5分で読める法律の豆知識

テレビや新聞などで政治から芸能スキャンダルまで幅広いニュースを見ます。しかし、法律のことについて詳しく書かれたものはあまりみません。なので自分で勉強してみました。個人的に面白いと思ったものだけ書くのであまり網羅性はありません。なので暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。

殺人罪?それとも傷害致死罪?そして殺意とは?

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 暑い日が、暑い日が続きますね。暑いです。本当に暑いです。

 

 よくテレビで、「○○容疑者が傷害致死罪の容疑で逮捕されました」や「××容疑者が殺人罪の容疑で逮捕されました」という報道を目にしますが、この違いってどうやって区別するのですかね。そこで、今回は、殺人罪傷害致死罪とはどのように区別するのか。また、殺意の認定はどのようにして行われるのか検討してみたいと思います。

 

*ちなみ、「容疑者」という言葉がありますが、「容疑者」という言葉は法律上の言葉ではありあません。法律上は「被疑者」といいます。裁判が始まった後、公訴提起といいますが、それ以降は「被告人」といいます。また、民事裁判では、訴えを起こす方の当事者を「原告」といい、訴えられる方を「被告」と言います・・・・ふと我に返ると揚げ足取りの小姑みたいですね(笑)。 

 

 殺人罪傷害致死

 さて、小姑発言は置いておいて、本題に入ります。まず、殺人罪の条文は、刑法199条に規定されています。

 

 刑法199条は、「人を殺した者は、死刑又は無期もしくは五年以上の懲役に処する」と規定しています。

 

 この条文は分かりやすいですね。特にそのままの意味です。専門家風にいうと、殺す行為とは、人の自然の死期以前に人の生命を断絶する行為となります。

逆に難しくなった!と思いますよね。ですが、簡単です。人間には寿命があります。普通に生活していれば「死」の瞬間が訪れますが、それが訪れる前に、他人がその人の命を故意に奪うこと、これが人の自然の死期以前に人の生命を断絶する行為、すなわち、殺す行為です。

 

 では、傷害致死罪とは何でしょうか。傷害致死罪は、刑法205条に規定されています。

刑法205条は「身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、三年以上の有期懲役に処する」と規定されています。

 

 この条文も比較的わかりやすいですよね。「身体を傷害し」とは、専門家風に言うと、人の生理的機能に障害を加える行為となりますが、要するに怪我をさせる行為です。

 この怪我をさせる行為には色々なものがあります。例えば、押し倒して、相手に擦り傷を負わせても怪我をさせていることになりますよね。そのため、「身体を傷害し」に当たります。他方、包丁で心臓を刺しても、怪我をさせていることに変わりはないので、「身体を傷害し」に当たります。

 ですが、押し倒して擦り傷を負わせても通常、人は死亡しませんよね。なので、この場合、傷害罪(刑法204条)が成立するにすぎません。

 他方、心臓を包丁で刺した場合、通常、人は死亡します。つまり、「身体を傷害し」、「よって」つまり、その結果、人が死亡しているので、傷害致死罪が成立することになります(刑法205条)(法律用語で結果的加重犯と言います。)

 

 と!ここまでくると一つの疑問が浮かぶと思います。

包丁で心臓を刺している以上、殺人罪が成立するのではないかと思いますよね。

 

 実は、この場合、殺人罪になるケースと傷害致死罪になるケースの二つの可能性があります。では、どのように区別するべきでしょうか。

 

 この区別で用いるのが、認識の違いです。ここでは本来行為論で説明すべきだと思いますが、難しいので殺意という枠で説明します

(厳密には、行為者の認識態様の違いが行為の危険性を変化させるという形になりますが、正直、一般的なニュースを見るときあまり重要ではないと思うので、あえて殺意で説明します。)

 

 そもそも、殺意とは、死亡結果の認識認容をいいます。

先ほどの心臓を包丁で刺す行為の時に、「殺してやる」等と思っていた場合、被害者が死亡することを認識認容していますよね。そのため、殺意があるということになり、殺人罪が成立します。

 

 他方、心臓を包丁で刺す時に、例えば、酔っ払っていて、話しているうちに頭にきてとりあえず、近くにあった包丁で切り付けたというような場合には、「痛めつけてやろう」と思って、手に向かって切り付けたのですが、運悪く心臓に刺さってしまったという場合があります。この場合、怪我をさせる認識はありますが、相手が死亡することを認識していないです。

 このような場合には、殺意はなく、傷害致死罪が成立することになります。

 

 殺意

 では、殺人罪傷害致死罪の区別につき、便宜上、殺意を基準に行うとして、殺意とはどのようにして認定すべきなのでしょうか。

 

 そもそも、殺意は死亡結果の認識認容です。つまり、これは人の心の中の事情ですよね。

 

 昔、ある女の子と付き合っていて、「あの時、あの子の気持ちがわかっていたら、今幸せな生活を二人でしていたのかもしれない」と思うことがありますが、あの子の気持ちがわからなかったから、今一人できつい羽目になっているわけですよね。まぁ、その時の彼女のしぐさや状況で察するべきだったのでしょうが、当時は気付かなかったですね。

 

 と!ものすごくどうでもいいことを聞かされたと思っていますよね。ですが、実は、殺意も一緒です。その時、言ってくれれば解ったのに!言わないから状況で察するしかないのです。

 

 つまり、これを刑事裁判に当てはめると(当てはまっているか分かりませんが(笑))

 被告人が刑事裁判で、「私は、殺すつもりでした」と自白をしていれば裁判官は、殺意があったと分かりますよね。そのため、裁判官は、言ってくれたおかげで、殺意を認定できます。ですが、被告人が自白をせず、殺意があったとは言ってくれない場合には、殺害当時の被告人の犯行状況等を見て殺意を認定するしかありません。

 これを小難しくいうと、間接事実を積み上げて立証あるいは認定する方法と言います。

 

 では、どのような間接事実があれば、殺意を認定することができるのでしょうか、代表的なものをいくつか検討します。

 

 創傷部位と凶器

 一つ目は、創傷部位と凶器です。まず、創傷部位は、身体の枢要部かどうかで異なります。そもそも、「身体の枢要部分ってなんだよ?」って話ですよね。身体の枢要部とは、手と足を除いた体の部分です。要するに、頭、顔、首、胴体です。これらの部分は攻撃させると致命傷に至る可能性が高いす。そのため、人体の枢要部への攻撃は、殺意を認定する方向に傾く事実となります。

 

また、傷の程度も重要となります。要するに、心臓を1回、浅く突き刺すのと、心臓を100回深く突き刺すのでは全く違いますよね。この場合、複数回又は深く突き刺す行為の方が、殺意を認定する方向に傾く間接事実となります。

 

 凶器については、二つの視点で考える必要があります。まずは、性質です。つまり果物ナイフと包丁だと包丁の方が、致命傷を与える危険が高いですよね。そのため、包丁を使用した場合は、殺意を認定する方向に傾く事実となります。

次に、使い方が重要になります。例えば、レンガ等は通常建物に使用する材料で凶器にはあらないものです。しかし、レンガを使って複数回人間の頭部を殴打すれば当然死亡する可能性は高いです。そのため、このような使い方をしたことは、殺意を認定する方向に傾く間接事実となります。

 

 動機

 また、殺人罪は、本来なかなか発生しない事件です。というのも、殺意をもって人を攻撃するには、それ相応の理由が通常あるからです。要するに強い恨みがある等の動機があってしかるべき犯罪です。そのため、殺意を抱くに値する動機の存在は、殺意を認定する方向性に傾く間接事実となります。

 

 救護措置をしない

 また、通常、人を殴って殺すつもりがなかった場合には、病院等に運んだりすることが多いです。そのため、救護措置をしないことは、殺意を認定する方向性に傾く間接事実にはなります。しかし、予期せぬ結果に戸惑いその場から逃走することも、十分ありえるので、救護措置をしていない事自体は、強く殺意を推定する事実とはいえないと思います。

 

 

 総括

 以上の、殺人罪傷害致死罪の違い、及び殺意の認定方式について検討してきました。ドラマ等で、警察官が被疑者の死亡解剖に立ち会ったり、凶器が何で、動機が何かみたいなことを捜査しているシーンがありますが、この捜査も殺意の立証をする上で、必要なものです。

そのため、ニュースやドラマを見るときに少し意識してみると、いつもと違った楽しさがあるかもしれません。