5分で読める法律の豆知識

テレビや新聞などで政治から芸能スキャンダルまで幅広いニュースを見ます。しかし、法律のことについて詳しく書かれたものはあまりみません。なので自分で勉強してみました。個人的に面白いと思ったものだけ書くのであまり網羅性はありません。なので暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。

自分の物を取り返したら窃盗罪になりますか?

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 日本で一番多い犯罪とはなんでしょうか。殺人罪でしょうか。確かに、一週間に一度は殺人があった報道がされているような感じを受けますが、殺人罪ではありません。では、傷害罪でしょうか。これも違います。

 

 実は年間で一番多い犯罪は、窃盗罪です。理由としては、窃盗罪は、守備範囲が広く、例えば、スリや万引きも窃盗罪に当たります。このようなスリや万引きは犯情にもよりますが、微罪処分という形で、一か月に一回まとめて警察から検察の方に送られて、不起訴となることも多いです。そのため、裁判までいくエリートはそこまで多くはありません。ですが、何度も万引きを繰り返していると、当然エリートになり、起訴されて実刑を下されることもありますので、軽い気持ちで万引きをするのはやめましょう。

 

 さて、これはあくまでも警察や検察の処置についてですが、自分で取り返す場合はどうでしょうか。例えば、借りパクした友人の家にあるゲームを遊びに行った時にこっそりもって帰ってしまう場合には、窃盗罪は成立するのでしょうか。この場合、実は、窃盗罪になる可能性があります。今回は、取り返しの場合の窃盗罪の成否について検討してみたいと思います。

 

 そもそも窃盗罪とは?

 そもそも、窃盗罪はとは、刑法235条に規定されている犯罪です。例のごとく条文から確認します。

 刑法235条は「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪として、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する」と規定しています。

 

 この条文一見簡単そうですよね。そのまま読むと、他人の物を勝手に取ってしまったら、窃盗罪という犯罪になって、最長10年間刑務所に入るか、50万円の罰金を払うか、または両方かという形で、処罰されますよということですよね。

ちなみに、余談ですが、「又は」という意味は、AorBという意味で通常使いますが、刑法の場合、AorBあるいは、AかつBという形で、懲役も罰金も科されることがあります。これを併科と言います。

 

 さて、本題に戻りますが、窃盗罪が成立する要件は一見簡単そうです。しかし、そもそも、「他人の財物」とは何ですか。実はこれ学説上大きな争いがあります。

 

 「他人の財物」とは

 まず、「他人の財物」について検討しますが、「他人の財物」という言葉を素直に読むと、他人が所有しているものということになると思います。ですが、所有者以外にも例えば、所有者が他人に物を貸しているときや質屋に入れているときがありますよね。このような権利が設定されている場合に、窃盗団が質屋等に押し入り財物を窃取した場合に、被害者は所有者だけでしょうか。質屋も困りますよね。言い換えると質屋は質権を侵害されたことになります。借りている人であれば、賃借権を侵害されたことになります。

 

 このように権利設定がされている場合には、所有者を始めてとする様々な権利者が権利侵害を受けたことになります。この所有権を始めとするこれらの占有を正当化するための権利を本権といい、この本権を保護するために作られた規定が窃盗罪であるという考え方があります。これが本権説です。その結果、本権説に立てば、「他人の財物」とは、他人が本権を有する財物ということになります。

 

 他方、このような本権説とは異なる考え方もあります。

現代社会においては、権利者が明確でないあるいは、権利の有無が不明な場合があります。例えば、レンタルビデオ屋さんでDVDを借りたとします。この場合賃貸借契約をしていることになり、借りた人には賃借権があります。ところが、うっかり返却期間を過ぎてしまうことがあります。この場合、レンタルビデオ屋さんに延滞料を支払と思いますが、この時、賃貸借契約が存続しているのか、言い換えると賃借権があるのかどうなのか、不明ですよね。個別の契約内容にもよりますが、一見して判断することは困難です。

 

 ですが、このような状況下で例えば、友達が家に遊びに来て、見たかったDVDだと思い勝手にもって行ってしまった場合はどうでしょうか。仮に賃借権がなかった場合には、本権がなく自分自身が被害者ではないことになってしまいますが、これは一般的な感覚からズレているような気がします。

 そこで、本権の存在の有無にかかわらず、窃盗罪は、占有自体を保護することを目的としているのだと解釈する考え方があります。これが占有説と言われているものです。その結果、占有説に立てば、「他人の財物」とは、他人が占有する財物ということになります。

 

 「どちらでも同じではないか?」と思われるかもしれませんが、実は、この考え方で結論が異なることがあります。それが、冒頭に挙げた取り返しの問題です。

 

 取り返したら窃盗犯ですか?

 では、借りパクされた物を取り返すケースを検討してみましょう。借りパクされた物と言っても二つの場合が考えられると思います。一つ目は、典型で1年経っても返してくれないというケースです。この場合、借りた人の借用権はすでに消滅していることが多いです。

 

この場合、本権説では借用権という本権が借りた人にないため、取り返しても窃盗罪は成立しません。

 

しかし、占有説では、借りた人が占有していることに変わりがないので、自力救済という超法規的事由がない限り、窃盗罪は成立することになります。

 

 他方、貸したけど、自分で直ぐに使いたくなり、貸した次の日に友人の家に遊びに行きこっそりもって帰ってきたケースではどうでしょうか。

 この場合、友人は借用権を有しているため、本権説に立っても取り返しは、窃盗罪に当たります。さらに、占有説に立っても、当然窃盗罪が成立することになります。

 

 つまり、以下のようになります。

期間超過> 

       本権説   占有説

  不成立     成立

 

期間内> 

  本権説   占有説

  成立     成立

 

 

まとめ

 このように取り返しの場合には、窃盗罪が成立する可能性があることがわかりました。ですが、これはあくまでも勝手に取り返した場合です。当然借りパクしている人は返還義務を負っているので、そのまま返さないことが違法です。

 また、取り返して窃盗罪が成立するとしても、犯情が極めて軽いためほとんどの場合、警察に呼ばれても厳重注意をされて、検察に送検後も不起訴になる可能性が極めて高いです。

 

 と!ここまでうんぬん・かんぬん検討してきましたが、結論は、借りた物はしっかり返すということが一番大切です。