5分で読める法律の豆知識

テレビや新聞などで政治から芸能スキャンダルまで幅広いニュースを見ます。しかし、法律のことについて詳しく書かれたものはあまりみません。なので自分で勉強してみました。個人的に面白いと思ったものだけ書くのであまり網羅性はありません。なので暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。

景観利益と不法行為のお話

 近隣景観は、自宅マンションを購入したり、住宅を建設する時にとても重要な要素になりますよね。例えば、住宅を建設して数年後に目の前に高層マンションが建設されて、家の庭からは建設された高層マンションしか見えないということになると困りますよね。

 

 そこで、今回は、自宅の目の前に高層マンション等が建設された場合に、高層マンションを建てた不動産会社等の所有者に対して損害賠償請求をすることができるか否かについて少し検討してみたいと思います。

 

1 民法上の不法行為の規定

 民法第709条は「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」と規定しています。景観が侵害された場合に、そもそも景観利益が「権利又は法律上保護される利益」に当たるか否か、また、仮にこれらに当たるとした場合、如何なるときにこれらを侵害したと言えるか、そして、その侵害は違法性を有するかという主に3つの点が問題となります。この点について、参考になるのが最判平成18年3月30日(民集60巻3号948頁)です。

 

2 最判平成18年3月30日(民集60巻3号948頁)

 同判決では景観利益が「権利又は法律上保護される利益」に当たるか否かについて、「良好な景観に近接する地域内に居住し、その恵沢を日常的に享受している者は、良好な景観が有する客観的な価値の侵害に対して密接な利害関係を有するものというべきであり、これらの者が有する良好な景観の恵沢を享受する利益(以下「景観利益」という。)は、法律上保護に値する」と判示しています。つまり、景観利益については、「法律上保護される利益」に当たる場合があるとして、侵害対象になることを判示しています。

 

 もっとも、建物の建築が第三者の景観利益を侵害するか否かにつき、同判決は「被侵害利益である景観利益の性質と内容、当該景観の所在地の地域環境、侵害行為の態様、程度、侵害の経過等を総合的に考察して判断すべきである」と判示し、違法性について、「その侵害行為は刑罰法規や行政法規の規制に違反するものであったり、公序良俗違反や権利の濫用に該当するものであるなど、侵害行為の態様や程度の面において社会的に容認された行為として相当性を欠くことが求められる」と判示しています。

 

3 景観利益侵害を理由とする不法行為の成立

 上記の判例に照らすと、高層マンションの建設により景観が害された場合には、景観利益に対する侵害を理由として不法行為が成立し、損害賠償請求をすることができる場合はあると言えます。しかし、不法行為の成立要件としての違法性について、「刑罰法規や行政法規の規制に違反するものであったり、公序良俗違反や権利の濫用に該当するものであるなど」と判示しているため、高層マンションを建築するに当たって、法令遵守をしている場合には、違法性は認められない可能性が非常に高いと言えます。その結果、不法行為が成立せず、損害賠償請求をすることはできないということとなります。

 

 以上の検討に照らすと、法令遵守をせずに高層マンションを建築するケースは多いとは言えません。そのため、同高層マンションを建設した不動産会社等の所有者に対して、損害賠償請求をすることができる事案は限られていると思います。もっとも、注意が必要なのは、これはあくまでも高層マンションを建築した所有者との関係の問題であり、例えば、住居用の土地を購入する際に、その土地の販売業者が近隣に高層マンションは建設されない等の説明をしており、それが土地購入の主な動機となっているような場合で、購入後数年で高層マンションが建設されたようなケースでは、土地販売業者に対して、不法行為あるは債務不履行等を理由とする損害賠償請求をすることができる可能性はあります。 

 

 したがって、個別の事案で誰に対して何を根拠に損害賠償請求をすることができるのか、しっかりと検討をすることが大切です。