をとるべきであるという考え方が根本にあります。

 

 民法第715条第1項本文では「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。」と規定しています。ちなみに但し書きについては、一般的に極めて例外的な場合でなければ、その要件を充足しないとされています。

 

 もっとも、あくまでもこれは使用者が被害者に対して損害賠償責任を負うことを規定したものにすぎません。すなわち、直接的に不法行為を行ったのは被用者であり、被用者の被害者に対する損害賠償責任を免除するものではありません。その結果、被用者は民法第709条等に基づく損害賠償責任を負い、使用者は民法第715条第1項本文に基づき損害賠償責任を負い、使用者と被用者は連帯して被害者に対して損害賠償債務を負うこととなると考えられます(いわゆる不真正連帯債務)。

 

 そうだとすると、民法第715条第3項が「前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。」と規定するのは、当然のことを規定しているとも思えます。

 

 もっとも、使用者と被用者との関係が少し特殊であることも考える必要があります。つまり、被用者は使用者から指示を受けて事業を執行する際に不法行為を行っています。例えば、交通事故を起こした等のケースが典型だと思いますが、交通事故を起こすに至った経緯として、加重労働を強いられていたり、使用者が安全に対する措置を全く行っていなかったというような場合もあり得ます。このような場合に、使用者が被用者に対して完全な求償を行えるとするのは、少し道理に合わないように思います。この点、最高裁昭和51年7月8日判決(民集30巻7号689頁)は、使用者から被用者に対する求償権を制限できる場合があることを判示しています。

 

2 最高裁昭和51年7月8日判決

 同判決は、使用者の被用者に対する求償について「使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損害の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し右損害の賠償又は求償の請求をすることができるものと解すべきである。」と判示しています。

 

 上記判決の例示する要素はとても広汎なものとなっています。そのため、使用者が被用者に対して求償することができる場合があったとしてもその額については、一定程度制限されることが予想されます。したがって、使用者の立場からすれば、上記判決の例示する要素について日頃から配慮し、適切な職場環境を構築することが大切になると言えます。