5分で読める法律の豆知識

テレビや新聞などで政治から芸能スキャンダルまで幅広いニュースを見ます。しかし、法律のことについて詳しく書かれたものはあまりみません。なので自分で勉強してみました。個人的に面白いと思ったものだけ書くのであまり網羅性はありません。なので暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。

信頼関係の破壊が必要?賃料不払いでの明渡しの可否

 東京で暮らしていると、マンションを借りることが多いです。ですが、うっかり口座にお金を入れ忘れていて、次の月に不動産管理会社から明け渡すように請求がくるということもあるかもしれません。しかし、そのような場合に、本当に明け渡さなくてはいけないのでしょうか。今回は、賃料の支払いを怠った場合に、賃貸借契約が解除され、マンションを明け渡さなくてはいけないのか否か検討したいと思います。

 

 賃貸借契約とは

 そもそも、賃貸借契約は、民法601条に規定されています。民法601条では、「賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる」と規定しています。

 

 この条文も分かるようで分かりにくい条文ですね。ここで、一般的なイメージだと、物の貸し借りを目的とする契約は、すべて賃貸借契約になるとも思いますが、それは違います。

 

 物の貸し借りについては、民法上、使用貸借契約(民法593条)と賃貸借契約(民法601条)があります。そして、この二つの違いは、「賃料を支払うことを約す」という点にあります。

 

 すなわち、物を貸す対価として金銭等を借主が支払う場合が、賃貸借契約であり、そうではない契約が使用貸借契約となります。ここで「物を貸す対価」と言いましたが、対価とは、その物の価値に見合った金銭等を支払うことです。例えば、相場月額100万円のマンションを1万円で借りる場合には、原則、対価とは認められません。そのため、この場合には、使用貸借契約となります。

 

 つまり、賃貸借契約とは、物の貸し借りを目的とする契約で、かつ、借りることの対価として金銭等を支払うことを内容とする契約ということになります。

 

 賃貸借契約の特徴

 賃貸借契約は、対価を支払い、使用貸借契約は、対価を支払わない契約ということになります。このような対価の支払いがある契約のことを有償性を有する契約といい、対価の支払いがない契約を無償性を有する契約と言います。

 

 このような有償性・無償性という言葉自体はあまり重要ではありません。重要なことは、その内容です。すなわち、有償性を有する契約である賃貸借契約の場合には、賃貸人だけでなく、賃借人も強い権利を有することになります。具体的に言うと、マンションを借りている際などに、換気扇が老朽化して壊れた場合などには、その換気扇の修繕に必要な費用を賃貸人が負担するのが原則です(民法606条参照)。

 

 他方、無償性を有する契約である使用貸借契約の場合、貸主の方が権利保護が強化されています。というのも使用貸借では、貸主に経済的なメリットが全くないのが前提であるため、借主に強い保護を与える必要がないと考えられています。借主が、仮に保護が強い契約をしたい場合には、賃貸借契約を結ぶべきという考え方が根本にあります。

 

 その結果、具体的に言うと、先ほどの換気扇修繕のための必要費は、原則、借主が負担することになります(民法595条参照)。

 

 賃料の支払いを怠った場合

 では、賃借人の権利保護が強化されているとして、実際に賃料の支払いを怠った場合には、どうなるのでしょうか。

 

 まず、賃貸借契約では、賃貸人(貸す人)は、賃借物を引き渡して使用収益をさせる債務を負います。他方、その代わりに、賃借人(借りる人)は、賃貸人に賃料を支払う債務を負います。

 これが基本的な債務の内容です。

 

 そうだとすると、賃料の支払いを怠った場合には、債務を履行していない、つまり、債務不履行になります。この場合、賃貸人から明け渡し請求をされた場合には、明け渡さなくていけないのでしょうか。

 

 実は、直ちには明渡す必要がありません。

 

 詳細に検討すると、賃料を支払わない場合、債務不履行になります。そのため、賃貸人が賃借人に対して「賃料払ってね」という催告をしたいにもかかわらず、賃借人が支払わず、支払に通常必要な期間が経過すれば、賃貸人は、解除をして契約を終了させて、明け渡しを請求できるのが、原則です(民法541条)。

 

 ですが、賃貸借契約の場合には、信頼関係破壊の原則というものがあります。この原則があるため、賃料を支払わなくても、直ちに明け渡さなくてはいけないということにはなりません。

 

 そもそも、賃貸借契約は、継続的な関係性を前提としてなされる契約です。つまり、売買契約とは異なり、賃貸人と賃借人は、長期間にわたって契約関係に拘束されます。そのため、契約当事者の間で信頼関係が形成されます。そして、契約の途中で、賃料不払いの債務不履行があったとしても、その債務不履行が信頼関係を破壊するものでなければ、契約の解除は認められず、賃貸人は賃借人に明け渡し請求をすることができないということになります。

 

 このような信頼関係破壊の原則がある以上、例えば、今月の賃料の支払いを怠ったとしても、直ちに、契約は解除できず存続するため、明け渡し請求をすることはできないということになります。

 

 まとめ

 直ちに、明け渡さなくてはいけないということにはなりません。しかし、賃料不払いが、半年、1年続けば、信頼関係は当然破壊されることになります。そのため、今月賃料を支払わなかった場合には、来月はしっかり支払う方ことが大切です。

 

 ちなみに、敷金を交付しているので、敷金から賃料を補てんしてほしいと考える人がいますが、補てんするかどうかは賃貸人の自由なので、賃借人から、補てんを請求することはできませんので、注意が必要です。