5分で読める法律の豆知識

テレビや新聞などで政治から芸能スキャンダルまで幅広いニュースを見ます。しかし、法律のことについて詳しく書かれたものはあまりみません。なので自分で勉強してみました。個人的に面白いと思ったものだけ書くのであまり網羅性はありません。なので暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。

債権譲渡。債権の二重譲渡の話

1 民法の二重譲渡

 民法を勉強していると、二重譲渡という言葉が出てきますよね。その代表的なものとしては不動産の二重譲渡が挙げられます。不動産の二重譲渡の場合には、民法177条が対抗要件を定めているため、登記を先に備えた者が不動産の所有権を確定的に取得し、第三者に対して自身が所有者であることを主張することができます。

 

 では、債権の二重譲渡の場合はどうでしょうか。今回は、民法でも分かりにくい債権の二重譲渡の問題について考えてみたいと思います。

 

2 そもそも債権とは?

 まず、そもそも債権とは、ある人がある人に対して作為や不作為を請求することができる権利を言います。

 

 例えば、売買契約を念頭に置くと非常に分かりやすいですが、コンビニでおにぎりを買う売買契約を締結した場合に、私はコンビニに対しておにぎりを渡すように請求する権利を取得することになります。他方、コンビニは私に対してお金を支払うように請求する権利を取得します。

 

 このように回りくどい言い方をするまでもなく、当たり前のように思うかもしれませんが、これがかなり重要です。

 

 債権は原則、対世効を有しません。つまり、私はAというコンビでおにぎりを買ったならAというコンビニにおにぎりを渡すように請求するしかありません。そのため、BやCというコンビニ請求はできません。またAというコンビニも私の親や子供、友人などにお金を支払うように請求することができません。

 

 しかし、コンビニがお金を支払うように請求する権利を第三者に譲渡した場合には、その第三者が、私にお金を支払うように請求することができ、コンビニは債権を譲渡した後は、私にお金を請求することはできません。これが、債権譲渡です。

 

3 債権の二重譲渡の場合

 では、債権の二重譲渡の場合にはどのように考えるのが良いのでしょうか。

 

 この点について、民法467条が規定しています。

 まず、同条項第1項は「指名債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。」と規定しています。

 また、同条項第2項は「前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。」と規定しています。

 

 第1項は債務者対抗要件について規定しており、第2項は第三者対抗要件について規定しています。

 

 ここで、重要なのは、民法177条の対抗要件の場合には、公示機能が明確にあります。つまり、だれでも法務局に行けば登記がされているかどうかを確かめることができます。

 

 そのため、登記が二重にされるという問題は生じません。しかし、債権の二重譲渡の場合には、債務者に対して確定日付のある証書で通知等をすることで第三者対抗要件になるとすると、対抗要件が二重になされる状況が生じます。

 

 この場合に、確定日付のある証書の通知が二つある場合に、どちらが優位するのか、言い換えると、適正な対抗要件が競合する場合に、どちらが優位するのかという問題が生じます。

 

 この点ついて、最判昭和49年3月7日(民集28巻2号174頁)が判示しています。

 

4 最判昭和49年3月7日(民集28巻2号174頁)

 まず、同判決は、民法467条1項の趣旨について「債権を譲り受けようとする第三者は、先ず債務者に対して債務の存否ないしはその帰属を確かめ、債務者は、当該債権がすでに譲渡されていたとしても、譲渡の通知を受けないか又はその承諾をしていないかぎり、第三者に対し債権の帰属に変動のないことを表示するのが通常であり、第三者はかかる債務者の表示を信頼してその債権を譲り受けることがあるという事情の存することによるものである。」とし、

 

「民法の規定する債権譲渡についての対抗要件制度は、当該債権の債務者の債権譲渡の有無について認識を通じ、右債務者によってそれが第三者に表示されうるものであることを根幹として成立しているものというべきである。」と判示しました。

 

 さらに、同判決は、「同条2項が、右通知又は承諾が第三者に対する対抗要件たり得るためには、確定日附ある証書をもってすることを必要としている趣旨は、債務者が第三者に対し債権譲渡のないことを表示したため、第三者がこれに信頼してその債権を譲り受けたのちに譲渡人たる旧債権者が、債権を他に二重に譲渡し債務者と通謀して譲渡の通知又はその承諾のあった日時を遡らしめる等作為して、右第三者の権利を害するに至ることを可及的に防止することにあるものと解するべき」と判示しました。

 

 その結果、債権が二重譲渡された場合には、「確定日附のある通知が債務者に到達した日時又は確定日附のある債務者の承諾の日時の前後によって決すべきであり、また、確定日附は通知又は承諾そのものにつき必要であると解すべきである。」と判示しました。

 

5 結局どういう事?

 簡潔にいうと、債権譲渡の場合、登記のような公示制度はないものの、債権を譲り受ける人は、通常、債務者に債権の存否などを確認してから、譲り受けるかどうか決めます。そのため、債務者が債権の存否や権利者を把握していれば、適切な債権譲渡が可能になるはずだという発想があります。

 

 また、確定日付の日時自体は、債務者と債権者が共謀して、ごまかすことが可能なため、同日付を基準にすることはできません。

 

 そこで、債務者に到達した時点を基準にすべきだと判示したと言えます。

 

 この問題はかなり簡単な話ですよね。ところが、結構頭の中がごちゃごちゃになる問題でもあります。例えば、確定日付のない通知が先に債務者のところに到達し、確定日付のある通知がその後債務者に到達した場合に、確定日付のない通知が優先すると勘違いしている人がたまにいますが、それは間違えです。

 

 そもそも、この債権の二重譲渡の対抗要件の問題は、確定日付のある証書という適正な第三者対抗要件が競合していることが前提になります。そのため、確定日付のない証書が先に到達したとしても、競合関係は成立しません。その結果、この場合は、確定日付のある証書での通知が常に優先します。

 

 ここは間違えないように注意することが大切です。