5分で読める法律の豆知識

テレビや新聞などで政治から芸能スキャンダルまで幅広いニュースを見ます。しかし、法律のことについて詳しく書かれたものはあまりみません。なので自分で勉強してみました。個人的に面白いと思ったものだけ書くのであまり網羅性はありません。なので暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。

警察相手のいたずら動画!公務執行妨害罪と偽計業務妨害罪の成否

 最近、ニュースにもなりましたが、砂糖を小袋に入れて警察の前でわざと落とし、それを拾い上げ、逃走し警察と鬼ごっこをする動画が話題になりました。

 

 個人的にいたずら動画は好きです。

 

 ですが、このような警察と鬼ごっこ動画は、いたずらの域を超えています。

 

 人それぞれいたずらの線引きは違いますが、共通認識として犯罪に該当するいたずらはしてはいけないと皆が考えていると思います。

 

 しかし、そもそも、犯罪に該当するとはどういうことでしょうか。

 

 そこで、今回は、警察に対して覚せい剤と誤信させる物をわざと落として拾い逃走した場合に、公務執行妨害罪と偽計業務妨害罪のいずれが成立するのか検討してみたいと思います。

 

 公務執行妨害罪

 まず、公務執行妨害罪は、刑法95条1項に規定されています。まずは条文をみましょう。

刑法95条1項は「公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、三年以下の懲役若しくは禁固又は五十万円以下の罰金に処する」と規定しています。

 

 公務員とは「国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員、委員その他の職員をいう」と刑法7条1項で定められています。

 

 要するに、市役所の職員から警察官、消防士まで私たちが思う公務員が全て対象になります。

 

 また、注意が必要なのは「職務を執行するに当たり」と規定していることです。

 例えば、警察官が休みの日にスーパーで買い物をしていたとします。この時に、警察官が昔逮捕をした犯罪者で刑務所を出所後、恨みを持っていて、警察官をナイフで刺したとします。

 

 この場合、警察官は、休みであり、私用で買い物をしていて刺されているので、「職務を執行するに当たり」に該当せず、公務執行妨害罪は、成立しません。

(もっとも、警察官が死亡すれば、殺人罪や傷害致死罪が成立しますが)

 

 そして、冒頭の問題を考える上で、一番大切なのが、公務執行妨害罪が成立するためには「暴行又は脅迫」を行うことが必要だということです。

 

 例えば、取調べ中に被疑者が警察の顔面を殴る行為や、捜索差押中に被疑者が「さっさと出て行かないとぶん殴るぞ」などと警察官に言う行為が「暴行又は脅迫」です。

 

 では、冒頭のケースのような場合は、どうでしょうか。

 

 この場合、覚せい剤のように偽装した砂糖を警察の前で単に落とし、警察に覚せい剤であると誤信させているにすぎません。

 つまり、偽計を用いていることになります。そのため、「暴行又は脅迫」に当たらず、公務執行妨害罪は成立しないことになります。

 

 偽計業務妨害罪

 では、偽計を用いている以上、偽計業務妨害罪が成立することが明らかだと言えるのでしょうか。

 

 事はそう単純ではありません。

 

 偽計業務妨害罪は刑法233条に規定されています。

同条は「偽計を用いて、・・・その業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する」と規定しています。

 

ですが、ここでの「業務」の内容については、警察などの活動が含まれるか否かが争われています。

 

この点について判例は「強制力を行使する権力的公務」であるか否かを持って判断していると言えます(威力業務妨害罪の事例ですが、最判昭和62年3月12日刑集41・2・140参照)。

 

少し詳しく説明すると、そもそも、公務執行妨害罪は「暴行又は脅迫」と手段を限定していますが、偽計業務妨害罪については、「偽計」という手段も処罰対象としています。

 

警察の捜索差押等の強制処分を行う際には、偽計によって公務の執行が害されることはなく、この場合、被疑者が警察官に何を言おうとも、警察は対象物を押収することができます。

 

 つまり、強制力を行使する権力的公務は「業務」に含まれません。

 

 そのため、このような「強制力を行使する権力的公務」に対して偽計を用いても、偽計業務妨害罪は成立しないことになります。

 

 では、冒頭のケースではどうでしょうか。

 この場合、かなり難しいです。というのも動画では、偽計であるいたずらがどのような警察官とのやり取りの中で行われたか不明だからです。

 

 ちなみにここはかなり間違えやすいのですが、警察の活動の中には、強制力を行使する場合とそうではない場合があるので、警察活動に対して偽計を用いた場合に、偽計業務妨害罪の成否は直ちに決まりません。そのため、具体的にいかなる警察活動が行われていたのか詳細に検討をする必要があります。

 

 その上で、強制力を行使する権力公務としては、職務質問も含まれると考えられます。そのため、職務質問中に冒頭のいたずらがなされたら、偽計業務妨害罪は成立しません。

 

 しかし、道を聞いていた際や落し物が届けられていないか等の質問は、強制力を行使する権力的公務とは言えません。

 

 そのため、このような最中に上記いたずらをすれば、偽計業務妨害罪が成立することになります。

 

 総括

いずれにしても、このようないたずらは犯罪に抵触する可能性があります。言い換えると黒かグレーの危ないいたずらです。

 

 私は、いたずら動画自体は好きです。ですが、このような黒かグレーの動画はあまり見ていて面白くないし楽しくないです。

 

 このような意見は、あくまでも私の個人的な意見に過ぎませんが、いたずら動画を作る人は本来発想力が豊かなので、もっと面白い動画を作って頂けると嬉しいです。