5分で読める法律の豆知識

テレビや新聞などで政治から芸能スキャンダルまで幅広いニュースを見ます。しかし、法律のことについて詳しく書かれたものはあまりみません。なので自分で勉強してみました。個人的に面白いと思ったものだけ書くのであまり網羅性はありません。なので暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。

交通事故で従業員がすべて責任を負うのですか?使用者責任と求償

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 最近ネットショッピングが定着しています。ワンクリックで次の日には、買った商品が自宅に届く非常に便利です。ですがその分、運送業者の方の負担が大きくなってきているようです。ヤマト運輸などの大手各社が料金の値上げをしたり時間帯の変更をしたりしています。個人的にはやむを得ないような気もします。

 

 ところで、運送業者の人が勤務時間中に事故を起こした場合、あるいは、セールスマンが交通事故を起こした場合に、運送業者の人は、過失があれば不法行為に基づく損害賠償責任(民法709条・710条)を負うことになります。

 

 ですが、使用者である会社も損害賠償責任(民法715条)を負うことがあります。つまり、被害者は従業員と会社のどちらに対しても損害賠償請求をすることが可能性です。

 では、従業員と会社いずれが最終的責任を負うのでしょうか。今回は、使用者責任(民法715条)における求償の問題について検討したいと思います。

 

 使用者責任

 使用者責任は、民法715条1項に規定されています。

 

 同条項は、「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害を生ずべきであったときは、その限りでない。」と規定しています。

 

 まず、要件について検討します。「ある事業のために他人を使用する者」とは、使用関係における使用者という意味です。具体的には、一般的な仕事をする上で、雇用契約等の指揮監督関係を結び、他人を使っている者を言います。

 

 次に、「事業の執行について」とは、判例通説によると、被用者である従業員の職務行為のみならず、外形的に見て職務範囲に含まれているものを言います(ただし、取引行為的不法行為に限ると言う説もあります。)

 

 ここで争いがあるのは、例えば、会社の車を本来禁止されているのに私的な用事などに使って交通事故を起こした場合です。このケースでは、「事業の執行について」に該当するか微妙です。ですが、通常の営業時間内に移動のために車を運転しているときは、「事業の執行について」の要件を満たすことがほとんどです。

 

 そして、「第三者に加えた損害」とは、従業員の職務執行中の行為によって生じさせた第三者の損害を指します。

 

 最後に「使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害を生ずべきであったときは、その限りでない。」と使用者の免責規定を置いていますが、これはほとんど認められません。

 

 以上のように各要件を検討しましたが、基本的に職務執行中に、従業員が交通事故を起こせば、使用者である会社は損害賠償責任を負うことになります(民法715条1項)。

 

 求償

 では、使用者責任が認められるとして、会社は被害者に対して損害賠償をした場合に、従業員に被害者に支払った分だけのお金を請求できるのでしょうか。これがいわゆる求償の問題です。

 

 そもそも、使用者責任の根本的な考え方は、代位責任だと解されています(多数説前提)詳説すると、使用者は被用者を使って利益を受けています。そのため、被用者が職務執行中に生じさせた責任については、被用者に代位して責任を負うべきだとされています。

 

 事実上の必要性から考えても、従業員等の被用者よりも会社等の使用者の方がお金を持っています。つまり、損害賠償請求した場合に、被用者だけにしか請求できないとすると、とりっぱぐれる可能性がります。使用者は被用者を使って利益を得ているので、使用者にも賠償責任を負わせて、被害者がとりっぱぐれるのを防げることになります。

 

 そのため、被害者賠償の視点からみれば、民法715条はとても有益です。

 

 ですが、使用者はあくまでの被用者の代わりに被害者賠償をするにすぎないため、使用者が賠償をした後は、被用者に対して求償を請求できるのが原則です。

 民法715条3項は「使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない」と規定しており、明示的に使用者が被用者に求償請求できることを規定しています。

 

 ところが、世の中に本当に真っ白なホワイトな会社はあるのでしょうか。週休2日で、有給は全て消化できます。また、残業手当は全て役職に関係なく滞りなく支払います。月の残業範囲も法的基準内を完璧に守っており、極力残業はさせません。常に、ベストな状態で従業員が働ける環境を整えています。という会社はほとんどありません。全ての条件を完璧に見たし、かつ法の規制よりも厳格で良好な内部基準を設定し、素晴らしい環境を整備している会社はほとんどありえないと思います。

 

 ブラックという意味ではなく、完全な従業員ファーストの会社はあまりありませんよね。

 

 つまり、場合によっては従業員が交通事故を起こしても仕方がないような環境だった可能性もあります。そのため、使用者が被用者に対して、全額求償を求めるのが相当ではない場合もあります。

 

 そこで、判例では、「使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し右損害の賠償又は求償をすることができる」とされています(最判昭和51年7月8日民集30・7・689)。

 

 したがって、使用者が被用者に全額求償をすることができない場合もあります。

 

 逆求償

 また、民法上被用者が使用者に求償できる明示的な規定はありません。ですが、講学上、被用者から使用者に対して求償をすることができるとする説も多いです。これを逆求償といいます。

 個人的には先ほどの判例の基準で、使用者の求償が制限される場合があれば、逆求償も認められる可能性があると思います。

 

 総括

 以上のように使用者責任と求償の問題について検討してきました。従業員の人で交通事故を起こした場合に、会社から全面的な求償を請求されている場合、ケースによっては、全額会社に支払う必要がないこともあるので、弁護士に相談をすることが大切です。