5分で読める法律の豆知識

テレビや新聞などで政治から芸能スキャンダルまで幅広いニュースを見ます。しかし、法律のことについて詳しく書かれたものはあまりみません。なので自分で勉強してみました。個人的に面白いと思ったものだけ書くのであまり網羅性はありません。なので暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。

法人格否認の法理

1 聞いたことがあるような名称

 会社法を勉強していて、直ぐに名称を覚えることができるものもあります。その一つが法人格否認の法理だと思います。

 

 ですが、法人格否認の法理って何でしょうか。よくよく考えてみると、意外と難しいですよね。そこで、今回は法人格否認の法理について少し考えてみたいと思います。

 

2 法人格否認の法理とは?

 そもそも、法律上の「人」には、二つの存在があります。一つは、自然人としての人です。そして、もう一つは、法人です。

 

 自然人であるかどうかについては、出生したかどうか、死亡したかどうかによって決まります。つまり、生まれてから死ぬまでの間の人を自然人と言います。

 他方、法人とは何でしょうか。法人というのは、一定の目的のために法の手続に則って設立される組織体をいいます。そのため、法人の実態をもっていたとしても、法の手続に則って設立された組織体でなければ、法人とは言えず、権利能力なき社団になります(準則主義)。

 

 法人は、法律上の権利義務の主体として扱われることになります。そのため、法人であるか否かは、法律を適用できるか否かの一つのメルクマールになります。ゆえに、法人にのみ認められる自然人とは異なるメリットも存在します。

 

 また、自然人と法人は区別されるため、例えば、法人である株式会社が倒産した場合であっても、自然人である代表取締役が自己破産を必然的にしなくてはいけないということにはなりません。あくまでも株式会社と代表取締役は別人格であるため、直結する話ではありません。

 

 (しかし、実際のところ、中小企業で会社が倒産する場合には、代表取締役が連帯保証人になっていることが多いため、芋づる式に自己破産になるケースは多いです。)

 

 このように、法人と自然人は別ものだとしても、世の中では、責任を免れるために法人格が濫用されている場合や形骸化して中身がない場合があります。このような場合に、個別具体的な事案に限って、法人格を否認して、その背後にいる者への責任追及を可能にするのが法人格否認の法理です。

 

 つまり、簡単に言うと、法人格否認の法理とは、方便として法人格を盾にしている者のその盾を取り上げて、その者に対する責任追及を可能にしてしまうという法理です。

 

3 判例は?

 法人格否認の法律については、判例(最判昭和44年2月27日民集23巻2号511頁)は以下のように判示しています。

 

「法人格の付与は、社会的に存在する団体についてその価値を評価してなされる立法政策によるものであって、これを権利主体として表現せしめるに値すると認めるときに、法技術に基づいて行われるものなのである。従って、法人格が全くの形骸に過ぎない場合、またはそれが法律の適用を回避するために濫用されるが如き場合においては、法人格を認めることは、法人格なるものの本来の目的に照らして許すべからざるものというべきであり、法人格を否認すべきことが要請される場合を生じるのである。」と判示しました。

 

4 実際に裁判ではどういうことが問題になるの?

 実際の裁判などでは、例えば、原告がAという自然人に対して、借りたお金を返せと貸金返還請求訴訟を提起した場合で、Aが「借りたのは私ではなく、B会社だ。」と主張したとします。AがB会社の代表者で、実際には、Aが一人で事業執行しており、個人事業主と全く変わらないような実態だったとします。そして、訴訟が提起されて、AがB会社のめぼしい財産を全部Aに移してしまって、借りたのは資産が全くないだとB会社だと主張することがあります。このような場合に、盾になっているB会社の法人格が形骸化しているないしは濫用されているとして、B会社の法人格を否認して、AとB会社を同一のものと扱い、Aに対する請求を認めるのが法人格否認の法理です。

 

 この場合、詐害行為取消権(民法第424条)を使う方法などもありますが、ケースバイケースで妥当な方法を選択し問題解決をすることが大切です。