5分で読める法律の豆知識

テレビや新聞などで政治から芸能スキャンダルまで幅広いニュースを見ます。しかし、法律のことについて詳しく書かれたものはあまりみません。なので自分で勉強してみました。個人的に面白いと思ったものだけ書くのであまり網羅性はありません。なので暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。

押さえておきたい、会社法362条4項1号「重要な財産の処分」の判断枠組み

 会社法って色々と細かい規定がありますよね。株主総会の決議が必要なのか、取締役の個人の判断で良いのか、それとも取締役会の決議が必要なのか、決定権が誰にあるのかという問題と、そもそも会社法が規制している事由に該当するのかという問題があります。

 

 そこで、今回は、会社法362条4項1号に定められている「重要な財産の処分」について検討してみたいと思います。

 

 

1 会社法362条4項とは?

 まず、会社法362条4項柱書は、「取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない。」と規定しています。

 

 そもそも、取締役は、業務執行機関であるため、自己の判断で業務執行を行うことができるのが原則です。ところが、会社の業務執行の中には、会社に与える影響が大きいものが含まれているため、これを特定の取締役の判断にゆだねることは相当ではなく、取締役会で話し合いながら決議をする必要があります。これを規定したのが、会社法362条4項です。

 

 そして、同条項第1号は「重要な財産の処分」を取締役会の決議事項として規定しています。

 

 これは先程の影響力の観点から、会社にとって重要な財産をある特定の取締役が独断で処分することができるとする、会社の財産が不当に流出をしたり、事業執行をする上で甚大な損害が生ずるおそれがあるからです。

 

 では、「重要な財産の処分」に該当するのか否かは、どのように判断すべきなのでしょうか?

 

 

2 「重要な財産の処分」該当性の判断枠組み

 この点、最高裁平成6年1月20日判決では、「当該財産の価額、その会社の総資産に占める割合、当該財産の保有目的、処分行為の態様及び会社における従来の取扱い等の事情を総合的に考慮して判断すべき」と判示しています。

 

 そもそも、会社の規模、事業内容、保有している財産は、各会社によって当然異なりますので、「重要な財産の処分」に該当するか否かは、各会社の実態に鑑みて判断せざるを得ません。

 

 そのため、判例は、前記事情を総合考慮して、個別の事案で判断すべきとしたと考えられます。

 

 この点、判例の掲げる要素の内、財産の価額は、その文言どおり、その財産がいくらの価値を有しているかということを考慮すべきというものであり、当然考慮すべき要素だと言えます。

 

 そして、総資産に占める割合とは、前記価額を基準として、会社の保有している全ての財産のうち、何パーセントくらいの割合を占めているのかを考慮すべきというものです。

 

 一般的には、貸借対照表上の総資産額の1パーセントに相当すれば、重要な財産の処分に該当する積極的事情として考慮すべきとされています。

 

 また、保有目的自体は、さほど重要な要素ではなく、事業執行との関係で、どのようにどの程度使用している財産であるのか等の視点から判断することになります。また、処分の態様については、売買、贈与等という処分する契約態様等が重要になります。贈与の場合には、対価が支払われないため、会社に対する経済的な不利益が大きいため、重要な財産の処分に該当する積極的事情として考慮されます。

 

 他方、従来の取扱いとは、少し分かりにくいですが、会社が従来から財産を処分する場合にどのような基準をおいていたかという要素になります。例えば、「1000万円以上の不動産を処分する場合には、取締役会の承認決議が必要とする。」というような内規が存在している場合に、2000万円の土地を売却しようとするならば、従来の取扱いとしては、取締役会決議が必要という運営がなされていた以上、「重要な財産の処分」に該当する積極的事情として考慮すべきということになります。

 

3 押さえておくべきポイント

 以上のとおり、「重要な財産の処分」の判断枠組みについて検討してきましたが、実際のところ、「重要な財産の処分」に該当するか否かは、判断するのが難しい場面も多いです。

 

 この点、廉価かつ事業への影響が少ない資産についても、取締役会の決議が必要であるとすると、円滑な事業執行が妨げられます。

 他方、なんでもかんでも、個別の取締役が決めて良いとするのもまた問題があります。

 

 そこで、とりあえず、「時価額が1000万円を超える財産を売却しようとするときには、取締役会の決議が必要である。」との内規を設けて、各年度の事業実績に応じて、3年に一度程度改定し、これを一応の基準とするのが良いと思います。

 

 また、1000万円以下の財産を売却する場合でも、事業執行への影響が大きいため、「重要な財産の処分」に該当するか悩ましい場面もあると思います。このような場合には、取締役会決議を得るという形で、内規及び法の趣旨に照らして、判然としない場合には、取締役会決議を得るとう運営が最も良いと思われます。