5分で読める法律の豆知識

テレビや新聞などで政治から芸能スキャンダルまで幅広いニュースを見ます。しかし、法律のことについて詳しく書かれたものはあまりみません。なので自分で勉強してみました。個人的に面白いと思ったものだけ書くのであまり網羅性はありません。なので暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。

土地を買ったら土壌から有害物質発見。瑕疵担保?売主の責任は?

 1 土地を買ってみたところ

 家を建てようと思って土地を買ったり、工場を建設しようと思って土地を買ったり、土地を買う目的は人それぞれだと思います。

 

 色々な目的があるにせよ、自分が買った土地から有害物質が発見されたらどう思いますか。

 

 当然嫌です。絶対に嫌です。「売主に責任を取って欲しい」それが正直なところだと思います。しかし、売買契約を締結した当時そのような有害物質の存在を売主も買主も知らなかった場合はどうでしょうか?また、そもそも、日本国内で、土壌から発見された物質が有害物質であると認識されていなかった場合は、どうでしょうか?

 

 そこで、今回は、買った土地の土壌から有害物質が発見された場合に、売主に対して、民法上どのような方法で損害賠償請求をすることができるか少し考えてみたいと思います。

 

2 民法上の方法について

 このようなケースで民法上の損害賠償請求をする方法としては、主に3つあります。それは、不法行為に基づく方法(民法709条、民法710条)。債務不履行に基づく方法(民法415条)、瑕疵担保責任に基づく方法(民法570条、民法566条)です。

 

 不法行為の場合には、故意又は過失、債務不履行の場合は帰責事由(信義則上故意又は過失と同視すべき事由)が求められます。そのため、売主が売買の目的物である土地の土壌に有害物質が含まれていることを過失なく認識していなかった場合には、不法行為に基づく方法も、債務不履行に基づく方法も使用することができません。

 

 他方、瑕疵担保責任に基づく方法は、無過失責任であるとされています。そのため、売主が売買の目的物である土地の土壌に有害物質が含まれていることを過失なく認識していなかったとしても、それをもって同方法が使用できないことにはなりません。

 

 ところが、瑕疵担保に基づく方法の場合、当然ながら「瑕疵」がなくてはなりません。ここで「瑕疵」が何を指すのかについては色々な説があります。代表的な説としては、「瑕疵」とは、取引通念上当該目的物が有すべき性質を有しないこと、又は、当事者が予定した性質を有しないことを言うとしています。

 

 同説によった場合には、売買の目的物となった土地の土壌から有害物質が検出された場合には、直ちに「瑕疵」に該当しそうですよね。

ところが、そのように簡単に判断することはできません。

 

3 最判平成22年6月1日(民集64巻4号953頁)

 そもそも、取引通念や当事者が予定したという瑕疵該当性の判断は、いつの時点を基準にするのでしょうか。それを判示しているのが、最判平成22年6月1日(民集64巻4号953頁)です。

 

まず、同判決は当事者が予定した性質を判断するに当たり、「売買契約締結当時の取引観念をしんしゃくして判断すべき」とし、「本件売買契約締結当時、取引観念上、ふっ素が土壌に含まれていることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるとは認識されておらず、(原告)もそのような認識を有していなかったのであり、ふっ素が、それが土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるなどの有害物資として、法令に基づく規制の対象となったのは、本件売買契約締結後であった」と判示しました。

 

 その上で、「人の健康に係る被害を生ずるおそれのある一切の物質が含まれていないことが、特に予定されていたとみるべき事情もうかがわれない。そうすると、本件売買契約締結当時の社会観念上、それが土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれがあることは認識されていなかったふっ素について、本件売買契約の当事者間において、それが人の健康を損なう限度を超えて本件土地の土壌に含まれていないことが予定されていたものとみることはできず、本件土地の土壌に溶出量基準値及び含有量基準値のいずれを超えるふっ素が含まれていたとしても、そのことは、民法570条にいう瑕疵には当たらないというべきである。」と判示しました。

 

 4 ではどうするべきか?

 結局のところ、買った土地から有害物質が将来発生してしまった場合、全く保護されなくなってしまうような事態になってしまうかもしれません。

 これは非常に困りますよね。そこで、このような場合には、売買契約を締結するときに、条項で例えば、「契約締結後3年以内に、両当事者の予想することができない人の健康を害する有害物質が生じた場合には、売主がその瑕疵によって発生した損害を賠償する」ニアンスの条項を契約書に盛り込んでみる交渉をするのも一つの手です。

 

 将来自分が不利にならないように色々とリスクを予想することが大切かもしれません。