5分で読める法律の豆知識

テレビや新聞などで政治から芸能スキャンダルまで幅広いニュースを見ます。しかし、法律のことについて詳しく書かれたものはあまりみません。なので自分で勉強してみました。個人的に面白いと思ったものだけ書くのであまり網羅性はありません。なので暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。

窃盗じゃくなくて横領だよ

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 先日映画を見ていました。その映画は、会社同士の商品開発競争を描いたものでした。その映画のワンシーンに商品開発部の部長が、極秘資料を持ち出しライバル会社に渡すというものがありました。結局その部長は最後には捕まり、主人公の会社が競争に勝って、めでたし、めでたしという感じで終わります。全体的な映画の評価は可もなく不可もなくという感じです。

  

 ですが、その映画の中で一つ気になったシーンがありました。それは最後の方のシーンです。極秘資料を持ち出した部長に対して部下たちがこぞって「この盗人!」「窃盗犯!」などと非難していました。部長は汗ダラダラでしどろもどろして、最後は土下座するというようなシーンです。よくあるシーンといえばよくあるシーンですよね。

 しかし、一つ気になったのですが、そもそも、部長は「盗人」なのでしょうか。というのも、部長は商品開発部の責任者で、自分で書類を管理しているわけですから、人の物を奪ったわけではありません。すごくめんどくさいことを言ってしまいごめんなさい。ですが、どうしても気になったので調べてみることにしました。

 

 窃盗と横領ってそもそも何?

 映画のケースを検討する前に、そもそも、窃盗と横領ってどのような違いがあるのでしょうか。窃盗罪は、刑法235条に規定されています。条文には「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」と書かれています。他方、業務上横領罪は、「業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する」と書かれています。

 

 んんんんんんんんんんん?

 

 何を言ってるのかわかりそうでわからないことが書かれていますね。そこで、さらに調べてみたところ、窃盗罪については、「他人の財物」というのは、基本的には他人が占有をしている財物を指すそうです(当該文言につき、本権説、占有説、平穏占有説の対立については専門書をご覧ください。本問題分析には実益がないので割愛しました。)そして、「窃取」とは、他者の占有下にある財物につき、その占有を排除して自己の支配下に移す行為だと言われています。

 

 これは、万引き等の例を思い浮かべればわかると思いますが、お店の中にある商品は、お店が占有している財物ですよね。これをレジを通さずにお店の外に持ち出すと、お店の占有を排除して財物を自己の支配下に移したことになります。

 

 だから、万引きジーメンは万引犯が、お店の外に出てから声をかけるわけですね。なぜかというと、お店の外に出て初めてお店の占有を排除して自己の支配下に移したと言えるからです。

 

 なるほど!

 

 巧妙な技だ!

 

 他方、業務上横領罪とはどのような犯罪なのでしょうか。まず業務上とは、会社などで自分が担当している業務をする際にというような意味です。

 自己が占有しているとは、支配下に置いていることです。(ここでの支配は法律上の支配も含まれるのですが、今回の映画とは直接関係がないので割愛します。)そして、 

 

「他人の財物」とは他人が所有しているものを言います。また、「横領」とは、委託の任務に背いて所有者でなければできない領得行為を行うことです。

 

 横領もなんだか分かりそうで分からないですよね。簡単にいうと、会社のお金の使い込みなどが横領罪となります。

 

 例えば、会社の営業部長をやっている人がキャバ嬢に、「お願いあのバッグ買ってよ。買ってくれたら大好きになっちゃう。きゃは」とか言われて、調子に乗って「任せろ。俺は偉いんだからな」とか言って、会社のお金を勝手に使い込んじゃった場合です。

 この場合、営業部長は、上限は決まっていますが経費を使える裁量権限を有しています。つまり、営業部長は会社のお金を使う権限自体は持っています。ですが、それはあくまでも会社の営業に必要な範囲でという留保を伴います。ゆえに、会社の業務と関係のないキャバ嬢へのバッグのプレゼントのためにお金を使うことは、委託の任務に反して、所有者でなければできない領得行為を行うことになります。

 

 両者の違いは?

 以上から考えると、簡単にいうと窃盗罪は人の財物を奪う犯罪です。他方、業務上横領罪は、会社の業務執行上の権限を有している人がその権限を濫用して本来してはいけない使い方をしてしまうことと言えます。

 

 映画の場合

 では、本題に戻りますが、冒頭の映画の場合はどのようになるのでしょうか。映画の場合、犯人は、商品開発部の部長です。なので、極秘資料は会社が所有していますが、管理は部長が行っています。ゆえに、極秘資料は、業務上占有している他人の物ということになります。そして、部長は、自社の商品開発のために極秘資料を使うことが許されているにすぎません。

 というかライバル企業に極秘資料見せて全然OKという会社はないと思います。もっというと、それじゃ極秘じゃないことになりますよね(笑)。

 

 なので、商品開発部の部長が、極秘資料を社外に持ち出してライバル企業に見せることは、委託の任務に背いて所有者でなければできない領得行為を行うことなので、業務上横領罪が成立するということになります。

 

 今回は窃盗罪と横領罪の違いについてみてみたのですが、冒頭の映画のみならず、万引きジーメンがなぜ店外まで出るのを待っているのか、また新聞で大企業の横領事件が掲載された時に、なぜ横領になるのかよく分りました。これからテレビなどを見るときは是非横領なのか窃盗なのか考えてみて下さい。