5分で読める法律の豆知識

テレビや新聞などで政治から芸能スキャンダルまで幅広いニュースを見ます。しかし、法律のことについて詳しく書かれたものはあまりみません。なので自分で勉強してみました。個人的に面白いと思ったものだけ書くのであまり網羅性はありません。なので暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。

政治家のスキャンダル報道は名誉毀損罪にならないってホント?

 

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 最近、国会議員の不祥事がニュースでよく取り上げられていますよね。特に、不倫や秘書への暴言暴行、議員の悪口をネットの掲示板などに書きまくっても良いのでしょうか。

 「国民に選ばれたのだから、国民が批判して何が悪い!」という考え方はそれ自体適切だと思います。

   ですが、あまりにも度を過ぎると大変なことになるかもしれません。

 

刑事上の責任

 まず、掲示板に「○○議員不倫したとか、議員である前に人としてどうなの?」と書き込みをしたとします。これは、原則、名誉毀損罪に当たります。簡単に説明すると、名誉毀損罪が成立するためには、不名誉な事実を大衆に向けて伝達した場合に成立します。そのため、この書き込みは、名誉毀損罪となります。

 

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 でも、この結論は一般的にかなり違和感があると思います。というのも、現に多くの政治家のスキャンダル報道を目にしますよね。しかし、これらは名誉毀損罪になっているというニュースはあまり見ないですよね。それは、刑法230条の2があるからです。

 

 まず、刑法230条の2第1項は「前条第一項の行為(名誉毀損罪に当たる行為)が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったあときは、これを罰しない」と規定しています。

 

 また、同条第4項は、「前条第一項の行為(名誉毀損罪に当たる行為)が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない」と規定しています。

(同条の性質論については割愛します。)

 

 この条文も解りずらいですね。簡単に説明します。そもそも、憲法21条1項は、「表現の自由」を保障しています。なので、私たちは思ったことや考えたことを大衆に向けて話したり、書き込んだりすることが憲法上の権利として保障されています。しかし、「表現の自由が私にはある!」と言って、人の悪口を書きまくっても良いのでしょうか。書かれた方はたまったものではありません。つまり、書かれた人の名誉が著しく侵害されてしまいます。

 

 そこで、名誉侵害になる表現を規制する必要があります。これが、名誉毀損罪を規定した刑法230条です。

 

 ところが、名誉を侵害してでも、表現をさせるべき場合があります。具体的にいうと、犯罪のあった事実や、公務員の不祥事等は、公共性が強いですよね。つまり、特に公務員関係については、人格的に問題がある人を議員にしたくないと考える人は多いです。そのため、現職候補者問わず議員としてふさわしくない人を排除したいですよね。この排除をするためには、情報が必要です。この情報は皆が知りたい情報なので(建前)、むやみに表現を妨げられてはいけないことになります。

 

 そこで、設けられたのが刑法230条の2です。つまり、第1項があるため、公共性のある事柄で、公共の利益を図る目的をもって、それが真実だと証明されれば、名誉毀損罪は成立しない(あるいは不可罰)ということになります。

 

 そして、第4項では、公務員を対象とする表現は、公共性が強いので、真実であることの証明ができれば、名誉毀損罪は成立しないということになります。

 

 具体的にはどのレベルまでOK?

 そうだとすると、議員の悪口は書きまくって良い!ということには当然なりません。真実でないこと、つまり、ウソや捏造をした記事を書きまくると、真実性の証明ができないので、名誉毀損罪が成立します。

 

 しかし、間違って真実だと思っていた場合は、どうなるのでしょうか。この場合、確実な資料に基づいて、真実だと信じていれば故意が阻却されて、名誉毀損罪は成立しないことになります。

 

 ですが、あくまでも「確実な資料に基づいて」いたことが必要です。

 ここでの「確実な資料に基づいて」とは、裏付け取材がしっかりなされていたか、または裁判所の判決に基づいたか等が重要となります。ゆえに、レベルがかなり高いです。

 

 そうだとすると、具体的に許されるレベルとは、信頼性のある記事や公益機関の発表に基づいて記事を書く場合です。ゆえに、自分で嫌いな議員がいて、「○○議員は昔、不良だった」や「○○議員は不倫している」などの記事を捏造したり、信頼性のない記事を見て書くと、真実性の証明もできないし、「確実な資料に基づいて」いるわけでもないので、名誉毀損罪が成立します。

 

ちょっとプラス

 以上は、議員などの公務員の場合についてです。では、芸能人の場合は、どのように考えればよいのでしょうか。実はこれ答えがありません。

 確かに、芸能人は社会的な影響力が強いです。その人がブログで紹介しただけで、商品が爆発的に売れたということは良くある話です。しかし、公共性という観点から考えるとかなり際どい気がします。というのも、公共性は公益にかかわる事柄なので、商品が売れたことと公益が図れたことは別ですよね。また、バラエティーやドラマによって、例えば、社会的問題にフォーカスがあてられることがあっても、実際にバラエティーやドラマ自体が、公益性を含んだものだと考えることは無理があると思います。

 

 なので、芸能人に関する名誉毀損記事を書くと、名誉毀損罪が成立すると考える方が自然な気がします。

 

  ここで、二つ注意すべきことがあります。一つは芸能ネタでも名誉毀損罪にならないことは当然あります。例えば、よく目にする熱愛報道は、そもそも、誰かとお付き合いしていることが不名誉ということはありえないと思います。というか、「不名誉!」ってめちゃくちゃ失礼ですよね(笑)。なので、熱愛報道自体は、そもそも、名誉毀損罪にならないことになります。記事の内容自体が外部的名誉を毀損するかどうかは注意が必要です。

 

 また、二つ目に、名誉毀損罪は親告罪です。最近ですと、芸能人の不倫ネタがよく記事に書かれていますが、「不倫」自体は不名誉な事なので、これを記事に書くと名誉毀損罪になると思います。

 ですが、名誉毀損罪は親告罪という犯罪類型です。親告罪とは、被害者等が告訴して初めて犯罪として処罰できる犯罪です。なので、芸能人の不倫ネタや過去の不祥事が報道されたとしても、芸能人本人が告訴しない限り犯罪として処罰されません。

 

 

 

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