5分で読める法律の豆知識

テレビや新聞などで政治から芸能スキャンダルまで幅広いニュースを見ます。しかし、法律のことについて詳しく書かれたものはあまりみません。なので自分で勉強してみました。個人的に面白いと思ったものだけ書くのであまり網羅性はありません。なので暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。

ちょっと魔がさして。万引きジーメンと窃盗罪の成立時期

 

 

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 日本で一番多い犯罪は何だと思いますか。

 

 最近、暴力団の抗争が激化しているから傷害罪とかでしょうか。

 

 違います。

 

 じゃぁ、殺人罪?

 

 それも違います。

 

 日本で一番多い犯罪は、窃盗罪です。

 

 窃盗罪は守備範囲が広く、万引き空き巣ひったくり等、犯罪の典型例的な事件が窃盗罪で処理されます。窃盗罪は、刑法における守護神といっても過言ではありません。

 

 特に万引きは、老若男女を問わず、気軽な気持ちでやってしまう人が多いです。

 「ついつい魔が差して」や「興味本位で」なんて言い訳も良く聞きますが、窃盗罪であることに変わりがありません。

 

 ところで、たまにテレビ番組で万引きジーメンの特集が放送されているときがあります。

「あっ。あの人やりそう」と思った主婦にふんした万引きジーメンが陳列棚の陰から、被疑者を監視する様子は、ドキドキしてしまいます。

 

 ですが、一つ気になるのですが、万引きジーメンは必ず、店を出るまでは犯人をただただ監視して、店を出た後に、

G>「お母さんちょっといいですか。」

犯人>「なんですか。急いでいるんですけど」

G>「そのお刺身とシャンプーレジ通してないですよね」

犯人>「通したから。あんたに関係ないでしょ」

G>「私お店の中からずっとみてました」

 警備員登場

警備員>「ちょっと。事務所の方まで来てもらっていいですか」

犯人>「もうしません。堪忍して下さい」

 

 的なやり取りをしていると思います。

  

 つまりですね。万引ジーメンはほぼ確実に犯人が店を出るまで、存在を気づかれないように監視するだけです。

 

 これはなぜでしょうか。

 

 そこで、今回は、万引きジーメンが店の外まで待つ理由について、窃盗罪の成否と共に検討をしてみたいと思います。

 

 窃盗罪

 まず、窃盗罪は、刑法235条に規定されています。条文をみてみましょう。

 

刑法235条は「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する」と規定しています。

 

・他人の財物

 「他人の財物」とは、一般的なイメージと同じで、原則、他人が所有している物をいいます。

 

 また、これ以外にも刑法242条に規定されている物も、「他人の財物」に当たります。

 すなわち、刑法242条は「自己の財物であっても、他人が占有し、又は公務所の命令により他人が看守するものであるときは、この章(第36章窃盗及び強盗の罪)の罪については、他人の財物とみなす」と規定しています。

 

 要するに、他人に賃貸して、他人が占有している物や差押されている財産は、自分が所有する物であっても、「他人の財物」に当たります。

 

 そのため、私が他人に貸して他人が占有している本を、その人の家に行って勝手に持って帰って来てしまうと、窃盗罪が成立することになってしまいます。

 

・窃取

 次に、「窃取」の意義について検討します。

 窃取とは、他人が占有する財物を、当該占有者の意思に反して、自己又は第三者の支配下に移す行為を言います。

 

 小難しい言い方をしていますが簡単です。

 例えば、友達がアクセサリーをカバンの中に入れていて持ち歩いていたとします。その際に、私が、友達が読書をしている最中に、友達のカバンの中にあるアクセサリーを抜き取り何食わぬ顔で、自分のカバンに入れたとします。

 

 この場合、友達がアクセサリーを占有しています。そして、当然友達は私のこのような行為を容認するはずがありません。

 

 そのため、私の行為は、他人が占有する財物を、占有者の意思に反して、自己の支配下に移す行為と言え、「窃取」に該当します。

 

・未遂罪

刑法243条は「第235条・・・・の罪の未遂は、罰する」と規定しています。

つまり、窃盗未遂罪には刑罰が科されます。

 

窃盗未遂罪とは、窃盗の実行に着手をしたが目的を達成できなかった場合です。

先ほどの例で言えば、私が友達のカバンの中に手を入れた時点で友達にばれて「あんた!何してるの?」的な感じになり、アクセサリーを抜き取って、私のカバンに移せなかった場合がこれに当たります。

 

 実行の着手という言葉を使っていますが、窃盗罪における実行の着手とは、簡単にいうと、被害者から見れば盗まれる危険性が具体的になった時点を言います。

 

 私の例では、カバンの中に手を入れた時点で友達からすれば、アクセサリーを盗まれる具体的な危険性が生じたと言え、この時点で実行の着手が認められます。

 

 万引きジーメンの場合

 では、本題に戻ります。

 冒頭の例で万引きジーメンが店を出るまで待つのは、理由があります。

 

 まず、窃盗罪が成立する。言い換えると、完成する時期は店を出た時点です。

つまり、店を出た時点で、店が占有している商品を、店の意思に反して、自己の支配下に移したと言えるため、「窃取」となり、窃盗罪が晴れて完成することとなります。

 

 ですが、先ほども述べたように、窃盗未遂罪も犯罪として刑を科すことができます。

 

 窃盗未遂罪は、犯人が万引きをしようと思い、商品を自分のカバンの中に入れた時点で成立します。

 

 つまり、店の中でカバンに入れた時点で、窃盗未遂罪は成立します。

 

 しかし、この時点で万引きジーメンは犯人を制止することがありません。

 

 それはこの時点で言い逃れされる危険性が高いからです。

 例えば、「かごに入れようとしたら間違ってバッグに入ってしまった」とか「エコバッグの代わりに自分のバッグを使用しているだけ」とかそういう具合で言い逃れされてしまえば、確実に逮捕立件することができません。

 

 そのため、店を出るまで万引きジーメンは待っています。

 

 

 

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 総括

 このような万引きジーメンの動きは、犯罪を未然に防ぐことをあえて放棄し、まるでおとり捜査のようです。

 

 しかし、小売店にとって万引きは最大の敵だと言えます。また、万引きをする人の中には常習者が多いです。

 

 そのため、確実にこのような常習者を排除する必要があります。

 ゆえに、このような万引きジーメンの手法もやむを得ないと言えます。

 

 

 

 

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