5分で読める法律の豆知識

テレビや新聞などで政治から芸能スキャンダルまで幅広いニュースを見ます。しかし、法律のことについて詳しく書かれたものはあまりみません。なので自分で勉強してみました。個人的に面白いと思ったものだけ書くのであまり網羅性はありません。なので暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。

隣人トラブル!殴られなくても傷害罪(刑法204条)

 数か月前ですが、テレビで隣人トラブルの報道がされているのを見ました。その報道の中には、ご近所の人が夜も明けぬ早朝に家の前に来て、「呪ってやる」「お前!覚えてろよ」などの暴言を大きな声で叫ぶという映像がありました。怖いですね。それが毎日ですよ毎日!

 

小心者の私ならガクガクブルブル、てんやわんやの一大事ですよ!

 

 「どうゆう状態だよ!」と突っ込まれるのが一番怖いのですが、それは脇に置いておいて、さて本題に入ります。今回は、隣人が雨の日も風の日も雪の日も足しげく通い暴言を毎日毎日浴びせてきた場合に、傷害罪(刑法204条)が成立するのか検討してみたいと思います。

 

 傷害罪と暴行罪の関係

 まず、傷害罪と暴行罪の条文を確認してみましょう。

 傷害罪は、刑法204条に規定されています。同条は「人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する」と規定しています。

 他方、暴行罪は、刑法208条に規定されています。同条は「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する」と規定しています。

 

 んんんん~この条文も分かりそうで、よく分らない条文ですね!

 

 具体的に検討してみましょう。

 まず、「傷害」とは、通説によれば、人の生理的機能に障害を加えることと解されています。つまり、人の顔面を殴って怪我を負わせた場合や、飲み物に毒を入れて下痢の症状を生じさせた場合が、「傷害」ということになります。

 そして、暴行とは、不法な有形力の行使と解されています。具体的には、人を後ろから押したり、殴ったりする行為です。

 

 これを前提として条文を素直に読むと、まず、暴行罪については、「暴行」を加えたが、傷害結果が生じなかった時となります。つまり、殴る蹴るなどの行為をしたにもかかわらず、その暴行が相手に当たらず、怪我をしなかった場合等に、暴行罪が成立することになります。

 

 では、傷害罪はどうでしょうか。つまり、暴行という不法な有形力の行使の場合に限って、怪我等の結果が生じた場合にだけ成立するのでしょうか。

 

 実はそうではないんです。

刑法204条は、「人の身体を傷害した」と規定していますよね。つまり、怪我等の結果が生じた場合に成立する犯罪であり、手段については有形無形を問わず、成立する犯罪です

 

 つまり、その手段は蹴ったり殴ったりする行為はもちろんそれ以外の行為であってもよいわけです。要するに、病院にいって診断書が出たとします。診断書に載っている病気の原因が、Aとうい人物の行動のみならず、発言であっても、傷害罪は成立するということになります。

 

 具体的な検討

 では、先ほどの隣人トラブルに即して検討してみましょう。先ほどの隣人トラブルでは、隣人が家の前に来て大声で、暴言を吐いていますよね。これが一日であればまだしも、毎日毎日続けば、やられた方はどうなりますか。私だったら、ノイローゼになったり、うつ病状態になると思います。このような精神的な病気も、人の生理的機能に障害を加えることになるため、「傷害」結果となります。

 ゆえに、隣人が毎日毎日このような暴言を吐き続けて、その結果、精神的な病気を被害者が発症すれば、傷害罪(刑法204条)が成立します。

 

 発病前に警察はしっかり対応してくれるの?

 では、このような精神的病気を発病した場合には、傷害罪が成立するとして、それ以前の段階でも、当然苦しいわけですよね。というか、苦しくなかったら病気になりません。なので、発病前の段階で、警察に対処して貰いたいです。

 しかし、警察は単に暴言を吐いている段階では、動かないことが多いです。それはなぜでしょうか。

 

例えば、暴言の内容が、殺害予告や危害を加える旨であれば、これは「害悪の告知」として、刑法222条の脅迫罪が成立します。つまり、その発言をした時点でその隣人は犯罪者ということになります。そのため、警察はすぐに逮捕及び検挙することが可能です。

なので、隣人の暴言の内容が危害を加える内容であれば、直ちに警察に行って下さい。そうすれば、直ぐに警察は対応してくれると思います

 

 では、そのような内容ではなく、「呪ってやる!」や「お前!覚えてろよ」という暴言の場合にはどうでしょうか。この場合、明確に「あなたに危害を加えます」という意味にはならず、「害悪の告知」とは認定しずらいです。もっとも、例えば、包丁などを持って家の前で「お前!覚えてろよ」等と発言すれば、当然殺害予告的なニアンスを含んでいるので、「害悪の告知」に当たりますが、そのような切迫したケースはあまりないと思います。

 

 また、「呪ってやる」等の発言は、不法な有形力を行使しているわけでもないので、暴行罪も成立しません。

 

 そのため、この段階では条例違反に当たる可能性はあっても、暴行罪、脅迫罪には当たりません。そのため、警察は直ちに逮捕などの強硬措置にでることができません。

 

 ここで、条例違反があるのだから逮捕できるのではないかという意見もあると思います。確かに、条例違反でも逮捕できる場合はあります。詳しくは、逮捕要件についてちょっと長くなってしまうので、ここでは軽くだけ触れさせて頂きます。そもそも、逮捕とは、被疑者の身柄拘束をする捜査方法です。そして、逮捕をする目的は、公訴提起(刑事裁判をする訴え)をする前提として、被疑者が逃走したり、住居不明等で、法廷に呼べなくなることを回避することにあります。

 

条例違反の場合、原則、地方自治法14条に規定されている通り、最高刑が懲役2年です。そして、執行猶予を付すことができるのが3年以下の刑を言い渡す時です。つまり、条例違反の場合、実刑になり刑務所に入りことになるケースはほとんどありません。言い換えると、条例違反で検挙しても、かなり軽い刑しか科すことができず、さらに、執行猶予が十中八九付されます。そのため、隣人が逃走を図ることは通常想定できません。そして、隣人の名前と住所もはっきり警察はわかっています。そのため、逮捕の必要性は認められず、逮捕できないということになります。

 

 その結果、単に隣人が暴言を吐いている段階では、警察が動いてくれない可能性が高いです。ですが、その後、例えば、病気を発症すれば傷害罪が成立しますし、危害を加える内容を言っていれば、脅迫罪が成立します。そして、隣人が暴言を吐いている段階で、今後それらの犯罪が成立する可能性が高いです。そのため、一度警察に行き相談をすること自体は、後で犯罪が成立した時点で有利に事をすすめる上で、とても重要です。

 

 総括

 色々脱線してしまい申し訳ありません。まとめると、まず、隣人が暴言を言っている段階で、警察に相談をしても、暴言内容にもよりますが、直ぐに逮捕という形にはならないことがあります。しかし、相談をすれば、巡回の回数を増やしてくれたり、事が起きた時に直ぐに対応してくれるので、相談をすることが大切です。

 

 また、隣人が暴言を言っていたことが原因で、ノイローゼやうつ病などを発症したら、傷害罪が成立します。そのため、診断書をもって直ぐに、警察に行きましょう(もちろん、民事であれば、慰謝料請求も当然できます)。

 

 隣人トラブルはとても苦しいです。引っ越すことは難しいし、毎日続く場合は、精神的な苦痛は著しいです。ですが、解決の糸口は必ずあるので、諦めずに段階ごとにしっかりとした対応をとっていきましょう。