5分で読める法律の豆知識

テレビや新聞などで政治から芸能スキャンダルまで幅広いニュースを見ます。しかし、法律のことについて詳しく書かれたものはあまりみません。なので自分で勉強してみました。個人的に面白いと思ったものだけ書くのであまり網羅性はありません。なので暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。

民法416条2項における予見時期と程度とは?

 1 民法は勉強するのが大変

 民法って量が多いですよね。民法って1000条以上も条文あって、「こんなに覚えるとか無理でしょ」と愚痴をこぼしたくなりますが、頑張るしかありません。

 

 そのような民法ですが、結構忘れがちな問題があります。その一つが、民法416条2項の予見時期と程度の問題です。今回は、この予見時期と程度について少し考えてみたいと思います。

 

2 民法416条

 民法416条は、債務不履行に基づく損害賠償請求の損害の範囲について規定しています。そこで、まずは条文を確認しましょう。

 

 同条第1項は「債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。」と規定しています。

 

 また同条第2項は「特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見し、又は予見することができたときは、債権者は、その賠償を請求することができる。」と規定しています。

 

 通説は、同条項は相当因果関係を規定したものだとしています。その上で、同条第2項が規定する「予見し、又は予見することができたとき」とは、いつの時点をいうのか議論されています。

 

 この問題については、契約締結時だとする考え方と債務不履行時であるとする見解がありますが、判例は債務不履行時であるとしています。

 

3 予見の時期

 大審院判決大正7年8月27日(民録24輯1658頁)は、「特別事情ノ予見ハ債務ノ履行期迄ニ履行期後ノ事情ヲ前知スルノ義ニシテ予見ノ時期ハ債務ノ履行期迄ナリト解スルヲ正当トス」と判示しました。

 だいぶ古い判決ですが、今でも債務不履行時を予見の時期とする実務運営がされています。

 

 というのも、契約には色々な種類があります。例えば、コンビニでおにぎりを買う売買契約のように単発で終了する契約もあれば、企業間取引で継続的な供給を行う契約もあります。

 

 特に継続的な取引を行う契約類型の場合だと、契約締結時から何年にもわたって債務の履行がされます。

 

 そうだとすると、数年前には予見できなかった損害であっても、債務不履行時に予見することが可能な場合も多いです。それにもかかわらず、契約時を予見時期であるとすると、容易に知り得た損害をそのままみすみす賠償範囲から除外することになり、契約当事者間の公平性が著しく害されます。

 

 ゆえに、債務不履行時を予見時期とする見解は妥当であると言えます。

 

 4 予見の程度について

 では、どの程度の予見ができたと言える必要があるのでしょうか。この点については、あまり本などに書いてありませんが、そもそも、根本的な部分に、予見できたのに債務の履行を行わなかったことで損害が発生したならば、債務者に責任を取らせてしかるべきだという発想があります。

 

 逆にいうならば、予見を緩やかに解しすぎると、なんでもかんでも発生した損害について債務者に賠償責任を負わせることになり、過大な負担を債務者に負わせることになってしまいます。

 

 そのため、予見の程度についてはある程度厳格に考える必要があります。

 

 例えば、飲み屋で部品の卸先の担当者とばったり会い、「今度うちの会社で、大口の○○百貨店と取引するかもしれない。まだ交渉中で本決まりしていないけど、今後とも一つ宜しく。」というようなことを言われていたとして、その次の日に、部品を卸さずに、卸先が○○百貨店に商品を供給できなかったとしても、未だ交渉中で本決まりしていない段階だったならば、○○百貨店に商品を供給できなかったことで相手の企業が被った損害を予見できたと言えるかは、かなり微妙なラインになると思います。

 

 つまり、少なくとも、債務不履行によってある程度確実性をもって損害が認められるような状況及びその予見が必要になると考えられます。

(もっとも、契約交渉段階に入っていて通常の場合は、本決まりになるような取引慣行等があるならば、認めても良いと思いますが、仮に、部品が供給されていたとして、本当に百貨店で商品を提供できたのか、途中で交渉が決裂する可能性がなかったのかということも重要になります。)

 

 5 細かいですが重要なことです

 このように予見時期と程度は非常に細かい話ですが、実際のところ、数千円程度だったらあまり気にしなくとも、場合によっては、数億単位で賠償範囲が異なってしまいます。

 そのため、特別損害が認められるようにある程度予防法務の段階で、工夫をしておくことが大切です。