5分で読める法律の豆知識

テレビや新聞などで政治から芸能スキャンダルまで幅広いニュースを見ます。しかし、法律のことについて詳しく書かれたものはあまりみません。なので自分で勉強してみました。個人的に面白いと思ったものだけ書くのであまり網羅性はありません。なので暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。

フロッピーディスクの差押えの話。最決平成10年5月1日刑集52巻4号275頁

 

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1 捜索差押え

 刑事訴訟法を勉強すると、最初に捜査法を勉強することが多いと思います。

 この捜査法なのですが、意外に厄介で、分かるようで分からないという部分が多いですよね。

 

 例えば、強制処分該当性と任意捜査の限界が一番最初に壁になる部分でしょうか。任意捜査の限界については、必要性緊急性と人権制約を天秤にして全体的に相当な限度といえるのだろうか。というような視点が大切になりますが、個別具体的な事案についてあてはめてみると意外に上手くいかないなんて事もあるかと思います。

 

 また、捜索差押えについてもそうです。令状の効力が及ぶのか、超える場合には「必要な処分」(刑訴法第222条・第111条1項)で考えていくのだろうか。しかし、実際に個別具体的な事案であてはめてみると意外に難しいですよね。

 

 今回は、そのような難しい捜査法の中でも、フロッピーディスクの差押えについて、少し考えてみたいと思います。

 

 

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2 そもそも論

 そもそも、捜索を行うことができる場所とはどのような場所なのでしょうか。この点、刑事訴訟法は、第102条で規定しています(ちなみに、捜査機関が行う場合には、第222条1項が準用規定を置いています。そのため、捜査機関が行う場合には、第102条の「裁判所」は「検察官」や「司法警察職員」に読み替えられます。)

 

 第102条1項は、「裁判所は、必要があるときは、被告人の身体、物又は住居その他の場所に就き、捜索をすることができる」と規定しています。

第102条2項は、「被告人以外の者の身体、物又は住居その他の場所については、押収すべき物の存在を認めるに足りる状況がある場合に限り、捜索をすることができる。」と定めています。

 

 捜索は、証拠物等を発見することを目的になされる捜査であるため、証拠物が存在していそうな場所が捜索の対象になります。被告人の住居などについては類型的に証拠物の存在する蓋然性が高いため、捜索をすることが可能な場所です。ところが、被告人以外の人の住居などの場合には、類型的にみて証拠がありそうとまでは言えません。そこで、第2項で「押収すべき物の存在を認めるに足りる状況がある場合」と言う形で、限定がされています。

 

 以上から、捜索をすることができる場所とは、証拠物の存在する蓋然性がある場所だと言えます。

 

 他方、差押えは、証拠物を押収する捜査です。刑訴法は第99条1項で「裁判所は、必要があるときは、証拠物又は没収すべき物と思料するものを差し押えることができる。但し、特別の定めのある場合は、この限りでない。」と規定しています(捜査機関がなす場合は、第222条1項が準用されています。)

 

 例えば、被告人の家を対象とする捜索をしている最中にメモ書きが発見されたとします。これが令状記載の差押えるべき物に当たらない場合には、これを差し押えることはできません。そのため、差押えをするに当たっては、対象物が事件との関連性を有するか否かを判断した上でなければ、差押えることができません。

 

 以上を踏まえると、捜索差押をする場合には、証拠存在の蓋然性及び関連性を判断する必要があると分かります。

 その上で最決平成10年5月1日刑集52巻4号275頁を見てみましょう。

 

3 最決平成10年5月1日刑集52巻4号275頁

 同決定は、データの中身を見ないでフロッピーディスクを差押えることができるかにつき、以下のように判決しました。

 

「令状により差し押さえようとするパソコン、フロッピーディスク等の中に被疑事実に関する情報が記録されている蓋然性が認められる場合において、そのような情報が実際に記録されているかをその場で確認していたのでは記録された情報を損壊される危険があるときは、内容を確認することなしに右パソコン、フロッピーディスク等を差し押えることが許される」と判示しています。

 

 4 注意が必要かも

 同最決は、一見すると当然のことを判示しているようにも読めます。しかし、判断基準として「令状により差し押さえようとするパソコン、フロッピーディスク等の中に被疑事実に関する情報が記録されている蓋然性が認められる場合」を挙げていますが、これは捜索についての証拠存在の蓋然性基準を使用しており、差押えについての関連性審査はしていないようにも思います。

 

 そもそも、関連性については、その中のデータを見てみないと分からないので、差押え時点でこれを見ることができない以上、事実上、関連性審査をするのは不可能だと言えます。

 

 そのため、最決の判示は結論において妥当だと言えます。

 

 注意が必要なのは、蓋然性審査と関連性審査は視点が異なるので、試験を受ける際には峻別をしながらどちらの要件を検討しているのか意識をすることが大切です。

 

 

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