5分で読める法律の豆知識

テレビや新聞などで政治から芸能スキャンダルまで幅広いニュースを見ます。しかし、法律のことについて詳しく書かれたものはあまりみません。なので自分で勉強してみました。個人的に面白いと思ったものだけ書くのであまり網羅性はありません。なので暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。

娘の顔にあざ。母親の固有の慰謝料請求権

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 暑い日が続きますね。毎日毎日汗がだらだらですよね。いや参った!

体重計に「痩せてるかな(ウキウキ)」的なノリで毎日乗ってるのですが、一向に痩せませね。だって、「ビールが美味しんだもん!やめられないな」(いわゆる自業自得というやつですね)。ちなみに、夏よりも冬の方が、基礎代謝が良くなるので、痩せやすいそうです。

 はい!どうでもいい情報ですね。ごめんなさい。

 

 本題に入ります。数日前から学生さんは夏休みに入ったそうです。夏休み友達とお出掛けしたりすることが増えますが、娘さんが事故に遭い顔にあざが残ってしまったら皆さんなら、どう思いますか(いきなりヘビーな話でごめんなさい)。

 今回は、母親自身が被った精神的損害について加害者に対して慰謝料請求をすることができるか、その際にどのようなことが考慮されているのか検討してみたいと思います。

(なお、当然娘さん自身が被っている精神的損害については慰謝料請求をすることが可能です)

 

 母親の固有の慰謝料請求権

 前回、夫が他界した時に胎児がいかなる権利を有するかについて検討しました。今回も、問題となる条文は、民法711条です。

 

 まず、条文確認からします。

 民法711条は「他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、

その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない」と規定しています。

 

 これは、前回でも検討した通り、人が死亡した場合に、一定の近親者は心に傷を負うことが多いので、その近親者の精神的損害があることを推定するための規定です。

 と!すると、文言通りに解すると、これは被害者が「死亡した場合」についてのみ適用する条文ということになります。そのため、娘が顔に傷を負った場合については、適用できないように思いますよね。

 

 実はそうなんです!最高裁は、民法711条をこの場合適用していないんです。

 

 じゃあ、娘が顔に傷を負った場合に、母親の心の傷は未来永劫癒されないのか?

まぁお金を払って貰っても、そら納得をすることはできないですが、少なくともお金という形で償ってほしいですよね。

 

 最高裁も悪人ではありません。最高裁は、民法711条は適用しませんが一定の場合に限って、母親の慰謝料請求権を認めています。最判昭和33年8月5日民集12・12・1901です。

 

 同判決では、戦争で夫を亡くした母親が娘を女手一つで育てていました。そのような中で、娘が事故に遭い顔にあざが残ってしまい、当時の医学では当該あざを消すことができなかったとい事実関係が前提になります。

 

 そのような状況の中で、まず判例は、「民法711条が生命を害された者の近親者の慰謝料請求につき明文をもって規定しているとの一事をもって、直ちに生命侵害以外の場合はいかなる事情があってもその近親者の慰謝料請求権がすべて否定されていると解しなければならないものではない」と小難しく論じています。

 

 要するに、被害者が死亡した場合にだけしか、近親者の固有の慰謝料請求が認められ、それ以外の場合に、慰謝料請求ができないってことにはならないぜ。言い換えると、被害者が死亡していなくても親は慰謝料請求できる時があるぜ。という意味になります。

 

 じゃあ、どのような場合でしょうか。

判例は「子の死亡したときにも比肩しうるべき精神上の苦痛を受けた」場合だとしています。

 つまり、判例は「子の死亡したとき」と同じレベルで母親が精神的苦痛を受けた場合には、慰謝料請求権を認めています。

 

 考慮される事

 判例では、「子の死亡したときにも比肩しる」という基準が一つの物差しとなっています。

その考慮材料には色々なものがあります。代表的なものとして三つ挙げます。

 

一つ目は、生活状況です。つまり、離婚して自分が子供を養育していない場合等には、母の慰謝料請求権が認められない可能性があります。

 

二つ目は、傷の程度です。すなわち、顔に傷を負ったとしても、それが完治可能なものである場合や、相当程度傷が癒える場合には、慰謝料請求権が否定される方向に流れます。

 

 そして、三つ目は、性別です。男女平等の精神が浸透し、かつ最近では、美肌男子なども登場し顔へのこだわりは男女で変わらなくなってきています。

しかし、実際に裁判になると、男性よりも女性の方が顔に傷を負った場合重大だと考えられています。そのため、娘でなく息子が顔に怪我を負った場合には、母の慰謝料請求権は否定される方法になります。

 

 これらの要素は総合的に判断されるので、例えば、自分が養育していなかったとしても、定期的に会っていて、娘の傷の程度が重大なものであれば、母親の慰謝料請求権は認められる可能性が高いです。

 逆に、養育していても子供を普段から親が虐待していたような例外的なケースであれば、母の慰謝料請求権は認められない可能性が高いと思います。

 

 個人的な考え

 個人的には、ここまで書いてきてちょっとあれですが、最高裁の結論には反対です。最高裁は、母親の固有の慰謝料請求権については限定的な範囲でしか認めていません。基準がかなり厳格です。ですが、請求権があることと金額がいくらであるかは別の話だと思います。つまり、請求権があるかどうかという話と金額はいくらかという話は別であり、これをしっかりと分けて考えることが大切だと思います。

 

 つまり、親が子供を育てて子供が顔に傷を負えば心が痛みますよね。この心の痛みは「子供が死亡したときにも比肩」する程度ではなくても、心が痛いことに変わりがないと思います。便宜上小さな痛みと言いますが、この小さな痛みであっても、精神的損害が発生していることに変わりはないのではないでしょうか。

 

 そうだとすると、例えば、「子供が死亡したときにも比肩」する程度の場合には、母親の慰謝料が1000万円だとしても、それよりも低い程度の場合には、800万円、500万円、300万円、100万円、50万円、30万円、10万円という形で、賠償額で調整すべきではないでしょうか。

 

 つまり、子供が顔に傷を負った場合には、母親の慰謝料請求権を原則認めて、その上で、程度に応じて、損害賠償額を決めるという運用の方が妥当な解決を導けると思います。 

 

 まとめ

 以上のように母親の固有の慰謝料請求権は認められることがあります。個人的には門戸をもっと広げるべきだと思いますが、現状は難しい部分もあるかも知れません。

子供の顔に傷ができた時、一番悲しいのはその子供です。薄くはなっても一生残るものであればなおさらです。

そして、そのようの子供の姿を一番間近で見ているのは親です。親も辛いです。顔の傷は消えません。心の傷も消えません。ですが、せめてお金だけはきっちと貰いましょう。

 そのお金で、楽しい将来に向けた第1歩を踏み出せれば幸いです。