5分で読める法律の豆知識

テレビや新聞などで政治から芸能スキャンダルまで幅広いニュースを見ます。しかし、法律のことについて詳しく書かれたものはあまりみません。なので自分で勉強してみました。個人的に面白いと思ったものだけ書くのであまり網羅性はありません。なので暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。

不動産の二重譲渡。所有権の移転と民法上の規制

 

www.houritunomametaro.com

 

 最近、不動産が高騰しているらしいです。オリンピックの影響でしょうか。自分の持っている土地の値段が跳ねたら嬉しいですよね。「しもしもで、アッシー呼んで。座銀でシースーの後はマハラジャでオールナイト」みたいな感じですかね。

 まぁ色々無理がありますが。

 

 さて本題に入ります。今回は土地の高騰を予測して、土地を買おうと思っている方もいらっしゃると思います。そこで、なぜ不動産を買ったらすぐに登記をしなくてはいけないのか。不動産の二重譲渡の観点から今一度検討してみたいと思います。

 

 契約とは何?

 まず、二重譲渡の前に、そもそも、大前提の契約とはなんでしょうか。そこから検討しましょう。

 

 契約とは、意思の合致を言います。そして、意思の合致とは、申込みと承諾が一致したことをいうのですが、正直あまりピンときませんよね。

 

 具体的に検討します。まず、不動産屋に行きます。何かおすすめの物件はありますかと尋ねます。すると、不動産屋さんが、「最近だと、豊洲あたりがいいですね。将来的に地価も高騰しますし、後は、浦安から八丁堀あたりまでの沿線は、将来開拓が見込めますので、おすすめのエリアです」的な説明があるかもしれませんが、その中で「この浦安の○○の土地を5000万円で売ってくれ」と言います。これが申込みです。そして、不動産屋さんが「いいですよ。」と言います。これが承諾です。

 

 つまり、不動産屋さんが「いいですよ」と言った時点で、申込みと承諾が一致したことになり、意思の合致が認められ、契約が成立することになります。

 

 所有権はいつ移転するの?

 では、このように契約が成立したとして、所有権はいつ移転するのでしょうか。土地の測量に行った時でしょうか?それとも登記をしたときでしょうか?それとも気が変わってマイホームを建ててマイハニーと一緒に新婚生活を始めたときでしょか?

実はどれも違います(通説を前提)。

 

 民法176条を見てみましょう。同条は「物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる」と規定しています。

 

 今問題となっているのは、土地の所有権の移転時期ですよね。つまり、「物権の・・移転」が問題になっています。そして、物件の移転は、「当事者の意思表示のみによって、その効力を生じる」と書いてあることから、意思の合致があった時点で、所有権移転の効力が生じることになります。

 つまり、契約が成立した時点で、「浦安の○○の土地」は不動屋さんからあなたに所有権が移転することになります。

 これを専門用語で意思主義といいます。少し余談ですが、他の国では登記等の外部的行為が行われるまで、所有権は移転しないと考えられているところもあります(形式主義)。ですが、日本では意思主義を採用しているため、契約の成立と同時に所有権は買主に移転します。

 

 

www.houritunomametaro.com

 

 不動産の二重譲渡とは?

 では、契約と同時に所有権は移転します。ですが、世の中では、不動産を買ったらとりあえず、「司法書士に依頼して登記を直ぐにしようぜ!」的な空気がありますよね。なぜですか。理由はいくつかありますが、法律的に言えば、一番は確定的に所有権を取得したいからです。

 

 具体的に検討してみましょう。先ほどの例で、不動産屋さんとあなたの間で、「浦安の○○の土地」の売買契約は成立します。そして、後日不動産屋さんに5000万円支払って、代わりにその土地の引き渡しを受けました。しかし、登記料が高いため、後日気が向いたら登記をしようと思い放置しました。

他方、あなたに「浦安の○○の土地」を引き渡した後、別のAさんという客が不動産屋さんに来たとします。Aさんはあなたが買ってすでに引き渡しを受けている「浦安の○○の土地を1億円で売ってくれ」と不動産屋さんに言いました。不動産屋さんからすれば、2倍も違う額の申込みを受けたら、「もちろん。いいですよ」とか言っちゃいますよね。

「何が『もちろん。いいですよ!』だよ」と、あなたからしたら非常にイラッと来ると思います。

 

 私だったら怒ります。彼女に浮気されたレベルでむかつきます。二人にいい顔するのはよくないですよね。本命を決めたら一人に絞るべきだと思います。二人にいい顔をするのは二人とも傷つけることになるので絶対によくないことです。

 

と!「何の話をしているんだ?」と突っ込まれるかもしれませんね。ごめんなさい。

 

 ですが、1億円提示のAさんに不動産屋さんが「もちろん。いいですよ」と言った場合に、契約は成立するのでしょうか。というのも、すでにあなたに「浦安の○○の土地」は売っているので、そもそも、売れないのではないでしょうか。

 

 実は、これ売れるんですね。色々な説明の方法はありますが、先ほど私は契約の成立により所有権は移転すると言いましたが、これは確定的に移転しているわけではありません。その反面として、未確定ながらも売主の不動産屋さんに所有権が残存していることになり、残存した所有権があることを前提に、不動産屋さんがAさん「浦安の○○の土地」を売却し、所有権の移転を行うことは可能ということになります。

 

 その結果、あなたとAさんは、「浦安の○○の土地」を未確定ながらもお互い所有していることになります。では、最終的にどちらが所有権を確定的に取得できるのでしょうか。

 

 これを規定しているのが、民法177条です。民法177条は、「不動産に関する物権の得喪及び変更は・・・・・登記をしなければ、第三者に対抗することはできない」と規定しています。

 

 具体的に検討します。まず、現在問題となっているのは、あなたとAさんどちらが所有権を確定的に取得できるかですよね。これは土地という「不動産」の所有権という「物権」の獲得あるいは移転に関する事項です。そのため、「不動産に関する物権の得喪及び変更」の問題と言えます。

 

 そして、同条に規定されている「第三者」とは、専門用語でいうと、当事者又は包括承継人以外の者であって、登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者を言います。なんだか呪文のような言葉ですね。具体的にいうと、不動産の所有権を誰が最終的に所得するかは、民法177条によれば「登記」ですよね。つまり、「登記をしなければ、第三者に対抗することはできない」とは、登記をしないと第三者に自分が所有権を持っていると主張できないことを意味します。これを言い換えると、登記を備えれば第三者に対して自分が所有権を有していることを主張できる。すなわち、確定的に所有権を取得するということになります。

 

 そうだとすると、今回の問題で「第三者」とは、あなたもAさんも未確定ながらも所有権を有していますよね。そのため、どちらも確定的に所有権を取得する可能性があります。反対の視点でみると、あなたとAさんどちらかが登記を備えてしまうと、一方は確定的に所有権を喪失してしまうことになります。

 

 したがって、相手が登記を備えていない間は、共に所有権を主張でき、かつ、相手が登記を備える前であれば、相手が土地の所有権は「私が持っている」と主張しても、これをあなたは拒むことができます。

 そのため、あなたもAさんも、相手の登記の欠缺(ないこと)を主張する正当な利益を有する者ということになります。

 

 以上から、登記を相手が備えるまでは、相手の所有権に基づく請求を拒むことができますが、登記を相手が備えた場合には、請求を拒むことはできなくなります。

 

 総括

 登記を備えていないとどのような問題が起こるかというと、不動産屋さんから土地の引き渡しを受けました。そして、登記をしないまま数年が経ち、「浦安の○○の土地」は買ったとき5000万円の価値しか有していませんでしたが、数年経過して10倍の5億円になったとします。まさにバブルですね。しかし、その土地はAさんが買って直ぐに登記をしていたとします。先に買ったのはあなたです。しかし、Aさんの方が先に登記をしていた場合、Aさんがあなたに土地を引き渡すように請求してきた場合、これを拒むことはできません。ゆえに、5億円の土地は結果的にあなたのものにはならなくなってしまいます。

 非常に残念です。このような悲しい思いを避けるためにも、土地を買ったらすぐに登記をすることが大切です。

 

 この場合、売主にどのような請求ができるかは、また後日書こうと思います。

 

www.houritunomametaro.com

www.houritunomametaro.com

www.houritunomametaro.com

www.houritunomametaro.com

 

殺人罪?それとも傷害致死罪?そして殺意とは?

 

www.houritunomametaro.com

 

 暑い日が、暑い日が続きますね。暑いです。本当に暑いです。

 

 よくテレビで、「○○容疑者が傷害致死罪の容疑で逮捕されました」や「××容疑者が殺人罪の容疑で逮捕されました」という報道を目にしますが、この違いってどうやって区別するのですかね。そこで、今回は、殺人罪と傷害致死罪とはどのように区別するのか。また、殺意の認定はどのようにして行われるのか検討してみたいと思います。

 

*ちなみ、「容疑者」という言葉がありますが、「容疑者」という言葉は法律上の言葉ではありあません。法律上は「被疑者」といいます。裁判が始まった後、公訴提起といいますが、それ以降は「被告人」といいます。また、民事裁判では、訴えを起こす方の当事者を「原告」といい、訴えられる方を「被告」と言います・・・・ふと我に返ると揚げ足取りの小姑みたいですね(笑)。 

 

 殺人罪と傷害致死罪

 さて、小姑発言は置いておいて、本題に入ります。まず、殺人罪の条文は、刑法199条に規定されています。

 

 刑法199条は、「人を殺した者は、死刑又は無期もしくは五年以上の懲役に処する」と規定しています。

 

 この条文は分かりやすいですね。特にそのままの意味です。専門家風にいうと、殺す行為とは、人の自然の死期以前に人の生命を断絶する行為となります。

逆に難しくなった!と思いますよね。ですが、簡単です。人間には寿命があります。普通に生活していれば「死」の瞬間が訪れますが、それが訪れる前に、他人がその人の命を故意に奪うこと、これが人の自然の死期以前に人の生命を断絶する行為、すなわち、殺す行為です。

 

 では、傷害致死罪とは何でしょうか。傷害致死罪は、刑法205条に規定されています。

刑法205条は「身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、三年以上の有期懲役に処する」と規定されています。

 

 この条文も比較的わかりやすいですよね。「身体を傷害し」とは、専門家風に言うと、人の生理的機能に障害を加える行為となりますが、要するに怪我をさせる行為です。

 この怪我をさせる行為には色々なものがあります。例えば、押し倒して、相手に擦り傷を負わせても怪我をさせていることになりますよね。そのため、「身体を傷害し」に当たります。他方、包丁で心臓を刺しても、怪我をさせていることに変わりはないので、「身体を傷害し」に当たります。

 ですが、押し倒して擦り傷を負わせても通常、人は死亡しませんよね。なので、この場合、傷害罪(刑法204条)が成立するにすぎません。

 他方、心臓を包丁で刺した場合、通常、人は死亡します。つまり、「身体を傷害し」、「よって」つまり、その結果、人が死亡しているので、傷害致死罪が成立することになります(刑法205条)(法律用語で結果的加重犯と言います。)

 

 と!ここまでくると一つの疑問が浮かぶと思います。

包丁で心臓を刺している以上、殺人罪が成立するのではないかと思いますよね。

 

 実は、この場合、殺人罪になるケースと傷害致死罪になるケースの二つの可能性があります。では、どのように区別するべきでしょうか。

 

 この区別で用いるのが、認識の違いです。ここでは本来行為論で説明すべきだと思いますが、難しいので殺意という枠で説明します

(厳密には、行為者の認識態様の違いが行為の危険性を変化させるという形になりますが、正直、一般的なニュースを見るときあまり重要ではないと思うので、あえて殺意で説明します。)

 

 そもそも、殺意とは、死亡結果の認識認容をいいます。

先ほどの心臓を包丁で刺す行為の時に、「殺してやる」等と思っていた場合、被害者が死亡することを認識認容していますよね。そのため、殺意があるということになり、殺人罪が成立します。

 

 他方、心臓を包丁で刺す時に、例えば、酔っ払っていて、話しているうちに頭にきてとりあえず、近くにあった包丁で切り付けたというような場合には、「痛めつけてやろう」と思って、手に向かって切り付けたのですが、運悪く心臓に刺さってしまったという場合があります。この場合、怪我をさせる認識はありますが、相手が死亡することを認識していないです。

 このような場合には、殺意はなく、傷害致死罪が成立することになります。

 

 

www.houritunomametaro.com

 

 

 殺意

 では、殺人罪と傷害致死罪の区別につき、便宜上、殺意を基準に行うとして、殺意とはどのようにして認定すべきなのでしょうか。

 

 そもそも、殺意は死亡結果の認識認容です。つまり、これは人の心の中の事情ですよね。

 

 昔、ある女の子と付き合っていて、「あの時、あの子の気持ちがわかっていたら、今幸せな生活を二人でしていたのかもしれない」と思うことがありますが、あの子の気持ちがわからなかったから、今一人できつい羽目になっているわけですよね。まぁ、その時の彼女のしぐさや状況で察するべきだったのでしょうが、当時は気付かなかったですね。

 

 と!ものすごくどうでもいいことを聞かされたと思っていますよね。ですが、実は、殺意も一緒です。その時、言ってくれれば解ったのに!言わないから状況で察するしかないのです。

 

 つまり、これを刑事裁判に当てはめると(当てはまっているか分かりませんが(笑))

 被告人が刑事裁判で、「私は、殺すつもりでした」と自白をしていれば裁判官は、殺意があったと分かりますよね。そのため、裁判官は、言ってくれたおかげで、殺意を認定できます。ですが、被告人が自白をせず、殺意があったとは言ってくれない場合には、殺害当時の被告人の犯行状況等を見て殺意を認定するしかありません。

 これを小難しくいうと、間接事実を積み上げて立証あるいは認定する方法と言います。

 

 では、どのような間接事実があれば、殺意を認定することができるのでしょうか、代表的なものをいくつか検討します。

 

 創傷部位と凶器

 一つ目は、創傷部位と凶器です。まず、創傷部位は、身体の枢要部かどうかで異なります。そもそも、「身体の枢要部分ってなんだよ?」って話ですよね。身体の枢要部とは、手と足を除いた体の部分です。要するに、頭、顔、首、胴体です。これらの部分は攻撃させると致命傷に至る可能性が高いす。そのため、人体の枢要部への攻撃は、殺意を認定する方向に傾く事実となります。

 

また、傷の程度も重要となります。要するに、心臓を1回、浅く突き刺すのと、心臓を100回深く突き刺すのでは全く違いますよね。この場合、複数回又は深く突き刺す行為の方が、殺意を認定する方向に傾く間接事実となります。

 

 凶器については、二つの視点で考える必要があります。まずは、性質です。つまり果物ナイフと包丁だと包丁の方が、致命傷を与える危険が高いですよね。そのため、包丁を使用した場合は、殺意を認定する方向に傾く事実となります。

次に、使い方が重要になります。例えば、レンガ等は通常建物に使用する材料で凶器にはあらないものです。しかし、レンガを使って複数回人間の頭部を殴打すれば当然死亡する可能性は高いです。そのため、このような使い方をしたことは、殺意を認定する方向に傾く間接事実となります。

 

 動機

 また、殺人罪は、本来なかなか発生しない事件です。というのも、殺意をもって人を攻撃するには、それ相応の理由が通常あるからです。要するに強い恨みがある等の動機があってしかるべき犯罪です。そのため、殺意を抱くに値する動機の存在は、殺意を認定する方向性に傾く間接事実となります。

 

 救護措置をしない

 また、通常、人を殴って殺すつもりがなかった場合には、病院等に運んだりすることが多いです。そのため、救護措置をしないことは、殺意を認定する方向性に傾く間接事実にはなります。しかし、予期せぬ結果に戸惑いその場から逃走することも、十分ありえるので、救護措置をしていない事自体は、強く殺意を推定する事実とはいえないと思います。

 

www.houritunomametaro.com

 

 

 

 総括

 以上の、殺人罪と傷害致死罪の違い、及び殺意の認定方式について検討してきました。ドラマ等で、警察官が被疑者の死亡解剖に立ち会ったり、凶器が何で、動機が何かみたいなことを捜査しているシーンがありますが、この捜査も殺意の立証をする上で、必要なものです。

そのため、ニュースやドラマを見るときに少し意識してみると、いつもと違った楽しさがあるかもしれません。

 

 

www.houritunomametaro.com

www.houritunomametaro.com

www.houritunomametaro.com

www.houritunomametaro.com

 

 

www.houritunomametaro.com

 

その発言。本当に脅迫罪になりますか?

 

www.houritunomametaro.com

 

 最近テレビや新聞などで、政治家の発言に物議が起こっています。「このハゲー」や、ミュージカル風に暴言を吐き秘書を叱っている姿は、新手のホラー映画のワンシーンみたいですね。

 

怖いです!

 

 ですが、この議員の発言自体は、脅迫罪にならない可能性が高いそうです。では、なぜこのような暴言が脅迫罪にならないのでしょうか。今回は、どのような場合に脅迫罪が成立するのか検討してみたいと思います。

 

 脅迫罪の成立要件

 そもそも、脅迫罪は、刑法222条に規定されています。まずは、条文を見てみましょう。

 

 刑法222条第1項では、「生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する」と規定しています。

また、同条第2項では、「親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、同様とする」と規定しています。

 

 なるほどよく分らない条文ですね。

 

 具体的に検討してみましょう。まず、脅迫罪の相手は、自分又は「親族」だということが分かりました。

そのため、「お前の彼女を痛めつけてやる!」や「お前の友達を殴ってやる!」的な発言をしても、自分又は親族ではないため、発言者に脅迫罪は成立しません。

 

*ちなみ、親族とは、自身から見て6親等内の血族、配偶者及び3親等内の姻族(配偶者の血族で親子、孫、兄弟、甥、姪、祖父母等)を法律的には指します(民法725条参照)。 

そのため、例えば、自分の母親や、子供に危害を加える旨の発言は、脅迫罪に当たる可能性があるのは当然だとして、それだけでなく、配偶者の父親や配偶者の兄弟に対して危害を加える旨の発言は、脅迫罪に当たる可能性があります。

 

 余談ですが、自分の娘が嫁いで、嫁いだ先の親と自分が親族関係になると思っている方がいます。これは一般的な感覚だと正しいと思います。ですが、法律的にみるとそうではありません。娘の嫁ぎ先の親と、娘の親である自分自身とは親族関係は形成されません。そのため、扶養義務などは生じません。当然、相続権もありません。

 

 では、発言の相手がわかったとして、どのようなことを発言すれば脅迫罪になるのでしょうか。

 条文には、「生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨」と書いてありますが、これを一般的に「害悪の告知」と呼びます。具体的に検討します。

 

 「生命」に対する害悪の告知とは、いわゆる殺害予告です。また、「身体」に対する害悪の告知とは、「ぶん殴るぞ!」的な暴行をする旨の内容です。

 

「自由」に対する害悪の告知とは「今から君を監禁しちゃうよ」的な発言です。「名誉」に対する害悪の告知とは、「お前が不倫していることをばらすぞ」的な形で、不名誉な事実を公開する旨の発言が当たります。また、「財産」に対する害悪の告知とは、「お前の持っている車に放火するぞ」などの発言が当たります。

 

 なお、脅迫罪は、これらの発言をした時点で成立する犯罪です。難しい言葉でいうと、抽象的危険犯です。しかし、このような名称はぶっちゃけどうでもいいので覚えなくて全然大丈夫です。

それよりも、重要なのは、このような脅迫罪に当たる発言をした上で、人に何らかの行為をするように命じた場合には、強要罪が成立します(刑法223条)。そして、お金を要求すれば、恐喝罪(刑法249条)。程度がひどい場合には、強盗罪(刑法236条)に当たります。

 

 つまり、脅迫罪に当たる発言をして何らかのプラスアルファーの行動を起こすと、重い犯罪が成立します。つまり、刑法では、基本的な犯罪類型を設定しておいて、他に反社会的な行動があれば重い犯罪として規定しています。

 

そのため、犯罪を考えるときには、基本的な犯罪は何か、その上で、どのような反社会的な行動があるときにどのような重い犯罪が成立するのかを考えることがとても有益になると思います。

 

 本線に戻ります。では、「害悪の告知」とはいかなるものであってもよいのでしょうか。この点については、少し微妙なケースもあります。そもそも、脅迫罪は、個人の意思決定の自由が害されることを抑止するための犯罪規定です。

 

そのため、一般人の意思決定に影響が与えられない場合、すなわち、一般人が発言を受けても畏怖しないものであれば、殊更罰する必要がないことになります。そのため、害悪の告知と言えるためには、一般人が畏怖を覚える程度の内容であることが必要になります。

 また、「君を殴る」「君を蹴る」というような直接的な表現をしなくても、はっきり意味がわかる場合には、一般人が畏怖を覚える程度であるため、脅迫罪が成立します。

 

 と!抽象的な話をしても仕方がないので、具体的に検討します。

 

 まず、広島高松江支判昭和25年7月3日高刑3・2・247では「人民政府ができた暁には人民裁判によって断頭台上で裁かれる」という発言が、脅迫罪に当たらないとされました。

「人民政府」?よく意味が分かりませんが、今はやりの忖度をすると、日本が中国みたいになったらという意味でしょうか?日本が中国みたいな国家体制になったら、君はギロチンで処刑されちゃうぞ。とう意味の発言ですかね。これを言われても、「畏怖」は覚えないですよね。なので、「害悪の告知」に当たらず、脅迫罪は成立しないことになります。

 

 逆に、最判昭和35年3月18日刑集14・4・416では、村の中で対立抗争している2つの派閥があり、その一方の中心人物の家に、火事が発生していない時点で、「出火御見舞申上げます。火の元に御用心」という手紙を送った行為に、脅迫罪が成立するとしました。

 火事が起こっていない時点で、「出火御見舞」とか怖いですね。つまり、この発言は対立抗争中であることを前提とすると、「君の家に火をつけますよ」という意味がはっきり分かるので、畏怖を覚えます。そのため、「害悪の告知」となり、脅迫罪が成立することになります。

 

 

www.houritunomametaro.com

 

 具体的な検討

 以上を踏まえて、ミュージカル女優の、あいやミュージカル議員の発言が、脅迫罪に当たるか検討します。

 まず、「ハゲー」という発言は、言われた男性は傷つきますよね。すごく悲しいです。ですが、この内容は、危害を加えるような内容ではないので、「害悪の告知」に当たりません。

 また、「お前の~~娘が~~車に~~」とても下品なミュージカルなので、意味を変えずに、要約します。「あなたの娘が、車に跳ねられて死亡してしまった場合に、跳ねた運転手がそのようなつもりはなかったですと発言した場合、それを言われてあなたはその運転手を許せますか」という内容でした。うん!最近のプリクラレベルで美的加工ができました。まぁ、元がひどいのでこれ限界がありますが。

 

 では、この発言はどうでしょうか。この発言は、原則脅迫罪に当たらないです。というのも、この発言は、秘書が議員に叱責されている最中に「そんなつもりはなかったんです」と弁明して、その弁明が気に食わないということを指摘するために、例として、第三者が秘書の娘を跳ねたときに、そんなつもりはありませんでしたと言われて許せますか。許せないですよね。ということを話しているにすぎません。

 

 議員が娘を跳ね飛ばすぞという意味が含まれていないので、「害悪の告知」に当たらず、脅迫罪は成立しません。

 

 もっとも、「私も車持ってるんだよ。あなたの娘は○○学校に通ってて、下校は××の道を通るよね。私明日の下校時間帯、暇だから車で言ってみようかな」的な発言を仮に付け加えたら、めちゃくちゃ怖いですよね。なぜ怖いかというと、先の発言を合わせて全体で読むと、「あなたの娘を跳ねるぞ」という意味になるからです。あくまでも仮定の話ですが、この場合は、脅迫罪が成立することになります。

 

 総括

 以上のように脅迫罪に当たるかどうか、結構微妙―なケースが多いです。なので、常日ごろお話をするときは、私自身発言に気を付けたいと思います。

 

 

 

www.houritunomametaro.com

www.houritunomametaro.com

www.houritunomametaro.com

www.houritunomametaro.com

www.houritunomametaro.com

www.houritunomametaro.com

 

隣人トラブル!殴られなくても傷害罪(刑法204条)

 

www.houritunomametaro.com

 

 数か月前ですが、テレビで隣人トラブルの報道がされているのを見ました。その報道の中には、ご近所の人が夜も明けぬ早朝に家の前に来て、「呪ってやる」「お前!覚えてろよ」などの暴言を大きな声で叫ぶという映像がありました。怖いですね。それが毎日ですよ毎日!

 

小心者の私ならガクガクブルブル、てんやわんやの一大事ですよ!

 

 「どうゆう状態だよ!」と突っ込まれるのが一番怖いのですが、それは脇に置いておいて、さて本題に入ります。今回は、隣人が雨の日も風の日も雪の日も足しげく通い暴言を毎日毎日浴びせてきた場合に、傷害罪(刑法204条)が成立するのか検討してみたいと思います。

 

 傷害罪と暴行罪の関係

 まず、傷害罪と暴行罪の条文を確認してみましょう。

 傷害罪は、刑法204条に規定されています。同条は「人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する」と規定しています。

 他方、暴行罪は、刑法208条に規定されています。同条は「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する」と規定しています。

 

 んんんん~この条文も分かりそうで、よく分らない条文ですね!

 

 具体的に検討してみましょう。

 まず、「傷害」とは、通説によれば、人の生理的機能に障害を加えることと解されています。つまり、人の顔面を殴って怪我を負わせた場合や、飲み物に毒を入れて下痢の症状を生じさせた場合が、「傷害」ということになります。

 そして、暴行とは、不法な有形力の行使と解されています。具体的には、人を後ろから押したり、殴ったりする行為です。

 

 これを前提として条文を素直に読むと、まず、暴行罪については、「暴行」を加えたが、傷害結果が生じなかった時となります。つまり、殴る蹴るなどの行為をしたにもかかわらず、その暴行が相手に当たらず、怪我をしなかった場合等に、暴行罪が成立することになります。

 

 では、傷害罪はどうでしょうか。つまり、暴行という不法な有形力の行使の場合に限って、怪我等の結果が生じた場合にだけ成立するのでしょうか。

 

 実はそうではないんです。

刑法204条は、「人の身体を傷害した」と規定していますよね。つまり、怪我等の結果が生じた場合に成立する犯罪であり、手段については有形無形を問わず、成立する犯罪です

 

 つまり、その手段は蹴ったり殴ったりする行為はもちろんそれ以外の行為であってもよいわけです。要するに、病院にいって診断書が出たとします。診断書に載っている病気の原因が、Aとうい人物の行動のみならず、発言であっても、傷害罪は成立するということになります。

 

 

www.houritunomametaro.com

 

 具体的な検討

 では、先ほどの隣人トラブルに即して検討してみましょう。先ほどの隣人トラブルでは、隣人が家の前に来て大声で、暴言を吐いていますよね。これが一日であればまだしも、毎日毎日続けば、やられた方はどうなりますか。私だったら、ノイローゼになったり、うつ病状態になると思います。このような精神的な病気も、人の生理的機能に障害を加えることになるため、「傷害」結果となります。

 ゆえに、隣人が毎日毎日このような暴言を吐き続けて、その結果、精神的な病気を被害者が発症すれば、傷害罪(刑法204条)が成立します。

 

 発病前に警察はしっかり対応してくれるの?

 では、このような精神的病気を発病した場合には、傷害罪が成立するとして、それ以前の段階でも、当然苦しいわけですよね。というか、苦しくなかったら病気になりません。なので、発病前の段階で、警察に対処して貰いたいです。

 しかし、警察は単に暴言を吐いている段階では、動かないことが多いです。それはなぜでしょうか。

 

例えば、暴言の内容が、殺害予告や危害を加える旨であれば、これは「害悪の告知」として、刑法222条の脅迫罪が成立します。つまり、その発言をした時点でその隣人は犯罪者ということになります。そのため、警察はすぐに逮捕及び検挙することが可能です。

なので、隣人の暴言の内容が危害を加える内容であれば、直ちに警察に行って下さい。そうすれば、直ぐに警察は対応してくれると思います

 

 では、そのような内容ではなく、「呪ってやる!」や「お前!覚えてろよ」という暴言の場合にはどうでしょうか。この場合、明確に「あなたに危害を加えます」という意味にはならず、「害悪の告知」とは認定しずらいです。もっとも、例えば、包丁などを持って家の前で「お前!覚えてろよ」等と発言すれば、当然殺害予告的なニアンスを含んでいるので、「害悪の告知」に当たりますが、そのような切迫したケースはあまりないと思います。

 

 また、「呪ってやる」等の発言は、不法な有形力を行使しているわけでもないので、暴行罪も成立しません。

 

 そのため、この段階では条例違反に当たる可能性はあっても、暴行罪、脅迫罪には当たりません。そのため、警察は直ちに逮捕などの強硬措置にでることができません。

 

 ここで、条例違反があるのだから逮捕できるのではないかという意見もあると思います。確かに、条例違反でも逮捕できる場合はあります。詳しくは、逮捕要件についてちょっと長くなってしまうので、ここでは軽くだけ触れさせて頂きます。そもそも、逮捕とは、被疑者の身柄拘束をする捜査方法です。そして、逮捕をする目的は、公訴提起(刑事裁判をする訴え)をする前提として、被疑者が逃走したり、住居不明等で、法廷に呼べなくなることを回避することにあります。

 

条例違反の場合、原則、地方自治法14条に規定されている通り、最高刑が懲役2年です。そして、執行猶予を付すことができるのが3年以下の刑を言い渡す時です。つまり、条例違反の場合、実刑になり刑務所に入りことになるケースはほとんどありません。言い換えると、条例違反で検挙しても、かなり軽い刑しか科すことができず、さらに、執行猶予が十中八九付されます。そのため、隣人が逃走を図ることは通常想定できません。そして、隣人の名前と住所もはっきり警察はわかっています。そのため、逮捕の必要性は認められず、逮捕できないということになります。

 

 その結果、単に隣人が暴言を吐いている段階では、警察が動いてくれない可能性が高いです。ですが、その後、例えば、病気を発症すれば傷害罪が成立しますし、危害を加える内容を言っていれば、脅迫罪が成立します。そして、隣人が暴言を吐いている段階で、今後それらの犯罪が成立する可能性が高いです。そのため、一度警察に行き相談をすること自体は、後で犯罪が成立した時点で有利に事をすすめる上で、とても重要です。

 

 総括

 色々脱線してしまい申し訳ありません。まとめると、まず、隣人が暴言を言っている段階で、警察に相談をしても、暴言内容にもよりますが、直ぐに逮捕という形にはならないことがあります。しかし、相談をすれば、巡回の回数を増やしてくれたり、事が起きた時に直ぐに対応してくれるので、相談をすることが大切です。

 

 また、隣人が暴言を言っていたことが原因で、ノイローゼやうつ病などを発症したら、傷害罪が成立します。そのため、診断書をもって直ぐに、警察に行きましょう(もちろん、民事であれば、慰謝料請求も当然できます)。

 

 隣人トラブルはとても苦しいです。引っ越すことは難しいし、毎日続く場合は、精神的な苦痛は著しいです。ですが、解決の糸口は必ずあるので、諦めずに段階ごとにしっかりとした対応をとっていきましょう。

 

 

 

www.houritunomametaro.com

www.houritunomametaro.com

www.houritunomametaro.com

 

 

www.houritunomametaro.com

www.houritunomametaro.com

www.houritunomametaro.com

 

 

娘の顔にあざ。母親の固有の慰謝料請求権

 

www.houritunomametaro.com

 

 暑い日が続きますね。毎日毎日汗がだらだらですよね。いや参った!

体重計に「痩せてるかな(ウキウキ)」的なノリで毎日乗ってるのですが、一向に痩せませね。だって、「ビールが美味しんだもん!やめられないな」(いわゆる自業自得というやつですね)。ちなみに、夏よりも冬の方が、基礎代謝が良くなるので、痩せやすいそうです。

 はい!どうでもいい情報ですね。ごめんなさい。

 

 本題に入ります。数日前から学生さんは夏休みに入ったそうです。夏休み友達とお出掛けしたりすることが増えますが、娘さんが事故に遭い顔にあざが残ってしまったら皆さんなら、どう思いますか(いきなりヘビーな話でごめんなさい)。

 今回は、母親自身が被った精神的損害について加害者に対して慰謝料請求をすることができるか、その際にどのようなことが考慮されているのか検討してみたいと思います。

(なお、当然娘さん自身が被っている精神的損害については慰謝料請求をすることが可能です)

 

 母親の固有の慰謝料請求権

 前回、夫が他界した時に胎児がいかなる権利を有するかについて検討しました。今回も、問題となる条文は、民法711条です。

 

 まず、条文確認からします。

 民法711条は「他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、

その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない」と規定しています。

 

 これは、前回でも検討した通り、人が死亡した場合に、一定の近親者は心に傷を負うことが多いので、その近親者の精神的損害があることを推定するための規定です。

 と!すると、文言通りに解すると、これは被害者が「死亡した場合」についてのみ適用する条文ということになります。そのため、娘が顔に傷を負った場合については、適用できないように思いますよね。

 

 実はそうなんです!最高裁は、民法711条をこの場合適用していないんです。

 

 じゃあ、娘が顔に傷を負った場合に、母親の心の傷は未来永劫癒されないのか?

まぁお金を払って貰っても、そら納得をすることはできないですが、少なくともお金という形で償ってほしいですよね。

 

 最高裁も悪人ではありません。最高裁は、民法711条は適用しませんが一定の場合に限って、母親の慰謝料請求権を認めています。最判昭和33年8月5日民集12・12・1901です。

 

 同判決では、戦争で夫を亡くした母親が娘を女手一つで育てていました。そのような中で、娘が事故に遭い顔にあざが残ってしまい、当時の医学では当該あざを消すことができなかったとい事実関係が前提になります。

 

 そのような状況の中で、まず判例は、「民法711条が生命を害された者の近親者の慰謝料請求につき明文をもって規定しているとの一事をもって、直ちに生命侵害以外の場合はいかなる事情があってもその近親者の慰謝料請求権がすべて否定されていると解しなければならないものではない」と小難しく論じています。

 

 要するに、被害者が死亡した場合にだけしか、近親者の固有の慰謝料請求が認められ、それ以外の場合に、慰謝料請求ができないってことにはならないぜ。言い換えると、被害者が死亡していなくても親は慰謝料請求できる時があるぜ。という意味になります。

 

 じゃあ、どのような場合でしょうか。

判例は「子の死亡したときにも比肩しうるべき精神上の苦痛を受けた」場合だとしています。

 つまり、判例は「子の死亡したとき」と同じレベルで母親が精神的苦痛を受けた場合には、慰謝料請求権を認めています。

 

 

www.houritunomametaro.com

 

 考慮される事

 判例では、「子の死亡したときにも比肩しる」という基準が一つの物差しとなっています。

その考慮材料には色々なものがあります。代表的なものとして三つ挙げます。

 

一つ目は、生活状況です。つまり、離婚して自分が子供を養育していない場合等には、母の慰謝料請求権が認められない可能性があります。

 

二つ目は、傷の程度です。すなわち、顔に傷を負ったとしても、それが完治可能なものである場合や、相当程度傷が癒える場合には、慰謝料請求権が否定される方向に流れます。

 

 そして、三つ目は、性別です。男女平等の精神が浸透し、かつ最近では、美肌男子なども登場し顔へのこだわりは男女で変わらなくなってきています。

しかし、実際に裁判になると、男性よりも女性の方が顔に傷を負った場合重大だと考えられています。そのため、娘でなく息子が顔に怪我を負った場合には、母の慰謝料請求権は否定される方法になります。

 

 これらの要素は総合的に判断されるので、例えば、自分が養育していなかったとしても、定期的に会っていて、娘の傷の程度が重大なものであれば、母親の慰謝料請求権は認められる可能性が高いです。

 逆に、養育していても子供を普段から親が虐待していたような例外的なケースであれば、母の慰謝料請求権は認められない可能性が高いと思います。

 

 個人的な考え

 個人的には、ここまで書いてきてちょっとあれですが、最高裁の結論には反対です。最高裁は、母親の固有の慰謝料請求権については限定的な範囲でしか認めていません。基準がかなり厳格です。ですが、請求権があることと金額がいくらであるかは別の話だと思います。つまり、請求権があるかどうかという話と金額はいくらかという話は別であり、これをしっかりと分けて考えることが大切だと思います。

 

 つまり、親が子供を育てて子供が顔に傷を負えば心が痛みますよね。この心の痛みは「子供が死亡したときにも比肩」する程度ではなくても、心が痛いことに変わりがないと思います。便宜上小さな痛みと言いますが、この小さな痛みであっても、精神的損害が発生していることに変わりはないのではないでしょうか。

 

 そうだとすると、例えば、「子供が死亡したときにも比肩」する程度の場合には、母親の慰謝料が1000万円だとしても、それよりも低い程度の場合には、800万円、500万円、300万円、100万円、50万円、30万円、10万円という形で、賠償額で調整すべきではないでしょうか。

 

 つまり、子供が顔に傷を負った場合には、母親の慰謝料請求権を原則認めて、その上で、程度に応じて、損害賠償額を決めるという運用の方が妥当な解決を導けると思います。 

 

 まとめ

 以上のように母親の固有の慰謝料請求権は認められることがあります。個人的には門戸をもっと広げるべきだと思いますが、現状は難しい部分もあるかも知れません。

子供の顔に傷ができた時、一番悲しいのはその子供です。薄くはなっても一生残るものであればなおさらです。

そして、そのようの子供の姿を一番間近で見ているのは親です。親も辛いです。顔の傷は消えません。心の傷も消えません。ですが、せめてお金だけはきっちと貰いましょう。

 そのお金で、楽しい将来に向けた第1歩を踏み出せれば幸いです。

 

 

www.houritunomametaro.com

 

 

www.houritunomametaro.com

www.houritunomametaro.com

www.houritunomametaro.com

 

夫が交通事故に!胎児の相続権とは?

 

 

www.houritunomametaro.com

 

 今回は、交通事故が増えそうな季節なので、夫が交通事故に遭って他界した場合、お腹の赤ちゃんはどのような権利を有することになるか。また、示談交渉をする時にどのようなことに注意すべきかを検討してみたいと思います。

 

 交通事故が起きた場合の権利関係

 まず、交通事故が発生した場合には、被害者は加害者に対して不法行為に基づく損害賠償請求をすることができます(民法709条・710条参照)。

 つまり、交通事故で夫が亡くなった場合には、夫は損害賠償請求権を有することになります。

 

 そして、夫が有している損害賠償請求権を妻と子が相続することになります。(ここで相続する権利の中には、夫の慰謝料請求権も含まれます)。

 また、このような夫の権利を相続するだけでなく、配偶者と子供は、固有の慰謝料請求権を有することになります。民法711条です。

 

 民法711条を見てみましょう

 民法711条は「他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、

その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない」と規定しています。

 

 こりゃまた難しい条文ですね!

 

 この条文は、ある人が死亡した場合にその近親者が精神的損害を被ることが多いことを前提にしています。しかし、被害者本人ではない近親者が精神的損害を被ったことを立証するのは困難なため、一定の近親者、父母、配偶者、子の精神的損害を推定し、慰謝料請求権を認める規定です。

 

 簡単に言うと、夫が死亡すると妻は悲しいですよね。例外もあるかもしれませんが、通常は悲しむと思います。このような通常、妻に心の傷が生じるため、妻の心の傷があることを推定する規定が民法711条です。その結果、妻は加害者に対して慰謝料請求できることになります。

 

 以上から夫が交通事故で死亡した場合には、妻と子は二つの権利を有することになります。

 一つ目、相続する夫の損害賠償請求権です

   

 二つ目は、固有の慰謝料請求権です。

 

 胎児の権利

 では、胎児の場合は、どうでしょうか。

民法3条1項を見てみましょう「私権の享有は、出生に始まる」と規定しています。

簡単に言うと、人は生まれてから初めて権利義務の主体になるという原則です。そのため、生まれていなければ、権利を承継したり、権利を保有したりできないのが原則です。そうだとすると、胎児は夫の死亡時点で生まれていないので、損害賠償請求権等を相続できないように思えますよね。

 

 しかし、例外があります。

 

 まず、相続については、民法886条1項があります。同条では、「胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす」と規定しています。そのため、夫が死亡した時点で、胎児はすでに生まれた扱いになるので、相続権を有することになります。

  よって、夫の有する損害賠償請求権を胎児は相続することができます。

 

 また、固有の慰謝料請求権については、民法721条で「胎児は、損害賠償請求権については、既に生まれたものとみなす」と規定されおり、固有の慰謝料請求権を胎児は有すると考えられています。

 その結果、胎児は被害者の出生している子供と同様の権利を有することになります。

 

 示談をする時のポイント

 では、示談をする時にはどのような点に気を付ければよいでしょうか。胎児の出生前に、妻が胎児の分も含めて示談をすることがよくありますが、このような場合にはどのような点に気を付ければよいでしょうか。

 

 まず、胎児が出生をする前であっても、妻は、胎児を代理して示談を行うことができると考えられています。そのため、法律上有効に、加害者と妻で胎児の出生前に示談をすること自体はできます。

 

 しかし、ここでは主に二つのことに注意が必要です。

 

 胎児が出生しない場合

 一点目は、胎児が出生してない場合です。夫が交通事故で他界した場合に、妻が精神的なショックで、流産してしまうことがあります。示談は、法律上和解契約に当たります。そして、胎児が出生しなかった場合には、妻の和解契約に関する代理権はなかったことになり、和解契約も効果が生じません。

 

この点については、胎児の部分のみ和解契約として効果が生じないのかすなわち、一部分に関してのみ効果が生じないのか、それとも、妻の部分も含んだ全部について効果が生じないのかは、議論の余地がありますが、いずれにしても、示談をやり直さなくてならなくなります。

 

 胎児が後遺症を負って出生した場合

 二つ目は、少し複雑な問題ですが、妻が精神的ショックを受け、胎児が後遺症を負って出生してしまった場合です。

 この場合、加害者が交通事故を起こしこれにより夫が死亡したことで、妻が精神的なショックを受けて、これによって、胎児が後遺症を負っているため、加害者の過失行為と、胎児の後遺症損害には因果関係があり、加害者に胎児の後遺症についての損害賠償責任が認められます。

 

 そのため、元気に出生した場合とは異なり、加重した賠償責任が加害者には成立することになります。

 

 しかし、一度和解が成立すると、その前提となっている事柄以外については再度争うことができません。つまり、この胎児の後遺症がないことが、和解の前提になっていたというケースでなければ、後に胎児の後遺症の部分について請求することができなくなります。

 

 また、仮に、胎児の後遺症がないことが前提となっていた場合には、後遺症の部分については損害賠償請求することが可能です。しかし、通常再度示談交渉をする流れになります。

 

 まとめ

 以上のように妻と胎児は夫の損害賠償請求権を相続し、かつ、固有の慰謝料請求権を有します。しかし、胎児が生まれる前に、示談をすると後々トラブルが発生するかもしれません。 

そのため、示談をする時は、胎児が出生をしてから行う方が妥当だと言えます。

 

 

www.houritunomametaro.com

 

 

www.houritunomametaro.com

www.houritunomametaro.com

 

 

www.houritunomametaro.com

 

 

詐欺師に騙された。詐欺師からお金を取り戻す方法は?

 

www.houritunomametaro.com

www.houritunomametaro.com

 

 「オレオレ母さん。俺だよ!」という振り込め詐欺が今や定着してしまいましたが、最近は還付金詐欺やワンクリック詐欺などの様々なバリエーション豊富な詐欺が発生しています。怖いですね。

騙されないように注意することが一番大事!「そりゃそうだ!」と皆さん思いますよね。ですが、騙されてしまったらどうすればよいのでしょうか?詐欺師に騙されてしまった場合、どのようにして詐欺師からお金を取り戻すことができるのでしょうか。今回は、詐欺師からお金を取り戻す方法について検討してみたいと思います。

 

 そもそも、詐欺とは?

 まず、詐欺とは、詐欺行為によって相手方を錯誤に陥れて、当該錯誤に基づいて財物を交付させる行為です。

 

と!

 

 なんだか難しいですよね。具体的に検討します。例えばオレオレ詐欺の場合を考えてみましょう。

詐欺師>「オレオレ。俺だよ!母さん。」

母>「たかし?元気にやってる?」

詐欺師>「そうだよ。たかしだよ!実は大変なんだ会社のお金を使い込んでしまって明日までに500万円必要なんだ。お願い母さん!助けて」(詐欺行為)

母>「たかし何しているのよ!わかった。すぐに母さんお金を振り込むね!」(錯誤)

 母はその後、銀行でお金を振り込み、詐欺師の口座へお金が移転(交付行為)

 

 B級映画のワンシーンみたいになってしまいましたが、要するに、ここでの詐欺行為は、「たかし」であること、「たかしが会社のお金を使い込み補てんのために明日までに500万円必要」だという嘘をついていることです。そして、母は、その嘘を信じたため、これが錯誤になり、その後、銀行に振り込んだ時点で交付行為及び財物移転が完了するので、詐欺が完成します。

 

補足)このような詐欺は、刑法246条の詐欺罪に当たり、「十年以下の懲役に処する」とされています。絶対にやらないようにしましょう。フリではありません。

 

 詐欺師自身に請求する方法

 では、このような詐欺に騙されてしまい実際にお金を振り込んでしまった場合には、詐欺師にどのようにして返還を求めるべきでしょうか。

 これを規定しているのが、民法703条及び704条です(民法709条で請求もできますが、これは不法行為に基づく損害賠償請求のため、方法としては迂遠だと思います。)

 

 民法703条・民法704条は、不当利得という制度を規定しています。不当利得制度とは、法律上の原因がないにもかかわらず、財物等を交付した場合にその返還を請求することができる制度です。

 簡単にいうと、詐欺は民法96条に当たります。詐欺によって財物を交付したり契約をしたりした場合でも、それを取消すことを民法は認めています。

 そして、取消の場合、当該交付や契約がさかのぼって無かったことになります。その結果、詐欺に騙さてお金を振り込んだとしても、詐欺師は、法律の原因がない、つまり不法にお金を保有しいてることになりますので、不当利得に当たり、被害者は返還を請求することができます。

 

 このような詐欺師に対する返還請求は非常に簡明です。

 

 

 

www.houritunomametaro.com

 

 詐欺師が逃亡した場合にはどうするの?

 では、詐欺師が逃げてしまった場合には、どうすればよいのでしょうか?具体的にいうと、詐欺師が逃亡し、どこにいるかわからない場合裁判を起こすことはできないのでしょうか?

 

この点について、「詐欺師がどこにいるかわからない以上、泣き寝入りをするしかない」と思っている方も多いですが、実はこの場合、裁判を起こすことは可能です。いわゆる公示送達(民法110条1号)という方法を使います。

 

そもそも、裁判を起こすときには、訴状を裁判所に提出し、裁判所が訴状を被告に送達することで初めて有効な裁判が開始できます。ここでの送達は、手渡しで行うのが原則ですが、被告がどこにいるかわからない場合には、裁判所の掲示板に掲載することで、送達が完了します。これが公示送達です。そのため、被告である詐欺師がどこにいるかわからなくても、公示送達の方法で有効に裁判をすることができます。

 

 実際の勝訴の見込み

 実際に、オレオレ詐欺等で裁判を起こした場合には、勝訴できる可能性が高いです。というのもオレオレ詐欺の場合等は、組織的な犯罪が行われていることが多く、多数の被害届が出ており、これも詐欺の証拠として利用できます(当然、自分でも被害届を出しましょう)。また、振込み履歴や電話履歴も残っていることが多いので、裁判を有利に運べます。

 そのため、詐欺の被害にあった場合には、決して泣き寝入りをせずに、戦うことが大切です。

*他にも振り込め詐欺救済法などによる回収方法もあります。

 

お金が返ってくる可能性は?

 実際に、裁判で勝訴するのはさほど難しいことではありません。具体的なお金の回収方法としては、振り込んだ口座の詐欺師の銀行に対する預金債権を仮差押さえ、あるいは勝訴判決が出ていれば、差押さえをすることになります。そのため、詐欺師の口座にお金があれば、当然回収をすることは可能です。

 ですが、詐欺師の多くは、振り込み先の口座から一度引き出し、別の口座にお金を入れるか、自分で持っていることが多いです。そのため、回収するのは難しいです。ゆえに、回収できないから諦めた方が良いという人も多いです。

 

 しかし、本当にそうでしょうか?

 裁判は起こすべきです。というのも、今検討しているのは、詐欺師が逃亡をしている場合ですよね。大規模になればなるほど警察も力を入れるので検挙する率はかなり高いです。これを前提にして下さい。その上で、裁判を起こすメリットはいくつかあります。

 まず、裁判を起こすと、判決が確定されてから債権の時効が10年となります(民法174条の2)。その結果、判決時から10年間は詐欺師に対して支払請求をすることができます。

 また、振り込め詐欺救済法は、基本的には詐欺師の口座を凍結して詐欺の被害者に分配することをメインにしている法律にすぎません。しかし、裁判で勝訴判決を得ると、詐欺師の預金債権だけでなく、詐欺師の保有資産すべてに対して執行をかけることができます。

 つまり、詐欺師が別の口座に移して保有しているお金及び引き出して保有しているお金すべての資産に対して執行をかけることができます

 しかも、その執行は判決時から10年間はできます

 そうだとすると、逃亡していた詐欺師が発見されて検挙された際に、他の裁判をして勝訴判決を得ていない被害者は、詐欺師が任意でお金を返すことは基本的にありえないので、裁判を起こして勝訴判決を得て執行をかけるか、仮差押えの申し立てをするしかありません。

 これは時間がかかります。

 しかし、裁判で勝訴判決を得ている状態であれば、すぐに詐欺師の財産を差し押さえ執行をかけることができます。

 つまり、他の被害者に先んじて債権回収を行うことが可能になり、債権回収の可能性が上がります。

 そのため、将来のことを見越して裁判をして勝訴判決を得ておくのは非常に重要なことだと思います。 

 

ちょっと補足

 勝訴した場合には、詐欺師が有している銀行預金債権などを差し押さえることになりますが、下級審判決などでは、債権者代位(民法423条)で直接詐欺師の預金債権を取に行く方法も認めています。勉強をされている方は、債権保全の必要性を満たさないのではないか疑問に思われるかもしれません。しかし、下級審判決では債権保全の必要性を無資力要件ではなく、居所不明であることをもって認めるものがあります。そのため、無資力ではないことから直ちに債権者代位ができないことにはなりません。

 

 司法試験とか公務員試験の発展問題で出るかもしてないから気を付け下さい。

 

www.houritunomametaro.com

www.houritunomametaro.com

www.houritunomametaro.com

www.houritunomametaro.com

www.houritunomametaro.com

www.houritunomametaro.com

www.houritunomametaro.com

www.houritunomametaro.com

www.houritunomametaro.com