5分で読める法律の豆知識

テレビや新聞などで政治から芸能スキャンダルまで幅広いニュースを見ます。しかし、法律のことについて詳しく書かれたものはあまりみません。なので自分で勉強してみました。個人的に面白いと思ったものだけ書くのであまり網羅性はありません。なので暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。

罪を犯しても処罰されない?心神喪失、心神耗弱、責任能力の判断とは?

 

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 テレビのニュースを見ていると、殺人罪をして逮捕されたにもかかわらず、責任能力がなくて刑罰を科されないケースってたまにありますよね。

 他方、DVとかを受けてて、我慢の限界を超えて。殺人罪をしてしまった人が実刑判決になったりしますよね。

 

 これって何だか納得がいかない結論です。

 

 そこで、今回は、罪を犯しても処罰されない責任能力の判断について、少し検討してみたいと思います。

 

1 責任能力とは?

 そもそも、責任能力って何でしょうか?

 

   刑法第39条は、責任能力に関して、第1項で「心神喪失の行為は、罰しない。」と規定し、同条第2項は「心神耗弱の行為は、その刑を減軽する。」と規定しています。

 

 この点、一般的に心神喪失とは、精神の障害により事物の理非善悪を弁識する能力又はその弁識に従って行動する能力のない状態を言い、他方、心神耗弱とは、精神の障害により未だかかる能力が欠如しているには至っていないものの、その能力が著し減退している場合を言うとされています。

 

    つまり、責任能力とは、是非弁別能力及び行為制御能力の2つの能力を言い、精神の障害により、これのどちらかまたは両方が欠如した状態を心神喪失と言い、著しく減退している場合を心神耗弱と言うことになります。

 

 そして、このように精神の障害が重要な意味を持つ事から、責任能力の有無が争われる多くの事案では、被告人が統合失調症等の精神障害を抱えている場合となります。

 

 では、統合失調症等の病を発症していれば、責任能力が否定され、心神喪失等と認定されるのでしょうか。

 

 この点について、最高裁平成21年12月8日決定は、直ちには認定されい旨の判断を示しています。

 

 

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2 判例の考え方

 判例は、まず、責任能力の有無程度は、法律判断であることを示し、裁判所が医師の鑑定書の判断に拘束されない旨を判旨しました。

 

   そして、責任能力の有無程度については、犯罪者の犯行当時の病状、犯行前の生活状況、犯行の動機・態様等を総合して判定すべき旨を判示しました。

 

 その上で、犯罪者の犯行当時の病的体験が犯行を直接支配する関係にあったのか、あるいは影響を及ぼす程度の関係であったのか等精神の障害と犯行との関係、及び犯罪者の本来の人格傾向と犯行との関係の程度等を検討し、判断すべき旨を判示しました。

 

 すなわち、判例は、統合失調症等の病を発症していることをもって直ちに、責任能力が否定されたり、責任能力が著しく減退しているとは判断せず、あくまでも精神の障害が行為当時に、行為者を支配していたのかどうか、支配していないとしても影響をしているのか否かとういう観点から検討をすべきとしました。

 

 その結果、たとえ統合失調症等の精神障害を患っていたとしても、それが犯行に影響しなかったのであれば、完全な責任能力が認められ、心神喪失も心神耗弱も認められないこととなります。

 

3 結論の妥当性について

 以上のとおり、責任能力について検討してきましたが、刑罰論の根本的な考え方に特別予防という考え方があります。

 

 具体的には、刑罰は、罪を犯した者が自己の過ちを認識し、刑務所で服役する等の刑罰を受けることで、更生し社会に復帰すること、すなわち、再犯を予防することを目的としており、これを特別予防といいます。

 

 かかる特別予防の観点から考えると、そもそも、心神喪失者は、自分が犯した罪の善悪を認識することができないため、刑罰を通じて教育改善を行い、再犯予防を達成することができません。

 

 そのため、心神喪失者すなわち、精神の障害により、自分が犯した具体的な罪の意味を理解できない者、自身の行動を制御できない者の再犯を防止するためには、医学的に治療が必要をすべきであり、刑務所ではなく、病院で治療を受けることになります。

 

 すなわち、再犯予防との関係で考えるならば、刑務所に入れるのが適切か、病院で治療をするのが適切かは、精神の障害により、犯罪者が犯罪をするに至ったのかどうかを適切に見極める必要があります。

 

  したがって、判例の示した判断方式はこのような見極めをする上で、有益であり、結論として妥当だと言えます。

 

  なお、実務的な運用だと、捜査段階で被疑者が明らかに心神喪失をしていると、検察官は起訴せず、そのまた病院と協力して、入院させ、治療を受けさせることも多いです、

 

   そのため、起訴される事案のほとんどは、検察官が心神喪失ではないと判断していることが多い、これを裁判で弁護人が覆すのはかなり困難だと言えます。

 

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押さえておくべき!法人に対する害悪の告知、脅迫罪の成否

 

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 SNSで、芸能人等を対象として誹謗中傷をする記事をたまに目にしますが、度を超すと、脅迫罪や名誉毀損罪が成立することになりますよね。

 

 しかし、法人に対して、脅迫罪は成立するのでしょうか?

 

 結論から言うと、法人に対する脅迫罪は成立しません。

 

 そこで、今回は、法人に対する脅迫罪がなぜ成立しないのか検討してみたいと思います。

 

1 脅迫罪とは

 脅迫罪は刑法222条に規定されています。

刑法222条

 第1項「生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。」

 第2項「親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も前項と同様とする。」

 

 まず、脅迫罪の保護法益は、意思決定の自由とされています。刑法222条に規定されている利益に対して害を加える旨を告知(一般的に「害悪の告知」とされています。)する場合、人は意思の自由を侵害されるため、かかる告知があったことをもって、脅迫罪は成立します(危険犯)。

 

 もっとも、法人は概念的な存在であるため、かかる意思の自由を有しないと考えられます。

 そこで、法人に対して害悪の告知を行った場合に、脅迫罪が成立するか否かが問題となります。かかる問題について、一定の判断を示したのが、高松高等裁判所平成8年1月25日判決です。

 

2 法人を客体とする脅迫罪の成否

 前記裁判例では、脅迫罪は「意思の自由を保護法益とするものであること」を理由に、同罪は、「自然人を客体とする場合に限って」成立すると判示し、法人を客体とする脅迫罪の成立を否定しました。

 

 もっとも、同裁判例は、「法人に対しその法益に危害を加えることを告知しても、それによって法人に対するものとして同罪が成立するものではなく、ただ、法人の法益に対する加害の告知が、ひいてその代表者、代理人等として現にその告知をうけた自然人自身の生命、身体、自由、名誉または財産に対する加害の告知にあたると評価され得る場合には」、害悪の告知を受けた自然人を客体とする脅迫罪が成立する旨の判示をしました。

 

 裁判例のかかる判示は適切であると考えられます。というのも、刑法上、業務妨害罪や信用毀損罪等がそれぞれ規定されており、法人を客体とする脅迫罪の成立を認めなくとも、その他の犯罪の成立をもって、行為者を処罰することが可能と言えるからです。

 

 また、裁判例の判示するとおり、個別具体的な事案によっては、形式的には法人を客体とするものであったとしても、その実質は害悪の告知を受けた代表者等の自然人に対するものと評価できる場合もあり、この場合に、自然人に対する害悪の告知を行ったと評価し、脅迫罪の成立を認めることも適切であると言えます。

 

 

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3 最後に

 以上のとおり、法人に対する脅迫罪は成立しません。しかし、その他の業務妨害罪等の犯罪が成立する余地は十分にあります。

 また、仮に、業務妨害罪等が成立しないとしても、法人に対する害悪の告知が行われ、法人が損害を被った場合には、民事上の損害賠償責任が生じることとなります。

 したがって、法人等を対象とする正当な批判は問題ありませんが、誹謗中傷をするのはやめた方が良いと言えます。

 

 

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国家を騙して不正にお金を受取った。国家に対する詐欺罪の成否

 

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1 映画やドラマなどで

 ドラマや映画を見ていると、ときどき国家に対して犯罪を行う物語がありますよね。例えば、大臣や首相を誘拐したり、はたまた、警察幹部を監禁するなどのストーリーの映画です。このような悪人に対して、警察官や諜報部員が果敢に挑み、悪人を倒すというお話は、見ていて気分が爽快になります。

 

 ところで、ドラマ等の重大な事件だけでなく、例えば、国の公共事業などを請け負って、不正に報酬を請求する事案や、架空請求をするような事案もありますよね。このような事案の場合、詐欺罪は成立するのでしょうか。

 

 そこで、今回は、国家を騙して不正にお金を受取った場合に、詐欺罪が成立するのか少し考えてみたいと思います。

 

2 詐欺罪って何?

 そもそも、詐欺罪は刑法246条1項に規定されています。同条は、「人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。」と規定し、詐欺罪の成立要件及び処罰を規定しています(いわゆる1項詐欺罪)。

 

 詐欺罪は、他人の財物権を保護法益とする犯罪です。

 

 例えば、相手に嘘をついて、相手が嘘を信じ、金銭を交付する場合が典型的な詐欺罪です。特に有名な詐欺罪の類型としては、振り込め詐欺、結婚詐欺等があります。

 

 詐欺罪が成立するための具体的な構成要件としては、詐欺行為、錯誤、交付行為、財物移転、因果関係、故意等が挙げられます。

 この点、国家が行う政策等は、国益のために行われているため、国家に対して詐欺行為を行った場合に、他人の財物権を侵害したといえるのか、すなわち、詐欺罪が成立するのかが問題となります。

 

 この問題について、詐欺罪の成立を認めたのが、下記の最高裁昭和51年4月1日決定です。

 

 

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3 判例等の考え方

 最高裁昭和51年4月1日決定では、「欺罔行為によって国家的法益を侵害する場合であっても、それが同時に、詐欺罪の保護法益である財産権を侵害するものである以上、当該行政処罰法規が特別法として詐欺罪の適用を排除する趣旨のものと認められない限り、詐欺罪の成立を認めること」はできる旨の判示をしました。

 

 すなわち、最高裁は、国の財産権が保護法益になることを前提とした上で、国の国益実現の場合の国家事業等に関連して詐欺行為を行ったときであっても、国の財産権を侵害し、詐欺罪の構成要件を満たすのであるならば、詐欺罪が成立することを明示的に認め、上記最高裁決定の後も、この考え方を維持しています。

 

4 最後に

 以上のとおり、国家に対して詐欺行為を行えば、詐欺罪が成立することが明らかです。

 また、このような場合には、現場の公務員等に対して、賄賂等を交付していることが多いと思われるので、詐欺罪とは別途に贈賄罪等も成立することとなります。

 

 

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押さえておきたい!事後強盗罪にける窃盗の機会の考え方

 

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 財産犯の中でも、事後強盗罪は有名な犯罪ですよね。

 しかし、窃盗犯が窃盗の機会に暴行又は脅迫を行ったかどうかって判断が難しいですよね。

 そこで、今回は、有名な論点である事後強盗罪の窃盗の機会の論点について少し考えていきたいと思います。

 

1 大前提の話

 まず、事後強盗罪は、刑法238条に規定されています。同条は「窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。」と規定しています。

 

 ここで押さえるべき点が2つあります。

 まず、1つ目は、いわゆる居直り強盗のとの違いです。

 

 居直り強盗とは、例えば、空き巣等が、住居に侵入し、盗み出す財物を探している時に、家人とばったり出くわし、家人に暴行又は脅迫を行い、財物を奪取しようとする場合です。

 

 このような居直り強盗は、あくまでも財物奪取をするために家人に対して暴行又は脅迫を行う場合です。

 

 そのため、「財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために」暴行又は脅迫が行われておらず、事後強盗罪は成立しません。

 

 この場合、単なる強盗罪が成立することとなります。

 

 また、2つ目は、窃盗の機会に暴行を行ったと認定されない場合にいかなる犯罪が成立するかです。

 

 事後強盗罪の暴行又は脅迫は、あくまでも窃盗の機会に行われる必要があるとされています(通説)。

 そのため、窃盗の機会に暴行等がなされていない場合には、窃盗罪(又は窃盗未遂罪)及び暴行罪(又は傷害罪)が成立することとなります。

 

 

 では、窃盗の機会とはどのように判断をするべきでしょうか?

 

 

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2 窃盗の機会の判断

 この点、最高裁平成14年2月14日決定では、「窃盗の犯行後も、犯行現場の直近の場所にとどまり、被害者等から容易に発見されて、財物を取り返され、あるいは逮捕され得る状況が係属していたのであるから、上記暴行は、窃盗の機会の継続中に行われたもの」と判示しています。

 

 この点、窃盗の機会と場所的時間的接着性という基準がよく言われていますが、この接着性があるか否かをどのように判断すべきかが問題となります。

 

 例えば、空き巣が侵入した住宅から出て、5分後に同所から500メートル離れたところで、人を殴った場合に、窃盗の機会に行ったと言えるでしょうか?

 

 実は、この事実だけでは判断をすることができません。

 

 というのも、例えば、空き巣が殴った人が、空き巣の存在に気が付き同人を捕まえるために追ってきた家人であるならば、窃盗の機会を肯定できる可能性が高いです。

 

 他方、空き巣が、住宅を出て、道を歩いてたら、たまたま通行人と肩がぶつかりむしゃくしゃして殴ったとするならば、そもそも、窃盗の機会に行ったものとは言えないと思います(「逮捕を免れ」という目的を検討する以前の客観面としても否定されると思います。)

 

 つまり、窃盗の機会に行ったか否か、時間的場所的接着性の有無については、あくまでも、財物を取り返されることを防ぐため、逮捕を免れるため、罪跡を隠滅するためという目的も考慮した上で、いかなる場面でだれに対して暴行又は脅迫を行ったのかをしっかりと検討する必要があると考えられます。

 

3 最後に

 実際に個別具体的な事案では、窃盗の機会に該当するか否かを判断することが難しいです。そこで、「時間」「場所」以外の要素もしっかりと検討しながら結論を導き出すことが大切です。

 

 

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知っておきたい!現住建造物放火罪の「焼損」の学説対立

 

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 放火罪って、刑法の勉強の中でメイン論点ではないもののマイナー論点でもないちょっとあいまいな分野ですよね。

 実社会においては、放火罪の件数はあまり多くありません。いわゆる放火魔というような犯罪者がいて、他人の家を放火しまくるなんていうことはほとんど起きていないです。

 

 しかし、放火罪自体は、絶対に抑えなくはいけない分野であることには変わりはありません。

 そこで、今回は、放火罪の中では重要な論点である「焼損」について検討してみたいとお思います。

 

 

1 現住建造物放火罪の概要

 まずは条文から確認します。現住建造物放火罪は、刑法第108条に規定されています。同条は、「放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。」と規定しています。

 

 客体による差異はあるものの、人が存在している可能性がある上記場所について、放火をし、焼損に至らしめた場合には、現住建造物等放火罪として、殺人罪と同じ刑が科されることとなります。

 

 そのため、同罪は刑法典の中でも極めて重い犯罪であると言えます。

 

 

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2 「焼損」の学説状況

 この点、「焼損」は、現住建造物等放火罪の既遂時を確定させる構成要件であると言えます。それゆえ、「焼損」の意義により犯罪の完成時期が変わることとなります。

 

 この点、判例は、独立燃焼説の立場に立っていますが、講学上、効用喪失説、毀棄説、燃え上がり説等も主張されています。個別にみていきます。

 

 まず、判例が採用している独立燃焼説は、火が媒体物を離れて独立に燃焼を継続することができる状態に至った場合に、「焼損」に該当するという説です。他方、同説には、「焼損」すなわち、「燃えて損なわれる」とういう文言から離れているという批判や既遂時期が早すぎるという批判があります。

 

 そこで、講学上は、客体の重要な部分が焼失しその効用を失ったことを「焼損」とする効用焼失説、客体の重要な部分が燃え上がったことを「焼損」とする燃え上がり説、火力により目的物が毀棄罪の損壊の程度に至ったことを「焼損」とする毀棄説等が主張されています。

 

3 意識すること

 以上の判例及び学説の対立は、その内容自体だけを暗記してもあまり実益がありません。

 

 根本的な視点は、死刑を含む重刑を行為者に科すに当たり、保護法益の内容も考慮した上で、どの時点を犯罪の完成とすべきかという価値判断にあります。

 

 個人的には、犯罪の完成時期すなわち、「焼損」については、独立燃焼説の立場に立ち、事案ごとの個別的な要素(例えば、建物内の人の数、実際の死傷者の数、建物の損壊の程度等)を量刑事情として考慮し、具体的な刑の内容を決めれば足りると考えます。

 

 司法試験等の各種試験対策の観点からは、「焼損」の考え方によって、既遂時期が変わることをしっかり押さえておくことが大切です。

 

 

 

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暴行罪!無言電話!押さえておくべき傷害罪の話

 

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 刑法各論で最初の方に出てくるのが、傷害罪です。

 傷害罪は、一見理解しやすい犯罪ですが、よくよく勉強していくとつまずき易い犯罪でもあります。

 

 今回は、そんな傷害罪について、暴行罪の結果的加重犯の場合と無形の手段による傷害結果の発生の場合について、それぞれ検討してみたいと思います。

 

 

1 傷害罪とは?

 まず、傷害罪は刑法204条に規定されています。

 同条は、「人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」と規定しています。

 ここで、「傷害」とは、人の生理的機能に障害を加えることと言われています。

 

 もっとも、少量の髪の毛を切り落とすような場合には、「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったとき」に当たるとして、暴行罪(刑法208状)が成立するとしています。

 

 すなわち、刑法208条から明らかなとおり、暴行(不法な有形力の行使)をした場合に、傷害(怪我等)をするに至らなかったときには、暴行罪が成立し、逆に、「傷害」するに至る(怪我等をさせる)ときには、傷害罪が成立します。

 そのため、傷害罪は、暴行罪の結果的加重犯であると説明ができます。

 

 他方、不法な有形力を行使しない場合であっても、例えば、AがBに対して、無言電話を毎日100回、3カ月間かけ続けたことによりBが統合失調症を発症したというようなケースでは傷害罪は成立するのでしょうか?

 

2 無言電話等の場合

 先のとおり、「傷害」とは、人の生理的機能に障害を加えることです。

 そのため、手段については限定がありません。すなわち、先程の無言電話を長期間かけ続けるような無形の手段による場合でも、統合失調症を発症すれば、人の生理的機能に障害を加えたことは明らかなため、「傷害」に該当します。

 したがって、このようなケースでは、傷害罪が成立することになります。

  

3 最後に

 以上のように、傷害罪については、有形の方法と無形の方法による二つの類型があると言えます。そのたえ、手段内容を問わず、ある手段によって傷害が生じたか否かということが傷害罪の成否においては重要であると言えます。

 

 また、無形の方法の場合で多いのは、職場や家庭、学校等でのハラスメント行為、近隣トラブル、ストーカー行為です。

 

 この場合、耐えていて、気が付いたら、精神障害を発症していたということも多く、加害者の無形の方法、具体的には、つきまとい、待ち伏せ、拡声器による騒音等が実際にあったと立証することが難しいです。したがって、民事賠償請求のみならず、刑事起訴との関係でもしっかり録音録画等の方法で加害者の行為を証拠として保存しておくことが大切です。

 

 

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しっかり押さえたい!窃盗罪の窃取と占有概念

 

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 刑法を勉強していると最初に思いつく犯罪ってなんでしょうか?

 

 殺人罪と答える人も多いと思いますが、窃盗罪と答える人も多いですよね。

 

 実際に一番多い犯罪は、窃盗罪です。

 というのも、窃盗罪って成立する範囲が広いんですよね。

 

 例えば、スリ、空き巣、万引き、これらは全て窃盗罪です。

 

 そこで、今回は、窃盗罪の「窃取」、特に他者の占有とは何かについて少し考えてみたいと思います。

 

 

1 窃盗罪の概要

 まず、窃盗罪は刑法235条に規定されている犯罪です。

 窃盗罪の構成要件は、故意、不法領得の意思、財物、窃取です。

 

 そして、窃取とは、他者が占有する財物を他者の意思に反して、自己の占有に移すことだとされています。

 

 つまり、占有をしている他者が占有移転を承諾している場合には、単なる譲渡等となるため、窃取に該当しません。

 

 また、他者の占有とはあくまでも事実上の占有のため、間接占有や法律上の占有等の概念は含みません。

 

 冒頭で挙げたスリの例だと、人込みで、他者のポケットの中に入っている財布を同人の意思に反して抜き取って、自分のポケットの中に移すというような場合に「窃取」に該当します。

 

 では、例えば、空き巣が自宅に入り、自分が存在自体を忘れていたヘソクリを盗み出した場合はどうでしょうか、また、電車の中にバッグを置き忘れて、下車後、振り返ると扉が閉まり、そのまま電車が発進してしまい次の駅に到着するまでの間に、バッグを取られてしまたった場合はどうでしょうか?

 

 すなわち、他者の占有の有無はどのように判断するべきかが問題となります。

 

 

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2 占有の判断方法

 この点、他者の占有、すなわち、事実的支配があるか否かについては、客観的な支配の事実と、支配の意思によって判断すると言われています。

 しかし、この基準、分かるようでいまいちよく分からない基準ですよね。

 

 この2つの要素は、実際のところ等しい価値をもったものではないと思われます。

 第1次的には客観的な支配の有無程度が重要なのであり、第2次的に支配の意思が重要となります。

 

 先ほどの存在を忘れていたヘソクリを空き巣に取られた場合、結論としては、窃盗罪が成立します。

 

 というのも、自宅の中にヘソクリがある以上、客観的支配は明らかにあり、たとえ、忘れていたことで、支配の意思がない、あるいは著しく減退していても、強固な支配領域内に存在する以上、他者の占有は認められることとなります。

 

 他方、電車の中にバッグを置き忘れて電車が発車してしまい第三者に窃取された場合には、おき忘れた時点場所と第三者が窃取した時点場所との接着性がどの程度あるかによって、客観的な支配の程度がまず変わります。

 

 また、おき忘れたことを全く気付かない場合には、支配の意思自体が否定される可能性があります。

 例えば、電車を降りた瞬間におき忘れに気が付いて、後ろを振り返った時にドアが閉まってしまい、かつ第三者がその時に、そのバッグを奪ったというような場合には、バッグに対する客観的支配及び支配の意思があるため、他者の占有を認め「窃取」に当たると判断してもよいと思います。

 

 他方、電車を降りて、改札を出ようとした時に、電車内にバッグを置き忘れたことに気が付き、かつ、電車は次の駅の間近まで迫っていた時に第三者がバッグを奪取した場合には、時間的場所的に隔離があり、客観的な支配が否定されるため、支配の意思が戻ったとしても、他者の占有は否定されることになると考えられます。

 その他にも、結局、電車の扉が閉まった時点で、客観的な支配が無いと考えるのも十分に合理性があると思います。

 

3 最後に

 以上のように検討をしてきましたが、基本的には他者の占有引いては「窃取」に該当するか否かは、ケースバイケースと言わざるを得ません。

 

 しかし、基本的な考え方としては、先に挙げたとおり、客観的支配に重点をおいて検討をすることが大切です。

 

 

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